元麻布春男の視点
新コンポーネント・ベンチ「PCMark2002」で見るPentium 4の性能

元麻布春男
2002/03/29

 ハードウェアを評価する際に欠かせないものの1つが、ベンチマーク・テストと呼ばれるプログラムだ。2つの、あるいはそれ以上の数のハードウェアの中で、どれが性能的に優れているのかということは、昨今のように一部でPCの性能はすでに過剰なのではないかとささやかれる時代にあっても、なお興味を引く。実際に高い性能を必要としていなくても、高い性能を持つシステムの方が、性能の低いシステムより長い製品寿命を持つ可能性は否定できない。特に価格がほぼ同じならば、高い性能のシステムを導入した方が長く使え、結局は安あがりになるからだ。もちろん、システムを評価する際には、性能だけではなく信頼性なども重要な要素になるが、信頼性についてはすぐに確かめることが難しい場合も多い。結局はベンダの評判などを参考に決めることになる。それに比べて性能は、適切なベンチマーク・テストさえあれば、比較的限られた時間でも検証することができる。そこで、今回は最新のベンチマーク・テスト・プログラムを取り上げ、Pentium 4搭載システムの性能を比較してみることにした。

ベンチマーク・テストの今昔物語

 このベンチマーク・テストの分野で、以前大きなシェアを持ち、PC分野における業界標準とまでいわれたのが、米国でPC関連分野の出版を行っているZiff Davis Media傘下のZD Labsによるものだった。ZD Labsがリリースした「WinBench」あるいは「3DWinBench」が、PC関連ハードウェアの評価にどれだけの影響力を持っていたかは、一部にこれらのベンチマーク・テストに対する「対策(これらのテストでの成績を高めるためだけの特別なカスタマイズのこと)」が施された製品が登場したことでもうかがえる。

 だが、WinBenchは1999年版を最後に、3DWinBenchは2000年版を最後に、メジャー・バージョンアップが行われなくなってしまった。リリース元の名称がZD LabsからeTesting Labsに変わり、業務がZiff Davis Mediaグループの出版物のためのテストや評価、あるいはそのためのソフトウェア開発から、独立組織として外部企業のテスト・評価のアウトソーシング先となったことが恐らく最大の理由だろう。これを反映して、Content Creation Winstoneやi-Benchといったインターネット/Web系のベンチマーク・テストはまだ更新が続いているものの、そのほかのテストについては、最低限の修正(新しいOSをインストーラが受け付けないことの修正など)を除き、アップデートが事実上なくなっている。親会社であるZiff Davis Mediaが経営的に必ずしも順調でないと伝えられていることを考えると、このシリーズのベンチマーク・テストが過去の栄光を取り戻すことは難しいかもしれない。

 ZD Labs/eTesting Labsに代わり、ベンチマーク・ソフトウェアのリリース元として存在感を増しているのがMadOnion.comだ。開発の本拠がフィンランドであることでピンとくる人もいることだろうが、同社はいわゆるメガデモに技術的なルーツを持つことでも知られている。MadOnion.comとして有償(ベンチマーク・テストのコア部分はフリーソフトウェア)で3DMarkシリーズのベンチマーク・テストをリリースしたのは1998年のことだが、それ以前にイギリスのIT関連出版社であるVNU Business Publicationがリリースしたベンチマーク・テスト「FinalReality」の開発にもMadOnion.comのメンバーが携わっていたハズだから、同社はそれなりに長い歴史を持っていることになる。


■メガデモ
プログラミング・スキルの高さや、サウンドやビジュアルのセンスの良さをアピールするために作られたデモ用のプログラムのこと。3Dグラフィックスによるビジュアル・エフェクト描画を行うものが多かった。1990年代初頭、ヨーロッパ、中でも特に北欧のコンピュータ・グループが中心となって、その技術力の高さを競っていた。優れたプログラミング・テクニックでシステムの性能を最大限に引き出し、当時の非力なマシンでも高度な3Dグラフィックス描画をこなしたのが特徴。

