ニュース解説

―2001 CESレポート―
IntelのCEO バレット氏が語ったPCと家電のこれから

渡邉利和
2001/01/13

 
PCと家電の関係を話すバレット氏
さまざまなIntel製家電製品の使い方を紹介し、それがPCとどう組み合わされるのかを語った。

 2001年1月6日から9日の4日間に渡って、米ネバタ州ラスベガスで消費者向け家電製品の展示会である「2001 CES International」が開催された。展示会の開催に先立ち、1月5日の夜にはIntelの社長 兼 最高経営責任者(CEO)のクレイグ・R・バレット(Craig Barrett)氏が、キックオフ・キーノート・スピーチを行なった(Intelのバレット氏のキーノート・スピーチに関するニュースリリース)。ここでは、2001 CES Internationalの模様を主にバレット氏のキーノート・スピーチを中心に紹介する。なお、バレット氏のスピーチの内容は、Intelのホームページで公開されているので、興味のある方はご覧いただきたい。

PCが家電の中心になる

 バレット氏は、有名なパフォーマンス・グループであるBlue Men*1のパフォーマンスに参加する形で姿を現わした。Blue Menがテーブルに盛られた巨大なゼリー(?)を叩き割ると、その中からバレット氏の顔が現れる、という趣向である。筆者はBlue Menを知らなかったため、最初はなんだかわけが分からなかったのだが、会場は大受けで、サービス精神に富んだキーノートだったといってよさそうだ。

*1 Pentium IIIのテレビCMにも登場している青ずくめの人たち。ニューヨークのオフ・ブロードウェイでロングラン興行を続けている。なかなか予約が取れないほどの人気。

Blue Menとともに登場したグレック・バレット氏
Blue Menは、最近のインテルのテレビCMにも出演しているパフォーマンス集団。

 語られた内容を簡単に紹介すると、PCを中心に各種デバイスをまとめ、より豊かな生活を送りましょう、という具合になるだろうか。PCx(Extended PC)と呼んでいたが、要は周辺機器(家電製品)との組み合わせで相互のメリットを引き出し、用途や価値を拡大しようという考え方だ。周辺機器による機能拡張は、PCのお家芸とでも言うべきもので、今になって改めて提唱するまでもない。すでに量販店では、山のように大量の周辺機器が販売されている。しかし、ここで言っているのは、これら従来の「コンピュータのための周辺機器」ではなく、家電製品に近いものにPCとの連係機能を持たせていく、ということだ。デジタル・カメラやMP3プレイヤーなど、メディアを扱うデバイスと組み合わせることで、PCをメディア・サーバやホーム・ゲートウェイに位置付けようという目的がある。それには、大量のデジタル・メディアを扱うために、PCにはさらに強力な処理能力が必要となってくる。そして、PCが家庭内でメディア・サーバやホーム・ゲートウェイとなったときには、デジタル・メディアを活用した豊かな生活が実現する、というストーリーのようだ。

PCが家庭内のメディア・サーバになる

 キーノート・スピーチの中で行われたデモでは、こうしたデバイスとPCが無線を使って、データのやり取りを行っていた。それも、デバイス側からは特に意識することなく単にPCの近くに移動するだけで、PCのリソースや機能を利用できる、といった具合だ。特に限定はされていないが、きっとBluetoothのような接続を想定しているのだろう。音楽や映像など、従来からあるメディアをデジタル化して活用する、という方向性が強く感じられたのも印象的であった。

 というのも、いわゆるAV(Audio/Visual)と呼ばれる分野は今でも家電製品の中核的な存在であり、PCもそれを取り扱うことで魅力を発揮する必要があるということの反映であるように思われたからだ。また、従来のPCはどちらかというと性能・技術優先で、用途は後回し、といった印象が強かった。つまり、できあがった製品(PC)をどう活用するかはユーザー次第だったわけだ。しかし、家電製品ではそうはいかず、用途に応じた性能や形状を備えており、しかも使いやすいことが求められる。PCの今後の性能向上に言及したのは、Intelとしては当然のことかもしれないが、「家庭内でメディア・サーバとして活用するため」という具体的な用途が示された点が興味深い。従来のPCの性能向上はある種の本能的な衝動に近いものがあり、何のためでもなく、とにかく性能向上を実現してきた。しかし、TransmetaのCrusoeの投入などもあり、用途に応じた最適性能、という発想が今後主流となるように思われる。

 家電と組み合わせ、相互に補い合うことでより高度な「Digital Life」を実現しようとしているIntelの方向性は、結果的には家庭内での利用に特化したPCや、場合によっては家庭用途専用プロセッサのようなものまで生み出すことになるのかもしれない。記事の終わり

CESの展示会場のIntelブース Intelのワイヤレス周辺機器シリーズ IntelのMP3プレイヤー
Intel Playシリーズや、ホーム・ネットワーク製品を中心に展示していた。CESの開催に合わせてMP3プレイヤーを発表するなど、ホーム・コンピューティングに力を入れていることが伺えた。 左からマウス、アクセス・ポイント、キーボード、ゲーム・パッド。アクセス・ポイントはUSBでPC本体と接続される。 2001年1月2日に発表したMP3プレイヤーが展示されていた(IntelのMP3プレイヤー発表のニュースリリース)。128Mbytesのフラッシュ・メモリを搭載し、MP3とWMA(Windows Media Audio)に対応する。
     
IntelのWireless Web Tablet(参考出品) IntelのChatpad Device(参考出品) IntelのAnyPointシリーズ
無線LANシステムの「Intel AnyPoint Wireless Home Network」を介して、無線でPCと接続し、PCを経由してインターネットに接続する。ホームページの閲覧や電子メールの送受信などが、家のどこでも可能になる、としている。 名前のとおり、チャット(おしゃべり)や電子メールの利用を目的としたデバイス。中身についての解説はなかったが、どうもxScale(StrongARM)を搭載したWindows CEマシンのようだ。 現行の家庭向きネットワーク製品AnyPointシリーズ。左奥の細長い箱は、HomePNA(電話線を利用したネットワーク)用のデバイス。PCとはUSBで接続し、電話線を利用し、10Mbits/sのデータ転送速度を実現する。中央手前の箱は、HomeRF(無線LAN)用デバイス。無線でPC間の接続が可能で、1.6Mbits/sのデータ転送速度を実現する
     
3ComのBluetooth−イーサネット・ゲートウェイ「Wireless Bluetooth Access Point 1000」 Panasonicの「ゲートウェイステーションKX-HGW100」 Transmetaのブースで見かけたホーム・ネットワーク用管理ソフトウェア(?)。
Bluetoothデバイスをイーサネットに直接接続するためのゲートウェイ。ネットワーク・ベンダの3Comらしい製品だ。 イーサネット、IEEE 802.11b、HomePNAをサポートする家庭向けブロードバンド・ルータ。IPマスカレード、簡易ファイアウォールなどを装備する。日本で2000年11月21日に発表された製品(KX-HGW100に関するニュースリリース 各デバイスはUPnP(Universal Plug & Play)で接続され、ソフトウェアにより認識されている。各デバイスがこのソフトウェアにより、管理できるものと思われる。

  関連リンク
バレット氏のキーノート・スピーチに関するニュースリリース
バレット氏のキーノート・スピーチの全文
IntelのMP3プレイヤー発表のニュースリリース

Wireless Bluetooth Access Point 1000の製品情報ページ

KX-HGW100に関するニュースリリース

「PC Insiderのニュース解説」


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