連載:インターネット・プロトコル詳説(0)
〜序説:インターネット・プロトコルの世界〜
梁瀬介次
2001/3/2
■連載開始の前に
タイトルとして名付けられた「インターネット・プロトコル」とはいったい何だろうか?
さまざまな生産活動、ビジネスモデル、社会動静までを巻き込んで、インターネットの世界はさらに広がり続けている。こうしたインターネットにパワーを送り続ける「縁の下の力持ち」、それがさまざまなアプリケーションとアプリケーションのコミュニケーションを中継ぎする「ネットワーク・プロトコル」だ。
本連載では、特にインターネットを支える主要なネットワークプロトコルや標準フォーマットに焦点を当て、これらを「インターネット・プロトコル」と総称し、それぞれの概要について説明していくことにしよう。
インターネットを純粋にネットワーク技術から見たとき、その一番の根幹になるのは、TCP/IPやEthernetといった物理的なネットワーク構造だろう。ただし、これらについては別に行われている連載に譲ることとして、本連載では、以下にあるような、いわゆる「アプリケーション層」に位置するプロトコルやフォーマットに焦点を当てる。
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| 図1 インターネット・プロトコルの種類 |
これらは主にTCP/IPやUDP/IPといったネットワーク層のプロトコルを前提にしたアプリケーションのためのプロトコル群である。インターネットがARPANETから創生されたころからその使いやすさやオープン性に引かれ、利用者を着実に増やし続け、現在のような標準仕様としての利用に至っているものばかりだ。
プロトコルの歴史としてはそれぞれ長く、すでに枯れてきている*1ものもあれば、現在もまだ進歩を続けているものもある。
本連載ではできる限り、現時点での最新の仕様をもとに解説するが、プロトコルによっては、1年もすればすでに古いということもあり得るかもしれない。
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■インターネット・プロトコル〜それぞれの役割
少しそれぞれのプロトコルやフォーマットの関係性を整理してみよう。
「Web系列」として分類したのは、まず「HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)」だ。WebブラウザとWebサーバ間で交わされるインターネットプロトコルである。WebでのコンテンツとなるHTML(Hyper Text Markup Language)を送受信することを目的に考えられたものだ。現在ではHTMLに限らず、XMLやオブジェクト指向モデルのプラットフォームとしても活用されるなど、いま最もアグレッシブなプロトコルといえるだろう。
「メール系列」で中核をなしているのが、MIME(Multipurpose Internet Mail Extensions)である。MIMEはメールのコンテンツ(メールの中身)のフォーマット定義だ。厳密にはネットワークプロトコルではないのだが、ほかのメール系列のプロトコルを理解するうえで非常に重要な要素である。
MIMEは単なるテキスト・メッセージだけでなく、HTMLや画像、アプリケーション、また近年ではXMLや基幹系に直結するようなトランザクション・データまでを包含する、非常に強力かつ柔軟なフォーマット定義である。
SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)はメールの配信プロトコルである。通常の個人の利用ではメールの送信プロトコルとして知られているだろう。しかし実際には、インターネットに存在するメールサーバのすべてを束ねるというフレキシブルな柔軟性を求められるプロトコルでもある。ここでは、インターネットメールのルーティングロジックとともに仕様を理解することになるだろう。
POP(Post Office Protocol)も同様に、個人利用ではよく知られたプロトコルである。主にメールサーバからメールを取り出す(ダウンロードする)だけの非常にシンプルなプロトコルだ。しかしシンプルゆえに、現在ではさまざまな問題が指摘されてきたプロトコルでもある。
それらの問題点を解決すべく生まれたのがIMAP(Internet Messaging Access Protocol)だ。同じくメールのダウンロードを目的としているが、POPとは設計思想、動作、その複雑さを含めて非常に対照的なプロトコルだ。次世代のPOPとして期待されているが、実際に活用されている局面はまだ限られる。それらの理由も両者のプロトコルの狭間に潜んでいるかもしれない。
最後にFTP(File Transfer Protocol)も最も古参のプロトコルの1つとして取り上げてみる。プロトコルの対象範囲としては非常に地味なのだが、現在ではインターネットに欠かせない地位を占めている。また、インターネットプロトコル群の中でも最も複雑な部類のプロトコルに属している。最もネットワークらしいネゴシエーションとともに、普段は意識されないファイアウォールの問題にも触れることになるだろう。
本連載は、主に中級程度のレベルを中心に、できるだけ簡潔な説明に努めつつ、時折は可能な限り詳細な解説も加えていきたいと思っている。
こうしたインターネットのまさにコアとなる技術をめぐる解説は、まさにインターネットのこれまでの歴史そして現在を紡ぐ糸を1本1本解きほぐす旅でもある。こうした機会に恵まれて筆者もいささか緊張気味である。
最後までどうか楽しんでお付き合いいただければ、幸いである。
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