ニュース解説

IDFで明らかになったインテルのプロセッサ・ロードマップ(2001年春編)

小林章彦
2001/03/13

 2001年2月26日から3月1日の4日間に渡って、米国カリフォルニア州サンノゼでインテル・デベロッパー・フォーラム(IDF:インテルが開催する開発者向けのイベント)が開催された。ここで、2001年のインテルのプロセッサ・ロードマップについていくつか明らかになった事実がある。今回は、「ニュース解説:CeleronのFSB 100MHz化からみるインテルのプロセッサ戦略」で紹介したプロセッサのロードマップをアップデートするとともに、IDFで明らかになった事実を紹介しよう。

デスクトップPCはPentium 4に移行する

 「CeleronのFSB 100MHz化からみるインテルのプロセッサ戦略」でも、2001年の後半にデスクトップPC向けのプロセッサは、Pentium IIIからPentium 4への移行が始まると述べた。その後インテルは、このPentium 4への移行をさらに早めることを決めたようだ。Pentium 4の発表後も続いていたPentium IIIのテレビ・コマーシャルは、まず米国からPentium 4へと切り替わった(Intelの「Pentium 4のテレビ・コマーシャル開始のニュースリリース」)。近々、日本のコマーシャルもPentium 4へと切り替わるようだ。

 こうしたマーケティング的な側面からの変更に加え、Intelはプロセッサ・ロードマップの面でもこの動きを支援する。0.13μmプロセスで製造するデスクトップPC向けPentium IIIは、出荷するかどうかで揺れていたようだが、IDFの時点で出荷はほぼ取りやめに決まったようだ。これで、Pentium IIIの動作クロックは、1.2GHz程度が上限となり、ハイエンドPCを中心にPentium 4への移行が進むことになると思われる。

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IntelのPentium 4のメモリ戦略
IDFにおけるインテル・フェロー(Intelの技術職の役職)のピート・マックウィリアムズ(Pete McWilliams)氏のプレゼンテーション。このプレゼンテーションを見ても分かるように、現在のIntelはDirect RDRAMをPentium 4の主たるメイン・メモリとして位置付けている。DDR SDRAMは、あくまで将来における選択肢の1つでしかない。

 Pentium 4については、メモリの対応がキーポイントになることを何度か述べてきたが、この点についても動きがあった。詳しくは、「元麻布春男の視点:Pentium 4のメモリはやはりDirect RDRAM」を参照していただきたいが、メモリ・ベンダがDirect RDRAMの増産を決定したことで、年末に向かってDirect RDRAMの価格低下が見込まれる。また、SDRAM対応のPentium 4用チップセット「Brookdale(開発コード:ブルックディール)」は、2001年後半、クリスマス商戦に間に合うタイミングで出荷されることが明らかになっている。Brookdaleの登場で、Pentium 4を搭載したPCが15万円以下でも十分に提供可能になるため、メインストリームでもPentium IIIからPentium 4への移行が可能になる。各PCベンダの2001年冬モデルでは、Celeronがカバーするエントリ・クラスのPCを除き、その多くがPentium 4搭載になるだろう。

 さらに、0.13μmプロセスによるPentium 4プロセッサである「Northwood(開発コード名:ノースウッド)」は、Brookdaleとほぼ同時に出荷となる可能性が高い。Northwoodでは、0.13μmプロセス化によって、高性能化と低消費電力化を実現すると同時に、ダイ・サイズの小型化による低価格化が実現される。つまりクリスマス商戦時には、Pentium 4が普及する要因が揃うことになる。

 なおNorthwoodの出荷時点で、現状のPentium 4からパッケージが変更されることになりそうだ。新しいパッケージは、現状のPentium 4よりも小型になり、ピン間隔なども変更される。そのため、現状のPentium 4システムでは、Northwoodがそのままでは搭載できない可能性が高くなった(現状のパッケージを採用したNorthwoodが出荷される可能性もあるが)。現状のPentium 4システムの購入を検討している方は、この点を考慮しておいたほうがよいだろう。

 2002年第1四半期に入ると、DDR SDRAMに対応したチップセットが登場し、PCベンダの選択肢は広がることになる。ただ、インテルではあくまでPentium 4がサポートする主流のメモリはDirect RDRAMだとしており、SDRAMやDDR SDRAMは一部の低価格なバリューPC(ある程度の性能を持った普及価格帯のPC)向けに位置付けている。メモリ価格の動向にもよるが、インテルの現状のロードマップでは、DDR SDRAMはニッチなマーケット向けとなる。

ノートPC向けプロセッサは0.13μmプロセスのPentium III

 デスクトップPCは2001年内にPentium IIIからPentium 4への移行を行うが、ノートPC向け(モバイル系)は相変わらずモバイルPentium III/モバイルCeleronが主流となる。ノートPC向けのPentium 4は、2002年第1四半期まで投入されない。とはいえ2001年第3四半期には、0.13μmプロセスで製造したモバイルPentium III「Tualatin(開発コード名:テュアラティン)」が投入され、順次Tualatinに移行することになる。Tualatinでは、高い動作クロックを実現しながら、ノートPCで求められる低消費電力化を実現する。

