技術解説

次世代標準メモリの最有力候補「DDR SDRAM」の実像
 
デジタルアドバンテージ
2000/12/21

 ここ数年のx86プロセッサの性能向上には著しいものがある。2000年にクロック周波数が1GHzの壁を破ったかと思ったら、2001年には2GHzの製品出荷が予定されている。このように好調に性能が向上するプロセッサに対し、メイン・メモリの性能向上はそれほど進んでいないのが現状だ。次世代メイン・メモリとして期待されているDirect RDRAMは、さまざまな理由から普及しているとは言い難く、その一方で既存のSDRAMPC100からPC133への移行が2000年に入ってようやく始まったばかりである(ニュース解説:動き始めたDDR SDRAMと対抗するRambus)。このように現状では、プロセッサが要求するメモリ性能と、実性能との差は開く一方であり、このままでは、いくらプロセッサが高速化されてもメイン・メモリの性能がボトルネックとなり、PCシステム全体としての性能向上は見込めなくなってしまう。

 そんな状況の中、次世代メイン・メモリとして現在注目を浴びているのが「DDR SDRAM」である。これはSDRAMメモリの改良版であり、すでにグラフィックス・カードの表示用メモリとしての実績がある。例えば、NVIDIAのGeForce2 GTSを搭載したグラフィックス・カードでは、グラフィックス・メモリとしてDDR SDRAMが採用されている。現在、メイン・メモリ向けにも対応チップセットメモリ・モジュールが準備されており、2001年にはこのDDR SDRAMをメイン・メモリとして搭載したPCも数多く出荷されるだろう。

 このようにDDR SDRAMは、2001年のPC性能の鍵を握るといっても過言ではない。本格的な普及の前に、その仕様やスケジュールなどを把握しておこう。

すぐそこまで来ているDDR SDRAM

 DDR SDRAMの「DDR」とは、「Double Data Rate」の略であり、データを2倍の速さで転送することを表している。その名のとおり、DDR SDRAMでは、同じ周波数のクロック信号で駆動されるSDRAMと比較して、2倍の転送レートを実現している。この2倍速がDDR SDRAMの最大の特徴である。また「SDRAM」という単語が名称に含まれているのは、DDR SDRAMがSDRAMを技術的なベースとして設計された、いわば「SDRAM」*1の改良版(後継)であることを意味している。SDRAMから「改良」されているのは速度だけではなく、消費電力の低減なども含まれている。

*1 DDR SDRAMと区別するため、従来のSDRAMを「SDR SDRAM」と呼ぶことがある。「SDR」とは「Single Data Rate」の略。

■次世代メイン・メモリとしてのDDR SDRAMのロードマップ

 グラフィックス・カードの表示用メモリとして実績を積んできたDDR SDRAMは、まもなくメイン・メモリ用途にも本格的に利用されようとしている。本稿を執筆している2000年12月上旬の時点では、搭載PCの出荷こそ日本ではまだ発表されていないものの、DDR SDRAMのメモリ・モジュールや対応の自作向けマザーボードをエンド・ユーザーが入手できるようになっている。

 メイン・メモリ用として最初に登場したDDR SDRAMは、PC100/PC133メモリと同じ100M/133MHzで動作するDDR200/DDR266というバージョンだ。その後、以下の図のように、クロック周波数を高めたバージョンが順次登場する予定である。

メイン・メモリ用DDR SDRAMの量産出荷スケジュール

この図は、DRAMベンダであるMicron Technologyが発表した資料をベースにしている。一番下の「プロセッサのクロック周波数」は、編集部で調べたAMD Athlon系列とIntel Pentium 4系列の予定である。DDR SDRAMについては、Micron以外のDRAMベンダのスケジュールとは若干異なる場合もある。図中、「DDR266」などとあるのは、DDR SDRAMチップ単体を指し示す規格上の呼称で、「266」や「200」の部分がクロック周波数の2倍の値を表している。このチップをいくつかまとめてメモリ・モジュールとしたものも規格化されており、「PC2100」などという呼称で表す。こちらの「2100」は、メモリ・モジュールとして最大データ転送速度を表している(メモリ・モジュールの詳細については次ページで後述する)。

 このようにDDR SDRAMは、プロセッサほどではないが、年々データ転送速度を高めていく予定である。また、この高速化は主に製造プロセスの微細化によるもので、メモリ容量も同様に増加していく。2000年には64Mbitsから128Mbitsへの移行が進んだが、2001年には256Mbitsへの移行が本格的に始まるはずだ。

