仮想化技術の大本命「Xen」を使ってみよう
 〜 インストール & Debian環境構築編 〜

高いパフォーマンスと多くのベンダによるサポート表明で本命の1つとなった仮想マシンモニタ「Xen」。日本語による情報が少ないXenを、実際に動かしてみよう。(編集部)

みやもとくにお<wakatono@todo.gr.jp>
2005/3/8

 Xenは、仮想マシン環境を実現するためのソフトウェアです。「仮想化技術のアプローチと実装」で解説したように、仮想化技術は数種類に大別できます。Xenはその中で、最も伝統的な方式を採用した仮想化技術です。

Xenを取りあえず動かしてみよう

 Xen 1.0の当時はデモCDがありましたが、Xenについて理解するには実際の環境で動かしてみるのが一番良いでしょう。最新版のバイナリインストールキットには、Xenアーキテクチャ版のLinuxカーネルバイナリも含まれています。これを使えば手軽に動かしてみることができます。

 なお、Xenを動作させる環境に重要なファイルなどが保存されている場合はバックアップを取るなどしておいてください。

Xen 2.0の動作に必要なもの

 今回動作検証を行ったXenのバージョンは、2.0.4です。以後、単に「Xen」と表記した場合はXen 2.0.4を指すものとします。

 Xenを動かすのに必要なLinuxディストリビューションの条件は、

  • P6以降のCPUで動作すること
  • ブートローダにGRUBを採用していること

です。筆者は、Debian GNU/Linuxのtesting版(sarge)を使いました。

 仮想マシンモニタとその上で動作するVMを1つ実行させるだけであれば、ほかに必要なものは特にありません。ただし、インストール後に実行するチェックスクリプト中で、パッケージがないというエラーが表示されます。また、追加の仮想マシン環境作成や制御そのほかが一切できません。これらを行うには、いろいろと必要になります。

 Xenのオフィシャルサイトに、必要なものが記載されています。筆者が実際の検証時に必要と感じたものとその理由を以下に示します。

  iproute
    Xenの制御サーバプログラムであるxendを起動した直後の処理で、仮想マシンに対する経路制御に必要です。このパッケージがないと、xendを動作させた直後にXen上で動作しているVM(起動時に指定したVM)と通信できなくなります。
 
  bridge-utils 2.1
    iprouteと同じく、VMのネットワークコネクティビティを確保するのに用います。バージョンまで細かく指定されていますが、bridge-utilsであれば問題ありませんでした。
 
  Python 2.3
    Xenの制御スクリプト類はPythonで書かれています。
 
  Twisted
    Pythonによるインターネットアプリケーションフレームワークです。HTTPで情報をやりとりするXenのツールが、このパッケージを使います。
 
  libcurl
    Twistedと同様の理由で必要です。libcurl3のパッケージとlibcurl2のパッケージがインストール可能です。

 このほかに、Linuxカーネルを構築するためのパッケージ(kernel-packageなど)もあった方がよいでしょう。後は、必要に応じてパッケージを追加していけばよいでしょう。

業界の注目を集めるXen
本記事の作成中にも、Xenをめぐって業界にさまざまな動きがあったので補足しておく。

まず、Intelが2005年1月21日に仮想化技術「Vanderpool Technology」(VT)への注力を発表した。VT自体はXenに限定した技術ではないが、両者の組み合わせには非常に期待できる。

2005年2月15日には、AMDが64bitサーバ仮想化ソリューションを今年度上半期に投入すると発表した。AMDの構想はXenをOpteronに移植することで、エンタープライズクラスのサーバ仮想化技術を提供するというものである。AMDによるXenプロジェクトの支援とXenSourceとの連携がうたわれており、Xenの開発にも弾みがつくと予想できる。

さらに興味深いのが、IBMが同社の仮想化ソフトウェア「The Research Hypervisor」(rHype)のソースコードを公開したことである。rHypeのコードがXenに応用される可能性は高い。CNET Japanの記事によると、rHypeにはGPLが適用されており、XenプロジェクトのリーダーIan Pratt氏は「rHypeをXenに直接取り込むことが可能だ」と語っているという。

