ニュース解説

Intelが低価格PC向けプロセッサ、Timnaの開発を中止

デジタルアドバンテージ
2000/10/03

 米Intel社は、自社が主催する開発者向けフォーラム(IDF:Intel Developer Forum)などで概要を発表していた低価格PC向けのプロセッサ「Timna(ティムナ:開発コード名)」の開発を断念した。2000年9月29日の米国の各メディアで報道されたのに続き、10月2日にはインテルの広報担当者も正式に開発中止を認めた。

 このTimnaは、CPUコアとメモリ・コントローラ、グラフィックス・コントローラを1チップ化したIntel初のマイクロプロセッサとなる予定だった。ちょうど、CeleronIntel 810チップセットのMCH(メモリ・コントローラ・ハブ)を統合したものと考えればよいだろう。当初Timnaは、2000年後半に出荷が予定されていたが、その後2001年第1四半期に延期され、さらに今回の開発断念となった。

開発断念の原因はMPTの不具合

 別稿「ニュース解説:動き始めたDDR SDRAMと対抗するRambus」で詳しく述べているとおり、当初Intelは、次世代の高速メモリ・インターフェイスを、米Rambus社と共同開発したDirect RDRAMにする予定だった。Timnaのプロジェクトが始まった当初、Direct RDRAMが普及すれば、低価格PCでもDirect RDRAMが採用できるまでに低価格になると予想していたようだ。また統合型プロセッサでは、機能が増える分だけ、チップのピン数が増えやすいため、物理的にピン数が少なくて済むDirect RDRAMが有利になるという面もあっただろう。このような理由からTimnaのメモリ・インターフェイスには、Direct RDRAMが採用された。

 ただ、当初の予想に反して、Direct RDRAMの出荷と低価格化が停滞しており、Timnaがターゲットとする低価格PC市場では、当面Direct RDRAMが採用できないことが明らかになった。そこでIntelは、MPT(Memory Protocol Translator)と呼ばれる変換チップを開発し、Direct RDRAMインターフェイスを経由してPC100 SDRAMをアクセス可能にしようとした。このMPTは、Intel 820チップセットのオプションで提供されたMTH(Memory Transfer Hub)を再設計したもの。MTHに不具合が生じて、Intel 820チップセットとMTHを組み合わせたマザーボードがリコールされたのは、記憶にも新しい(「PCの理想と現実:第1回 Direct RDRAMに普及の兆し?」参照)。報告によれば、このリコールによって回収されたマザーボードは100万枚弱にも登るという。

 結局、MTHの不具合はMPTでも取り除くのが難しかったようだ。MPTの開発は思うように進まず、これがTimna開発断念の最大の原因になってしまった。

市場の変化も追い討ちに

 また、Timna開発断念の理由は市場の変化にもある。IntelがTimnaを発表した2000年初旬には、来たるべき次世代の低価格PC(600ドル程度での販売を想定していたとされている)向けには、単純にプロセッサの単体価格を低減させるだけでなく、メモリ・コントローラやグラフィックス・コントローラといったPCには必須のコントローラを1チップ化することで、製造コストを切りつめる必要があると考えられていた。しかし現実には、このような1チップCPUの登場を待たずとも、従来どおりに周辺チップを組み合わせて、このIntelの想定レベルにある低価格PCが市場に投入されるようになってしまった。少々特異なケースではあるが、本PC INSIDERでも、5万円という破格値で販売されたPCについてレポートした(詳細は別稿「特集:5万円PCがオフィスを変える」を参照)。

 また、Celeron+Intel 810のシステムとTimna+MPTのシステムでは、チップの数が変わらず、製造コストの大幅な削減にはつながらず、PCベンダの支持があまり得られなかったという事情もあるようだ。 ドッグ・イヤーとかマウス・イヤーなどと比喩される昨今、もはやPC市場は、その総本山とも呼べるIntelの予想を超える速度で変化しているという証かもしれない。

 Intelは、Pentium IIIの後継となるPentium 4の出荷予定を数週間遅延させることも決定している。ロードマップどおり第4四半期中の出荷となるようだが、クリスマス商戦を控えた中での遅れは、PCベンダに少なからず影響を与えることになるだろう。この発表ともあいまって、今回の「Timna開発断念」のニュースは、PC業界だけではなく、証券市場へも強い衝撃を与えることとなった。事実、米Intel社の株価は、9月初旬の70ドル弱から、40ドル弱(原稿執筆時点の10月初旬の段階)にまで右肩下がりに下落している。Timna開発断念のニュースは、同社の株価をさらに押し下げる負の原動力となってしまうかもしれない。

 WinTel連合として、PC市場を思いのままに支配してきたMicrosoftとIntelだったが、周知のとおりMicrosoftは、独禁法問題の影響などによって、株価の低迷と幹部スタッフの相次ぐ離脱に見舞われている。一方のIntelも低迷期を迎えるに至った。21世紀のコンピューティングを支配するプレイヤーはいったい誰か? 残されたわずかな世紀末の行く末を見守る必要がありそうだ。記事の終わり

  関連記事(PC INSIDER内)
動き始めたDDR SDRAMと対抗するRambus
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