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VIA C3はCeleronの対抗になれるのか

デジタルアドバンテージ
2001/04/04

 
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0.15μmプロセスを採用したVIA C3
VIA C3はCyrix IIIをベースに64Kbytesの2次キャッシュを同梱したもの。内蔵の128Kbytesの1次キャッシュと合わせて、192Kbytesのキャッシュを持つことになる。このキャッシュ構成は、AMD Duronと同じだ。

 2001年3月25日、VIA TechnologiesはSocket 370互換(Pentium III/Celeronとのソケット互換)の低価格PC向けプロセッサ「VIA C3-733MHz」を発表した(VIA Technologiesの「VIA C3に関するニュースリリース」)。VIA C3は、開発コード名「Samuel 2(サミュエル2)」と呼ばれていたもの。Cyrix IIIをベースに、64Kbytesの2次キャッシュを同梱し、0.15μmプロセスで製造したものだ。Cyrix IIIは、Cyrixブランドであるものの、その設計はCentaur Technologyの開発チームによる(VIA Technologiesは、1999年8月3日にCyrix、8月5日にCentaur Technologyをそれぞれ買収している)。

 若干話がそれるが、VIA C3の位置付けを理解するためにCyrix IIIの開発経緯について解説しておこう。1999年8月にVIA Technologiesに買収される前、Cyrix(National SemiconductorのCyrix事業部)とCentaur Technologyは、それぞれ別々にSocket 370互換のプロセッサの開発を行っていた。買収当初のVIA Technologiesは、開発が先行していたCyrixのSocket 370互換のプロセッサ「開発コード名:Joshua(ジョシュア)」を、Cyrix IIIとして販売する計画で進めていた。このJoshuaは、Socket 7互換のCyrix MIIをベースとしたもので、1999年9月には各種展示会などで公開していた(その頃、1999年10月末には正式出荷すると述べていた)。

 ところが、Joshuaはキャンセルされ、Centaur Technologyが開発を行っていた開発コード名「Samuel(サミュエル)」で呼ばれる現在のCyrix IIIが、2000年6月6日に発表されることになった。なぜ、Joshuaがキャンセルされ、SamuelがCyrix IIIとなって出荷されることになったか、理由は明らかにされていない。そのため理由は推測になるが、Samuelの開発が順調に進む中、Joshuaとの性能差が小さかったことが、理由の1つとして考えられる。Samuelのダイ・サイズは、Joshuaよりも小さいことが推測できる(ベースとなったWinChipとCyrix MIIとの比較から推測できる)。性能差がほとんどないのであれば、Samuelを選択した方がコスト・パフォーマンスは高い。

 また、Joshuaでは動作クロックが上げられなかった可能性もある。1999年当時、すでにIntelとAMDは動作クロックの引き上げ競争を開始しており、エントリPC向けといえども競争力を持つためには、500MHz以上の動作クロックをターゲットにする必要があった。もちろんアーキテクチャが異なるプロセッサ同士の場合、クロック周波数はその性能差を正確に表すものではない。しかし「クロックが高い方のプロセッサが性能も高い」という印象をエンドユーザーに与えることも事実であり、プロセッサ・ベンダはこぞってクロック周波数を引き上げていた(今でもその傾向は変わらない)。このとき、すでにIntelはCeleron-500MHzを出荷しており、対抗上、Joshuaも500MHzに近い動作クロックが必要だったはずだ(出荷時に対応できないまでも、同じプロセッサ・コアで500MHz以上の動作クロックが達成できる必要があっただろう)。ところが、その当時の展示会で公開していたJoshuaの動作クロックは300MHz程度であり、同じコアで500MHz以上の動作クロックを達成することは難しかったのではないだろうか。こうした理由から、より高い動作クロックに対応可能で、ダイ・サイズが小さいSamuelコアに変更されたのではないかと推察する。

VIA C3の特徴

 VIA C3のマイクロアーキテクチャは、Cyrix III(開発コード名「Samuel:サミュエル」)に64Kbytesの2次キャッシュが同梱されただけであり、ほとんど変わらない。12ステージのスーパー・パイプラインが1本のみというシンプルな点が特徴で、Intel 486のパイプラインのステージを細かくしたような設計となっている。そのお陰か、ダイ・サイズは非常に小さく、VIA C3は52平方mmしかない。このサイズは、Celeronの半分以下であり、製造コストが安価であることが伺える。歩留まりやパッケージ・コストなどを考慮に入れなければ、VIA C3はCeleronの半分以下の価格でも採算が取れることになる。

