UPSで電源トラブルからマシンを守る!!

〜電源トラブルの基礎知識とUPSの効果的な活用法〜

池田圭一
2000/10/28

UPS製品紹介

 最後に、本記事で扱ったUPSについて紹介する。UPSの駆動方式(常時商用電力供給タイプ/常時インバータ駆動タイプ)の違いにより3機種を試用した。またこれら3機種は、それぞれバッテリ容量にも違いがあり、導入するのに最適なシステム規模(家庭内〜SOHO/クライアントPC〜小規模オフィスのサーバ/部署単位〜ネットワーク機器を含めたシステム全般)によっても分類できる。


家庭内〜SOHOに最適なオールインワンUPS
BK500

■価格

2万7800円

■問い合わせ先

エーピーシー・ジャパン(APC Japan)
(TEL)03-5434-2021
Symmentra/UPS購入前(ガイダンス1)
http://www.apc.co.jp/
 

 BK500は、500VA/300Wのメンテナンスフリーのシール型鉛バッテリを内蔵した、オフライン方式のUPS。瞬低や停電時にバッテリからのバックアップを行い、200Wで18分間、400Wで5分間動作が可能である。無停電電源機能のほか、電力と通信回線(アナログ電話/ISDN/イーサネット)のサージ保護機能を備える。専用の通信ケーブル(シリアルケーブル)が付属するオプションの制御ツール「PowerChute plus」(1万7500円)を用いると、UPSの各種制御が可能になる。


BK500 Spec Sheet
方式
オフライン、サージ保護機能付き
許容入力電圧範囲
100VAC
許容入力周波数範囲
50/60Hz
出力容量
500VA
標準出力電圧
100V
出力周波数
50/60Hz
バッテリタイプ
シール型鉛バッテリ(交換可能)
バッテリ通常寿命
3〜6年
遠隔管理
PowerChute plus利用時、シリアル



コストパフォーマンス重視のコンパクトUPS
Smart-UPS 700J
■価格
8万3600円

■問い合わせ先
エーピーシー・ジャパン(APC Japan)
(TEL)03-5434-2021
Symmentra/UPS購入前(ガイダンス1)
http://www.apc.co.jp/
 

 Smart-UPS 700Jは、700VA/450Wのシール型鉛バッテリを内蔵した、オンライン方式(簡易方式)のUPS。通常時は、商用電力にサージ保護、ノイズ削減、電圧/周波数などの安定化を行い出力、停電時にはバッテリバックアップを行う。200Wで38分間、400Wで14分間、600Wで6分間のバッテリ出力が可能。専用の通信ケーブル(シリアルケーブル)と制御ツール「PowerChute plus(Windows NT/2000用)」が標準で同梱されるため、コストメリットがある。


Smart-UPS 700J Spec Sheet
方式
ラインインタラクティブ方式
許容入力電圧範囲
100VAC
許容入力周波数範囲
50/60Hz
出力容量
700VA
標準出力電圧
100V
出力周波数
50/60Hz
バッテリタイプ
シール型鉛バッテリ(2個交換可能)
バッテリ通常寿命
3〜6年
遠隔管理
PowerChute plus、シリアルケーブル


リモート管理が容易なネットワーク対応UPS
BM1000-10FNX

■価格

17万8000円

■問い合わせ先

ジーエス・イーイー(GSEE)
(TEL)075-316-3061(本社・京都)
03-3502-6554(東京)
http://www.gsee.co.jp/
 

 BM1000-10FNX は、1000V/700Wの長寿命シール型鉛バッテリを内蔵した、オンライン方式(常時インバータ方式)のUPS。一般的なPCサーバクラスのマシン(電力消費400〜500VAC)であれば、18〜25分のバッテリバックアップが可能だ。10BASE-Tインターフェイスや、Webサーバ機能/SNMPエージェント機能を標準搭載しているのが特徴。ネットワーク特定の電源出力ポートに対して、遅延出力設定が可能であり、周辺機器を立ち上げてからサーバを起動するなど、多彩な使い方が可能である。


