ニュース解説

CeleronのFSB 100MHz化からみるインテルのプロセッサ戦略

小林章彦
2001/01/06

 恒例となった新年早々のIntel x86プロセッサの発表が2001年も行われた(インテルのバリューPC向けプロセッサ発表のニュースリリース)。2001年1月3日に発表されたのは、Celeron-800MHz。Celeronブランドの最速プロセッサであり、デスクトップPC向けCeleronとして初めてFSB(フロントサイド・バス)を100MHz化したものだ(ノートPC向けCeleronのFSBはすでに100MHzである)。

発表日 発表されたプロセッサ 発表に関するニュースリリースのURL
1996年1月4日 Pentium-150MHz/166MHz http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press/pp150166.htm
1997年1月8日 MMX Pentium http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press/ppmt.htm
1998年1月12日 Mobile MMX Pentium-166MHz/266MHz http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press98/266166.HTM
1999年1月4日 Celeron-400MHz/366MHz http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press99/990105.htm
1999年1月5日 Pentium II Xeon-450MHz http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press99/990106.htm
1999年1月7日 Mobile MMX Pentium-300MHz http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press99/990107.htm
2000年1月4日 Celeron-533MHz http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press2000/000105.htm
2000年1月12日 Pentium III Xeon-800MHz http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press2000/000113.htm
2001年1月3日 Celeron-800MHz http://www.intel.co.jp/jp/intel/pr/press2001/010105.htm
これまでIntelが新年に発表したプロセッサ(日付は米国発表日)

 CeleronのFSBが100MHz化されたことで、Pentium IIIとCeleronの性能差は縮まったことになる。なぜ、この時期にCeleronのFSBを100MHz化する必要があったのか? Pentium 4が発表された今、IntelはCeleronを今後どのように扱うつもりなのか? Intelの思惑を推測してみよう。

  Celeron Pentium III
FSB 66MHz/100MHz 100MHz/133MHz
2次キャッシュ容量 128Kbytes 256Kbytes
ストリーミングSIMD拡張命令のサポート
CeleronとPentium IIIの違い

なぜIntelは新年早々にプロセッサを発表するのか

 Intelが新年早々にプロセッサを発表するのは、この時期に米国で消費者向けのエレクトロニクス製品(最近ではコンピュータ関連製品が大部分を占めている)の展示会であるInternational CES(Consumer Electronics Show)が開催されるからだ。2001年のCESは1月6日から9日の4日間の会期で開催され、BluetoothUSB 2.0、デジタル・テレビ、ホーム・ネットワーク、広帯域ネットワークなどの製品展示が予定されている。CESの会期に合わせてIntelがプロセッサを発表することで、PCベンダ各社が最新プロセッサを搭載した家庭向けPCの新製品を展示できるようになる、という事情がある。新年最初の大きな展示会ということもあり、1年を占ううえでも、CESでのユーザーやバイヤーの反応は、ベンダにとって重要だ。また、Intelとしては新しいプロセッサをホームPC向けにアピールすることで、PC市場の裾野を広げ、拡販につなげたいという事情もある。

FSB 100MHz化の意味

2000年1月3日に米国で発表されたCeleron-800MHzとIntel 810E2チップセット
Celeron-800MHzの日本国内価格は1万9250円(1000個ロット時)。Intel 810E2チップセットは、従来のIntel 810EのI/Oコントローラ・ハブ(ICH)をIntel 815Eで採用しているICH2に変更し、4ポートのUSBとUltra DMA/100のサポートなどを実現したもの。

 CeleronのFSBが100MHz化されたのは、プロセッサ・コアとFSBの動作クロックの比が大きくなりすぎ、プロセッサ・コアのクロックを向上させても、実性能が上がらなくなりつつあるからだ。766MHz版プロセッサを66MHzのFSBで使用する場合、プロセッサ・コアとFSBの動作クロックの比は実に11.5:1にもなる。この比から逆算すると、FSBがPentium IIIと同じ133MHzなら、プロセッサ・コアの動作クロックは1.5GHzに相当する。ここまで動作クロックの比が大きくなると、メモリ・アクセスのたびにプロセッサ・コアが長い時間待たされてしまい、性能の向上は望めない。特に2次キャッシュ容量の少ないCeleronにとっては、限界水準に達していた(2次キャッシュ容量が多ければ、プロセッサ外部にあるメモリ・アクセスを低減できるため、前出のクロック比の影響を受けにくくなる)。

