ニュース解説

期待の新プロセッサ「Athlon XP」が発表
―性能を示すモデル・ナンバに賛否両論―

島田広道
2001/10/11

 2001年10月9日(米国現地時間)、AMDはデスクトップPC向けの新型x86互換プロセッサ「Athlon XP(アスロン・エックス・ピー)」を発表した。Athlon XPのコアは、開発コード名Palomino(パロミノ)」と呼ばれていたものだ。従来のデスクトップ向けプロセッサ「Athlon(アスロン)」の後継として開発され、Athlonのアーキテクチャを継承しつつ改良を施すことで、Athlonより約10%の性能向上を果たしている。すでに市販されているノートPC向けの「モバイルAthlon 4」、サーバ/ワークスーション向けの「Athlon MP」のデスクトップPC版に位置付けられる製品だ。従来のAthlonで搭載していたSIMD拡張命令のエンハンスト3DNow!テクノロジに加え、Pentium IIIPentium 4などが搭載しているストリーミングSIMD拡張命令(SSE)と互換性を持ったSIMD拡張命令を追加した3DNow!プロフェッショナル・テクノロジをサポートしている。これにより、DVDビデオのエンコードなどのマルチメディア機能が強化されているという。Athlon XPの「XP」は、Windows XP環境において、従来のAthlonより「eXtreme Performance(極めて優れた性能)」を発揮することを示すものとされる。

Athlon XP
対応プラットフォームは従来と同じSocket Aだが、パッケージ自体はCPGA(セラミックPGA)からOPGA(オーガニックPGA)に変更された。OPGAは性能向上とコスト低減に貢献しているという。

Athlonをベースにコア・アーキテクチャを改良

 Athlon XPのコア・アーキテクチャは通称「QuantiSpeed」と呼ばれ、以下のような特徴を備えている。

  1. 9命令同時発行可能なスーパースケーラマイクロアーキテクチャ
  2. パイプライン化されたスーパースケーラ浮動小数点演算ユニット
  3. ハードウェア・データプリフェッチ
  4. Exclusive(排他的)&Speculative(投機的)TLB(Translation Look-aside Buffer)

 このうち1と2は、すでに既存のAthlonにも実装されており、実質的に3と4がAthlon XPで追加された新機能である。

 3のハードウェア・データプリフェッチとは、実際にキャッシュ・ミスが生じる前に、必要になりそうなデータをあらかじめ予測してメイン・メモリから読み出してキャッシュに転送しておく機能だ。これにより、メイン・メモリの読み出し遅延(レイテンシ)による性能低下が抑えられるというメリットがある。

 4にあるTLBとは、プログラムから見えるメモリ空間のアドレス(仮想アドレス)と実際のメモリ・アドレス(物理アドレス)との対応表を一時的に保存するバッファのこと。仮想アドレスから物理アドレスへの変換を高速に実行するためのものだ。Athlon XPに実装されたExclusive&Speculative TLBでは、アドレス対応表内での重複をなくして2次キャッシュの利用効率を高め、また必要になりそうなアドレス対応表を予測して事前にTLBに格納しておく。こうした技術によりアドレス変換速度が高められている。

 2001年10月10日に日本で発表されたAthlon XPの主な仕様を以下に記す。

項目 内容
マイクロアーキテクチャ QuantiSpeedアーキテクチャ
コアのクロック周波数 1.33GHz〜1.53GHz
FSBのクロック周波数 266MHz
1次キャッシュ 命令:64Kbytes/データ:64Kbytesの合計128Kbytesをコアに統合
2次キャッシュ 256Kbytesをコアに統合
製造プロセス 0.18μm・銅配線
トランジスタ数 3750万個
パッケージ OPGA(Socket A対応)
SIMD命令 3DNow!プロフェッショナル
Athlon XPの主な仕様

 このほか、細かいところでは、「サーマル・ダイオード」というプロセッサ・コアの温度を測定するいわばセンサのような素子がコアに内蔵されたことも、Athlon XPの改良点だ。マザーボードが対応していれば、CPUクーラーのファンの故障などでコアの温度が急上昇しても、自動的にクロックや電力の供給を止めるなどしてコアの焼損を防ぐ、ということが比較的容易に実現できる。

「モデル・ナンバ」はクロック周波数の代わりになるのか?

