座談会 「3年後のグループウェアはどうなるのか

ユーザーが今のグループウェアに求めるもの

新野(司会) 今日はお二人に、ノーツ/ドミノおよびExchange Serverという、それぞれの製品を代表するプロダクトマネージャという立場と同時に、グループウェアの専門家として、今後のグループウェアやコラボレーションの将来について語っていただこうと思っています。

 その前に、まず現在のユーザーの状況についてお伺いしましょう。最近のグループウェア製品は、スケーラビリティの向上と同時に、インスタントメッセージやナレッジマネジメントなど、数多くの機能が含まれていますよね。こうした中で、いまユーザーが喜んでいる機能、エキサイトしている機能というのはどの辺ですか?

斎藤 ドミノとノーツという範囲で話しますと、先日ノーツ/ドミノ R5.0.5という最新バージョンを発表したのですが、特に既存のユーザーから注目されたのは「ドミノオフラインサービス(*)」(Domino OffLine Services:DOLS)でした。新バージョンの製品説明をすると、この機能に最も多くの質問が集まります。DOLSを利用すると、WebブラウザやOutlookからでも、オフラインでドミノのアプリケーションにアクセスできるのですが、おそらくユーザーは、Webブラウザとノーツを適材適所で具体的に利用する場面を想定しながら、質問されているようです。また、ポータルの世界、これも同じように注目されています。

*ドミノオフラインサービス ドミノオフラインサービスは、オフライン環境でも、Webブラウザからあらかじめレプリケーションしておいたデータベースやアプリケーションにアクセスできる機能を提供する。いわば、ユーザーインターフェイスをWebブラウザ化したノーツクライアントといえる。

   サーバーコンソリデーションの要望が高い

藤縄 ポータルが注目されているのは、Exchange Serverでも同じですね。Exchangeでは「デジタルダッシュボード」と呼んでいますが。デジタルダッシュボードがトリガーになって、(Exchangeの)案件に入ってくるお客様が多いので、本当に注目されているんだなと思います。また、サーバコンソリデーション(1サーバ当たりの規模を拡大し、台数を減らして集中管理する)をやりたいというリクエストが非常に高まっています。かつては、サーバを分散した環境がいい、といわれた時代があったのですが、いまはラックマウントにサーバを積み上げて、集中管理をしたいというリクエストの方が圧倒的に多いですね。

 マイクロソフト社内でもExchangeを使っていますけど、Windows 2000に移行し終わって、米国では35台あったサーバが8台になった、ということをよくいっています。これで米国本社の2万ユーザー、メールトラフィックが1日400万というメッセージに対応しています。

斎藤 R5のスケーラビリティが上がったこともあって、R5が出るタイミング、あれは約1年半前だったと思いますが、そのころからサーバコンソリのニーズは確かに出てきましたね。ロータスがマイクロソフトと違うといえるのは、サーバコンソリ実現のために、NT以外のプラットフォームも使おうとしている点です。もちろん、どの方法がいいかはユーザーが決めることだと思いますが。

新野 サーバコンソリのニーズが高いとはいえ、サーバコンソリを実現するソフトウェアの機能は、早くも結構いくところまでいっちゃったような気がします。サーバコンソリという面で見たとき、この先の進化はまだありますか?

藤縄 ソフト的にいくとこまでいった、というのは確かだと思います。しかし、サーバコンソリを導入するときの費用とか、サーバだけでなくストレージの話もあるでしょう。例えば、SAN(Storage Area Network)を入れると費用がかかるとか。まだそこは敷居が高い。サーバコンソリは、ソフトは追い付いたけど、SANの機器の互換性の問題など、まだユーザーにとってのハードルは高いでしょうね。

   機能競争は切りがない?

新野 ソフトウェアの機能の面についても話をしていきましょう。グループウェアの世界では、数年前まではインターネットの標準に対応しようと、HTTPをとりこみ、SMTPをとりこみ、POP3やIMAP4、そしてNNTPやvCardなど、どんどん対応してきましたよね。で、私としてはその辺でグループウェアの機能拡張競争は終わるのかと思っていました。でも終わらなかった。さらに、インスタントメッセージを取り込み、電子会議ができるようになって、ナレッジマネジメントやドキュメントマネジメントへも踏み込んでいっています。いったい、機能競争はどこまで続くのでしょう?