 そこでFSBを100MHz化することで、動作クロックの比を改善したわけだ。FSB 100MHzならば、800MHz版でも8:1にまで改善される。この8:1という比は、FSB 66MHzのときの533MHz版に相当する。Intelが公表しているベンチマーク・テストを見ても、Celeron-733MHzまでは順調に性能が向上しているが、766MHzになると性能向上がやや頭打ちになっている(インテルが公表しているCeleronのベンチマーク・テスト結果)。FSBを100MHz化したことで、プロセッサ・コアの動作クロックの向上に若干の余裕が生まれたわけだ。

シナリオ1:Pentium IIIをCeleronと名乗る日

 Celeronも、Pentium IIIと同様にFSBを133MHz化すれば、さらに性能向上が見込めるが、その場合、Pentium IIIとの差別化が難しくなる(動作クロックを除けば、違いは2次キャッシュ容量の128Kbytesと256Kbytesだけになってしまう)。次期メインストリーム・プロセッサのPentium 4を出荷したとはいえ、未だに現役で、なおかつ大きな収入源でもあるPentium IIIの市場を、低価格のCeleronに代えるような施策は採りにくい。というのも、同じプロセッサ・コアを採用するCeleronとPentium IIIの製造原価は、それほど変わらないといわれている。Intelにとっては、安さが大きな特徴となっているCeleronを売るよりも、ハイパフォーマンスを特徴とし、販売単価も高いPentium IIIを売った方が利益は多く、望ましいわけだ。競合を度外視すれば、Pentium IIIが現役でいる間は、CeleronのFSB 133MHz化は難しいだろう。

 逆にメインストリームのプロセッサがPentium IIIからPentium 4に移行してしまえば、Celeronに制約はなくなる。Intelは、Pentium 4がPentium IIIの出荷量を超えるのは、2002年第1四半期になると予想している。つまり、2002年第1四半期を過ぎれば、CeleronのFSBを133MHz化し、2次キャッシュを256Kbytesに増量しても(つまり現行のPentium IIIをCeleronと名乗っても)、それほど収益構造に悪影響を与えなくなるわけだ。むしろ、積極的にCeleronの機能を強化することで、Pentium IIIをフェード・アウトさせることも考えられる。そうすれば、メインストリームPC向けはPentium 4、エントリPC向けはCeleronといった具合に、中途半端にPentium IIIが残るよりも、マーケットでの各プロセッサの位置付けは明確になる。その後、Pentium 4対応チップセットの環境が整い次第、CeleronもPentium 4コアに移行すればよい(2003年中頃〜後半と予想される)。

 Pentium IIIをうまくフェード・アウトさせることができるかどうかが問題だが、これは比較的分かりやすいシナリオである。

シナリオ2:CeleronがPentium 4コアになる日

 CeleronのFSBを133MHzにせずに、一足飛びにCeleronのプロセッサ・コアをPentium 4のそれに移行するということも考えられる。Pentium 4とPentium 4コアのCeleronでどのような差別化を行うかは不明だが、Pentium IIIとCeleron同様、2次キャッシュの容量やFSBの動作クロックなどで差をつけることが考えられる。2001年第4四半期には、Pentium 4の製造プロセスは、現行の0.18μmから0.13μmに移行するので、2次キャッシュの増量などが行いやすくなる。また、将来FSBを400MHzから533MHzに引き上げることは、2000年11月末のPentium 4の発表時に明らかにされている。つまり、2002年後半あたりに、2次キャッシュの増量やFSBのクロック・アップなどが行われることは十分に予想できる。こうしたPentium 4の性能アップが行われれば、Pentium 4コアのCeleronをリリースすることも可能になる(現行のPentium 4をCeleronブランドで売ればいい)。

 ただ、Celeronを搭載するからには、システム全体として低価格性が求められる。したがってPentium 4コアのCeleronを投入するには、グラフィックス機能を内蔵したチップセットを用意し、低価格PCを製造できる環境を整える必要もある。こうした条件が整うのは、早くてもSDRAM対応のチップセットが出荷される2001年第2四半期以降になる。実際には、Pentium 4用のDDR SDRAM対応チップセットの開発が優先されるはずなので、DDR SDRAM対応チップセットが出荷される2002年後半以降になってしまうだろう。

