書評

TCP/IPのコア技術
「IPルーティング」を学ぶ4冊

アットマーク・アイティ 編集局
鈴木淳也
2001/10/18

今回紹介する4冊
インターネットルーティング入門
IPルーティング徹底解説
IPルーティング入門
インターネット ルーティング アーキテクチャ第2版

 いま、書店のコンピュータ系書籍コーナーに行くと、シスコのベンダ資格であるCCNA関連の書籍が大量に陳列されていることに気付く。ひと昔前(といっても2〜3年前だが)ベンダ資格といえば、マイクロソフトのMCPやオラクルのOracle Masterなどが中心だった。だが、ここ最近の大きなトレンドはネットワーク系技術資格であるCCNAにあるようだ。技術者向け教育コースを用意している大手教育企業の担当者も、同様の感想を述べていた。

 CCNAといえば、ルータ/スイッチ技術者のための資格である。そこまで需要があるものなのだろうか? 以前までは、ルータについて深い知識が必要なのは、ISPや企業内でも一部の専門技術者で十分だったといえる。だが現在では、VoIPなどに見られる音声/データのIPへの統合といったように、IPへの比重の高まりでルータの重要性が増し、多くの技術者がIPネットワークひいてはルータまわりの技術を押さえておく必要が出てきたといえるだろう。特に、データセンターへのホスティングやIP-VPNの活用による社内ネットワークの統合など、ISPとの接点が増えてきたことも見逃せない。

 今回は、TCP/IP基礎からさらに一歩抜け出し、ルータの基本となる「IPルーティング」の仕組みや利用法について学べる4冊を紹介していこう。

IPルーティングの基礎はこの1冊から

インターネットルーティング入門

友近剛史 /池尻雄一 /小早川知昭 著
翔泳社 2001年
ISBN4-7981-0038-2
2600円(税別)

 「とにかくIPルーティングの概念が学びたい!」という、ルーティング技術のビギナーにお勧めの1冊がこれだ。本書の特徴は、ルーティングの仕組みやプロトコル体系を簡潔に整理、頻出するキーワードや重要なポイントは色分けや“まとめ”という形で一望できるため、前提となる知識を分かりやすく学べるところにある。RIPやOSPF、BGPといった各ルーティングプロトコルについての詳細解説も行われているため、これ1冊あれば、ルーティングに関する基礎知識はほぼカバーできるだろう。

 まず冒頭では、IPアドレッシングの基礎知識とルーティングの基本原理に触れ、ASの概念やIGP/EGPといったルーティングプロトコルの区分の説明が終わると、次はOSPF、RIP、BGPの各ルーティングプロトコルごとに特徴や動作原理について章立てで解説する。プロトコルごとの区切りが明確化されているため、例えばルーティングに関する基本概念とBGP4についてだけ学びたいと考えているときなど、必要な部分だけをかいつまんで読むことも可能だ。

 また本書の最後の章では、高速スイッチング機能を提供するプロトコルであるMPLSについての解説が行われている。MPLSの性質から考えると、本来であればほかのIPルーティングプロトコル群と同列に扱うのは違和感のあるところだ。だが最近では、IP-VPNのブームにより、MPLSならびにBGPというキーワードに注目が集まっており、「これらの情報を手軽に入手したい」と思う読者のニーズを考慮すれば、むしろ押さえておいて正解だといえるかもしれない。

IPの基礎からルーティングまでをカバー

IPルーティング徹底解説

Thomas A.Maufer著 /生田りえ子 訳
日経BP社 2000年
ISBN4-8222-8074-8
4200円(税別)

 IPの基礎概念、イーサネットなどレイヤ2の通信の仕組み、そしてIPルーティングと、TCP/IPにまつわる広範な知識がまとめて学べるのがこの1冊だ。しかも、各章で展開される解説はどれも内容が濃く、得られる情報量は多い。特に、IPルーティングにおいても重要なVLSMやCIDRなどのサブネット分割の解説については、これまで見てきた技術書の中でもトップクラスの詳しさだ。逆に、情報量満載のため、入門者にとっては必要な情報を選別するのが難しく感じられるほどかもしれない。

