連載

究極ホーム・ネットワークへの道
−実例に学ぶホーム・ネットワーク・デザイン−

第1回 かくしてホーム・ネットワーク構築が始まった

渡邉利和
2001/02/17

 今月から、筆者が自宅につくっているネットワーク環境について、構築過程を含めて紹介していく。基本的には一般家庭の内部に構築された環境にすぎず、ユーザー数も最小に近いのだが、ノードの台数が多いのと、住宅特有の制約条件があるために多少複雑な構成となっている。この環境がほかの人の参考になるかどうかは定かではないが、お楽しみいただければ幸いである。

遍在するネットワーク

 この10年でPCを取り巻く環境は大きく変わった。PCそのものの低価格化も進行したが、何よりネットワークが特別な存在ではなくなったことが大きいと思う。ある調査によれば、PCの利用目的の第1位は、以前の「ワープロ」を大きく引き離して「インターネット」になっているという。単にインターネットへのアクセス環境があるというだけにとどまらず、家庭内にLANが構築されているのもいまでは珍しくもない話だ。

 筆者が初めてイーサネットの存在を知ったのは、10年以上前になる。入社した会社が社内LANを構築していたために、いや応なくその使い方を勉強することになった。ただし、当時多くの社員はシリアル・ポート経由で「コミュニケーション・サーバ」と呼ばれるデバイスに接続し、コミュニケーション・サーバから先だけがイーサネット接続であった。PCとコミュニケーション・サーバの間はRS-232Cのシリアル回線を使ったテキスト・ベースのコンソール接続であり、TCP/IP接続ではなかった。そのため、この環境でできることといえばUNIXマシンにコンソール接続することだけであった。ネットワーク・アプリケーションはすべてログイン先のUNIXマシン上で実行していたのである。筆者もこの環境で初めてUNIXに触れ、ネットワークというものを体験した。そして、入社して半年ほどたってから、自分のPCにイーサネット・インターフェイスを装着してTCP/IP接続できるようになったのだが、それが許された理由は「ようやくイーサネット・インターフェイスが20万円以下で購入できるようになり、社内の購入申請の手続きが楽になったから」であった。

■イーサネットは身近な存在に

 いまでは2000円も出せば立派なイーサネット・カードが購入できることを考えると、20万円という価格はべらぼうに高い気がするが、当時は20万円でも安かったのだ。そのころはMS-DOSの全盛期。いまと違って、TCP/IPはOSの標準機能ではなかった。当時、PC用のイーサネット・インターフェイス(NEC PC-9800シリーズ用のCバス・カードだったが)を購入するということは、MS-DOS用のTCP/IPプロトコル・スタックやtelnet、ftpといった代表的なアプリケーション・ソフトウェアも同時に購入することを意味していた(カード自体もプロセッサを搭載するなど、かなり高級な作りになっていたが)。20万円という価格にはイーサネット・カード本体だけではなく、これらのソフトウェアも含まれていたのだが、とても高価なものであったことは間違いない。

 現在、10M/100Mbits/s対応のPCIイーサネット・カードは、量販店の最安値を探せば1000円でお釣りがくる程度の価格で買える。筆者が初めて自宅にイーサネットを導入したころは、まだイーサネット・カードも数万円という価格であり、自宅でイーサネットを使っているというと、知っている人は感心してくれてちょっとした虚栄心を満足させられたものだ。いまどきはもちろん、「自宅でイーサネットを使ってます」なんて話を自慢げにしようものならバカにされることは必定であり、その意味では面白くなくなってしまった。とはいえ、ネットワークの普及によって急速に進行したイーサネット機器の低価格化の恩恵は筆者も十分に享受しているので、その点では感謝すべきことではある。

現在の筆者宅では

 現在、筆者は妻と2歳になる娘との3人暮らしで、東京都内某所のマンション在住である。会社員時代は単なる物好きとしてPCを利用していたが、退職後フリーライターを始めた結果、自宅のPC環境は収入を得るための重要な道具となった。いわゆるSOHOといってもよいのかもしれない(Home Officeではあるかもしれないが、実態はオフィスとはほど遠く、単なる汚い部屋だったりするのだが……)。

 ともあれ、こうした文章書きをするにはそれなりにPCを使う必要がある。OSを入れ替えてテストを行うなどは日常茶飯事であり、そのたびに原稿執筆の作業環境(執筆環境)が破壊されてはたまらないので、「テスト用PC」というものが用意される。当然、テスト環境で画面キャプチャなどを取れば、それを執筆環境にコピーする必要も生じる。かくして、ネットワークの整備は「業務上必要な作業」となったのである。そのためもあり、それまでは自室内にあるPCを適当に接続していただけのネットワーク環境も、それなりにグレードアップする必要が生じた。

筆者の仕事部屋に構築したPC環境
ユーザーが1人である割にPCの数が多いが、これは各種実験を行うため。当然、これらのPC間でのデータ交換が必要になることからイーサネットが敷かれることになる。

