第6回 クラウドを見据えたシステムの構築方法とは?

@IT編集部
2011/12/21

元@IT編集人で、現在はブログメディアPublickeyを運営している新野淳一氏をパーソナリティとし、ゲストとともにIT業界の注目トピックを解き明かすUstream番組!!

 元@IT編集人で、ブログメディア「PublicKey」を主宰する新野淳一氏が、業界のキーパーソンとともにIT業界の注目トピックを解き明かすUstream番組、「新野淳一の@IT Technology Key Point」。

 第6回のゲストは、ユニアデックスの仮想化エバンジェリスト“タカハシ”こと高橋優亮氏。仮想化システムに関する豊富なノウハウを持ち、セミナーやムービーサイトでもおなじみの高橋氏とともに、クラウドを見据えたシステム構築のあり方を、お話いただけるギリギリのところまで探っていきます。

【関連記事】
仮想化エバンジェリスト「タカハシ」氏にインタビュー。なぜSIerからエバンジェリストが誕生したのか?(Publickey)
http://www.publickey1.jp/blog/10/sier_1.html

 非常に盛り上がり、通常よりも収録時間が大幅に伸びたこの対談。現場の役に立つ話題が高密度に詰まっています。詳細はぜひ、以下のビデオアーカイブをご覧ください。



 キーポイント1「ハイパーバイザ、どれを選べばいいの?」

 VMware、Hyper-V、KVM、Xen、OracleVM……仮想化環境を構築するハイパーバイザにもいろいろありますが、いったいどれを選ぶべきなのか? 率直に伺います。

新野:まず、簡単に自己紹介をお願いします。

高橋:ユニアデックスという会社は、ひと言でいってしまうと、ITのアプリケーション開発以外のすべてをやる会社です。ラック選びからサーバの設定、ネットワークやストレージの構築、ワイヤリングに加え、その上に載るミドルウェア、データベースまでをカバーし、トラブルがあったときにはサポートを提供します。その中で、「お客様の環境ならばこういうのを選ぶとイイですよ」ということをベンダニュートラルに語るエバンジェリストをやっています。

新野:ベンダのエバンジェリストはけっこういますけれど、ベンダニュートラルなエバンジェリストって珍しいですよね。てことで今回は、ベンダからは聞けないお話を伺っていきたいと思います。

高橋:なるべく正直にいこうと思います(笑)。

新野:1つ目のキーポイントは、クラウドの基盤となる仮想化のシステムは、どういう製品を選んで作ればいいんだろうということです。仮想化の主役となるハイパーバイザには、VMware、Hyper-V、KVM、Xen、OracleVM……といろいろありますけれど、いったいどれを選べばいいんでしょう?

高橋:まずはvExpert 2011に選ばれたので、ちょっと「よいしょ」しておきますね。もちろんVMwareです!(笑)。

 実際VMwareは、初めて導入するハイパーバイザとしては、お客様からご指名いただいたり、われわれがお勧めするケースは比較的多いです。これには2つ理由があります。1つ目はやはり実績です。

新野:専業ベンダとして長いですし、枯れていると。

高橋:枯れているのもありますが、先進的な機能への取り組みにしても、一歩先を行っている感じがありますよね。われわれとしても、VMwareを勧めておけばとりあえず鉄板、というのはあります。ただVMwareにも泣き所があって……ここに並べられたハイパーバイザの中で一番高いんですよね。

新野:なるほど、価格という面ですね。

高橋:やっぱり一番高い。ただ非常にいいので、そこのトレードオフになります。

 Hyper-VやXenは、見かけの案件数は実は少ないんですよ。なぜ少ないかというと、Hyper-VやXenServerは、導入が大変簡単です。アプリケーション開発エンジニアやお客様の現場部門の担当者でも、「Hyper-Vロールにチェックを入れてOKを押す」といった具合で、30分もかからず簡単にインストールできてしまいます。つまり、われわれの知らないところでたくさん導入されているんです。売り上げベースの数以上に、Hyper-VやXenを使っている潜在ユーザーがたくさんいるなと感じています。

新野:例えばXenでトラブったときに「じゃあVMware入れるといいですよ」なんていうことはあるんですか?

