実験 

新世代ブロードバンド・ルータの性能を検証する

1.ブロードバンド・ルータに「性能」があるワケ

デジタルアドバンテージ 島田広道
2002/01/31

 性能測定に入る前に、ブロードバンド・ルータの「性能」とは何かを明らかにしておこう。

 ルータの主要な役割は、複数のネットワークを接続し、相互にパケットをやりとりできるようにすることだ。ブロードバンド・ルータならば、たいていはオフィスや家庭内のLANという1つのネットワークを、ISPが提供するインターネット接続回線という別のネットワークと接続し、IPパケットを相互にやり取りする働きをする。2つのネットワークの橋渡しになるわけだ。

 「橋渡し」というと、イーサネット・ハブも似たような役割を担っており、混同しそうだ。しかし、ルータ(正確にはIPルータ)がIP層でパケットの「橋渡し」を行うのに対して、スイッチング・ハブを含むイーサネット・ハブはIP層より下の階層(データリンク層あるいは物理層)で「橋渡し」を行う。ここで重要なのは、IP層での「橋渡し」の方が、より複雑な処理を要求されるという点だ。

 下の図は、最近のブロードバンド・ルータの内部構成をブロック図にしたものだ。ルータの中には、パケットのやり取りを制御する1種のプロセッサ(図中ではネットワーク・プロセッサ)が存在し、LAN側とWAN側それぞれから受け取ったパケットに対して、さまざまな処理を行う。具体的には、以下のような処理がある(各処理の詳細は「特集:ブロードバンド・ルータ徹底攻略ガイド」を参照していただきたい」。

  • パケット・フィルタリング
     あらかじめ設定されている規則に従って、特定のパターン(IPアドレスやポート番号など)にマッチするIPパケットだけを破棄したり、通過させたりする
  • アドレス/ポート変換
     NATIPマスカレードの実現のため、IPパケットに含まれるIPアドレスやポート番号フィールドなどを書き換えてから配送する。またこの機能のために、アドレス/ポートの変換テーブルに対してエントリの新規作成や更新、削除といった操作が必要となる。
  • ルーティング
     LAN側から来たIPパケットのうち、送信先IPアドレスがLAN側に存在するサブネットを指していれば再びLAN側へ戻し、そうでなければWAN側のデフォルト・ゲートウェイへ配送するといった具合に、あらかじめ決められたルーティング(経路制御)規則に基づいて、IPパケットを適切なインターフェイスへと送信する
  • ポート・フォワーディング(転送)
     あらかじめ設定してある規則に従って、WAN側から特定のLAN側IPアドレスに対してIPパケットを転送する。同時にアドレス/ポートの変換も行われる。

 さらに高機能なルータになると、VPNのサポートや暗号化通信、あるいは無線LANの制御といった処理も加わる。また直接IPパケットの配送には関係ないが、ログの記録やDHCPサーバ・サービスなど、そのほかの仕事もプロセッサは請け負うことになる。

ブロードバンド・ルータの内部構成
4ポートのハブを内蔵するブロードバンド・ルータの内部構成をブロック図にした。中核となるのは、真ん中の「ネットワーク・プロセッサ」である(イーサネット・インターフェイス(I/F)は、プロセッサに外付けされている場合もある)。このプロセッサはメモリに格納されたプログラムに従い、IPパケットに各種処理を施す。プロセッサの処理性能が、LANとWANを行き交うIPパケットの速度に大きな影響を及ぼす。

 一般的なブロードバンド・ルータでは、IPパケットに関する上述の処理の多くを、ネットワーク・プロセッサによってソフトウェア的に処理している。つまり、フィルタリングやアドレス/ポート変換などを実行するためのプログラムが上図のメモリ・チップ内に格納されていて、ネットワーク・プロセッサがそれを読み出して実行することにより、各処理が実行されてIPパケットが配送される。

 そのため、ほかの条件が同じであるならば、ネットワーク・プロセッサの処理能力と単位時間あたりに処理できるIPパケットの総数(IPパケットの処理におけるスループット)は比例する。また、たとえネットワーク・プロセッサの処理能力が高くても、処理すべきことが多かったり各処理プログラムの出来が悪くて実行に時間がかかったりすると、やはりスループットは下がってしまう。まとめると、ネットワーク・プロセッサの性能やメモリ・チップのアクセス速度、ソフトウェアの出来、処理すべき仕事量などの要素により、ブロードバンド・ルータのスループットは左右されるわけだ。これがブロードバンド・ルータの「性能」の正体である。

 いうまでもなくルータ内部のスループットは、LANとWANそれぞれのネットワークのうち、遅い方(たいていはWAN側だろう)の最大転送レートを上回っていることが望ましい。例えば8Mbits/sのADSL接続サービスを利用する場合、ルータ内部のスループットが常に、そして十分に8Mbits/sを上回っていれば、ルータはボトルネックにならずに済む。逆にルータのスループットが8Mbits/sを下回ると、ルータがボトルネックとなり、インターネットとの通信速度は8Mbits/sより下がってしまうことになる。せっかくブロードバンド・インターネット接続を契約しても、ブロードバンド・ルータの性能によっては、回線側の性能を100%活かせない場合がある、ということだ。

  関連記事(PC Insider内) 
ネットワーク・デバイス教科書:第1回 広帯域インターネット接続を便利に使う「ブロードバンド・ルータ」
ネットワーク・デバイス教科書:第12回 ブロードバンド・ルータの基本設定
ブロードバンド・ルータ徹底攻略ガイド
ビギナー管理者のためのブロードバンド・ルータ・セキュリティ講座
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  関連リンク 
BAR SW-4P Proの製品情報ページ
コレガ製BAR SW-4P Proの動作実績情報
ゼロ円でできるブロードバンド・ルータ 2
 1FD Linuxで作る高機能ルータ [インストール編]
ゼロ円でできるブロードバンド・ルータ 2
 1FD Linuxで作る高機能ルータ [設定・運用編]


 INDEX
  [実験]新世代ブロードバンド・ルータの性能を検証する
  1. ブロードバンド・ルータに「性能」があるワケ
    2. BAR SW-4P Proの中身と性能の関連性
    3. 新旧ルータの性能を比較する方法
    4. 従来製品より桁違いに速いが……
 
「PC Insiderの実験」

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