■インターネット・マンションのメリット/デメリット

 ホーム・ネットワーク構築のポイントになったのは、インターネット・アクセス環境である。現在住んでいるマンションには2000年3月に入居したのだが、このマンションではOCNエコノミーを導入し、全戸に10BASE-Tのポートを設置して、単にケーブルを接続するだけでインターネットにアクセスできる環境を構築している。いわゆる「インターネット・マンション」というカテゴリに入るのかもしれない。しかし、ありがちなことだがこの10BASE-Tポートは、リビング・ダイニング・ルーム(LD)に設置されており、筆者が自室から利用するには少々不便なのだ。「家族のだんらんの場であるリビングにインターネットへのポートが用意され、休日には家族そろってWebブラウズ」なんて広告写真が頭をよぎるが、実態はそんな美しいものではない。ダイレクト・メールに近いものも含めれば、2〜3日で数百通の電子メールが届くこともあるし、仕事がら徹夜で一晩中Webで情報を探していることもある。リビングに設置したしゃれたPCではとうてい仕事にならないのである。

筆者の自宅マンションの間取りと電話の配線
赤線で表した電話線は入居当初から壁の中に敷設済みの配線である。リビング・ダイニング・ルームにイーサネット(10BASE-T)のポートが出ているため、筆者の仕事部屋まで何らかの方法でイーサネットを敷く必要がある。その方法をめぐって悪戦苦闘が始まる。

 そんなこともあって、自室の作業環境とリビングの10BASE-Tポートを接続するところから、筆者宅のネットワーク環境の整備は本格化したのである。

すべては設計から始まる

 筆者は会社員時代、部署内のネットワークを管理する「ネットワーク・アドミニストレータ」であった。というとなにやら自慢げだが、実態はそう大したものでもない。かつての勤務先では社内システムのための専門部署、流行の言葉では「IT担当部門」といったものが存在しており、全社的な環境設定はすべてそこで面倒を見てもらっていたのである。従って、筆者が担当していたのは所属部署内のサブネットの管理だけだった。とはいえ、小規模のネットワークを構築し、運用管理からユーザー教育までまとめて対処していたので、当然自宅のネットワーク構築においてもそこで得たノウハウを最大限投入することになる。いや、正確にいうと職場のネットワーク環境はしょせん会社のものなので、仕事に使えればそれ以上を追求する気もなかったのだが、自宅となると気合いの入り方のレベルが違ってくるというもの。

 さらに、突然会社を辞めてしまい、自由業という名の失業者になった以上、家族を敵に回すのは自殺行為である。筆者本来の性格としては、美観におよそ関心がなく、「散らかっている」ということに関して問題視することはまずない。しかし、これからはそうもいかず、少なくとも「廊下にケーブルを這わせるのは美観上好ましくない」旨を妻から指摘されれば、「我慢しろ」とは言えない弱い立場なのである。

 また、廊下にケーブルを敷設しないのは、自己防衛の意味もある。というのも、ネットワーク構築の時点で娘は1歳半であり、ちょうどどこでも歩き回っていたずらの限りを尽くし始めた時期であった。娘の手の届くところにケーブルを這わせておいたのでは、いずれ力の限り引っ張るのは明らかで、そうなった場合には

  • ケーブルの断線
  • コネクタの破壊
  • PCやハブなどが引きずり倒される

といったダメージを受けることになる。言い聞かせて予防することが可能な年齢ではないので、あらかじめ被害が生じないよう対策を講じておく必要があったわけだ。

■ホーム・ネットワークの選択肢

 こうした場合に利用可能な選択肢としては、いくつかのものが考えられる。

  • 本格的に配線工事を行ない、リビングと自室との間の壁内にイーサネット・ケーブルを埋設する
  • 日曜大工的に目立たない場所にケーブルを固定しておく
  • 無線接続を導入する
  • そのほか

 もちろん、それぞれの手段にはメリットとデメリットがあり、比較検討の結果最良の手段を選択することになる。この選択に関して考慮すべき条件は置かれた立場や家屋の構造、家族構成から世帯収入の多寡まで、さまざまな要素が絡み合うことになる。当然筆者もさまざまな角度から検討を重ね、たどり着いた結論が「そのほか」というヤツだ。これでは何のことか分からないだろうから、一応予告的に名前を挙げておくと、「HomePNAを利用する」という方式を採用したのである。

 最後に、結果として構築された自宅内のネットワーク環境の概略図を紹介しておこう。なぜこういう構成になったのか、この構成でネットワークを運用するために何をしたのか、といった詳細については、次回以降順次説明していきたい。記事の終わり

筆者のネットワーク環境の変遷
上の図が当初のネットワーク構成で、下の図は現在のものだ。なぜ、このようにネットワーク環境が変わってきたのかについては、連載の中で明らかにしていきたい。リビングと仕事部屋との間をHomePNAで接続することを決めてから、いろいろな苦闘が始まることになる。

   
     

「連載:究極ホーム・ネットワークへの道」

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