ニュース解説

不景気がPentium 4とAthlonを半値にする?

小林章彦
2001/08/30

 2001年8月27日、IntelはPentium 4-2GHzの発表と合わせてプロセッサの大幅な価格改定を行った。今回の価格改定では、7月2日に562ドルで発表となったPentium 4-1.8GHzが、約2カ月で54%オフの256ドルにまで値下げされている。この価格は、7月2日時点のPentium 4-1.5GHzとほぼ同等である。つまり、この2カ月間で価格据え置きのまま20%の性能向上が実現できるようになったわけだ。Pentium 4に関しては、4月29日付けで1.5GHz版と1.4GHz版をそれまでの約半額に価格改定しており、今回の値下げはそれに続く大規模なものである(「元麻布春男の視点:Pentium 4の値下げが意味するところ」参照)。

Pentium 4 7月15日付け 8月26日付け 値下げ率
2GHz 562ドル
1.90GHz 375ドル
1.80GHz 562ドル 256ドル 54%
1.70GHz 352ドル 193ドル 45%
1.60GHz 294ドル 163ドル 45%
1.50GHz 256ドル 133ドル 48%
1.40GHz 193ドル 133ドル 31%
1.30GHz 193ドル 133ドル 31%
Intel Xeon 7月15日付け 8月26日付け 値下げ率
1.70GHz 406ドル 256ドル 37%
1.50GHz 309ドル 183ドル 41%
1.40GHz 268ドル 183ドル 32%
Pentium III-S 8月5日付け 8月26日付け 値下げ率
1.26GHz 370ドル 337ドル 9%
1.13GHz 313ドル 257ドル 18%
Pentium III 8月5日付け 8月26日付け 値下げ率
1.20GHz (0.13μm) 294ドル 268ドル 9%
1.13A GHz (0.13μm) 268ドル 225ドル 16%
1.10GHz (0.18μm) 241ドル 225ドル 7%
1GHz (0.18μm) 193ドル 193ドル
933MHz 163ドル 163ドル
900MHz 163ドル 163ドル
866MHz 163ドル 163ドル
850MHz 163ドル 163ドル
Celeron 7月15日付け 8月26日付け 値下げ率
900MHz 89ドル 64ドル 28%
850MHz 74ドル 64ドル 14%
800MHz 64ドル 64ドル
766MHz 64ドル 64ドル
Intelの8月26日付け価格(1000個ロット時のOEM向け)
8月27日に行われた価格改定は、8月26日付けとして公開された。Pentium 4とIntel Xeonを中心に大幅に値下げが行われている。モバイル系プロセッサについては、7月15日付けの価格改定で値下げされているため、今回の改定はないようだ。また、今回の値下げで、Celeronがすべての動作クロックで64ドルの同価格となったことで、事実上、Celeron-900MHzの1製品のみとなってしまった。

 この価格改定に合わせるようにAMDも、AthlonおよびDuronの値下げを発表している。

Athlon 6月5日付け 8月26日付け 値下げ率
1.4GHz (FSB:266MHz) 253ドル 130ドル 49%
1.4GHz (FSB:200MHz) 253ドル 130ドル 49%
1.33GHz (FSB:266MHz) 230ドル 125ドル 46%
1.3GHz (FSB:200MHz) 230ドル 125ドル 46%
1.2GHz (FSB:266MHz) 199ドル 120ドル 40%
1.2GHz (FSB:200MHz) 199ドル 120ドル 40%
1.13GHz (FSB:266MHz) 179ドル 115ドル 36%
1.1GHz (FSB:200MHz) 179ドル 115ドル 36%
1GHz (FSB:266MHz) 160ドル 115ドル 28%
1GHz (FSB:200MHz) 160ドル 115ドル 28%
Duron 6月5日付け 8月26日付け 値下げ率
1GHz 89ドル
950MHz 122ドル 74ドル 39%
900MHz 91ドル 64ドル 30%
850MHz 78ドル 59ドル 24%
Mobile Athlon 4 6月5日付け 8月26日付け 値下げ率
1.1GHz 425ドル
1GHz 425ドル 290ドル 32%
950MHz 350ドル 260ドル 26%
900MHz 270ドル 230ドル 15%
850MHz 240ドル 195ドル 19%
Mobile Duron 6月5日付け 8月26日付け 値下げ率
900MHz 130ドル
850MHz 197ドル 100ドル 49%
800MHz 170ドル 90ドル 47%
AMDの8月26日付け価格(1000個ロット時のOEM向け)
Athlon MPを除くすべての製品で値下げが行われている。Pentium 4の値下げに対抗するためか、Athlon-1.2GHz以上の値下げ率が40%を超えている。