BM1000-10FNX Spec Sheet
方式
オンライン(常時インバータ方式)、
オフライン同期
許容入力電圧範囲
85〜115VAC
許容入力周波数範囲
50/60Hz±5%
出力容量
1000VA
標準出力電圧
100V±2%
出力周波数
50/60Hz
バッテリタイプ
長寿命シール型鉛バッテリ
バッテリ通常寿命
3〜5年
遠隔管理
Web/SNMP MIB


UPS運用時に気を付けたいこと

 今回、数機種のUPSを実際に半月ほど運用してみて、いくつか気が付いた点がある。それは、UPS本体の重量と発熱である。

 ほとんどのUPSには、停電時のバックアップ電源として、シール型の鉛バッテリが内蔵されている。電気を蓄えることができ、繰り返しの充電/放電に耐え、蓄電容量、コストなどの諸条件に優れるものとして、これしかないというのが現状である。しかし、金属板(鉛)と液体(希塩酸)で満たされた鉛バッテリは、非常に重く、ある意味危険な物体である。シール型(すなわち密閉されている)といっても、液漏れの危険性があるために、横倒しに設置することはできないし、あまりに高温下で運用すると容器の破壊などが起こる可能性もあると指摘されている。

 例えば、重量に関していえば、今回扱った最も小型のUPS(BK500)でさえ8.54kg、Smart-UPS 700Jは13.1kg、比較的大きな(といってもUPS全体でみれば小型)のBM1000-10FNXでは18kgになる。一見、コンパクトで軽々と持てそうなのだが、手をかけるフックなどがないため、意外と保持しにくく、また横に寝かせられないため1人での設置は結構な力仕事となった(ちなみに、筆者はCRTの上げ下げで腰を痛めた経験がある)。首都圏では、雷や大雨などに加えて地震という自然災害も心配しなければならない。UPS設置の際には、不安定な場所を避けるべきであろう。

 また、設置場所に関しては発熱も心配である。ノートPCなどでは、CPU部分とバッテリ部分が加熱することがよく知られている。電気をためる際(充電そのものは吸熱反応だが、充電回路が熱を出す)、あるいは放電する際には、かなりの熱も出るため、UPS本体が結構加熱するのである。真夏の8月、エアコンのない室内で、UPSと2台のマシンをフル稼働させたとき、UPS(BK500)を設置した床の温度は約60度となっていた。

 UPSは、たいていの場合、ケーブルがごちゃごちゃと配線されているようなサーバマシンの近くに設置される。しかし、そのような空気の流れのない(あるいはサーバからの排熱が吹き出しているような)劣悪な環境下では、バッテリの寿命を縮めるどころか、思わぬ事故が発生する可能性もある。UPSの取扱説明書などにも明記されているだろうが、設置の際は、周囲に十分な放熱のための空間がある比較的空気の流れのある場所に据える必要があるだろう。

 設置場所が自由に選べるという意味においても、短めのシリアルケーブルでのUPS制御は、できるだけ敬遠し、取りまわしの楽なネットワークケーブルで接続できるUPSを選びたいものである。プリンタやストレージなどに比べ、UPSのネットワーク対応は遅れていた。しかし、電源管理の重要性が認知されるようになり、ようやくネットワーク標準のUPS時代が到来したのである。あなたのマシンを、ネットワークを、そして信頼を守るために、コンピューティングの基底をなす電源について、今一度考える時期がきたといえるだろう。


Index
UPSで電源トラブルからマシンを守る!!
  忘れていませんか? 電源管理
-電源トラブルの代表例
-標準周波数
【コラム】標準電圧
  電源トラブルへの対策〜UPSの基礎知識
-UPSの3つの電源供給方式
-規模に応じたUPS選び
【コラム】電源保護だけでなく、通信回線も保護するUPS
  UPS制御ツールで電源管理
-OS標準機能によるUPS制御
-専用ユーティリティによる電源管理
-ネットワークによるUPS制御
  UPS製品紹介
「BK500」
「Smart-UPS 700J」
「BM1000-10FNX」
-UPS運用時に気を付けたいこと
 


【お詫びと訂正】 2001/3/12

Smart-UPS 700Jのスペック表記において、電源供給方式が「オンライン方式(簡易方式)」とありましたが「ラインインタラクティブ方式」の誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。

「Master of IP Network総合インデックス」



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