ニュース解説

―IDF Spring 2001 Japanレポート―
Intel勝利の方程式を語る
 
1.モバイル向けプロセッサがサーバを救う?

デジタルアドバンテージ
2001/04/24


「リセッション(recession:景気後退)はいつか終わる。次の景気上昇期に成長できるように投資の手を緩めてはいけない」

 これは、Intelの重役が最近の講演でよく使うセリフだ。2001年4月17日〜19日の3日間にわたって開催された、インテルが主催するハードウェア技術者向けのカンファレンス「IDF Spring 2001 Japan(以下、IDF Japan)」に込められた真のメッセージは、この言葉にあったようだ。「Intelが市場のリーダーであるのは、常に次の環境に向かって積極的な投資を展開しているためであり、見習ってほしい」というメッセージでもある。

基調講演は積極投資分野が中心

2日目に基調講演を行ったパットリック・ゲルシンガー氏
Intelの研究開発部門の責任者として、現在、Intelが積極的に開発投資を行っている分野の解説を行った。同氏は、P2Pコンピューティングの開発責任者でもある。

 もちろんIntelも、上述のセリフを肝に銘じているとみえて、相変わらず積極的な投資計画を発表している。基調講演でも、Intelが現在大きく投資している次世代携帯電話、光伝送ネットワーク、半導体製造技術を中心とした研究開発、Pentium 4とモバイルPC、e-Businessといった分野が中心に紹介された。

 次世代(3G)携帯電話では、欧米メーカーが次々と端末機器の製造から撤退する中、先行する日本メーカーとの提携を模索している。そうした背景からか、Analog Devicesと共同開発したマイクロ・シグナル・アーキテクチャ(MSA)を採用した次世代携帯電話向けDSPのデモを初めて行うなど、積極的に次世代携帯電話への対応をアピールした。

 また、Intelの副社長兼テクノロジ&リサーチ・ラボ最高技術責任者のパトリック・ゲルシンガー氏は、Intelの研究開発部門「Intel Lab.」の紹介を行った。Intel Lab.は、世界45カ所に6000名の研究開発者を抱えているという(Intelでは、この6000名を含め、全体では2万5000人が何らかの開発に携っている)。この6000人は、製品とは直接関係のない、シリコンとその製造プロセス、マイクロアーキテクチャ、ネットワーク技術、インターフェイス技術、ストリーミング・ビデオ技術などを研究・開発している。シリコン/製造プロセスの研究・開発では、今後10年間に渡ってムーアの法則(半導体チップの集積度が18カ月ごとに2倍になるという経験則)を維持することを使命としているという。2010年には、400mmのダイ・サイズの中に20億個のトランジスタを詰め込み、30GHzのクロックで動作させることを可能にすると述べた。

 また、Intelが強いシリコン技術を生かし、MEMS(Micro-Electro Mechanical Systems:半導体微細加工技術を使って可動部品と電子回路を集積した微小な機械システム)への参入をリサーチ中であることも明らかにした。MEMSをバイオ技術に適用することで、DNA解析などに応用可能だという。そのほか、無線LANの各種規格のうち、5GHz帯を利用するIEEE 802.11aを強く支持することや、ピア・ツー・ピア・コンピューティング(P2Pコンピューティング)をいっそう推進すると述べた。

 基調講演とともに、テクニカル・セッションと呼ばれる開発者のためのセミナーが数多く開かれた。テクニカル・セッションでは、テーマごとに、設計のポイントや留意点など、何らかの形でIntel製品を利用する今後の機器開発に必要となる情報が提供される。今回は、主にサーバならびに無線LAN、Easy Of Use(EOU)の3つのテクニカル・セッションの概要をお伝えしたい。