プロセッサ名 Celeron Celeron AMD Duron VIA Cyrix III VIA C3
開発コード名 Mendocino(メンドシーノ) Coppermine-128(カッパーマイン-128) Spitfire(スピットファイア) Samuel(サミュエル) Samuel2(サミュエル2)
動作クロック 300MHz〜533MHz 533MHz〜 600MHz〜 500MHz〜667MHz 733MHz〜
1次キャッシュ容量 32Kbytes 32Kbytes 128Kbytes 128Kbytes 128Kbytes
2次キャッシュ容量 128Kbytes 128Kbytes 64Kbytes N/A 64Kbytes
2次キャッシュ速度(クロック) コア・クロックと同じ コア・クロックと同じ コア・クロックと同じ N/A
コア・クロックと同じ
2次キャッシュのバス幅 64bit 256bit 64bit N/A 64bit
FSBクロック 66MHz 66/100MHz 200MHz(100MHzのDDR) 66/100/133MHz 66/100/133MHz
ソケット/パッケージ Socket 370 PPGA Socket 370 FC-PGA Socket A Socket 370 PPGA Socket 370 PPGA
製造プロセス 0.25μm 0.18μm 0.18μm 0.18μm 0.15μm
ダイ・サイズ 153平方mm 106平方mm*1 100平方mm 75平方mm 52平方mm
トランジスタ数 1900万個 2800万個*1 2500万個 1100万個 1500万個
エントリPC向けプロセッサの比較
*1 基本的にこのCeleronは、CoppermineコアのPentium IIIが内蔵する256Kbytesの2次キャッシュのうち、128Kbytes分を無効化しているものと同等なので、Pentium IIIと同じという、やや大きめの値となっている。

 このことは、同じ動作クロックのVIA C3とCeleronの出荷価格を比較することで推察できる。VIA C3-733MHzは54ドル、Celeron-733MHzは153ドル(2001年3月4日付け価格)と、3分の1近い価格を実現している。もちろん、性能が異なるため、これをもってVIA C3がCeleronの3倍以上のコスト・パフォーマンスを実現しているとはいえない。しかし、Celeronが高価で使えないような低価格なインターネット端末などでも、VIA C3が利用可能であるということはいえる。

VIA Technologiesが発表した「Information PC」
Information PCはVIA Cシリーズを搭載した低価格なインターネット専用PC。PCのアーキテクチャをベースにしながら、DVD-ROM(CD-ROM)ドライブとハードディスクをオプション扱いにすることで低価格化とアプライアンス化を図っている。

 実際、VIA Technologiesでは、2001年3月25日にCeBIT 2001の会場で、VIA C3の搭載を前提とした「Information PC」と呼ぶ、インターネット専用ともいえるPCのコンセプトを発表している(VIA Technologiesの「Information PCに関する情報ページ」)このことからも、VIA C3のターゲットがPCよりもアプライアンスに向かっていることがうかがえる。

 もう1つのVIA C3の特徴は、消費電力がデスクトップPC向けプロセッサとしては小さいことだ。VIA C3-733MHzの最大消費電力が11.6W、平均消費電力が6Wなのに対し、Celeron-733MHzはそれぞれ19.1W、7.85Wとなっている。平均消費電力に大きな差はないものの、最大消費電力はCeleronの60%となっている。機器を設計する場合、冷却ファンや電源などは最大消費電力に合わせられるため、この値が低いということは小型の機器にも採用しやすいことを意味する。特に最近では、インターネット系のサーバに1Uラックマウント型やサーバ・ブレード(2Uラックや3Uラックのサイズに複数のサーバをスロット状に実装したもの)を採用する例が増えてきている。こうしたサーバは、データ・センターなどで1カ所に何十台も集中して設置されるため、消費電力と発熱が大きな問題となる。そのため、消費電力の低さで知られるCrusoeをサーバに採用した機種さえも登場してきている。VIA C3は、Crusoeに比べると消費電力が大きいが、Pentium III用の豊富なチップセットが利用できるなど、x86プロセッサとしてハードウェア設計面での汎用性が高いというメリットがある。

浮動小数点演算の性能がネックか?