 マーケティングの面から見たAthlon XPの大きな特徴は、従来のようにクロック周波数ではなく「モデル・ナンバ」と呼ばれる数値で性能を示していることだ。つまり、従来は「Athlon-1.4GHz」という表記だったのが、Athlon XPでは「Athlon XP-1500+」といった表記になる。AMDによれば、モデル・ナンバの値は各種ベンチマーク・テストの結果から算出されているという。

モデル・ナンバ 実際のクロック周波数
1500+ 1.33GHz
1600+ 1.40GHz
1700+ 1.47GHz
1800+ 1.53GHz
Athlon XPのモデル・ナンバ

 モデル・ナンバは、Athlon XP同士の相対的な性能比較に利用されるもので、ほかのx86プロセッサのクロック周波数とは直接比べられるわけではない。ただし、Athlon-1.4GHzの性能が基準となっており、Athlon XPのモデル・ナンバでいう「1400+」に相当するという。

 AMDがモデル・ナンバを採用した背景には、ライバルであるIntelのPentium 4とAthlonシリーズの性能を比較した場合、クロック周波数と連動しないことが挙げられる。長年にわたってクロック周波数は、プロセッサの手軽な性能指標として利用されてきたが、アーキテクチャが異なるプロセッサ同士では、1クロックで実行できる命令数が異なるため、クロック周波数だけでは正確ではないという問題がある。特にPentium 4とAthlonシリーズを比べた場合、一般的に同程度の性能ならPentium 4の方がクロック周波数は高くなる傾向がある。従って単純にクロック周波数で比較するとAthlonシリーズのほうが数値が小さくなり、エンド・ユーザーから見ると「性能が低い」ように感じられてしまう。

 こうしたマーケティング面での問題を解決するためにAMDは、より実際の性能に近いモデル・ナンバという仕組みを導入した。確かに、クロック周波数よりは実際のアプリケーション実行時の性能に近い指標になり得そる可能性を秘めている。しかし、プロセッサの性能はハードウェア/ソフトウェア環境により大きく左右されるため、妥当なモデル・ナンバの値の決定が難しいことや、Intelなどほかのプロセッサ・ベンダも同じモデル・ナンバの仕組みを導入しないと、異なるプロセッサ同士での比較ができなくなるという問題がある。またクロック周波数とモデル・ナンバという2種類の性能指標のせいで、かえってエンド・ユーザーが混乱することも懸念される。

 実際、Athlon XPのモデル・ナンバは、Pentium世代で互換プロセッサ・ベンダが採用した「P-Rating(Pレーティング)」の復活ともいえる指標であり、P-Ratingでユーザーが混乱したことを考えるとマーケティング的にもあまりいい方法とは思えない。P-Ratingでは、実際の動作クロックとP-Ratingの値がリニアに連動しなかったことや、ベンダの思惑とも思える値付けが行われ、レーティングがまったく信用されなかった。Pentium II/Athlon世代に移り、AMDはAthlonシリーズの動作クロック面での優位性から、いち早くP-Ratingの採用を取り止めたことを考えると、若干ご都合主義的な動きを感じざるを得ない。AMDが公平にモデル・ナンバを提供できるのか、そしてユーザーがその値を信用するのか、今後のAMDの動きに注目したい。記事の終わり

製品名 動作クロック 価格(2001年10月10日付け)
AMD Athlon XP 1500+ 1.33GHz 1万6900円
AMD Athlon XP 1600+ 1.40GHz 2万800円
AMD Athlon XP 1700+ 1.47GHz 2万4700円
AMD Athlon XP 1800+ 1.53GHz 3万2760円
Athlon XPの公表価格
 
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