元麻布春男の視点
Pentium 4のメモリはやはりDirect RDRAM


元麻布春男
2001/03/09

 前回のこのコラムから、今回までの間に1つのイベント「IDF(Intel Developer Forum) Spring 2001」があった(IntelのIDFのホームページ)。IDFは、Intelが毎年秋(8月)と春(2月)に開催する開発者向けのイベントで、ここではIntelの新しい技術やロードマップなどが紹介される。IDFでは、このコラムで書いてきた内容と無縁ではない情報のアップデートがいくつかあったので、それに触れておこうと思う。

0.13μmプロセスのPentium IIIはノートPCとサーバ向け

 まず前回の冒頭で触れたPentium 4のテレビ・コマーシャルだが、IDF開催地の米国カリフォルニア州サンノゼ(San Jose)滞在中に何度も目にした。IntelエグゼクティブによるIDFのキーノート・スピーチでも、ことデスクトップPCに関する限り、出てくるプロセッサの名前はPentium 4ばかり。Pentium IIIプロセッサにも、2001年内に初の0.13μmプロセスによる開発コード名「Tualatin(テュアラティン)」で呼ばれる新しい製品がデビューするのだが、そのターゲットはモバイルPCと、超高密度実装のサーバ用で、デスクトップPC用としての影は薄い。IDFの3日目のキーノートでは、Tualatinを採用した、19インチ・ラックの2Uサイズに8台のサーバと2台のスイッチング・ハブを実装したサーバ・モジュールが披露されたほどだ。

インテル・フェローのピート・マックウィリアムズ氏
Intelのメモリ・ロードマップについて述べたインテル・フェロー(Intelの技術職の役職)のピート・マックウィリアムズ(Pete McWilliams)氏。

 そういう意味でTualatinは、かつて最初の0.25μmプロセスによるプロセッサ(と同時に最後のMMX Pentiumプロセッサ)としてデビューしたTillamook(開発コード名:ティラムック)に似ている(233MHz以上のクロック周波数をカバーしていたTillamookは、基本的にノートPCでの採用にとどまり、デスクトップPCのプロセッサはMMX PentiumからPentium IIに移行していった)。IntelにとってデスクトップPC用プロセッサとしてのTualatinの将来は、新しいデスクトップPC向けのPentium III対応チップセット「Almador(開発コード名:アマドール)」がキャンセルされた時点で終わった、ということなのだろう。なお、モバイルPC向けのAlmadorは「Intel 830M」という名称で登場する予定に変更はない。つまり2001年のデスクトップPCについては、Celeronが担当するローエンドを除けば、大部分をPentium 4がカバーすることになる。巨大なヒートシンクを必要とする今のPentium 4には、日本で幅を利かせている薄型のデスクトップPCに向かないという問題もあるのだが、Intelは冷却を工夫することでこの問題は解決できる、と考えているようだ。もちろん、本質的な改善は、0.13μmプロセスによるPentium 4プロセッサである「Northwood(開発コード名:ノースウッド)」まで待たなければならないのだが、何より薄型PCが重視される市場が日本にしかない、という事情もあるに違いない。

Pentium 4がプッシュするメモリ

 さて、Pentium 4をプッシュするのに不可欠なメモリだが、これについても情報のアップデートがあった。かねてからウワサされているSDRAM対応のPentium 4用チップセット「Brookdale(開発コード:ブルックディール)」だが、2001年後半に登場するのはPC133対応版のみとなる。DDR SDRAM対応版は、2002年の第1四半期を待たなければならない。しかもサポートするのはPC1600 DIMM(DDR200メモリ)だけで、PC2100 DIMM(DDR266メモリ)のサポートは持ち越しになっている。この理由として、「現在のPC2100 DIMMではどうしてもIntelが必要と考えるマージンが確保できないため、スペックを見直す必要がある」ということを述べている(PC1600/2100やDDR200/266については、「ニュース解説:AMDのDDR SDRAM対応プラットフォームの発表で次世代メモリの標準化が決着!?」を参照していただきたい)。