高橋:ハイパーバイザにはそれぞれ特色があります。例えば、特定のハードウェア上で性能を発揮するとか、特定のアプリケーションが得意だとか不得意だとか。あるいはみんな得意にしようとしている分野でも、あるハイパーバイザはちょっと一歩先を行っているとか、もう少しとか、そういった格差があったりします。

新野:このへんはベンダさんからは聞けないお話ですね。

高橋:そういうところについて、われわれでは、お客様が要望しているアプリケーションのプロファイルを分析します。例えばストレージならこういうパターンで、ネットワークはこうとか、CPUインテンシブだとかメモリか……とか。そういう特徴を分析した上で、「じゃあ、お客様のところならこのハイパーバイザでいいですよ」とか、「やっぱり変える方がいいですよね」という話をさせていただくケースもあります。

新野:ポイントの1つは、ハイパーバイザには得手不得手があるということですね。で、得手不得手が分からなければ、専門家の方に聞いたうえでやりましょうと。その得手不得手の中で、いえそうなところはありますか?

高橋:やっぱり満遍なく得意なのは、VMwareですね。サポートしているドライバの出来がいいこともありますし、アーキテクチャも時間をかけてこなれています。逆にVMwareがちょっと弱いのは、例えば中小企業で部門サーバを仮想化してタワー型のサーバに入れるなど、小さく始めたいときに、サーバ機がサポートリストに入っていないことが多いんですよ。そうすると、Hyper-VやXenなら動くよとか、KVMなら何でも動きますよという話になります。やっぱりお客様の規模感が重要になりますよね。

 キーポイント2「サーバ、ストレージ、ネットワークはどう選ぶ?」

 クラウド構築においては、ハイパーバイザだけでなく、物理的なサーバやデータを保存するストレージ、それらをつなぐネットワークの構成も大きなポイントになります。

新野:ハイパーバイザを決めると同時に、サーバも選ばなきゃいけませんよね。それに、仮想化を活用するには、ファイバチャネル(FC)を使った大きな共有ストレージを買いたくなる、というか買った方がいいような気がしてくるじゃないですか。これはどう選べばいいんですか?

高橋:サーバを選定する道は、大きく分けて2つあると思っています。1つは、ミッションクリティカルなアプリケーションや大規模なユーザーを抱えている場合。最初から仮想化する数が膨大になると分かっている場合は、やっぱり、適切なサイジングの上で、なるべく最新のハードウェアを買うべきです。

新野:ある程度の規模以上のお客さんならば、ちゃんと最新のサーバを買うほうがいいということですね。

高橋:ITって何でもそうですけれど、一定の規模以上に集約して、ある限界に達すると、それ以上性能が上がらなくなりますよね。その限界性能に近いところまで追い込んで価格性能比を上げようというプランを立てるとき、一番新しい、いいサーバは、そこで「ひと伸び」違うんです。最終的には、お客様にとってコストを低減できる可能性があります。ただこれは、お金持ち向け、ゴージャスなプランなので……。

新野:富豪戦略ですね?

高橋:はい、大富豪戦略でございます。で、もう1つは、これだけ仮想化が進んでいるにもかかわらず、中小のお客様では、まったく手が着いていないところはまだたくさんあります。

新野:普通にタワー型のサーバが事務所の隅とかに置いてあるとか……。

高橋:あるいはサーバルームに1Uサーバがいっぱい並んでめっちゃめちゃになっていて、「どうしようかなあ、仮想化するといいらしいんだけれど……」って思いながら、思いとどまっているお客様がいらっしゃる。そういうところはたいていIT予算がそんなにありませんし、ITはコアコンピタンスではない。

 そういうお客様に対しては逆に、ハードウェアコンパチビリティリストに載ってさえいれば、1Uサーバでいいですよとなります。メモリをそこそこ積んでいて、いまどきのプロセッサを積んでいるなら、何でもいいですよ。とりあえず入れて動かしてみて、スケールしたら、台数を増やしたりもうちょっと大きいのを買って、XenMotionなどでライブマイグレーションしてスケールアップできます、スモールスタート戦略が取れますよというところを打ち出します。

 大富豪の方には、きちんとサイジングして、最初からいいサーバを買っていただくのが絶対お得だと。で、そうでない方には、小さいところから始めましょう、と。

新野:なるほど。でも、お客さんが自分の目で選ぶのはなかなか難しいですよね。

高橋:けっこう難しいですね。例えばネットワークカードにもいろいろ種類があります。20種類ある中からどれか選べといわれても、プライスはいろいろ、機能もいろいろある中で、スペックチャートを見ても分からないことがありますよね。