このほか、Hewlett-PackardやNovell、Sun Microsystems、Red Hatなど、多くの企業がXenのサポートを表明している。これから、仮想化技術およびXenの動向が非常に面白くなりそうだ。(編集部)

インテル コーポレーション、仮想化技術への取り組みを加速
 http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press2005/050121.htm
AMD、業界初のx86ベースの64ビット・サーバ仮想化ソリューションを投入
 http://www.amd.com/jp-ja/Corporate/VirtualPressRoom/0,,51_104_543%7E94630,00.html
The Research Hypervisor
 http://www.research.ibm.com/hypervisor/
IBM、仮想化ソフトウェアのソースコードを公開(CNET Japan)
 http://www.japan.cnet.com/news/ent/story/0,2000047623,20080973,00.htm
XenSource
 http://www.xensource.com/

 
1/3

Index
仮想化技術の大本命「Xen」を使ってみよう
 〜 インストール & Debian環境構築編 〜
Page 1
Xenを取りあえず動かしてみよう
 Xen 2.0の動作に必要なもの
 コラム:業界の注目を集めるXen
  Page 2
Xenのインストール
 インストールスクリプトの実行
 GRUBの設定
 Xenインストール時の注意
 Xenのブートと環境のチェック
  Page 3
新規ドメインの作成
 仮想マシン制御プログラムxendの起動
 新ドメイン用環境の作成
 Debian GNU/Linux(sarge)環境の作成

Linux Square全記事インデックス


 Linux Squareフォーラム 仮想化技術関連記事
連載:実践! Xenで実現するサーバ統合
有力な仮想化技術として注目を集めるようになった「Xen」。このXenを活用してサーバ統合を実践していく手順を具体的に紹介します
特集:サーバの仮想化技術とビジネス展開の可能性
jailからUML/VMwareまで
1台のマシンで複数のサーバを動かす「仮想化技術」。VMwareやUMLの登場により、WebサイトだけでなくOS自体を仮想化できるようになった
特集:仮想化技術のアプローチと実装
VMwareから要注目技術Xenまで

1台のサーバで複数の仮想マシンを実行する仮想化技術は、空間コストを引き下げる可能性を持つ。最新の仮想化技術を概観してみよう
特集:仮想OS「User Mode Linux」活用法
技術解説からカーネルカスタマイズまで
Linux上で仮想的なLinuxを動かすUMLの仕組みからインストール/管理方法やIPv6などに対応させるカーネル構築までを徹底解説
特集:仮想化技術の大本命「Xen」を使ってみよう
インストール & Debian環境構築編

高いパフォーマンスで本命の1つとなった仮想マシンモニタ「Xen」。日本語による情報が少ないXenを、実際に動かしてみよう
特集:仮想化技術の大本命「Xen」を使ってみよう
Xen対応カスタムカーネル構築編

Xen環境およびその上で動作する仮想マシン用カーネルを自分で構築しよう。これにより、自由にカスタマイズしたカーネルを利用できる
特集:IPv6、UML、セキュリティ機能の統合
全貌を現したLinuxカーネル2.6[第4章]

今回は、これまでに紹介し切れなかった機能を一気に紹介する。これを読めば、カーネル2.6の正式リリースが楽しみになるだろう
Linux Squareプロダクトレビュー VMware Workstation 4
PC/AT互換機エミュレータとして不動の地位を築いたVMware。その新バージョンがリリースされた。新機能を早速試してみよう
古くて新しい「サーバ仮想化技術」の行方
サーバ仮想化を実現するための技術がソフトウェア、ハードウェアの両面で出そろってきた。ハイパーバイザーのさらなる高速化に向けた動きを紹介する
Linux Squareフォーラム全記事インデックス


Linux & OSS フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

Linux & OSS 記事ランキング

本日 月間