元麻布春男の視点
Windows XP対応のサウンド・カード選びは寄らば大樹?


元麻布春男
2001/11/09

 日本国内での正式発売はまだだというのに、プレインストールPCとOEM版がリリースされてしまったことで、なんだかWindows XP時代がすでにスタートしてしまったような気分だ(出荷されている以上、決して間違いではないのだが)。Windows NT系のOSとしては、Windows 2000以来のメジャー・バージョンアップとなるWindows XPには、さまざまな新機能が含まれているが、筆者の注目するポイントはやはりハードウェア・サポートである。ここでは、正式発売を前に、Windows XPのサウンド・カードのサポート状況について取り上げてみたいと思う。

Windows XPのサウンド・サポートとは

 今回、筆者がテストしてみたのは、筆者の手元にあるPCIサウンド・カード6種類。基本的には、1メーカー1コントロール・チップを基準に選んでいるものの、現役もあれば、古いものもある、というラインナップだ。これらのサウンド・カードをサポートしたデバイス・ドライバは果たしてWindows XPに含まれているのか、またカード・ベンダやコントローラ・チップ・ベンダは素早くWindows XP対応のドライバを用意しているのか、が最初のチェック・ポイントである。

 もう1つのチェック・ポイントは、デジタル出力(S/PDIF)端子を備えたサウンド・カードの場合、Windows XP対応のドライバがそれをサポートしているかどうか。ここでいうS/PDIFサポートは、単にWave Outと同等のサウンドをデジタル出力可能であるだけでなく、ソフトウェアDVDプレイヤーを用いて、ドルビーデジタルやDTS(Digital Theater System)のマルチチャンネル・オーディオ(再生には外付けのAVアンプなどが必要)を出力できるかどうか、ということを意味する。これを可能にするには、カーネル・ミキサーをバイパスさせてマルチチャンネル・オーディオ・ストリームをS/PDIF端子に導かねばならない(WDM準拠のドライバの場合)。

 この機能は、Windows MeとWindows 2000 Service Pack 2から可能になったのだが、対応したドライバはCreative Technologyの製品くらいで、極めて限られていた。Windows XP Home Editionがコンシューマ向けのWindows Meの後継にも位置付けられることを考えると、そろそろ広範な対応がほしいところだ。

XPのサポートで合格はCreative Technologyとヤマハのみ

 さて、テスト結果のほうだが、模範とでも呼ぶべき存在がCreative Technologyの「Sound Blaster Live! Value」だ(テスト結果のページ)。Windows XPが標準内蔵するドライバで、しっかりとS/PDIFに対応しているうえ、同社のWebサイトには英語版とはいえ、Windows XP対応のドライバがすでにアップロードされている。正直にいうと筆者は、Creative Technologyのソフトウェア・パッケージに、ドライバ以外にあまりにも多くのアクセサリが含まれていることに閉口しているクチなのだが、同社のサポートが迅速であることは大いに賞賛したい。現在Webサイトから入手できる英語版のWindows XP対応ドライバがそうであるように、今後もドライバのみの単体での提供も、フルパッケージでの提供と並行してお願いしたい。

 ヤマハは、すでに新規のサウンド・コントローラ・チップの開発を停止しているといわれている。が、既存のサウンド・コントローラ・チップに対するサポートまで停止したわけではない。同社は、しっかりとWindows XPに対応したドライバの提供を行っている。このWindows XP対応ドライバは、カーネル・ミキサー・バイパスに対応しており、Windows XP上のソフトウェアDVDプレイヤーで、ドルビーデジタルやDTSのS/PDIF出力をサポートしている。強いて難点を挙げればWHQL(Windows Hardware Quality Labs:マイクロソフトによるWindows OSとハードウェアの互換性テスト)をパスしていないことだろうか。Windows XPの標準ドライバでもWave OutをS/PDIFにリダイレクトすることは可能だが、DVDのマルチチャンネル・オーディオには対応していない。とはいえ、ACPIのS3ステータス(RAMへのサスペンド)からの復帰時にノイズが出たりしなくなった点は、改善されている。以上の2つには合格点を与えてよいと思う。

