連載

究極ホーム・ネットワークへの道
−実例に学ぶホーム・ネットワーク・デザイン−

第9回 わが家のADSL導入記

渡邉利和
2001/10/25

 ずいぶん時間を掛けて筆者の自宅のネットワーク構成について紹介してきたが、最近は構成もかなり安定しており、あまり変化していない。そのため、本連載の内容もかなり実際に利用中のシステムの形に追いついてきている。今回は、半年以上前になるが、3月に導入したADSLについて紹介しよう。

ADSLの導入経緯 

 筆者がADSLの導入を思いついたのは、必要に迫られてというより、むしろ「NTT東日本がどのような対応するのか様子を見てみたい」という、ちょっとした意地悪心からである。というのも、以前にも紹介したと思うが、現在筆者が居住しているのは都内某所のインターネット対応マンションであり、ちょうど昨今のブロードバンド・ブームの直前に完成したもの。インターネット対応ではあるが、用意された接続回線はOCNエコノミーの128kbpsであり、しかも電話局までの接続は光ファイバになっている(いわゆる「光収容」)。すでにご周知のことと思うが、「光収容の集合住宅」というのはADSLが使えないうえ、ほかのブロードバンド・サービスを導入するにはほかのマンション住民の同意が必要となるという、最もブロードバンド化しにくいやっかいな条件である。

 筆者の場合、一番美しい解決法は、マンション全体で加入しているOCNエコノミーを、NTT東日本/西日本のFTTHによる接続サービス「Bフレッツ」の「マンションタイプ」などに切り替えることだ。しかし、この際の問題点は筆者が希望しただけではどうにもならず、マンション住人の合意が必要になることだ。ほかの居住者がどのようなインターネット接続環境を望んでいて、それにどの程度のコストを払う意志があるかは筆者には分からないので、提案はできても結果は予測不能というところだ。実際に、集合住宅でブロードバンドを導入する場合、マンション住民の2/3の合意が得られず、話が進まないということも聞く。しかも、実はそれ以前の問題として、筆者の居住地域はいまだにBフレッツ提供範囲に入っていないし、実はBフレッツのマンションタイプは2001年10月中旬現在、まだ申し込みの受付が開始されてもいない。光ファイバということなら有線ブロードネットワークスもあるが、実はこちらもサービス提供エリア外である。電話局まで既設の光ファイバがあり、マンションの建物内には10BASE-Tのイーサネットが全戸に配線されているにもかかわらず、この両方を活用できるサービスは誰も提供してくれない、という筆者にとっては実に歯がゆい状況にあるわけだ。

 さて、3月の時点で筆者が考えたのは、実は光収容でADSLが利用できないにもかかわらず、光向けのサービスを提供してくれないNTT東日本に嫌みの1つでも言ってやろう、というのが最初の動機だったわけだ。筆者にしてみれば、局までの接続にメタル(銅線)・ケーブルではなく光ファイバを使用したのはNTT東日本側の都合だと感じていたからだ。ところが、いざ申し込みを行ってみると、何のことはなくあっさりと受け付けられ、「工事日を決めましょう」という話になってしまった。実はこの段階で筆者は予想外の展開にとまどい、かつ不安にもなっていたので「光収容のはずだがADSLが敷設できるのか」と改めて確認したところ、「予備のメタル・ケーブルが空いているので、それを使いましょう」という話であった。予備のメタル・ケーブルが全部で何本用意されていのかは確認していないが、とりあえず「光収容だからADSLは使えない」と最初から諦めてしまうのは間違いだということがよく分かった。光収容の集合住宅に居住している方で、まだ確認していない人がいたら、ぜひ一度問い合わせてみることをおすすめする(ADSLの試験サービス時に光収容で断わられた人も、もう1度確認すると予備のメタル・ケーブルを使ってサービスが受けられる可能性もある)。

ADSLの導入

 ADSLの設置に際しては、すでに自宅内のネットワーク環境ができあがっていたことから、「現状に合わせてADSL回線を配置する」という方針で臨んだ。具体的には、ADSL用に使用する回線の口を最もコンピュータが密集している自室内に出すことにしたのである。一方、既存の屋内電話配線はHomePNA 2.0でも利用している。規格上、HomePNA 2.0とADSLは干渉しないように使用周波数帯が分離されている。しかし、万が一でもスループットに影響するようだとつまらないという判断や、使用料請求を別立てにしたいといった事務的な都合などもあり、別途ADSL専用の回線を新設することにした。これには、筆者が居住しているマンションが最初から各戸2回線までの電話設置に対応していた、ということも大きい。結果として、筆者宅では音声通話専用の電話回線と、ADSL専用回線(いわゆる「タイプ2」)を設置したことになる。

各サービスが使用する周波数帯
アナログ音声通話、xDSL、HomePNAの使用周波数帯の違い。このようにxDSLとHomePNAは干渉しないよう、利用する周波数帯が異なっている。

 筆者の自室は基本的にPCやネットワーク関連デバイスが集中する「作業場」なので、ADSL回線の新設に関しては逆に問題が少なかった。ADSLモデムに関しても、すでにハブだのスイッチング・ハブなどが山積みになっている環境なので特に邪魔になるとか置き場所に困るということもない。もっとも、物陰に放置しておくほど信頼してもいないので、常時インジケータの表示を確認できるように見やすい場所に設置するという工夫はしている。