無線LANはIEEE802.11bから802.11aへ

 パトリック・ゲルシンガー氏が基調講演で表明したように、Intelでは無線LAN規格として5GHz帯を利用するIEEE 802.11aを推進する。すでに米国で販売しているHomeRF製品の次期製品開発中止を決め、HomeRFよりもIEEE802.11にシフトすることを明らかにしている(日本でのHomeRF製品の販売開始直前に決定された)。理由は、同じような規格の製品が市場では複数並立できないということから、IEEE 802.11を選択したようだ。IEEE 802.11bの普及が早く、低価格化が進んだため、HomeRFの市場がなくなってきたと判断したのだろう。さらに、11Mbits/sのIEEE 802.11bよりも54Mbits/sと高速なIEEE 802.11aの方が将来的に有望である、とIntelは踏んだようだ。特に欧米では、IEEE 802.11aの方が多くのチャネル(20チャネル)を確保できることから、オフィスなどで複数のアクセス・ポイントを設置する際の周波数選択が容易になるというメリットがある(日本ではIEEE 802.11bと同様4チャネル分しか確保できない。ただし、現在5GHz帯の利用に関しては総務省が法改正による多チャネル化を検討している)。

  5150〜5250MHz 5250〜5350MHz 5470〜5725MHz 5725〜5875MHz(ISM)
米国 U-NII band FCC Part15 subpart E U-NII band FCC Part15 subpart E 不許可 U-NII band FCC Part15 subpart E
出力制限 50mW(屋内のみ) 250mW(屋内/屋外) 1W(屋内/屋外)
免許 免許不要 免許不要 免許不要
共存 なし なし なし
ヨーロッパ ERC Decision (99)23 ERC Decision (99)23 ERC Decision (99)23 ISM
出力制限 200mW(屋内のみ) 200mW(屋内のみ) 1W(屋内/屋外) 25mW
免許 免許不要 免許不要 不要 免許不要
共存 割当て帯域20MHz DFS&TPC 必須 割当て帯域20MHz DFS&TPC 必須 割当て帯域20MHz DFS&TPC 必須
日本   検討中 不許可 不明
出力制限 200mW  
免許 免許不要 取得済(FWA)
共存 なし
カナダ 免許免除のLAN(5GHz帯)のためのスペクトル利用ポリシー「SP-5150MHz 1999年10月」
出力制限 200mW(屋内のみ) 1W(屋内/屋外) 不許可 4W(屋内/屋外)
免許 免許免除 免許免除 免許免除
共存 なし なし なし
オーストラリア オーストラリア・コミュニケーション委員スペクトル計画チーム文書「SP 1/100 計画 2000年5月」
出力制限 200mW 200mW 不許可 1W
免許 個別ライセンス 個別ライセンス 個別ライセンス
共存 DFC/TPC*1推薦 DFC/TPC推薦 DFC/TPC推薦
各国の5GHz帯の状況
*1 DFS(Dynamic Frequency Selection)/TPC(Transmitting Power Control):同じような周波数帯を利用する機器のための動的な周波数選択と出力制御

 IEEE 802.11aを推進するというIntelのこの決定により、現行の無線LAN製品で広く使われているIEEE 802.11bの市場寿命は短命化する可能性が出てきた。すでにIntelでは、IEEE 802.11bを導入する際には、IEEE 802.11aの存在を考慮に入れることを勧めている。具体的には、アクセス・ポイントの設置位置をIEEE 802.11aに置き換え可能なように考慮したり、大規模なIEEE 802.11b導入を控えたりすることを提案している。2001年末からIEEE 802.11aを採用した製品が出荷されると、かつてイーサネットが10BASE-Tから100BASE-TXへ移行していったように、IEEE 802.11bからIEEE 802.11aへの移行が3年から5年ほどで行われると予測している。IEEE 802.11a対応のアクセス・ポイントには、IEEE 802.11bとの互換機能を装備することも推奨している。ただ、いまのところIEEE 802.11bがそれほど普及していないことに加え、コストアップにつながることから、このようなデュアル・モードを備えたアクセス・ポイントは販売されない可能性もある。現在、IEEE 802.11bの大規模な導入を検討している企業などは、IEEE 802.11aの動向をチェックしておいた方がよいだろう。

