ニュース解説

Intelが超微細CMOSトランジスタを開発
―プロセッサの10GHz動作にメド―

小林章彦
2000/12/15

 2000年12月11日、米Intel社は「ゲート長が30nm(1ナノメートルは10億分の1メートル)、ゲート酸化膜が分子3個分の厚みしかないトランジスタの開発に成功した」と、IEEE国際電子デバイス会議2000(2000 IEEE International Electron Devices Meeting:IEDM)で発表した(Intelの超微細CMOSトランジスタ開発に関するニュースリリース)。Intelによれば、これにより、4億個以上のトランジスタを集積した、10GHz駆動のプロセッサが実現可能だとしている。ちなみに、Pentium IIIは同梱される2次キャッシュを含めて2800万個のトランジスタを集積している。

0.07μmプロセスが注目を集めるワケ

Intelが発表した製造プロセスのロードマップ(プレゼンテーション資料より)

2003年に0.10μmプロセス、2005年に0.07μmプロセスが実現するとしている。0.07μmプロセスで製造されるトランジスタは、1V以下(論文では0.85V)での動作が可能だという。

 今回発表したトランジスタは、0.07μmプロセスの製造ラインで実現される(0.13μmプロセスでは、ゲート長は70nmとなる)。現在のPentium IIIは0.18μmプロセスで製造されており、0.07μmプロセスは0.13μm、0.10μmに続く、3世代先の製造プロセスとなる。

 このIntelによる0.07μmプロセスの見通しが注目されるのには、ワケがある。これまで0.10μmプロセスよりも細かい製造プロセスでは、ゲート長が短くなるせいで、トランジスタが導通し始める電圧(しきい値)が低下してリーク電流が増大するという、短チャネル効果が顕著になってくる。短チャネル効果が生じると、リーク電流により消費電力が増大するだけではなく、しきい値のばらつきが大きくなるため、半導体回路として正常な動作が保証されなくなる。この問題により、これまでの製造プロセスの延長的な方法では実現が難しい、と言われてきた(シリコン以外の素材を用いるなどの解決が考えられてきた)。今回のIntelの発表は、量産可能な技術でも、この問題を解決することが可能であることを証明した、画期的な発表でもある(研究室レベルでは、いくつかメーカーが0.10μm以下のプロセスでのトランジスタ製造に成功している)。

Intelの製造プロセスの歴史

 ここ数年におけるIntelの製造プロセスの歴史を振り返ると、MMX Pentiumの世代では、0.35μmプロセスで製造が行われ、Pentium II-333MHzから0.25μmプロセス(1998年1月26日発表)に移行した。1999年10月25日に0.18μmプロセスによるPentium III(500MHz以上)とPentium III Xeon(600MHz以上)の発表を行っており、現在に至っている。

 また2000年11月7日にIntelは、次世代の0.13μmプロセスのラインが完成したことも発表しており、Pentium 4で採用される予定だ。このプロセスでは、1億個のトランジスタを集積し、数GHzの動作が可能だとしている。2001年夏頃より0.13μmプロセスで製造したプロセッサの出荷が開始できるとしている。

 このようにIntelでは、ほぼ1年半ごとに新しい製造プロセスに移行していることが分かる。通常、製造プロセスは(製造装置などの都合により)1/√2(約0.7倍)ずつ進化している。これにより、同じ設計のプロセッサであっても、製造プロセスだけを変更することで、面積を半分にすることができる。つまり、同じウエハーで約2倍の数のプロセッサが製造できることになり、ひいては大幅なコスト・ダウンを望めるようになる。もちろん、1つのプロセッサにより多くのトランジスタを実装し、性能を向上させることも可能だ。たとえば、モバイルPentium IIでは、0.18μmプロセスへの移行と同時に、2次キャッシュをプロセッサ・ダイに同梱することで高速化を果たしている。

0.07μmプロセスはNetBurstアーキテクチャの最終型で採用か?

 これまでのペースが守られるとすれば、製造プロセスの推移は、2001年中ごろから2002年末までが0.13μmプロセス、2003年から2004年中ごろまでが0.10μmとなり、0.07μmプロセスは2004年中ごろから2005年にかけて始まるはずだ。ただし今回のニュースリリースでIntelは、5年から10年先に0.07μmプロセスが実現可能だとしており、今までのペースよりは若干遅れると予想しているようだ(公開されているプレゼンテーション資料では、2005年に0.07μmプロセスに移行するとしている)。プロセッサのマイクロアーキテクチャの寿命が5年程度であることを考えると、0.07μmプロセスの採用時期は、Pentium 4で採用されたNetBurstアーキテクチャの最終型か、次世代アーキテクチャへの移行期に当たる。

10GHz駆動プロセッサで実現されること

 Intelによれば、0.07μmプロセスで製造された10GHz駆動のプロセッサが生まれると、リアルタイムの音声翻訳や、視覚的に人の顔を認識して警報システムのオン/オフを自動的に制御するシステムなどが実現可能だという。また、現在では数億円もする大型汎用機と同等の性能を持つデスクトップPCが20万円程度で実現するとしている。

 なおIEEE国際電子デバイス会議2000では、IBMも銅配線やシリコン・オン・インシュレーター(silicon-on-insulator:SOI)、低誘電体層間絶縁膜(low-k)などの技術を統合した0.13μmプロセス技術「CMOS 9S」を発表している(IBMの世界最新の半導体製造技術の発表に関するニュースリリース)。同プロセスは、2001年にIBM POWER4プロセッサに採用され、次世代のIBM e-Serverに搭載される予定だという。

 このようにIntel以外にも各社が新しい製造プロセスを模索している。一方、今回のIntelの発表だけで、夢のような超高性能PCが生まれるというのは早計にすぎるだろう。ただ、大きな障害の1つに解決の光が見えたことは間違いない。さらなる技術革新に期待したい。 記事の終わり

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超微細CMOSトランジスタ開発に関するニュースリリース
世界最新の半導体製造技術の発表に関するニュースリリース
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