連載:アニメーションで見るパケット君が住む町(6)
「ネットワークをつなげ、パケットを届ける」ってどういうこと?

綱野衛二
Roads to Node
2009/10/9
今回はTCP/IPネットワークの中心的プロトコルであるIP(Internet Protocol)の役割とその機能について説明します。IPが行う「ネットワークをつなげ、パケットを届ける」ということはどういうことなのか、IPアドレスの意味とその特徴についても説明していきます

 パケット君の運送手順 - 主役登場、メインIPがついに登場!!

 これまでの連載で市内・市外での荷物運輸の手順や方法について説明してきました。トラックや列車によって、市内のビルとビル、ステーションとステーションを繋いでいます。今回からは、これらの運送手段を用いて「荷物を運ぶ」方法を説明していきます。

6-1 パケット君登場

パケット君「やっと僕が主役の回だ」

そうです。今回からはパケット君、ルート君の兄弟が主役となります。

では、パケット君のお仕事についてお話を聞きましょう。

パケット君「僕の仕事はこのインターネット世界で荷物を運ぶことだよ」

ふむふむ? パケット君が荷物を運ぶ? では、前回までの話はなんだったんでしょうか?

イーサ配送君やPPP駅員君の指示でトラックや列車が荷物を運ぶという話は?

パケット君「あー、うん。『荷物そのものを運ぶ』は確かに彼らの仕事だよね。僕らの仕事は言っちゃ悪いけど、彼らを使って宛先まで『届ける』ための手続きを行うこと、だよ」

つまりパケット君が荷物を運ぶわけではない、と。荷物を運ぶのはあくまでトラックや列車ということですね。

パケット君がいう「荷物を運ぶ」というのは「運送手段」であるイーサ配送君とトラックを「使って」運ぶ、ということですね。

図6-1 パケット君とイーサ配送君・PPP駅員君

パケット君「そうだね、僕がいるビル、ステーションの間の『運送手段』がどうなっているかは、それは僕の管轄外。きっとイーサ配送君やPPP駅員君が上手くやってくれてるんじゃないかな。僕らの仕事はその上でビルとビルで荷物を運ぶこと、だからね」

なるほど。つまりまとめると、パケット君の役割は「トラックや列車を乗り継いで」「ビル間で荷物をやり取りする」ための手続きを行う、ということですね。

「トラックや列車」がどのように荷物を運んでいるか、というのは気にしない。それは別の人の仕事、ということです。パケット君が考えるのは「ビル間で荷物をどのようにやり取りするか」という点になります。

パケット君「そういうことだね。特に大事なのはステーション、だよ。ステーションが市と市を結びつけているわけだからね。僕らはビルやステーションで、『荷物を届けるための手続き』を行っているんだよ」


 今回からは、TCP/IPの主役、IPの説明です。

 さて、前回までの話ではイーサネットによる「LAN内部での接続」、PPPによる「1台と1台をWANでの接続」を説明してきました。これにより、おなじLAN内の機器同士ならば問題なくデータのやりとりが可能になります。また、1対1のやりとりならばWANでも同様の事が可能になっています。

 しかし、逆に言うならば、「おなじLANでなければ接続できない」「1対1でなければ接続できない」ということになります。

 そこでIPは「LANとLANを接続」して、「離れた場所にある機器同士を接続する」ためのルールを提供します。

 もともと、TCP/IPは冷戦下のアメリカ合衆国で「攻撃が行われてもデータのやりとりが可能」になるように、と考えだされて作られたものです。

 その特徴として、それぞれのネットワークを「中央」に接続するのではなく、「相互」に接続し、どこか一拠点が攻撃により使用不能になったとしても、そこを迂回して接続可能になるという点があげられます。

図6-2 中央と相互

 このように、IPはネットワーク(network)を相互(inter)に接続するため、internetwork(ネットワーク間相互接続)を行うプロトコルである、と言えます。internetworkは略して、internetと書かれることもあります。

 ちなみに固有名詞の方の「インターネット」は「The Internet」、「INTERNET」「The Net」と記述されるので、英語の文書などで「internet」と書かれていても混同しないように注意してください。

 このネットワークを「相互に接続」するための機器が「ルータ(Router)」です。ルータはネットワークであて先までパケットを届けるための「中継」を行っています。逆に言えば、ルータこそがネットワークを作り出している中心的な機器、ということになります。

 また、ご存知の方も多いと思いますが、現在使われているIPは、アドレス数やセキュリティの問題から順次新しいバージョンに置き換えられています。現在のバージョンがバージョン4(IP version4:IPv4)、新しいバージョンがバージョン6(IP version 6:IPv6)です。

 IPv4とIPv6は互換性がないため、現在使われているIPv4からいきなりIPv6というわけにはいきません。IPv4が使われている機器や環境を徐々にIPv6に置き換えしているのが現状です。

 この連載では、現行のバージョンであるIPv4をメインで説明していきます。特に明記しない限り、説明はすべてIPv4のものです。

 

6 パケット君の運送手順 - 主役登場、TCP/IPのメインIPがついに登場!!
6-1 パケット君登場
  6-2 パケット君の配送票
  6-3 インターネット世界の住所
  6-4 あて先の市までの道を決める
6-5 おさらい 〜 実際のネットワークに当てはめると


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