変革期を迎えたサーバ市場への対応

 今回のサーバに関するセッションでは、主に昨年から出荷が大幅に増えている薄型サーバ、特に1Uサーバの設計に関する話題が中心となった。1Uサーバでは、ケース内の冷却の問題が最も深刻なポイントだとして、多くの時間が割かれた。

基調講演でパトリック・ゲルシンガー氏が示した将来のマイクロアーキテクチャ
興味深いのは、Intel Xeonプロセッサで採用されるとうわさされている「マルチスレッドCPU」や、いままでも何度か開発がうわさされ続けた「複数CPUコアのオン・ダイ化」を挙げている点だ。

 また、2001年から2002年にかけて各社から出荷される予定のブレード型サーバ(超小型のCPUボードを複数枚、高密度で単一のケースに内蔵できるサーバ)では、発熱と消費電力の問題からモバイルPentium IIIが採用される可能性が高いと予想できる。これまでモバイルPC向けプロセッサは、どちらかというとニッチな分野向けであり、同じクロック周波数なら、デスクトップPC向けプロセッサに比べて少し遅れて出荷されるのが一般的だった(低消費電力のために設計が難しいという要因もあるが)。それが、ここにきてサーバ向けにも組み込まれることになれば、モバイルPC向けプロセッサに対するIntelの力の入れ方が変わってくる可能性もある。従来はモバイルPC市場に限定されていた低消費電力プロセッサをサーバ向けにも流用できるならば、Intelにとって投資効率が大きく向上するからだ。1Uサーバやブレード型サーバなど高密度実装型サーバが、モバイルPC向けプロセッサの開発を加速させることになるかもしれない。

 これまで開発コード名「Foster(フォスター)」で呼ばれてきたサーバ向けx86プロセッサXeonの概要も明らかになった。Xeonは、Pentium 4で採用されたマイクロアーキテクチャ「NetBurstアーキテクチャ」を採用したプロセッサだ。つまり、Pentium 4のサーバ版という位置付けとなる。Xeonには、デュアルプロセッサ対応版の「Xeon DP」とマルチプロセッサ対応版の「Xeon MP」の2種類がラインアップされる。

 Xeon DPは、2001年第2四半期に発表される予定だ(つまり、近々発表となる)。ソケットのピン数は603ピンと、Pentium 4の423ピンから大幅に追加されている。これは、デュアルプロセッサへの対応とともに、チップ内部の温度監視などの機能追加が図られているためだ。これらの拡張機能は、Pentium III Xeonでも採用されている。またXeon MPは、最大4プロセッサに対応し、512Kbytesもしくは1Mbytesの3次キャッシュが同梱される。Xeon MPのピン数などは、今回明らかにされなかった。出荷は、2001年後半となっている。

プロセッサの開発コード名 マルチプロセッサ対応 2次キャッシュ 3次キャッシュ 管理機能 出荷時期
Foster DP 1〜2 256Kbytes
温度センサー、温度モニタ、OEM ROM、PIROM、MCA 2001年第2四半期
Foster MP 1〜4 256Kbytes 512Kbytes もしくは 1Mbytes 同上 2001年後半
Intel Xeonの主な仕様
ServerWorksのチップセットに関する資料に掲載されていた「Foster」の主な仕様。Foster MPでは2次キャッシュが増量されるのではなく、新たに3次キャッシュが実装されるようだ。

 このXeon DP/MPに対応したサーバ向けチップセットは、ServerWorks(現Broadcomの一部門)が開発しており、開発コード名「Grand Champion(グランド・チャンピオン)」で呼ばれている。「Grand Champion」は、メイン・メモリにDDR SDRAMを採用し、PCI-Xに対応したもの。Xeon向けサーバ用チップセットとしては、最初の製品であり、当面は唯一の製品となりそうだ。というのも、どうやらIntelでは、このクラスのサーバ向けチップセットを出荷する予定は当面ないと思われるからだ(ServerWorksに依存している)。実際、すでにIntelは、Pentium III/Pentium III Xeon用のエントリ/ミドルレンジ・サーバ向けのチップセットをリリースしていない。理由は不明だが、チップセットの開発リソースをItaniumとデスクトップPC/ノートPC向けに集中させるためと予想される。