 一方、これまであまり語られてこなかったIntel 850の後継となるDirect RDRAM対応のチップセットだが、どうやら2002年の第1四半期に登場するようだ。この新しいDirect RDRAM対応チップセット(名称は明らかにされていない)では、PC1066メモリと、4バンク・タイプのDirect RDRAMのサポートが加わる。PC1066メモリは、Direct RDRAMのクロックを533MHzに高めたものだ。すでに組み込み用にはサンプル出荷されているが、PCのようにモジュールを使う用途への適用については、これまで明言されていなかった。今回のIntelのロードマップに組み込まれたことで、ハッキリしたことになる。

Intelのメモリ・ロードマップ
ピート・マックウィリアムズ氏のプレゼンテーションで示された、デスクトップPCのメモリ・ロードマップ。Direct RDRAMが主流であることが分かる。またDDR SDRAMは、SDRAMを置き換えるものになると予想していることも明らかにされた。

 4バンクのDirect RDRAM(4i)については、すでにこのコラムでも取り上げたことがあるが、今回のIDFでエルピーダメモリも4バンク・タイプのDirect RDRAMを量産する意向を明らかにした(元麻布春男の視点:「4バンクRDRAMのインパクト」参照)。2001年第3四半期にサンプル出荷が開始される0.13μmプロセスのDirect RDRAMの量産は、まず既存の2×16d(32バンク構成)と16d(16バンク構成)の両タイプの288Mbits Direct RDRAMでスタートし、その後256Mbitsの4i(4バンク構成)、そして4iの576Mbitsおよび512Mbitsへと続く*1。4iの量産が若干遅れるのは、おそらく当初の予定になかったことを示してのものだろう。また、(ECCサポートのない)256Mbitsから始まるというのは、4iがPC用であり、少なくとも当初はサーバや家電向けでないことを示している。加えて、4iをサポートした新しいDirect RDRAMサポート・チップセットは、Intel 850と同様のデュアルチャネル・サポートに加え、シングルチャネルのDirect RDRAMサポートも可能だといわれている。4iの価格と供給体制いかんでは、DDR SDRAMをサポートしたBrookdaleと競合する可能性がある。

*1 288Mbitsと576MbitsのDirect RDRAMとは、それぞれ256Mbitsと512MbitsのECC対応版である。

Pentium 4のFSBはどうなる

 こうしたメモリのサポートでもう1つ気になるのは、プロセッサのFSBだ。ご存じのとおり、現在のPentium 4は、400MHz FSBと呼ばれているが、実際のバスクロックは100MHzで、データレートのみが4倍の400MHz相当に引き上げられたものである。BrookdaleでPC133のサポートが始まるということは、メモリ・バス・クロックが133MHzになるということであり、Intelの既存のチップセットの例(基本的にFSBクロック周波数とメモリバス・クロック周波数とが整数倍の関係にある)からいくと、このタイミングでPentium 4のFSBが133MHzに引き上げられるのか? とも勘ぐることができる。だが、結論をいうと、Brookdaleではメモリ・バスこそ133MHzに引き上げられるものの、FSBは100MHzに据え置かれる。つまりBrookdaleは、メモリ・バスとFSBのクロックが異なるチップセットということになる。

 ただし、今後ずっとFSBが100MHzというわけではなく、FSBは133MHzに引き上げられるのだが、Brookdale投入のタイミングではない、ということのようだ。となると次の機会ということで、メモリ・バス・クロックを533MHzに引き上げる次のDirect RDRAM対応チップセット投入のタイミングで、FSBを133MHzに引き上げるのではないかと考えられる。

