連載

究極ホーム・ネットワークへの道
−実例に学ぶホーム・ネットワーク・デザイン−

第5回 よりシンプルなネットワークを目指す

渡邉利和
2001/06/21

 前回までで、筆者が自宅に最初に構築したネットワーク環境の概要の紹介が終わった。ただし、最初に完成したネットワーク環境は、正直いってあまり満足のいくものではなかった。今回は、どのようなところに不満があり、どう変更したのかをご紹介しよう。

制約条件と現実的な対策

 筆者宅のネットワーク環境は、当然のことながら筆者固有の条件によって制約を受けている。人によっては、「もっと違うデザインにした方がよいのでは?」と感じたかもしれないが、紆余曲折のうえ、このような最終形にたどり着いている。まずは、筆者宅のネットワークのデザインを決定する要因となった前提条件を再度整理しておこう。

  • WAN接続は、マンション全体で共有するOCNエコノミー回線を利用
  • OCNへは、リビングに設置された10BASE-Tポートから接続する
  • 主要な利用場所は、リビングとは廊下とドアを隔てた自室
  • リビングでネットワークを利用するユーザー(妻)も存在する
  • 幼児がいるため、手の届くところにはネットワーク・ケーブルなどを配線したくない

 こうした条件に合致するネットワークとして、筆者はHomePNA 2.0を部屋間の接続に採用したわけだ。ただし、最大スループットが10Mbpsのネットワークですべての接続を賄うつもりはなかったので、最も台数が集まる自室内は100BASE-TXのスイッチング・ハブを中心に置いたネットワークとし、部屋間の接続のみをHomePNA 2.0で行う、という設計にした。

 自室と、WAN接続への出口となるリビングにあるポートがイーサネットで、その間をHomePNAで接続するという構成から、ルータ(実質はイーサネット−HomePNAブリッジ)が2台必要となり、それをリビングと自室に1台ずつ配置することになった。筆者宅のネットワークの構造が複雑化したのは、主としてこの点に原因がある。

これまでの運用上の問題点

 これまで連載で紹介してきたネットワークが完成したのは約1年前、2000年6月ごろである。それから約半年間はこの形態で運用を続けたのだが、その間に結構トラブルが生じていた。それは、「通信不能となる時間が多い」ということである。厳密な測定は行っていないのだが、感覚的には「1日の4分の1から2分の1程度の時間は通信不能」という感じだ。筆者が自分で利用するために構築したネットワークなので何とかなっているが、これが一般ユーザーをサポートするシステム管理者という立場であれば、猛烈な抗議を受けるのは間違いない。おおよそ「仕事に使える品質」というレベルに到達していない。

 トラブル解決のためには、まず何がトラブルの原因となっているのかを突き止める必要があるのだが、実のところこれが容易ではない。ネットワークの構造が複雑で関与するデバイスが多く、しかもそれぞれの信頼性が怪しいため、もう何がなんだかわけが分からなくなるというものだ。一応関連しそうな要素を挙げておくと、以下のハードウェアのトラブルが考えられる。

  • 自室のルータ(「mmx」)
  • リビングのルータ(「compaq」)
  • OCNアクセス・ルータ(マンション全体での共有リソース)
  • OCN回線
  • OCN上のDNS/メール・サーバ

 これは、トラブルの発生個所をハードウェア・レベルで列挙したので、この程度で済んでいるが、さらに細かく見ていくとキリがないほど、たくさんの要素が出てくる。

 例えば、自室とリビングに置いた2台のルータの場合、それぞれWindows 2000 ProfessionalをOSとして使い、10/100BASE-TX両対応のイーサネットとHomePNA 2.0の2枚のPCIカードを装備し、ルーティングを行っている。このマシンのトラブルとして考えられるのは、

  • HomePNAカードのハードウェア・トラブル
  • HomePNAカードのソフトウェア・トラブル(ドライバのハングアップ)
  • イーサネット・カードのハードウェア・トラブル
  • イーサネット・カードのソフトウェア・トラブル(ドライバのハングアップ)
  • OSの低レベル・ネットワーク・モジュールのハングアップ
  • ルーティング・サービスのハングアップ
  • そのほかのプロセスのハングアップによる処理性能低下
  • OS全体のハングアップ

などである。この状態で、通信不能が生じるたびに実際の原因がどれなのかを突き止めることは容易ではない。

ルータとして利用していた省スペース・デスクトップPC
かつてルータとして利用していた「compaq」。コンパクトなケースでなかなか良い機種だが、やはりそれなりの場所を取っていた。

