実験 ディスク環境まるごとアップグレード[USB活用編]

3.GhostによるUSB接続の実用度


澤谷琢磨
2001/09/01

コマンドライン・パラメータが充実しているコピー実行プログラム

 さて、USBドライバを更新した起動フロッピーで2台のPCをブートすると、自動的にNorton Ghost 2001のコピー実行プログラム(GhostPE.exe)が立ち上がる。USB接続を含む PC-to-PCコピーの場合、接続された2台のPCを「Master(マスタ)」あるいは「Slave(スレーブ)」のどちらかにそれぞれ割り当てなければならない。バックアップ・イメージを作成する場合、コピー元PC(本稿ではノートPC)をマスタに、コピー先PCをスレーブに設定する。マスタ/スレーブの割り当ては、コピー実行プログラムのGUIから設定できる。

 Norton Ghost 2001の特徴は、上記のようなマスタ/スレーブの設定も含めて、コピー実行プログラムのコマンドライン・パラメータでも指定できることだ。付属の日本語マニュアルにはコマンドライン・パラメータの丁寧な解説も付属している。GUIからは指定できない機能も複数存在するため、Norton Ghost 2001の全機能を用いるには、コマンドライン・パラメータを用いて作業したほうがよい。また作業内容がはっきり決まっていれば、いちいちGUIで指定するより、コマンドライン・パラメータで設定を決め打ちとする方が、操作ミスを防げる。コピー実行プログラムのGUIは英語表示なので、日本語マニュアルを見ながらCUIのコマンドライン・パラメータを指定するほうが、GUIを操作するよりかえって楽かもしれない。

 下の画面のように、起動フロッピー作成時にコマンドラインを指定するチャンスがあるので、この機能を有効に活用したい。

Norton Ghostブート・ウィザードの[クライアントの種類]指定画面
この画面はNorton Ghost 2001の起動フロッピーを作成する途中に表示される。[Ghostクライアント]の選択といっても、Norton Ghost 2001には、GhostPE.exe以外のクライアントは付属しない。パラメータの欄はデフォルトでは空欄であり、ユーザーが必要に応じて指定する。指定したパラメータは起動フロッピーのAutoexec.batファイルに、GhostPE.exeのオプションとして書き込まれる。
  Norton Ghost 2001のコピー実行プログラムであるGhostPE.exeが存在するフォルダを指定する。
  GhostPE.exe実行時のパラメータを設定する欄。この例では、

・指定方法クローンの作成(-clone)
・パーティションからイメージ・ファイルを作成する(mode=pdump)
・コピー元は1台目のハードディスクの先頭パーティション(src=1:1)
・コピー先はコピー先(スレーブ)PCのCドライブ(dst=c:\backup\win2k.gho)
・IDEのDMA転送を有効にする(-ffi)
・圧縮はHigh(-z2)
・USB転送のマスタ(コピー元)として動作する(-usbm)

と指定している。これは一例で、コピー先(スレーブ)側は-ffiと-usbs(USB転送のスレーブとして動作する)のみ指定すればよい。

 上記のようにパラメータをコマンドラインで指定するか、あるいはGUIから手動で設定したら、あとはコピーを開始すれば、バックアップ・イメージがコピー先PC(スレーブ側)に作成される。その後、ノートPCのハードディスクを交換して、今度はスレーブ側からバックアップ・イメージの内容をノートPCに復元すればよい。この場合、バックアップ時と復元時で各PCのマスタ/スレーブの割り当ては変わらない。

コピー実行プログラムのGUIは英語表示

 Norton Ghost 2001は、Windows環境のブート・ウィザードなどは日本語化されているものの、コピー実行プログラムのGUIは英語表示のままで、まったく日本語化されていない。このせいで操作上障害となるのは、イメージ・ファイルを書き込むパーティションのボリューム・ラベルが日本語だと文字化けして表示される点だ(ドライブ・レターも同時に表示されるので、パーティション選択を行うことはできる)。操作系はともかく、エラー表示もすべて英語表記なのはいただけない。特にNorton Ghost 2001はSOHO・個人向け製品として販売されている製品なので、日本語へのローカライズを望みたい(マニュアルは日本語化されたものが添付されているが)。

Norton Ghost 2001のコピー実行プログラム(GhostPE.exe)の動作画面
この画面はコピー中のプログレス・メーター表示をキャプチャしたものだ。GUIの表示はこの画面に限らず、すべて英語表記のままだ。何かエラーが発生した場合も全て英語で表示される。ローカライズの問題以外では、色分けを多用するなど、もう少し直感的に使えるような配慮がほしい。プログレス・メーターに限らず、GhostのGUI部品は灰色と青色のみで構成されているが、これが分かりにくさの一因となっているように見受けられる。

USB接続は実用的な速度でコピーできるか?