IntelがDirect RDRAMの供給を楽観している理由

 さて、2001年後半については以上のとおりなのだが、2001年前半はどうするのか、という問題がある。IntelはPentium 4への傾斜を強めるが、この間に「使える」チップセットはDirect RDRAM対応のIntel 850だけだ。Direct RDRAMの潤沢な供給なしに、Pentium 4の拡販は望めない。このDirect RDRAMの供給問題について、前回のコラムで筆者は、Intelが楽観していると述べた。考えられる根拠として、そのときに挙げた4iのサポートが2002年になることは、上に述べたとおりだが、その代わりIntelが供給を楽観している別の理由が明らかになった。

 現在、メモリ・ベンダ大手は、Direct RDRAMを「作る組」と「作らない組」の2つに分かれている。作る組を構成するのが、サムスン電子(Samsung Electronics)エルピーダメモリ東芝の3社、作らない組がMicron Technology現代電子(Hyundai Electronics)、Infineon Technologiesの3社だ(「作らない組」とはいえ、3社ともDirect RDRAMの製造は行っている。ただ、DDR SDRAMに主力をおいているということ)。未だにIntelは「作らない組」を翻意させることに成功していないものの、「作る組」からは大規模増産を引き出すことに成功した。サムスン電子については、Direct RDRAMを増産するための費用を賄うため、Intelは追加出資に応じている(サムスン電子の「RDRAM増産に関するニュースリリース」)。Intelは他社にも、同様なオファーを行ったようだが、条件などで合意に至らなかったものと思われる。にもかかわらず、エルピーダと東芝は増産に応じている。

エルピーダメモリの生産計画
エルピーダメモリの犬飼英守 副社長のプレゼンテーションで示された、エルピーダメモリの生産計画。Direct RDRAMの割合が大幅に増えることが分かる。

 増産の効果は、この第2四半期から現れることになっており、少なくとも「量」に関する不安は緩和されるだろう。もう1つの問題である価格がどうなるかは明らかでないものの、増産されて値上りするというのは、あまり聞いたことがない。直ちに大幅な値下がりが起こるとは思えないが、安くなる方向であることは確かだろう。もちろん、2002年に登場する4iに低価格化の期待がかけられているのは間違いない。

SDRAMの価格暴落がDirect RDRAMへと動かした

 こうして見ると、2001年後半からSDRAMなどDirect RDRAM以外のメモリをサポートしたPentium 4対応チップセットが登場するにもかかわらず、IDFでの話を信じる限り、Intelのロードマップに占めるDirect RDRAMの比重はかなり高い。見方によっては、一時DDR SDRAMに傾きかけたものの、再びDirect RDRAMにシフトしている、という見方さえできそうだ。こうした再シフトの理由は定かではないが、おそらくメモリ市場の動向と無縁でないだろう。

 2000年秋、一部には永久に続くとさえいわれた、米国のニューエコノミー(インターネット・バブルとも呼ばれている)が終焉を迎えた。と同時に、PCの売上げにかげりが見え、SDRAMの価格が暴落した。それにより、メモリ・ベンダはSDRAMに依存できなくなってしまった。現在の価格水準でSDRAMの製造を続けても、赤字が累積されるばかりだ。と同時に、SDRAMとDDR SDRAMの価格が同じだとMicronが主張する限り、DDR SDRAMは救世主になれない。Micronがこの主張を繰り返す限り、他社はしらけてしまうのではないかと思う。作る組がDirect RDRAMの増産に動いたのは、こうした事情と無縁ではないだろう。逆に、もしニューエコノミーがあと1年続いたら、Intelのロードマップは今とまったく違ったものになったハズだ。おそらくDDR SDRAMメモリは、次世代メモリの本命として、すべてのプラットフォームで主役を務めていたことだろう。記事の終わり

 

  関連記事
市場はPentium 4へ向かう
AMDのDDR SDRAM対応プラットフォームの発表で次世代メモリの標準化が決着!?
4バンクRDRAMのインパクト

  関連リンク
IDFのホームページ
RDRAMの情報ページ
DRAMの情報ページ
メモリホームページ
DRAMの情報ページ
半導体製品の情報ページ
メモリ製品の情報ページ
RDRAM増産に関するニュースリリース
 
「元麻布春男の視点」

 



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