 実際問題、上に挙げたトラブルの原因例は、おおよそどれも実際に起こったと筆者が考えているものばかりである。このうち、「確かに発生したことがある」という確信を持てないのは、「OCN回線のトラブル」と「ルータのネットワーク・カード(イーサネット/HomePNA)のハードウェア・トラブル」のみであり、ほかは少なくとも1度は発生している。ハードウェアの故障は、これまで交換を要するような事態は発生していないので、この点はとりあえず問題ないと思われるが、実際はソフトウェアの障害と区別がつかないような形で生じている可能性がある。インターフェイス・カードが応答しない(ほかのノードからのpingに応答しない)ことは数回経験しているが、これがハードウェアの問題なのかドライバの問題なのかは区別できていないのである。

 なお、この中で発生頻度が高いのはどれかというと、実のところトップが「OCN側のサーバのトラブル」、次が「リビングに置いたルータのトラブル」、そして「OCNアクセス・ルータのトラブル」という印象である。もちろん、厳密な検証を行ったわけではなく、症状を見て判断した結果である。発生頻度もそうだが、「自力で対処する術がない」という意味でOCN側に設置されたDNS/メール・サーバのトラブルが実のところ一番タチが悪い。この件に関しては、マンション内のほかのユーザーからも不満が相次いだことから、ついに今月(2001年6月)になってから「サーバをデータ・センターに移設し、より一層の信頼性強化を図る」旨の通知が管理会社から来たところである。

 正直言うと、これほど長期間放置したうえ、いまさら「データ・センターへの移設」ということは、これまでどういう体制でサーバ管理を行っていたのか、逆に呆れてしまうような状況だ。筆者は仕事柄インターネットへの依存度が高く、この状況に我慢し続けることは困難だったため、実は今年に入ってからは、自前で別途回線を確保してマンションに既設のOCN回線はほとんど使わなくなっており、いまさら改善されても関係ない、という状況にある。しかし、この工事の結果どの程度状況が改善されるかには興味があるので、工事終了後は一応チェックだけはしてみるつもりだ。とはいえ、このOCNサーバの不調も正直いうと「いまになってようやく認めた」という話である。不調にあえいでいた当時の筆者は、確信が持てなかったので、まずは自分のできるところから改善に取り組んだのだ。

さらなる「究極ホーム・ネットワーク」に向けた改善方針

 システムの信頼性を向上させる方法というのは、そう難しいことではない。方針としてはごく簡単で、「十分に信頼性の高いコンポーネントを使い、極力単純な構成にする」ということ。もちろん、実現するのは口で言うほど容易なことではないが、目指す方向性は「シンプル」だ。

 筆者宅のネットワークでは、2台のルータが存在し、しかもそれぞれがWindows 2000 Professionalマシンであるという点が、複雑さを増している最大の要因だといえる。次回紹介する予定だが、実はこの2台のルータ・マシンは、ルーティング以外にもいくつかのサービスを提供するサーバにもなっている。というのは、この2台はルータという性格上、24時間運用を続けていたので、ほかのサービスもこのマシンに統合してしまえば、運転するマシンの台数を最小限にできる、という利点があるからだ。データ・センターのような環境ではこうした貧乏根性は真っ先に否定されるものであり、信頼性を高めるためには基本的に「1サーバ1サービス」の専用マシンの組み合わせで構成するのが常識だ。しかし、個人宅での運用なので、不要なマシンは極力電源を切っておきたい。もちろん電気代も気になるし、発熱や騒音など、多数のマシンが動作し続けるのは不都合が多いのだ。この貧乏性が、ネットワーク構成の複雑化を招いているのは確かなのだが、それにしてもPC 2台の24時間運転はやはり無駄である。できればこれを1台にしたい。

大きな図へ
ネットワーク構成変更の概要
図の上側がこれまで紹介してきた以前のネットワーク環境、下側がこれから解説する現在のネットワーク環境のもとになったもの。以前の状態(図の上側)で「compaq」の下に「サブネット1」があるのは、リビングで利用するためのイーサネットのセグメントが存在したからである。このセグメントは、ブリッジの導入でイーサネット・セグメントとHomePNAセグメントが透過的に接続されたことによって、図の下側のように不要になっている。将来的には、もう1台ブリッジを導入して自室のルータをブリッジに変更すると、自宅内にサブネットは一切不要になり、構造としてはかなり単純化されるハズだ。これは、今後の拡張計画として検討中だが、まだ実行に移していない。というのも、このブリッジは日本国内では販売されていないため、出張の際に購入してくるか、あるいはインターネット通販などを利用しないと入手できないのだ。