大幅な値下げが行われた理由を推測する

 こうした値下げは、世界的なIT業界の景気後退に一因があると思われる。2000年末から世界的にPCの売り上げが落ち込み始めており、PC業界としては何らかの方策によって需要を喚起しなければならない。その1つが高速なプロセッサの値下げによって、PCの買い替え需要を生むことである。米国では、2〜3年前のITバブル時代に売れた、Pentium II-266MHzからPentium III-500MHzクラスのPCの買い替えを促進することで、大きな需要となる可能性がある。そのためには、数倍の性能差を持つPCが、低価格で販売されなければならない。つまり、プロセッサの大幅な値下げが必要なわけだ。各種ベンチマークテストにおいて、Pentium 4-2.0GHzはPentium III-500MHzの2倍から3倍の性能を実現している。こうしたPCが20万円を切るような価格で購入できるようになれば、確かに買い替えを促進できる可能性もあるだろう。

 また、すでにモバイルPentium III-MPentium III-Sなどで採用が始まった0.13μmプロセスが、Pentium 4でも立ち上がりつつあるというのも、Intelが値下げできる理由として挙げられる。開発コード名「Northwood(ノースウッド)」で呼ばれる0.13μmプロセスで製造される新しいPentium 4が、第3四半期にも投入される予定だ。0.13μmプロセスでは、0.18μmプロセスに比べて、同じウエハから2倍の数量のプロセッサが製造可能だ(「元麻布春男の視点:ヒミツ主義に包まれたIntelのプロセッサ製造拠点を暴く」参照 )。これは、単純に計算すれば、1/2の価格でも同じ利益が得られるようになることを意味する(もちろん営業経費など、ほかの要素を考慮すると、こんなに単純ではないが)。今回の値下げは、0.13μmプロセスによる製造原価の低減を先取りしている可能性もある。2002年には300mmウエハ工場も立ち上がる予定であり、さらに製造コストの引き下げが可能になる(「頭脳放談:第13回 300mmウエハは2倍お得」参照)。つまり、こうしたコスト・ダウンを見込んでプロセッサ価格を下げることで、Pentium 4の立ち上げを加速させるつもりなのではないだろうか。

 さらに、近々Pentium 4用のSDRAM対応チップセット「Intel 845」が投入される。SDRAMの価格下落は著しいため、従来のPentium 4搭載PCで採用されてきたDirect RDRAMの代わりにSDRAMを用いれば、PCベンダはPentium 4搭載PCの価格を、Pentium III搭載PC並みに引き下げられる。これにより、ハイエンドからメインストリームまでをPentium 4に置き換えることが可能になる。Intelは、本格的にPentium 4時代への突入を早めることで、新たなキラー・アプリケーション(音声認識やMPEG-2のエンコードなど)の登場を促進し、PCの需要増大を期待しているのだろう。

 こうしたIntelの思惑は、当然ながらライバルであるAMDにも影響を与える。AMDの今回の値下げは、もちろんIntelの値下げを意識したものだろう。特に販売が好調なDuronは、Intelの度重なるCeleronの値下げにより、かつてないほどの低価格化を強いられている。ドイツ・ドレスデンのFab.30(半導体工場)の順調な立ち上がりによって、製造コストは下がっているといわれているが、このまま景気後退が続くとなると、今後Intelとの体力勝負はますます厳しくなるだろう。

 折しもPentium 4の値下げは、Intelの開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」の開催中に行われた。IDFにおいて、次世代のPCプラットフォームの姿が明らかになりつつある現在、値下げでしか需要を喚起できない現状をIntelはどのように考えているのだろうか。もちろん、ユーザーとしては、より性能の高いPCが低価格で入手できるようになった現状を喜ぶべきだろうが、体力勝負によって脱落するベンダが増え、競争による健全な市場原理が失われてしまうとしたら問題である。記事の終わり

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