 このシナリオでは、2002年後半までP6コアのCeleronをFSB 100MHzのまま、プロセッサ・コアの動作クロックを引き上げながら販売し、2002年後半もしくは2003年にPentium 4コアのCeleronを投入することになる。問題はFSB 100MHzを維持した状態で、Celeronの性能向上が続けられるかどうかだ。2000年にPentium IIIとAMD Athlonが演じた動作クロック競争が、CeleronとAMD Duronとの間で再燃するとなれば、CeleronのFSBを100MHzに維持するのは難しいかもしれない(プロセッサ・コアのクロックが1GHzを超えると、実性能が上がらなくなると予想される)。

Intelのプロセッサ・ロードマップを大胆予想

 以上の前提を基に、大胆にIntelの2001年以降のデスクトップPC向けプロセッサ・ロードマップを予想してみよう。

2001年第1四半期 Pentium 4-1.3GHzが追加される。これは、システム価格が1500ドル以下のPCに対し、Pentium 4を採用できるようにするためだ。Pentium 4の裾野を広げることで、Pentium IIIからの移行を進めるのが目的だ
2001年第2四半期〜第3四半期 0.13μmの製造プロセスが立ち上がる。Mobile Pentium IIIが0.13μmプロセスで製造されるのは間違いないが、デスクトップPC向けのCeleron/Pentium IIIがこの時点で0.13μmに移行するかどうかが問題だ。もし、Pentium IIIが0.13μmプロセスで製造された場合、最終的な動作クロックは1.3GHz程度にまで上がり、Pentium IIIがフェード・アウトする時期は大幅に先に延びることになる
2001年第3四半期 Pentium 4-2GHzが出荷される。この時点でPentium IIIは1.13GHzから1.2GHz程度であり、やっとPentium 4の性能面での優位性が際立つことになる。また、SDRAM対応のチップセットが出荷開始となり、Pentium 4のシステム価格が手頃になり始めるのもこの時期だ。この時期にPentium 4のFSBが533MHzに引き上げられる可能性もある
2001年第4四半期 0.13μmプロセスで製造されたPentium 4の出荷が開始される。性能向上とともに、プロセッサの低価格化も実現し、PCベンダの多くがPentium 4をメインストリームに据えることになる。この頃、Celeronの製造プロセスが0.13μmに移行し、2次キャッシュが256Kbytesになる
2002年第1四半期 Pentium 4がPentium IIIの出荷量を抜き、Intelプロセッサの主流となる。これでPentium IIIをフェード・アウトする準備が整ったことになる
2002年第2四半期 0.18μmプロセスで製造されているPentium IIIが動作クロックの上限に達し、AMD Duronとの対抗上、着実に動作クロックを上げ続けるCeleronとの差が縮まることになる。2001年第3四半期にPentium 4のFSBが533MHz化されない場合は、この時点で533MHz化されるはずだ
2002年第3四半期 CeleronのFSBが133MHz化され、Pentium IIIがフェード・アウトする。また、Pentium 4用のDDR SDRAM対応チップセットが出荷開始となるのもこの頃だろう。この時点でメインストリームPC向けがPentium 4、エントリPC向けがCeleronという位置付けになる
2003年中頃 Pentium 4コアを採用したエントリPC向けのプロセッサ(Celeron 2?)が出荷となる
表 予想されるIntelのプロセッサ・ロードマップ

 以上が大胆に予想した結果だ。もちろん、1カ月先も分からないこの業界のことなので、この予想どおりとはいかない部分もあるだろう。また、計画が変更されたり、新しいブランドのプロセッサが追加されたりする可能性もある。しかし、IntelのメインストリームPC向けのプロセッサがPentium IIIからPentium 4に移行し、やがてCeleronもPentium 4コアになることは間違いない。この予想の結果は、Pentium 4用のSDRAM対応チップセットが出荷され、Pentium 4のロードマップがより明らかになった時点で検証してみたいと思う。記事の終わり

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バリューPC向けプロセッサ発表のニュースリリース
Celeronのベンチマーク・テスト結果

  更新履歴
【2001/01/09】 「これまでIntelが新年に発表したプロセッサ(日付は米国発表日)」の表中、Celeron-800MHzの発表日が、2001年1月8日とありましたのは、2001年1月3日の誤りでした。訂正してお詫びいたします。

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