 USBによるPC-to-PCコピー機能が動作したところで、次はそのパフォーマンスを調べてみよう。現在主流のUSB 1.1では転送速度の理論値が12Mbits/sに留まる。また、使用したUSBリンク・ケーブルのスペックには、最大データ転送速度は6Mbits/sと記されていた。この速度は、Norton Ghost 2001がサポートするデバイスの中でも遅いほうだ。そこで、USBリンク・ケーブルによるコピー作業にかかる時間が実用的なレベルに達するのか、Norton Ghost 2001のサポートする各方式のコピー速度をそれぞれ測定してみた。テスト方法としては、7Gbytesのパーティションに含まれる総容量1038Mbytesのファイル群をコピーしてバックアップ・イメージを作成するのにかかった時間を計測している。またファイルの圧縮オプションは「High」とした。

 テスト結果は以下の表のとおりだ(平均転送速度は圧縮前のファイル総容量をベースに算出している)。

コピー方式 コピーに要した時間 平均転送速度
USB 33分26秒 0.52Mbytes/s
100BASE-TX 10分45秒 1.61Mbytes/s
ハードディスク(ローカル接続) 11分54秒 1.45Mbytes/s
CD-R(ローカル接続) 20分5秒 0.86Mbytes/s
Norton Ghost 2001の各コピー方式における転送速度の測定結果
USBによるコピーには、100BASE-TXの約3倍の時間がかかっていることが分かる。
 
  コピー元PC コピー先PC
プロセッサ Pentium II-300MHz Celeron-533MHz
USBホスト・コントローラ Intel 440BX(PIIX4E)内蔵 Intel 810-DC100(ICH1)内蔵
メモリ容量 128Mbytes 128Mbytes
CD-R/RWドライブ リコー MP-9120A(ATAPI接続、最大12倍速CD-R書き込み)
テスト用PCの主なハードウェア仕様
コピー元PCには、現役のPCの中ではかなりロー・スペックなPentium II-300MHz搭載PCを選んでいる。

 テスト結果を見ると、やはりUSBは最も遅く、100BASE-TXの1/3という転送速度にとどまっていることが分かる。しかし見方を変えれば、USBでは正味1Gbytesのデータを30分で転送できるわけで、ノートPCのディスク交換という目的には十分実用になるといっていいだろう。逆に、ひんぱんにバックアップする用途なら、100BASE-TXやハードディスク(ローカル接続)の使用を検討すべきだろう。

 試みにUSBリンク・ケーブルを用いた場合のワイヤ・スピード(信号線上の転送レート)を算出すると0.28Mbytes/sとなった。Justy UTU-01GTRの最大データ転送速度は公称6Mbits/s(=0.75Mbytes/s)だが、その約1/3強の速度が出ていることになる。I/Oの利用効率がよくないDOS上で動作していることを考えると、これはそう悪くない成績だ。

充実したコマンドライン・オプションは上級ユーザー指向

 Norton Ghost 2001は日本語化に難があるものの、ピア・ツー・ピアのクローニング機能、特に手軽なUSB接続をサポートしている点は高く評価される。多機能な割にシンプルなコピー実行プログラムのGUIは、とっつきにくさを感じさせたが、コマンドライン・パラメータは充実している。ある程度のスキルを備えたユーザーには、コマンドラインからすべての動作を制御できることが魅力となるはずだ。

 あとは、サポート面での不安を解消するために、シマンテックにはUSBドライバの公式なアップデートとそのサポート情報などを日本法人のWebサイトに掲載してほしい。USB接続によるバックアップのみを目的とするならば、シマンテック日本法人から公式なアップデートが提供されるのを待つべきかもしれない。記事の終わり

 

 INDEX
  [実験]ディスク環境まるごとアップグレード[USB活用編]
    1.USB接続の準備
    2.DOS用USBドライバのトラブル解消法
  3.GhostによるUSB接続の実用度
 
「PC Insiderの実験」


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