 MadOnion.comが有名になったのは上述した3DMarkシリーズのベンチマーク・テストによるところが大きい(最新版は「3DMark2001 Second Edition」)。常に最新のDirectXに対応したバージョンのリリースを続け、いまではゲーム指向のPCの性能を測る際に不可欠なものとなっている。また、1999年にはBAPCo(Business Applications Performance Corp.:ビジネスPC向けのベンチマーク・テストの開発を行う非営利の業界団体)と提携、「SYSmarkシリーズ」のビジネス・アプリケーション・ベンチマーク・テストの販売や、「WebMarkシリーズ」のインターネット・ベンチマーク・テストの共同開発にも乗り出している。

久しぶりに登場したコンポーネント・ベンチ「PCMark2002」

 そのMadOnion.comが最近リリースしたのが「PCMark2002」と呼ばれるベンチマーク・テストだ。ゲーム(3Dグラフィックス)に特化した3DMarkシリーズと異なり、このPCMark2002は、プロセッサ性能、メモリ性能、ハードディスク性能といった、PCのベーシックな部分を個別にテストするプログラムとなっている。ベンチマーク・テストの中核部分はもちろん無償でダウンロード可能(約8.4Mbytes)だが、39.95ドルのPCMark2002 Proバージョンを購入すると、追加のPro Packと呼ばれるコンポーネントがダウンロード可能となる。約39MbytesのPro Packには、ベンチマーク結果の比較に使うResult Browserというユーティリティのほか、以前リリースされていた「Video 2000(MPEGなどのビデオ性能を計測するためのベンチマーク・テスト)」相当のビデオ性能評価モジュール、さらにはWindows XPのGDI+*1の性能を計測するモジュールが含まれている。

*1 Graphics Device Interface Plus:GDI+は、Windows 9x/2000などに実装されていたグラフィックス・インターフェイスのGDIを拡張したもの。Microsoft Windows.NETのコンポーネントの一部として、グラデーション・ブラシやスプライン、アルファ・ブレンディング、BMP/GIF/JPEG/PNG/TIFFサポートなどの新機能や、マネージ・コードのサポートなどが強化されている。

 画面1は、PCMark2002を起動したところだ。これはPro Packを導入したものなので、すべてのオプションが有効になっている(唯一グレーアウトしている[Submit]ボタンは、実行した結果を送信するボタンであり、まだ実行していない状態では送信するデータがないため、このようになる)。テストの進行は、一部を除き画面2のような淡々とした(?)ダイアログが進行するのみで、3DMarkシリーズのような派手さはない。画面3はPro Packを導入すると利用可能になるビデオ品質テストの画面だが、Video 2000を見たことのある人なら、懐かしく感じるかもしれない。

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画面1 PCMark2002の起動画面
[Selected Tests]でテスト項目を選択し、[Run]の[Benchmark]ボタンをクリックするとテストが実行される。

画面2 PCMark2002の実行画面
PCMark2002は、単にダイログで進行状態が表示されるだけである。3Dグラフィックスの画面が派手に展開する「3DMark」のような見ていて楽しいというものではない。
 
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画面3 ビデオ品質テストの画面
Video 2000とほぼ同等のテストを行う。表示された画面を見ながらユーザーがその品質を判断するテストもある。

 PCMark2002の実行結果は、まず画面4のような形で表示される。結果は大きく、「CPU score」「Memory score」「HDD score」の3つに分けて示され、「PCMark値」のようなトータルした総合数値のような指標は提示されない。表1は、Pro Packを導入した状態で、3台のマシンをテストしたものだが、[CPU Test]の項にある6種のテストを重み付けして総合したものが「CPU Score」になる。同様に「Memory Score」は[Memory Test]の項、「HDD Score」は[HDD Score]の項を、それぞれ重み付けして算出したものである(各テストの詳細ならびに重み付けの方式については、PCMark2002のヘルプファイルを参照していただきたい)。

画面4 PCMark2002の結果表示
この画面はレジストした状態なのでスコアの詳細を表示する[Details]ボタンが利用可能になっているが、フリーソフトウェア版ではこのボタンは利用できない。結果は「CPU score」「Memory score」「HDD score」の3つに分けて示される。
 