 価格と消費電力の点でVIA C3が魅力的なことは分かったが、性能が大幅に劣ってしまうのでは、サーバ用途はもちろんのこと、インターネット専用PCでも使いにくい。VIA Technologiesが発表しているベンチマーク・テストの結果は以下の表のとおりである。

  Winstone 99
VIA C3-800MHz 22.6
Celeron-800MHz 22.5
VIA C3-733MHz 22.2
Celeron-733MHz 21.3
VIA Technologiesが公表しているベンチマーク・テストの結果

 この表を見ると、同じ動作クロックのCeleronとほとんど変わらないことが分かる。しかし、Winstone 99は整数演算を中心したベンチマーク・テストであり、この値からでは浮動小数点演算性能やSIMD命令の性能を見ることはできない。これまで、PCの主な用途であったビジネス・アプリケーションでは、浮動小数点演算やSIMD命令はあまり使われていなかったため、Winstoneでもある程度プロセッサの実用的な性能を知ることができた。ところが最近では、DVDビデオのソフトウェア・デコードや、インターネットの暗号化の演算などで浮動小数点演算やSIMD命令が使われており、その比率が高まっている。そのことから、浮動小数点演算やSIMD命令の性能が気になるところだ。

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Cyrix IIIのブロック図
「Cyrix III Datasheet」に掲載されているCyrix IIIのブロック図。VIA C3は、Cyrix IIIに2次キャッシュが同梱されただけであり、パイプラインの構成などに変更はない。

 いくつかのハードウェア・テスト・サイトによるSamuel 2のベンチマーク・テスト結果を見ると、浮動終点演算の性能は同クロックのCeleronの半分程度であった。このことから、浮動小数点演算が多用されるようなアプリケーションでは、大幅に性能が劣ってしまうことが予想できる。これは、浮動小数点演算ユニットが1つしかなく、ユニット内のパイプライン化が行われていないためだ。同様に、MMX3DNow!といったSIMD命令の性能も低いことが予想される。

 今後、この点がエントリPCに採用する場合にネックになる可能性がある。浮動小数点演算性能を向上させるためには、マイクロアーキテクチャの大幅な変更が必要となることから、対応は簡単ではない。そのため、浮動小数点演算性能があまり必要とされないような組み込み用途などへ展開していくことになるかもしれない。

VIA C3のロードマップ

 2001年3月29日に都内で開催された「VIA DDR Chipset & CPU Seminar」でVIA Technologiesは、VIA C3の製造プロセスを0.13μmプロセスに移行し、動作クロック1GHzをターゲットにすることを明らかにしている。製造プロセスの変更により、動作クロックの上限を引き上げ、消費電力を下げるのが目的だ。ただ、現在の0.15μmプロセスで1GHzを出荷しない(できない)のは、マイクロアーキテクチャ的な限界とも推測される(Pentium IIIやAthlonは0.18μmプロセスで1GHz以上の動作クロックを実現している)。実際、VIA Technologiesは、0.13μmプロセスへの移行とともに、VIA C3のパイプラインに何らかの手を加えることも明らかにしている。ただ、時間的な問題から、大幅な変更にはならない可能性が高い。もしかすると、まったく別のマイクロアーキテクチャを採用したプロセッサを投入してくる可能性もあるだろう(すでに元Cyrixの設計チームが別なプロセッサの設計を行っているはずだ)。

 また、VIA Technologiesは開発コード名「Matthew(マシュー)」で呼ばれるVIA C3をベースに、ノースブリッジとグラフィックス機能などを統合したプロセッサも開発中だ。こうした統合型のプロセッサとしては、すでにNational SemiconductorがGeode(オリジナルはCyrix MediaGX)を販売しており、またSiSもRise TechnologyからmP6の技術を取得し、mP6ベースの統合型プロセッサを企画していると噂されている(SiSの「Rise Technologyからプロセッサ技術を取得に関するニュースリリース」)。こうした統合型プロセッサは、消費電力が比較的少ないうえ、安価であることから、組み込み用途などで採用が増えつつある。VIA Technologiesが推進しているInformation PCで採用するのはもちろんのこと、組み込み用途などへの展開も行われることになるだろう。

 2000年のVIA Technologiesは、チップセットの成功により大きな利益と多くの提供ベンダを得た。2001年はVIA C3とMatthewの投入により、その力をプロセッサ市場に向けることになる。成功のカギは、PCベンダなどへの供給が決まるかどうかだ。今後の動向に注目していきたい。記事の終わり

  関連リンク
VIA C3に関するニュースリリース
Information PCに関する情報ページ
IDTからCentaur Technologyを買収
National SemiconductorからCyrixのプロセッサ事業を買収
VIA C3の製品紹介ページ
Rise Technologyからプロセッサ技術を取得に関するニュースリリース

「PC Insiderのニュース解説」

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