 さらに上位のサーバ向けには、Itaniumが位置付けられる。Itanium搭載サーバは、すでに「パイロット・リリース」として特定顧客向けに限定出荷されているが、6月までには「プラットフォーム・リリース」と呼んでいる正式出荷の段階に入る。やっと製品が出荷になるという段階に入るのだが、すでに開発コード名「McKinley(マッキンリー)」で呼ばれる次期Itaniumに関する情報提供が始まっている。今回のIDF Japanでも、McKinleyを採用したデュアルプロセッサ対応の1Uサーバに関するスタディ・モデルの紹介があった。

 この1Uサーバは、発熱の問題から水平方向に回転する大型の冷却ファンを採用したことや、高さの制限からVRM(Voltage Regulator Module:プロセッサ用電源供給モジュール)と一体化したプロセッサ・ユニットを開発したことなどについて、解説が行われた。このプロセッサ・ユニットは、Intelがパッケージ技術メーカー「INCEP Technology」と共同開発したもので、VRMからプロセッサへの電源供給の仕方などに工夫が凝らされたものだという。McKinleyは、現状のItaniumと異なり、基本的にPGAパッケージで提供されるということであった。ただ、VRMなどを一体化した、現状のItaniumと同様のパッケージでの提供もありうるという。なお、米国のIDF Spring 2001などで公開したものは、INCEP Technologyと共同開発したパッケージで、Intelから提供されるものとは異なるらしい(Intelが販売するVRM一体型のパッケージでは、1Uサーバに採用できないということであった)。

0.13μmプロセスのモバイルPentium IIIの概要を解説

1日目の基調講演を行ったアナンド・チャンドラシーカ氏が示した次世代ノートPCの姿
次期モバイル向けプロセッサが開発コード名「Tualatin」であり、チップセットが「Intel 830M」と呼ばれるものであることを明らかにした。

 ノートPC向けのテクニカル・セッションでは、0.13μmプロセス製造の開発コード名「Tualatin(テュアラティン)」で呼ばれる次期モバイルPentium IIIに関していくつか新しい情報が公開された。

 最も大きな話題は、内蔵2次キャッシュが従来発表から2倍の512Kbytesに増量され、133MHzのFSBをサポートすることを公式に認めたことだ。これにより、モバイルPentium IIIの性能を高め、モバイル向けのPentium 4が投入可能になるまでの間、ノートPCとデスクトップPCの性能格差を埋めるのが狙いだろう。また、前述のようにモバイルPentium IIIは、薄型サーバでも利用されることになるため、2次キャッシュの増量はサーバにとっても大きなメリットとなる。このほか機能面では、IMVP II(Intel Mobile Voltage Positioning II)や、新しい省電力モードであるDeeper Sleepモードの追加など、省電力面の拡張が行われている。ちなみにIMVPとは、プロセッサ・コアに供給する電力の電圧をコントロールする技術だ。これまで、モバイルPentium IIIがスリープ状態のときのコア電圧は、動作可能な最低電圧よりずっと高いレベルを維持するように設計されてきた。IMVP IIでは、このスリープ時のコア電圧を下げることで、プロセッサの平均消費電力を低減させる。

 Tualatinの出荷は、2001年第3四半期に予定されている。同時に対応のチップセットとして、開発コード名「Almador(アマドール)」で呼ばれている「Intel 830M」が出荷される予定だ。Intel 830は、Intel 815の機能拡張版でグラフィックス機能が強化されている。今年中にノートPCのリプレースを予定している場合は、Tualatinの動向に注目しておいた方がよいだろう。

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  更新履歴
【2001/04/25】 ページを2分割するとともに、「基調講演でパトリック・ゲルシンガー氏が示した将来のマイクロアーキテクチャ」と「1日目の基調講演を行ったアナンド・チャンドラシーカ氏が示した次世代ノートPCの姿」の画面2点を追加しました。
 
   
     
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