■DDR-IIでさらに高速化

 スケジュールの図中で、DDR200〜333までは「DDR-I」と呼ばれる同一のアーキテクチャが採用される。つまりメモリ・チップとしての構造などは同じで、プロセス・ルールの改良などでクロック周波数を高めていく予定だ。これに対し、DDR400からは「DDR-II」という新しいアーキテクチャに変更される。まだ仕様が完全に固まっていないため詳細は不明だが、基本的にDDR-Iをベースに改良した規格になるという。DRAM内部の記憶回路に対して外部インターフェイスの速度を4倍に高める(DDR-Iは2倍速)ほか、より高いクロックに対応できるよう、電気信号の振幅電圧を下げたり、転送プロトコルを簡素化したり、といった細かい工夫がなされる。DDR-IIの最大転送速度は、メモリ・モジュールのレベルで6400Mbytes/sに達するとされる。

DRAMベンダの態勢は準備万端!?

 上図のMicron Technology以外にも、主要なDRAMベンダはすべてDDR SDRAMを推進しており、すでにチップの量産を開始しているベンダもある。Micron TechnologyやInfineon Technologies、Hyundai Electronics Industries、エルピーダメモリ(日本電気と日立製作所のDRAM部門を分離・併合した合弁会社)といった主要なDRAMベンダは、チップセット・ベンダのVIA TechnologiesやAMDが開催したDDR SDRAM関連フォーラムに参加し、DDR SDRAMへの積極的な姿勢を打ち出している。比較的Rambus寄りの姿勢が目立つSamsung Electronicsも、実はDDR SDRAMの量産を開始している。

 このようにDDR SDRAMチップの生産態勢は、順調に整えられてきているといえる。Direct RDRAMがデビューしたときのように、生産量が少なく高値安定という事態は考えにくい。

クライアントPC向けチップセットも量産中

 DDR SDRAMを制御するPC用チップセットも、各社が開発を進めている。詳細は「ニュース解説:Intelに競合するチップセット・ベンダの動向」を参照していただきたい。この記事で紹介したチップセットのうち、一部はマザーボードに搭載され、市場に現れ始めた。先行しているのはAthlonプロセッサ用チップセットで、AMDが開発したAthlon用チップセットのAMD-760は、搭載マザーボードの市販が始まっているほか、米国では搭載PCが流通し始めている。またALi製のALiMAGiK 1も、採用マザーボードの市販が開始されている。

 そのほか、出遅れていたSiSもDDR SDRAM対応チップセットを発表した(下の写真)。

DDR SDRAMに対応したクライアントPC向けチップセット
AMD製のAMD-760 ALi製のALiMAGiK 1
FSB(フロントサイド・バス)を266MHzに高めたAthlonにも対応した、AMDのリファレンス的なチップセットである。 これはAthlon用だが、Pentium III用DDR SDRAMチップセット「Aladdin Pro 5」も発表済みである。
VIA Technologies製のApollo Pro266 SiS製のSiS635
これはPentium III用である。Athlon用チップセットApollo KT266はこれよりやや遅れて登場する模様だ。 同社が得意とするシングル・チップ構成を採用する。Athlon用のSiS735も同時に発表された。

 現在、チップセットのシェアで第1位のVIA Technologiesも、Pentium III向けのApollo Pro266シリーズを発表済みで、登場も間近だという。そのほかPentium 4用DDR SDRAMチップセットも計画中と聞く。クライアントPC向けチップセットもDDR SDRAMチップ同様、準備万端というところだろう。

サーバ向けチップセットも進行中

 サーバでもDDR SDRAMを利用するためのチップセットが準備されている。ベンダはIntelとServerWorksの2社で、開発コード名「Foster」*2というIntelの新型プロセッサで2〜4プロセッサのマルチプロセッサ構成をサポートするという。現時点では両社とも詳細を明らかにしていないが、順調にいけば2001年中にDDR SDRAM搭載のIAサーバが発売されることになるだろう。

*2 Pentium 4のコアを使用するサーバ向けプロセッサ。Pentium IIIに対するPentium III Xeonのような位置付けの製品と思われる。2001年中には出荷される予定だ。
 
  関連記事(PC INSIDER内)
動き始めたDDR SDRAMと対抗するRambus
Intelに競合するチップセット・ベンダの動向
 
 

 INDEX
[技術解説]次世代標準メモリの最有力候補「DDR SDRAM」の実像
    1.DDR SDRAM DIMMの特徴
    2.倍速化と省電力のテクノロジー
    3.DDR SDRAMに死角はないのか?
 
「PC Insiderの技術解説」

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