 さて、ADSL回線導入後の筆者宅のネットワーク構成を下図に示す。実は、マンション共有のOCNエコノミー回線は、利用料がマンションの管理費に含まれて徴収されているため、これを使用しなくても利用料負担がなくなるわけではない。そのため、この回線を使用しないようにしても何のメリットもないので、OCN経由のインターネット・アクセスも従来どおり使用できるようにそのまま残してある。

ADSL導入後のネットワーク構成
このようにOCNエコノミー(マンションの共有回線)に加え、自室にADSLを敷設した。現状、OCNエコノミーはまったく使われていないが、利用料がマンションの管理費に含まれていることから、バックアップ回線として残してある。

 OCNエコノミーとADSLの2回線あるとなると問題になるのは使い分けだが、回線速度が桁違いなので(ADSLは下り最大1.5Mbps、実効約1Mbpsに対し、OCNは128kbps=0.128Mbps)、通常はOCN回線を利用することはない。何らかのトラブルでADSLが利用できなくなったときのためのバックアップ、という程度の位置付けである。そのため、実のところ接続されてはいるものの、基本的にはパケットが送出されることはない。

 ただし、WAN接続が2回線あり、両方を使える状態に維持するためには、実はルーティングに工夫が必要になる。この場合の問題点は、ネットワーク・アドレスによる振り分けという一般的なルーティング・ルールが適用できない点だ。というのも、ADSLもOCNエコノミーも基本的にはインターネット接続回線であり、ルーティングの見地から見ればデフォルト・ルートである。つまり、自宅内のLANで使用しているプライベート・アドレス以外の宛先が指定されたパケットに関しては必ずWAN側へ出ていくことになるが、ADSLもOCNエコノミーも基本的にアドレス空間としてはまったく同一の「そのほかすべて」であり、区別がない。そのため、静的にルーティング・テーブルを設定する方法は好ましくない。

 また、もう1つの問題はDNSサーバ・アドレスの設定である。筆者宅から利用可能なDNSサーバは、OCNエコノミー側のプライマリ/セカンダリとADSL側のプライマリ/セカンダリの合計4台ある。応答の速さからいっても、通常はOCNエコノミー側を一切利用せず、ADSL側だけで処理すればよいのだが、いざADSL接続がダウンした際に切り替える手段を考える必要がある。単に各マシンのDNSサーバ・リストに全部のDNSサーバ・アドレスを設定しておいて、あるサーバへのリクエストがタイムアウトしたら順次トライさせる、という手もあるが、時間がかかるのと、動的にデフォルト・ゲートウェイを切り替える手段を併用しないと意味がない。

 なお、ADSL回線のダウンだが、事実上まず発生していない。ただし、接続にブロードバンド・ルータPPPoE機能を使っているのだが、ここでエラーが起こり、接続がとぎれることはある。筆者が気付いた範囲では、週に数回程度で、たいていは数十秒程度、長くても数分で回復するのだが、稀にブロードバンド・ルータを再起動するまで復旧しないこともある、といった感じだ。一方、DNSサーバのダウンはもっと頻繁に起こっているようで、アドレス解決ができなくてWebページが見られなくなることは日に数回程度ある。これもたいていはしばらく待てば復旧している。現状で特に問題になる頻度ではないので、何だかんだいってもOCNエコノミー側に接続先を切り替えたことはこれまでのところは一度もない。

OCNエコノミーとADSL回線を自動的に切り替える方法

 というわけで、現状は何も手を打ってはいないのだが、一応今後の課題として検討だけはしている。まず、デフォルト・ゲートウェイの指定だが、現状では2段階に設定することで変更の余地を残している。LAN内の各マシンは、LAN内のIPルータである「compaq」をデフォルト・ゲートウェイとして指定し、「compaq」ではデフォルト・ゲートウェイとしてADSL側のブロードバンド・ルータを指定している。もしADSL接続が長時間ダウンした際には、「compaq」のデフォルト・ゲートウェイ設定をOCN側のブロードバンド・ルータに切り替えれば、そのほかのマシンでは設定変更なしで、OCNエコノミー側に接続できるようになるはずだ。ただし、DNSサーバに関しては特に手を打ってはいない。多分有効なのは、「compaq」上でDNSサーバを運用しておき、LAN内のマシンからは「compaq」のDNSサーバを参照するように設定しておくことだろう。当然、「compaq」では上位のDNSサーバとしてADSL側またはOCN側のDNSサーバを参照する設定にしておくわけだ。そして、さらに定期的にpingを打つなどの監視手段を用意して、ADSL回線のダウンを検出し、自動的に「compaq」の設定を変更するツールを用意すれば一応システムとして完成する。しかし、ADSL回線が順調なこともあって、こうした面倒な設定は未だに試していない。

 「compaq」はIPルータである一方、ファイル・サーバとプリント・サーバも兼ねているため、面倒を避けてクライアントPCから簡単に利用できることを重視してOSにWindows 2000 Professionalを使用している。もちろんこれは、接続に使用しているHomePNA 2.0アダプタのドライバがWindows対応のものしかなかった、という理由も大きい。しかし、2回線あるWAN接続を動的に切り替えたり、ローカルでDNSサーバを運用したり、という需要が生まれてくると、クライアントOSであるWindows 2000 Professionalでは対応しにくくなってくる。というわけで、そろそろ何かUNIX系OSが動く常時稼働サーバを用意しなくてはいけない状況になってきたようだ。記事の終わり

 
     
「連載:究極ホーム・ネットワークへの道」

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