  Windows XP内蔵
サウンド・チップ・ベンダ サウンド・コントローラ・チップ カード・ベンダ サウンド・カード名 デジタル出力端子 ドライバの有無 S/PDIFサポート
Creative Technology/E-Mu E-mu 10K1 Creative Technology SoundBlaster Live! Value*1 *2
ヤマハ YMF744B Labway Xwave 6000 WaveOutのみ
Aureal Semiconductor AU8820B2 Voyetra Turtle Beach Montego A3DXtream × N/A
C-Media Electronic CMI8738 Asmart Digital Live! Paradise 5.1 × N/A
Forte Media FM801-AS Hitpoint 4-Tran PCI 4.1 × N/A
Trident Microsystems 4DWAVE-DX Addonics Technologies SV750 × × N/A
Windows XPのサウンド・ドライバのサポート状況(表の一部抜粋:表全体へ
*1 CT4830
*2 CT4710

  残る4種のサウンド・コントローラ・チップのうち、Aureal Semiconductorは会社そのものがなくなってしまった。ただ、Windows XPにAU8820対応のドライバが含まれており、最低限の機能は維持される。一時期は一定のシェアを持っていただけに、ユーザーも多いに違いないので、ひと安心というところだろうか。Trident Microsystemsも、どうやらサウンド・コントローラ・チップの市場から事実上撤退してしまったようだ。Windows XPにドライバが含まれていないばかりか、「Windows XP対応」をうたうドライバを見つけることもできなかった。

 C-Media Electronicの「CMI8738」は、いまでも台湾系ベンダを中心に、よく搭載カードを見かけるサウンド・コントローラ・チップの1つだ。しかし、Windows XPのパッケージに同チップをサポートしたドライバはない。ただ、C-Media ElectronicsのWebサイトにWindows XP対応をうたうリファレンス・ドライバが11月7日付けでアップロードされている(ただしヤマハ同様、WHQLをパスしていない)。ただ、このリファレンス・ドライバは、筆者が今回テストしたサウンド・カードのデジタル出力を完全に無視してしまった。とりあえず音は出るのだが、全機能のサポートという点では、カード・ベンダの対応を待たなければならないようだ。

 Forte Mediaの「FM801」も、比較的目にする機会の多いサウンド・コントローラ・チップである。しかし残念ながら、Forte MediaはWebサイトでリファレンス・ドライバの提供を行っていない。筆者が今回用いたカードのベンダであるHitpointも、Windows XP対応のドライバは提供していない。Hitpoint以外のカード・ベンダの中には、ちゃんとしたサポートを提供しているところもあるかもしれないが、Forte Mediaのサポート・ボリシーが変わらない限り、筆者としては、Forte Media製のサウンド・コントローラ・チップを採用したサウンド・カードは買いたくない、というのが正直なところだ。

 というわけで、6社のサウンド・コントローラ・チップをベースにしたサウンド・カードのWindows XP対応を見てきた。寄らば大樹の陰というわけではないが、やはり大手2社の製品がサポートの点で安心感がある(事業を継続しているという点では、Creative Technology 1社ということになるかもしれないが)。「元麻布春男の視点:逆風に立ち向かうサウンド・カードに明日はあるのか?」にも記したように、ただでさえサウンド・カードは厳しい市場環境にある。下位メーカーの中には、体力的にサポートを続けられなくなってきているところがあるのかもしれない。このままでは、標準はオンボード・サウンド、それに飽き足らなければCreative Technology製のカードを追加する、という図式が固定化してしまいそうだ。記事の終わり

  関連記事
逆風に立ち向かうサウンド・カードに明日はあるのか?

  関連リンク
SoundBlaster Live!の製品紹介ページENGLISH
Xwave 6000の製品紹介ページENGLISH
Digital Live! Paradise 5.1の製品紹介ページENGLISH
4-Tran PCI 4.1の製品紹介ページENGLISH
 
「元麻布春男の視点」


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