 われわれはそういうことを評価して、「これはこういう環境に効く」とか、「これは互換性のためだけにある機能で、スペック上はよく見えても実運用上はあまりよろしくないよね」とかいうことを知っています。ご相談いただいてこの先のシナリオをお聞かせいただければ、「ではここまでのスケールを考えるべきで、だからこのCPU、このストレージですね」ということが言えるんですね。

新野:サーバについては分かりました。他にも、ネットワークやストレージについても、NFSがいいだの、iSCSIがいい、いやFCoEだの、いろいろあるじゃないですか。このあたりはどう考えればいいですか?

高橋:具体的にどう選ぶかとなるとすべてケースバイケースになっちゃうんですけれど、ざっくり、どれが売れているかという話をしますね。

 ネットワークは、このシリーズの第3回でブロケードの小宮さんが出られたときに、「10Gbpsはクラウド事業者さんやキャリアで」というお話がありました。でも意外と10Gは出てます。富豪に近いお客様で、かつハイパーバイザをネットワークストレージに統合されている方、iSCSIあるいはNFSを使ってイーサネットストレージに統合されているお客様は、10Gを使って収容する方がスタンダードになっています。

【関連記事】
いま、ネットワークに何が起きているのか
http://www.atmarkit.co.jp/fnetwork/tokusyuu/60keypoint/01.html

新野:サーバとストレージ間は情報をたくさんやりとりするので、やっぱり速いほうがいいということですよね?

高橋:そうですね。1Gと10Gのパフォーマンスの差って、10倍じゃないですよね。帯域は10倍ですけれど、ロスレスとかQoSがちゃんと効くといった特性があります。ストレージネットワークに帯域を割り当てて、その他のトラフィックを絞っておくことによって、ストレージがボトルネックにならないようにできるんですよね。10倍という以上に、「おお、10Gって意外と早いな」と感じます。

 もう1つ、10Gが必須になるケースがシンクライアントです。クライアント仮想化を導入する際に、エッジから集まってきたところ、束ねるところに10Gを入れるケースが多いです。4Gbps FCではもう回らなくて、10Gでイーサネットでストレージに接続するケースが多いですね。

新野:では次いで、ストレージについてですが、選ぶポイントってありますか?

高橋:ストレージで仮想化するときに人気があるのは、ぶっちゃけていうとNFSです。

新野:その理由は?

高橋:まず、NFSは一番枯れていますよね。対抗するテクノロジとしてFC-SANもあって、これをたくさんお持ちのお客さんは、FCをそのまま増設していきたいというプランを取られます。いろいろいわれてますけれど、FCも残っていくと思います。

新野:小宮さんもそうおっしゃっていました。

高橋:で、FCに投資される案件はある程度残る。一方、イーサネットやIP系のストレージというと、FCoE、iSCSI、NFS、CIFSとあります。NFSとCIFSは、いわゆるNASですよね。で、FCoEは、まだそんなに数はないですね。クラウド事業者さんなどで採用されている事例はありますし、実証環境での評価もやってらっしゃいますが、それ以外のところで、実環境でFCoEを生でガンガン使ってらっしゃるお客さんはやっぱり少ない。

 iSCSIは、出始めのころの悪印象がずっと尾を引いている感じで……。

新野:安定しないとか?

高橋:遅いとかですね。いまはけっこう動くんですけれど、それを引きずっている人たちがいるのと、あと、ブロックI/Oへのニーズがいまどれだけ残っているのかという話があります。

新野:この後の話題でも触れますが、最近はNFSでもちゃんとデータベースが動くようになっていますし、実用上問題あるアプリケーションはあまりないんでしょうか?