 少々気になったのは、タイトルの「IPルーティング徹底解説」の部分。本書は大きく分けて、Part.1がIPの基礎、Part.2がIPまわりの技術(レイヤ2など)、Part.3が「IPルーティング」の解説となっており、全体のボリュームに占めるIPルーティングの解説は1/3ほどである。IPの基礎やレイヤ2での動作の解説などももちろん重要だが(IPルーティングと密接に結びついているため)、タイトルを見た読者は「IPルーティング」の部分に期待するわけで、もう少しこのあたりをフォローしてほしかったところだ(原題が「IP Fundamentals: What Everyone Needs to Know About Addressing & Routing」なので、これは邦題が与える誤解のような気がする)。

 だが、IPルーティングのボリュームの件を差し引いても、内容は非常に充実している。IPについて徹底的にマスターしたい読者にはお勧めだ。

ルータの仕組みを実機の動作で理解

IPルーティング入門

Robert Wright他 著 /阿瀬はる美 訳 /シスコシステムズ監修
ソフトバンク パブリッシング 1999年
ISBN4-7973-0854-0
3200円(税別)

 ソフトバンクから発刊されている、Cisco Pressシリーズの中の1つである。本書はシリーズでも最もコアとなる、ルータの基本動作を学ぶことを中心に書かれている。実際にシスコのルータをコマンドラインで操作して、その動作を確認しながらの解説が行われているため、(シスコ)ルータの技術者やシスコ認定資格であるCCNA取得を目指す方々には特にお勧めしたい。

 タイトルには「IPルーティング入門」とあるが、実際にはいきなり実機による接続テストの解説から始まっているなど、事前にある程度の知識は必要となる。TCP/IPならびにIPルーティングの基礎は、本書を読む前にぜひ押さえておきたい。構成としては、解説のベースとなるネットワークを例に挙げ、その場合の(シスコ)ルータの設定方法や実際に障害があった場合などの対処法などを順番に解説していくようになっている。最後まで読み進めることで、IPルーティングの基本概念、ルータの操作法、トラブルシューティングがひととおり学べるようになっており、動作が具体的に分かるというメリットのほか、実務に直結しているのが特長だといえる。逆に、かいつまんで知識を得ようという人には向いていないだろう。

 Cisco Pressシリーズの邦訳版はすでに20冊近くが既刊となっているが、最も基本となる本書はぜひとも押さえておこう。

インターネット接続のための必須知識を網羅

インターネット ルーティング アーキテクチャ 第2版

Sam Halabi/Danny McPherson 著
鈴木弥生 訳
インターネット総合研究所/シスコシステムズ 監修
ソフトバンク パブリッシング 2001年
ISBN4-7973-1312-9
5200円(税別)

 先ほど紹介した「IPルーティング入門」が、ルータの基本動作を学ぶことを中心に据えているのに対し、本書ではさらに踏み込んで「インターネットといかに接続するか」がメインテーマとなっている。インターネットと接続しないネットワーク・システムは、現在ではほとんど考えられない。ゆえに企業内においてインフラ周りを管理するネットワーク技術者にとって、必携ともいえる1冊だ。

 最初のほうで、インターネットの歴史やドメイン(AS)内のルーティングについて簡単に触れているが、あくまで本書のメインはドメイン(AS)間のルーティングプロトコルであるBGP4にある。BGP4の仕組みや動作原理、利用例が紹介されており、ISP関連や企業でエッジルータを管理するようなネットワーク技術者はぜひともマスターしておきたいところだ。Cisco Pressシリーズの特徴である、実機での設定例が逐一紹介されているのもポイントで、複雑なBGP4の動作が理解しやすいように工夫されている。BGP関連の資料も完備されているので、最初は学習用として、内容をマスターした後はリファレンスとして利用することもできる。

 タイトルから分かるように、本書は1998年に邦訳の第1版が出版され、つい今年の8月に第2版として最新の情報にアップデートされている。すでに第1版で本書を読んだことがある方でも、いちどチェックしてみる価値はあるだろう。


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