第5回 これからのPaaSの可能性を探る

@IT編集部
2011/11/9

元@IT編集人で、現在はブログメディアPublickeyを運営している新野淳一氏をパーソナリティとし、ゲストとともにIT業界の注目トピックを解き明かすUstream番組!!

 元@IT編集人で、ブログメディア「PublicKey」を主宰する新野淳一氏が、業界のキーパーソンとともにIT業界の注目トピックを解き明かすUstream番組、「新野淳一の@IT Technology Key Point」。

 第5回のテーマは「PaaSで実現するビジネス変革」。モディファイの代表取締役社長兼CEO、小川浩氏をゲストにお招きし、クラウドと、その上で展開されるPaaSのメリットについて語っていただきました。

 詳細はぜひ、以下のビデオアーカイブをご覧ください。


Video streaming by Ustream

 キーポイント1「クラウドに対する企業の期待とは?」

 企業にとってクラウドを利用する意味はどこにあるのか。自らクラウド基盤を活用してサービスを開発、提供している小川氏に、実際のところを聞いてみました。

小川:現在われわれの業務は、ほぼ100%クラウドで行っています。社内向けサービスにはGoogleのサービスを使っていますし、われわれ自身がSaaS的なサービスを提供する基盤としてAmazon EC2を使っています。外向けも中向けも、100%クラウドの環境です。

新野:その方がビジネスの立ち上げが早かったり、よりよいサービスが提供できるというメリットがあるのですね?

小川:はい。もともとは自社でサーバを持ってサービスを提供していましたが、3〜4年くらい前に全面的にクラウドに移行しました。

新野:モディファイでは例えば、アイティメディアの「ONETOPI」のプラットフォームも提供なさっていますね。

小川:他にもYahoo!ショッピング向けに、ストアがFacebookやTwitterを安全に使っていただくためのソーシャルコマースプラットフォーム「SM3」も提供しています。モディファイという企業がIaaSやPaaSを使う一方で、SaaSというレイヤを提供するという形です。

新野:いままでは高いお金を出してサーバを借りないと大規模な開発ができなかったのが、クラウド、特にIaaSの登場によって、課金制ですぐに借りることができ、しかも大規模な展開ができるようになりました。これがやっぱりクラウドのよさですよね。

 キーポイント2「IaaS、PaaS、SaaSの違いとは」

 クラウドコンピューティングというくくりの中でしばしば登場する、IaaSやPaaS、SaaSといった単語。これらはそれぞれどういったものなのか、利用者兼サービス提供者の立場から解説していただきます。

新野:いまの会話の中で、IaaSPaaSSaaSという3つのキーワードが出てきました。それぞれどんなものか整理してみたいと思います。まず、IaaS、それに最近はあまり言わなくなりましたが「HaaS」というものがありますよね。

小川:正直、ミドルウェアやOSといったものを環境として用意するのかしないのか、ということくらいで、HaaSとIaaSにはほとんど差がないと思います。

 例えば先ほど、Amazon EC2をPaaSと表現しましたが、どちらかというとIaaSに近いかもしれません。EC2を使っていても、監視などは他の会社に任せているんです。これに対し、PaaSといった場合はそこまで全部含めている。IaaSは、ハードウェアやネットワークといった基盤環境はあるけれど、それ以上のことは自分たちでやれ、という世界かなと思います。

新野:Amazon EC2では、とにかくクレジットカードさえあれば、ネットワークの向こう側にぽんっとマシンやストレージが借りられますよね。

小川:とはいえCPU当たりの課金になるので、台数は意識しますね。仮想だけれど、常に代金とリンクしていますから。ただし、いらなくなればすぐに返すというような自由度があることが大きいと思います。

新野:物理的にマシンを買ってしまうと、「このビジネスは調子が悪くなったから返そう」ってのができませんね。でもクラウドだったら、とりあえず借りて、規模に合わせて撤退もしやすい。

 で、そのIaaSの上にPaaSというものがあります。IaaSの場合、その上のOSとミドルウェア、例えばデータベースとかPHP、JavaとかPerlとかの言語のインストールは自分たちでやらなくてはいけません。そういったデータベースやミドルウェアまで提供してくれるのがPaaSですね。

小川:うちはネットベンチャーといっても、コンシューマー向けではなくビジネス向けですので、堅牢性を重視しています。そこで、われわれはJavaを使って構築しています。

新野:小川さんの会社では、IaaSの上に、自ら言語のスタックまで構築していますが、一般的なPaaSの場合、例えばよく知られた「Force.com」ではデータベースもコミですし、Apexコードという言語も使えます。それからマイクロソフトの「Windows Azure」、これもPaaSで、SQL Azureというデータベースと.NETという言語が使える。それからグーグルの「Google App Engine」もよく知られたPaaSですけれど、これはBigtableという独自のNoSQLデータベースと、PythonとJavaが使える。こういう風に、だいたいデータベースとミドルウェアがセットになっています。

 その上にあるのがSaaSですね。これはどんなものか、あらためて説明していただけませんか?