 というわけで、ネットワークの最初の改善方針は、「リビングに設置されたルータ(「compaq」)を排除する」ことであった。もちろん、イーサネットとHomePNAの間でパケットの中継を行うために必要だから設置してあるのであり、単に取り除くというわけにはいかない。「compaq」を排除するには、「compaq」の代わりにイーサネット−HomePNAブリッジの役目を果たすデバイスが必要となる。

 筆者が最初のネットワークを構築した当時は適当なデバイスがなかったのだが、その後HomePNA 2.0に対応したイーサネット−HomePNAブリッジ専用デバイスが数社から発売されている。筆者は、2001年1月に米国取材に出かけた折にこうした製品を1つ購入してきたのだ。これを使うとリビングのルータを専用デバイスに置き換えられ、かつネットワークの構成が大幅に単純化できる。というのも、Windows 2000 Professionalを使ったルータをブリッジ専用デバイスに置き換えることで、サブネットの数も1つ減ることになるからだ。

 ただし、この置き換えはこれだけでは成立しない。「compaq」が担っていたもう1つの重要な役割として、「OCNアクセス・ルータからDHCPでプライベート・アドレスの割り当てを受け、自宅内のほかのマシンに対してはNATIPマスカレード)を提供する」という機能がある。これをWindows 2000 Professionalの「インターネット接続の共有」機能で実現していたのだが、これはイーサネット−HomePNAブリッジ専用デバイスには実現できない機能だ。

変更後のリビングの状況
「compaq」のあった位置にブロードバンド・ルータとイーサネット−HomePNAブリッジを置いた。2台積み上げたデバイスのうち、下側がブロードバンド・ルータで、上側がイーサネット−HomePNAブリッジ。PCと比べると大きさの差は歴然としているうえに、ファンなどの騒音がしなくなったことや、振動や衝撃を気にする必要がなくなったことなど、メリットはとても多い。子どもがいる家庭内で利用するなら、PCにルータをやらせるよりも、専用デバイスを導入する方がずっと賢明な選択だろう。

 イーサネット−HomePNAブリッジ専用デバイスというのは、いうなればイーサネット・ケーブルとHomePNAケーブルを接続するための変換アダプタみたいなものであり、単に異なる規格のネットワークを接続する役目しか果たさないのである。当然IPアドレスすら設定されておらず、DHCPクライアントになることも、NAT機能を提供することもない。このため、もう1台の専用デバイスとして、いわゆる「ブロードバンド・ルータ」を追加した。一般にCATVやADSLを利用した常時接続に使われるルータで、NATボックスとしての機能に加え、簡易ファイアウォール機能などを備えたデバイスだが、ブロードバンド接続の普及に伴って低価格の機種がそろい、選択肢も増えてきていたので容易に導入できる環境が整ったのである(ブロードバンド・ルータについては、「ネットワーク・デバイス教科書:第1回 広帯域インターネット接続を便利に使う『ブロードバンド・ルータ』」参照)。

 これで、デバイス・レベルの変更の具体的な方法が決定した。この変更を行ったのは2001年1月だが、その後3月には新たにADSL回線を導入し、ネットワークの構成がさらに変わっているため、この形態のネットワークを運用した期間は実質3カ月弱しかなかった。とはいえ、この変更によって、ネットワーク接続がダウンする要因の最大のものはOCN側のサーバのトラブルであることが確信できたので、筆者としては効果が大きかったのである。実際、PCによるルーティングおよびNATサービスの運用から専用デバイスによる運用に移行したことで、筆者宅のネットワークに起因するトラブルは激減した。トラブル要因のうち、最大頻度で発生するのはOCNサーバの不調だと前述したが、この結論は専用デバイスの導入によって初めて疑念から確信に変わったのだ。

 さて、デバイスの変更に関してはここまでご説明したとおりだが、この変更に伴ってサーバの配置や、サービスの運用も多少変化している。そして現在利用している環境は、基本的にこのときに構成されたものだ。そこで、ネットワークのトポロジーに関する話はここで一段落とし、次回から数回にわたって筆者宅で実行されているネットワーク・サービスについて紹介していくつもりだ。記事の終わり

  関連記事(PC Insider内) 
第1回 広帯域インターネット接続を便利に使う「ブロードバンド・ルータ」
 
 
     
「連載:究極ホーム・ネットワークへの道」

@IT Special

- PR -

TechTargetジャパン

System Insider フォーラム 新着記事
  • Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
     Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう
  • 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
     最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は?
  • IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
     スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか?
  • スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
     スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)
- PR -

イベントカレンダー

PickUpイベント

- PR -

アクセスランキング

もっと見る

ホワイトペーパーTechTargetジャパン

注目のテーマ

System Insider 記事ランキング

本日 月間
ソリューションFLASH