今後もサービスが追加されるか、というと、されるだろうと。 (藤縄)

藤縄 Exchange 2000に関していうと、今回のバージョンアップで分かりやすいのはカンファレンスサーバやインスタントメッセージの機能の追加なんです。でも実際に一番大きな変更が行われたのは、アーキテクチャの変更だったんですね。例えば、SMTPなどのインターネット標準への対応は過去に行われてきたのですが、それらは、既存のシステムの上になんとか載っけてきたものだったんです。

 しかし、今回のバージョンアップで、インターネットの標準プロトコルへの対応はInternet Information Server(IIS)にお願いしましょう、ディレクトリもいままでExchange独自で持っていましたが、Windows 2000のActive Directoryに統合しましょう、情報ストアはWeb Storage Systemに任せましょう。Exchangeがすべてを持つというのはやめましょう、となった。これが実は一番大きい変更です。すると、拡張性の面で、プロトコルサービスやストレージ、認証などを分けて構築できる。スケーラビリティが上がる。そうしたところを見てほしいのです。そうした基盤の上で、サービスとしてメッセージングやカンファレンスやインスタントメッセージが動く。基盤がないと、そういうサービスはない、というのを知ってほしい。

 で、今後もこうしたサービスが追加されるか、というと、されるだろうと(笑)。これはもう正直、切りがないと思います。

変化に対応する、という意味での機能拡張は、これからもやっていくでしょう。(斎藤)

斎藤 難しいですね。(機能が)いくところまでいったか、という言い方が難しくて。それに、ある製品やジャンルが「いくところまでいってしまう」という表現は、そのジャンルや製品に先がないような気がして、避けたい気もします。とはいえ、ドミノはもう非常に歴史のある製品で、1989年に登場していますのでもう11年。製品としては成熟してきたといえるでしょう。この11年間でグループウェアに対してはさまざまな環境の変化、特にインターネットの登場が大きいのですが、それにユーザーニーズの変化もありました。そういう変化に対応する、という意味での機能拡張はこれまでやってきたことですし、これからもやっていくでしょう。

 でもドミノで一番基本に置いているのは、文書データベース、(あるいは)オブジェクトストアという考え方です。ノーツは「NSF」(Notes Storage Facility)というファイルフォーマットを持っていますが、これはHTMLやXMLと非常に親和性が高い。そういった部分を土台にしているという点で、普遍的なものはすでにかなりできあがっていると思います。今後、ドミノとは違う製品、先日ベルリンで発表したK-Stationや、Raven(*)と呼ばれるようなナレッジマネジメント系のさまざまな製品が出てきます。しかし、そういったものが出てきたとしても、(その裏で使われている)ドミノのNSF、オブジェクトストアというのは変わらない。その上でさまざまなサービスをつなげたい。

 例えばインスタントメッセージもそうです。ロータスの場合はインスタントメッセージは「セイムタイム」というもので、ドミノとは別の製品になっていますが、当然ドミノとコラボレーションできますし、K-Stationとも完全にインテグレーションされますし、まだ日本では未発表ですが、「QuickPlace」というものがありまして、これは見かけはドミノと違いますが、内部ではドミノと同じテクノロジを使っています。

*K-StationやRaven ロータスが計画中のナレッジマネジメント製品。QuickPlaceは、日本では11月30日に発表された、部門や組織を超えてて自由にグループを作り、ディスカッションやカレンダリングの共有、チャットなどを可能にする製品。ドミノ上のアプリケーションではなく、単独の製品として提供される。

 ドミノが11年前に目指していた世界は徐々に現実となってきていますが、当時から使われてきたオブジェクトストアという考え方は生きているし、ある部分ではそれが主役として使われ、ある部分ではRavenのオブジェクトストアの1つとして使われます。ですから、 単純にこれまでの土台にただ単に機能をどんどん追加していく、というよりも、土台がいろんなところで形を買えたりしていく、そういう意味での進化があるのかな、と思います。

藤縄 いままで、メールによるコミュニケーションがベストと思われていますが、もしかしたら2年後には皆さんの机の上にカメラが置かれて、インターネット越しにビデオカンファレンスができるかもしれない。

 例えば、いまは最終的になにかを決断するときには、やはり顔と顔を突き合わせないとできないと思うんです。メールで行うのは、問題を提起して、それを議論して、議論するところまではいっても、決断するには顔と顔を突き合わせたコミュニケーションが必要。表情を見たりしながら決断する。われわれは、(コンピュータ上で)それができる基盤をつくる。そういったものがまだあると思います。

新野 そのアプローチは、ドミノとは違いそうですね。

斎藤 ロータスはコンピューティングの分野では常に開拓者であり実践者だと思っています。例えば「Lotus 1-2-3」、ノーツもそうでした。スプレッドシートやグループウェアという分野を開拓してきて、いまはRavenでナレッジマネジメントという新しい分野を開拓しています。まだアカデミックだったり、現実化するのが難しい分野であっても、それを形にして、使えるものにしていく、というのはロータスの強みです。そういうものを今後もやっていくのでしょう。

Index
座談会「3年後のグループウェアはどうなるのか」
1. ユーザーが今のグループウェアに求めるもの
ユーザーは今、グループウェアのどんな機能にエキサイトしているのか。その答えは、モバイルとサーバーコンソリデーションのようだ
  2. 機能競争には理由がある
グループウェアのバージョンアップは、いつも追加機能にばかり目を奪われる。しかし、その裏で行われるアーキテクチャやスケーラビリティの変更も重要だという
  3. 3年後も、まだドミノやExchangeは存在するのか?
このままグループウェアがさらに巨大なアプリケーションになったとしたら、3年後にそれを利用してシステムを構築する、といったことがまだ続いているのだろうか


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