ニュース解説

新たな携帯電話向けアプリケーション環境が登場
―QUALCOMMが携帯Java対抗の「BREW」を発表―

小林章彦
2001/02/01

 2001年1月31日、QUALCOMMが、CDMA対応の携帯電話でアプリケーションをダウンロードし、それを実行可能にするソリューション「BREW(Binary Runtime Environment for Wireless)」を発表した(QUALLCOMMのBREWに関するニュースリリース)。QUALCOMMは、次世代携帯電話であるIMT-2000でも採用されている移動体通信方式「CDMA」を開発した会社であり、CDMA方式の携帯電話向けチップセット・ベンダの最大手でもある。

 BREW(「ブリュー」と発音する)は、NTTドコモが2001年1月18日に発表したi アプリに対抗するものとなる。iアプリでは、携帯電話機とソフトウェアとのインターフェイスにJavaを採用しているのに対し、BREWでは、名前が表すとおり、携帯電話機内で直接実行可能なバイナリ・プログラムをダウンロードし、それを実行する。

BREWのメリット

 BREWのアプリケーション開発環境は、C/C++で提供される。ソフトウェア開発キット(Windows NT 4.0およびWindows 2000で実行可能)は、2001年5月からアプリケーション・ベンダに無償で提供される予定だ。QUALCOMMによれば、BREW上でJava VMを実行することや、JavaアプリケーションをコンパイルしてBREWのバイナリに変換することで、BREW上でJavaアプリケーションを実行することも可能であるという。

 携帯電話向けブラウザやJava VMの開発で著名なACCESSが「グローバルBREWパートナー」としてBREWの推進メンバに名前を連ねていることから、BREW対応のJava VMがサービス開始時点で提供されるのは間違いないところだろう。

 Javaアプリケーションに比べると、ネイティブ・バイナリであるBREWのアプリケーションのほうがプログラム・サイズを小さくできるし、また言うまでもなく、ネイティブ・バイナリであるから、携帯電話の処理能力を最大限に引き出すことが可能である。さらにBREWでは、携帯電話機がサポートするマルチメディア機能などにソフトウェアからアクセスすることもできるため、例えばMP3プレイヤーをアプリケーションとして提供できるというメリットがある。逆に言えば、BREWでは各携帯電話機が持つ機能などによって、実行不可能なアプリケーションも提供される可能性もあるわけだ。携帯Javaが汎用性を求めて機能を制限しているのに対し、BREWでは機能性を求めて汎用性を若干犠牲にしていることになる(当初は、QUALCOMMのCDMAチップセット向けに提供されるため、携帯電話機間の機能差が問題になることは少ないと思われる)。

 また、新たなサービス(電子メール・サービスや音楽配信サービスなど)を提供する場合、現在は携帯電話機に実装するアプリケーションを電話機ごとに開発しなければならないため、余計なコストがかかっていた。しかし、BREWによって携帯電話のアプリケーション実行環境の共通化が実現されれば、こうした問題も解決できる。さらに携帯電話機ベンダと独立したアプリケーション・ベンダに対しても活躍の場が与えられるため、多様なアプリケーションが登場する可能性も期待できる。

BREWのメリット(発表会のプレゼンテーションから)
QUALCOMMでは、BREWのメリットとしてこの画面のような点を挙げている。すべてJava環境を意識したものであることが分かる。

 一方、このようにシステムの機能に幅広くアクセス可能なアプリケーション環境では、機能性を逆手にとったウイルスが登場する危険性も高い。すでにiモードを悪用したウイルスに近いコンテンツも登場しており、BREWによってこの動きが加速されてしまう可能性もある。そこでBREWでは、アプリケーションに認証システムを導入するなどして、ウイルスの発生を防ぐことを考えている。また、アプリケーションのトラッキング・システムなどを導入し、障害の発生したアプリケーションを携帯電話機から除去できるようにもするという。このようなトラッキングなどを行うためのミドルウェアも同時に発表している。このミドルウェアでは、BREWアプリケーションに対する課金や認証、管理などが行える。

BREWはJavaを超えられるか?

 日本でCDMA対応の携帯電話サービスを提供しているKDDIは、「現在のところ詳細な時期は未定だが、BREW対応の携帯電話やサービスを2001年内には提供できる」と述べた。すでにKDDIでは、夏ごろをメドにJava対応の携帯電話の提供も行うとしているが、将来的にはBREW上でJava VMを動かすことで、BREWとJavaの両方の環境に対応できるようにする計画のようだ(当初のJava携帯電話は、携帯電話上で直接Java VMが実行される)。

 しかし、BREWが単にJava VMを実行するための環境であるならば、存在意義はほとんどない。BREWの最大のメリットである、携帯電話機が持つハードウェア機能に幅広くアクセスできる点を活かしたアプリケーションの提供が必要だ。ユーザーにしても、これまでの携帯電話機にない機能が手に入って初めて、BREWに魅力を感じるはずだ。逆に言えば、BREWが成功するかどうかは、Javaアプリケーションよりも魅力的なBREWネイティブのアプリケーションがどれだけ提供できるかどうかにかかっている。記事の終わり

  関連リンク
BREWに関するニュースリリース
i アプリに関するニュースリリース
ACESSのホームページ
BREW関連のホームページ

  更新履歴
【2001/07/25】 QUALCOMMは、次世代携帯電話であるIMT-2000でも採用されている移動体通信方式「CMDA」を開発した会社 とあったのは、「CDMA」の誤りでした。お詫びして訂正させていただきます。
 
「PC Insiderのニュース解説」

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