小川:拡張性という意味では、SaaSの中にもPaaSに限りなく近いレイヤのものがあると思いますが、基本的にはアプリケーションを従量制で使えることが特徴です。あとはカスタマイズが効くことですね。いままでのASPでは、例えばグループウェアでも、ユーザーが意識せずに自動的にバージョンアップしていくわけではありませんでした。それがSaaSの場合、われわれがアップグレードすると、すべてのお客さまで一様にバージョンが上がり、かつ、ニーズによってはお客さま個別のカスタマイズができます。非常に拡張性の高い環境の提供の仕方だと思います。

新野:やっぱりSaaSのメリットって、そういうところにありますね。パッケージソフトは、バージョンアップもパッチを当てるのも自分でやらなくちゃいけませんし、バージョンアップの料金も必要です。ところがSaaSは、Webブラウザで使うのが普通で、サービス提供者がバージョンアップしてくれれば、すぐに最新のものを使える。

小川:最近は、スマートフォンとソーシャルメディアが非常に伸びていて、インターネットそのものが、モビリティとソーシャルという2つの要素を兼ね備えないとダメなんですね。このうちスマートフォンについては、いまはアプリケーションをインストールしている場合が多いのですが、やがては全部、HTML5のようなものでWeb化し、SaaSですべての環境を使えるようになると見ています。モディファイも提供するものはすべて、Web上で、Webアプリケーションとして提供しています。

新野:僕は「カスタマイズ」というテーマに注目しています。SaaSにカスタマイズを加えていくと、PaaSに近付きますよね。やはりSaaSとPaaS、それにIaaSの境界線があいまいになってきていますよね。

小川:SaaSそのものがプラットフォームになっていくでしょう。ブラックボックス化しつつ、簡易なAPIが構築されて、どんどんレイヤが上がっていく、そういう風に変化し、SaaSとPaaSの違いがものすごく薄くなっていく、そんな感じがしますよね。

 キーポイント3「PaaSに対する今後の期待とは?」

 続いて話はPaaSにフォーカス。IaaSとの境界線があいまいになる中、これからのPaaSに求められる要素とは何でしょうか。

新野:SaaSは比較的入り口が広いように思いますが、そこから「入れてみたけれどもっとカスタマイズしたい」とか「大規模に展開したい」という流れで、PaaSへの変化がありますよね。

小川:われわれもそうですけれど、最初はSaaSで十分なんです。けれど、やがてありとあらゆる企業が、自分たちの情報やサービスをインターネットを介して外に配信する時代になっていきます。そうすると、自分たち独自のサービスの基盤が必要になるので、その開発の基盤として次はPaaSを選ぶ、という形になってくると思っています。

新野:なるほど。そうすると、クラウドを活用するには、まずモディファイのような開発会社がIaaSを使って効率のよいシステムを作る、あるいはベンチャー企業が入り口としてSaaSを選ぶ。だけれど徐々に、システムインテグレータや規模の大きい会社が、ある程度用意された環境をもっとカスタマイズしたい、という理由でPaaSに注目が集まる、そういうシナリオが考えられると思います。そこでは、どんなPaaSが求められると思われますか?

小川:IaaSで作り込みをしていくには、けっこうノウハウがいるんです。その貯めたノウハウを無駄にしたくないので、どうしても移行しきれない。もっと安くて、もっと簡単で、もっと堅牢なものがあるんじゃないかな? ということは常に経営課題として考えていました。けれど、ノウハウをすべて捨てて切り替えるということの面倒くささが前に来てきまいます。ですから、簡単に移植できて、しかも貯めたノウハウをブラックボックス化して、簡単に移行できるサービスが出てくるとしたら、ぜひ使っていきたい。

新野:いまのお話のポイントの1つ目は、堅牢性についてですね。IaaSを生で使っていると、故障したとき、自分で対応しないといいけません。でも、それをイチから作るのは大変ですから、誰かがそれを用意してくれて、自分はその上でプログラミングできるような環境があると非常にうれしいということですよね。

 確か4月に、Amazon EC2の障害が起きたときに、その上でRuby on RailsのPaaSを提供しているHerokuが、「これからは、障害が起こることを前提に、自分たちは堅牢なプラットフォームにするよ」と宣言していました。僕はこれを聞いて、PaaSのミッションが1つ加わったなという気がしました。インフラレベルの障害をPaaSのレベルでフェイルオーバーして覆い隠してしまう、それはやっぱりプラットフォームの大事な部分ですよね。

【関連記事】
Amazonクラウドの大規模障害を経て、これからは「データセンターはいつか落ちる」ことがサービス設計の前提となる(Publickey)
http://www.publickey1.jp/blog/11/amazon_10.html

 2つ目は移行の問題です。サービスを提供する側としては、特定のプラットフォームに縛られたくない、クラウドも移行したい。それから、いま社内で業務システムを動かしているお客さんは、もしかしたら社内とクラウドで連携した業務システムを作りたいかもしれない。そうすると、プライベートクラウドでも動くしパブリッククラウドでも動くし、できればそれをつなげたり、場合によっては移行する、こういうPaaSができるとうれしいわけですね。実際に、そういうサービスがあったら、小川さんのビジネスも変わっていきますか?

小川:そうですね。われわれも、EC2というクラウドに対するノウハウを貯めてはいますが、できればそこはPaaSという堅牢な環境に任せて、経営資源はできる限り自分たちのSaaSそのものの開発に振り分けたいですね。

新野:企業の情報システム部門の人たちも、似たようなことを考えていると思います。PaaSに移行して、データベースの面倒をプラットフォームの方で見てくれれば、自分たちは夜中に叩き起こされることなく、情報システム部門として企業に貢献できる仕事ができるかもしれない。

小川:例えばアップルは、OEMではなくODMといって、デザイン、設計まで全部をパートナーに任せ、自分たちは工場を持たず、コアなものだけにフォーカスしています。企業も同じように、例えばネットワークに関するノウハウなどは自分たちで貯める必要はないんだ、というように、徐々に変わっていくかなと思うんです。

新野:ただ、現実を見ると、まだそういうプラットフォームがないので、自分でIaaSの上に組み立てていかなくてはなりません。今後、そうしたPaaSが出てくることに期待したいですね。

(詳しくは動画をご覧ください)

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