高橋:かなり減っていますね。NFSには、ファイル名ベースのアクセスによる自然なプロビジョニング特性もあります。容量を足しても、インパクトなく継続して利用できるというこの特性は、仮想化環境を作ったとき、後でいつでも増やせるという安心感につながります。柔軟に使えて枯れてる、と。

 あと、いざトラブルシュートしないといけなくなったときに、iSCSIやFC-SANだといろいろ持っていないとデータを救い出せないんですよね。NFSだと、いざというときのデータのリカバリがしやすいとか、中をのぞいて手が出せるっていうのが魅力になっているのが、サポートサービス側としてはあります。

 キーポイント3「データベースは仮想化してもいいの?」

新野:じゃ、3つ目のテーマに行きましょう。最後はアプリケーションです。ハイパーバイザを選んで、サーバもネットワークもストレージも何となく見えてきたけれど、その上で何でもかんでも走らせていいものなんでしょうか? グループウェアはどうでしょう、データベースはどうでしょう、メールサーバはどうでしょう?

高橋:一番キモといわれるデータベースの話ですが、データのサイズが増えれば、そのデータにアクセスするユーザーも自動的に増えて、I/Oも当然多くなります。広大なデータがあればI/Oもそれに比例して増えるので、データサイズによって、トラフィック量やトランザクション量の目安がある程度付くところがありますよね。

 で、ざっくりいうとですね、例えば100GBのオーダーのデータベースがあれば、たいてい大丈夫です。めっちくちゃミッションクリティカルなもので、めちゃくちゃ叩くということがなければ、どんな形で仮想化してもだいたい大丈夫です。

新野:そもそもデータベースって昔からミッションクリティカルなものでしたから、バックアップ/リカバリやフェイルオーバーの仕組みも、データベース自体が持っていますよね。それを仮想化するメリットって、どういうところにあるんですか?

高橋:仮想化するメリットを見いだせないお客様も、やっぱりいらっしゃいますよね。

 ただ、I/Oがそんなに多くなくて参照系中心だけれど、けっこう大事なデータを抱えていて、これをディザスタリカバリしたい……といったとき、同じ仕掛けをもう1つ用意するのはコスト的にけっこう辛いものがあります。そんなとき、仮想マシンにしておいて、仮想マシンイメージの形で遠隔データセンターにミラーしておけば、バックアップも比較的容易になるし、ほかの業務システムと同じ仕掛けでディザスタリカバリができる。統一オペレーションできる、運用を一元化できるというところにメリットを見いだされるお客さんもおられます。

 さらに付け加えていうと、数百GB程度のDBなら大丈夫と申し上げましたけれど、テラバイトを超えるデータベースの仮想化については、ちょっと慎重になったほうがいいかなと思います。ただ、DBについては、だいたいみんな慎重になりますよね。意外と言われたのが、Active DirectoryやExchange Server、大規模メールサーバ、こういったものを仮想化してもいいものかどうかということです。

新野:I/Oの多いもの、トランザクションの多いものですね。

高橋:I/Oヘビーなものは鬼門になりがちだったんですけれど、でも最近は仮想化するケースが増えてきていますね。特に、Active DirectoryやLDAPのようなものは参照系中心で、メモリを積んでいるとキャッシュが効くし、信頼性も担保しやすいし、停止しないでマイグレーションできるのでメンテナンスタイムを極小化できて、むしろサービスレベルが上がります。

新野:逆に、いまのお話に該当しないような普通の業務用アプリケーション、顧客管理や社内用イントラネットサーバ、ファイルサーバといったものは、そんなに気を付けなくても基本的には順調に動くと?

高橋:そうですね、そんなに神経質になる必要はなくなってきたなと感じています。ストレージも速くなっていますし、ネットワークカードも進歩が著しいので、以前と比べると仮想化したときのパフォーマンスペナルティは少なくなっていますね。

 ただ、確かに環境によっては3割、下手すると5割落ちてしまうケースもあります。一方で意外にスケールする場合もありますので、そこはやっぱり事前にちゃんと検証して、同じ規模のデータベースや似たようなアプリケーションでテストしてみてどうなのか、きちんと評価してみる必要があるかなと思います。もちろん、私どもではきちんと評価させていただきますので(笑)!

新野:以上、3つのポイントをお伺いしてきましたけれど、仮想化ってやっぱり便利で、しかも環境も整ってきていて、そろそろそんなに神経質になる必要はない。御社のようなSIerさんに相談すれば、何がコストパフォーマンスがよいかをおおむね評価してくれる、と。そういう理解でいいですか?

高橋:はい、そのとおりです。ぜひお任せください!

新野:今日はかなり現場に近い話をお伺いできたと思います。ありがとうございました。

(詳しくは動画をご覧ください)

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