インテルのノートPC向けプロセッサの予定
Intelの上級副社長 Paul Otellini氏がキーノート・スピーチで明らかにしたインテルのノートPC向けプロセッサの予定。2001年第1四半期中にもモバイルPentium IIIが1GHzに到達し、第3四半期には0.13μmプロセスで製造されたモバイルPentium III(開発コード名:Tualatin)が投入されることが明らかになった。

 通常版(消費電力を特に低く抑えないバージョン)のモバイルPentium IIIでは、動作クロックが重視され、将来的には1.2GHz以上のバージョンが出荷される。また低電圧版や超低電圧版では、消費電力の低減が重視され、動作クロックは低く抑えられることになる。現状の低電圧版では700MHzが最大の動作クロックであるが、Tualatinによって低電圧版でも動作クロックが1GHzに到達する(インテルの「低電圧版モバイルPentium IIIに関するニュースリリース」)。なおTualatinに対応するチップセットとしては、Intel 815EMをベースに内蔵グラフィックスの性能を強化した「Intel 830M」が出荷される。

サーバ向けのPentium 4はIntel Xeonに

Intel Xeonの新しいロゴ・マーク
Intel Insideの下に大きく「Xeon」と描かれたロゴ・マーク。サーバ向けとしてのブランド・イメージを確立する目的があるようだ。

 サーバ向けプロセッサのうちIA-32系では、2001年第2四半期の終わり頃にサーバ版Pentium 4が出荷される。これは、Pentium IIIに対するPentium III Xeonと同様、Pentium 4 と同じアーキテクチャを採用したサーバ向けプロセッサである。サーバ版Pentium 4は、これまで開発コード名「Foster(フォスター)」で呼ばれていたが、IDFで「Intel Xeon」というブランドになることが発表されている(「Intel Xeon」ブランドに関するホームページ)。これは、主にエントリ・サーバでPentium IIIとPentium III Xeonが混在し、プロセッサのセグメントが不明確になっている点を解消するためだ。Pentium 4世代では、デスクトップPC/ノートPC向けをPentium 4、サーバ向けをXeon、と明確にブランドを分けることで、まったく同じコアを採用したプロセッサであっても用途が分かりやすくなるというメリットがある。

 Intel Xeonが投入されることが明らかになっているが、一方ではPentium III Xeonも、動作クロックの向上や内蔵2次キャッシュの容量の増加など、引き続き性能強化が行われる。また、デスクトップPC向けとしては、0.13μmプロセスで製造されるPentium IIIはキャンセルされたが、サーバ向けとしては製造されることになる。特に、最近では1Uサイズの薄型サーバの市場が拡大しており、サーバでも低消費電力が求められる傾向にある。0.13μmプロセス版は、この市場に向けて投入されることになる。さらに、0.13μmプロセス化によって、大容量の2次キャッシュが内蔵可能になるうえ、4プロセッサ以上のマルチプロセッサへの対応などが行えることから、Intel Xeonより上位のプロセッサにPentium III Xeonが位置付けられることになる。

 一方、IA-64系のItaniumシステムは、現在パイロット・リリースと呼ばれる一部ユーザー向けに限定された出荷が行われているが、5月にも各サーバ・ベンダから正式な出荷が開始される。すでにIDFでは、次期ItaniumプロセッサとなるMcKinley(開発コード名:マッキンリー)が公開されたが、McKinleyが出荷されるのは2002年に入ってからとなる。開発コード名「Marced(マーセド)」で呼ばれた現在のItaniumも、プロセッサがデモされてからシステムが出荷されるまで2年近い時間がかかっている。こうしたハイエンドのサーバでは、高い信頼性が要求されるため、テスト期間やソフトウェアの開発期間に多くの時間が割かれる傾向にある。今回のIDFでMcKinleyが公開されたのは、こうした時間を見越したためと思われる。また、Itaniumシステムの正式出荷を前にMcKinleyを公開することで、Itaniumシステムが一過性のものでないことを明らかにし、Itaniumへの投資が無駄にならないことを示す目的もあったのかもしれない。

 ざっと、インテルのプロセッサ・ロードマップを見てきたが、2001年の重要なポイントは、デスクトップPCのPentium IIIからPentium 4への移行、ノートPCの0.13μmプロセス製造によるモバイルPentium IIIの投入、サーバ向けの0.13μmプロセス製造によるPentium III Xeonとサーバ版Pentium 4のIntel Xeonである。

 米国は景気後退が始まり、PC市場が冷え始めている。それを裏付けるように、Intelの2001年第1四半期の売り上げ予測は、予想よりも大幅に低くなりそうだ(Intelの「2001年第1四半期の売り上げ予測に関するニュースリリース」)。こうした中で、PC市場が成長を続けるには、デスクトップPCのPentium IIIからPentium 4への移行が成功するかどうかがカギとなる。PCの買い換え需要を刺激できず、この移行が順調に進まなければ、PC市場全体がさらに冷え込むことになるだろう。果たして、インテルの思惑どおりに移行が行われるのかどうか、引き続き動向に注目していこう。記事の終わり

  関連記事
CeleronのFSB 100MHz化からみるインテルのプロセッサ戦略
Pentium 4のメモリはやはりDirect RDRAM

  関連リンク
Pentium 4のテレビ・コマーシャル開始のニュースリリース
インテルの低電圧版モバイルPentium IIIに関するニュースリリース
「Intel Xeon」ブランドに関するホームページ
2001年第1四半期の売り上げ予測に関するニュースリリース

「PC Insiderのニュース解説」

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