マザーボード Intel D850MV Intel D845BG Intel D845WN
チップセット Intel 850 Intel 845 (B0ステップ) Intel 845
プロセッサ
Pentium 4-2.20GHz
メモリ 256Mbytes PC800 Direct RDRAM 256Mbytes PC2100 DDR SDRAM 256Mbytes PC133 SDRAM
ハードディスク
Barracuda ATA IV 60Gbytes
サウンド
オンボード(AC'97 CODEC)
LAN
オンボード(ICH2内蔵)
グラフィックス
GeForce3 (ドライバ:Detonator XP 28.32)
DVDプレーヤ
PowerDVD XP
OS
Windows XP Professional日本語版
PCMark2002の結果
CPU Score
5388
5387
5291
Memory Score
5238
4774
3508
HDD Score
878
922
812
表1 PCMark2002の結果
ここでは、「CPU score」「Memory score」「HDD score」のみを掲載している。テスト結果全体は「PCMark2002の詳細な結果」を参照していただきたい。

 「PCMark2002の詳細な結果」の[Crunch Test]は、CPU Testの項にあるJpeg Decoding(主にプロセッサ性能)、Memory Testの項にある3072Kbytes単位でのRaw Block Modify(主にメイン・メモリの帯域に負荷をかける)、Memory Testの項にあるVideo 1 line(1ライン単位での画面スクロールにより、主にグラフィックス・カード上のローカル・フレーム・バッファの帯域に負荷をかける)の3つを同時に実行したときの、それぞれのテストのスコアを示したものだ。[GDI+ Test]と[Video Test]はPro Packを購入したユーザーのみが利用可能なテストで、前者はGDI+を利用した2Dグラフィックスのテスト、後者はMPEG-2エンコード/デコードを含むビデオ性能のテストである。これらのテスト結果は、基本的に数字が大きいほど性能が高いことを示すが、Video TestのPlayback性能(結果は%で示されているもの)だけは、CPU占有率であるため、数字が低い方が性能が高い。

複数アプリケーションの実行でDirect RDRAMが有利に

 以上の基本を理解したうえで、表1で行ったテストと、その結果について簡単に触れておこう。ここで筆者が実行したのは、グラフィックス・カードやハードディスクなどの周辺機器を統一しておき、マザーボード(チップセット/メモリ)を変えて、Pentium 4プラットフォームの性能を調べてみたものだ。早い話、Pentium 4のDirect RDRAMDDR SDRAMSDR SDRAMの比較である。

 CPU Scoreで3つのプラットフォームによる差が比較的目立たないのは、用いたプロセッサが512Kbytesの2次キャッシュを内蔵するNorthwoodコアのPentium 4だったからかもしれない。特にDirect RDRAMとDDR SDRAMの間には、ほとんど差が見られない。また、SDR SDRAMも、それほど大きな差があるわけではないことが分かる。

 これに対してMemory Scoreでは、予想どおりの大きな差が見られた。もちろん、優秀な順にDirect RDRAM、DDR SDRAM、SDR SDRAMとなっている。HDD Scoreは、DDR SDRAM、Direct RDRAM、SDR SDRAMの順となった。何度やってもこの順となったが、DDR SDRAMのレイテンシが低いことによるものなのか、ノースブリッジ側のバッファなど内部構造によるものなのかまでは分からない。

 ある意味、個別テストの結果以上に大きな差が生じたのが3つのテストを同時実行するCrunch Testの結果だ。ここではDirect RDRAMが大差をつけてトップになっている。不評であったIntel 820チップセット(Pentium III用にリリースされた初めてのDirect RDRAM対応チップセット)の発表時に、Intelが同時に複数アプリケーションを実行した場合の実性能が高い、といっていたことが思い出される。ウイルス・チェックのバックグランド実行やビデオ会議といった複数のアプリケーションが同時に実行されるような環境には、Direct RDRAMのプラットフォームが優れているということが分かる。

 GDI+ TestとVideo TestはPro Packに含まれるテストだが、おおむねメモリの帯域順に結果が並んでいる。興味深いのは、アンチエイリアスされた文字列の出力のテストであるStringsのテスト結果がメモリの帯域と逆順になっていることだが、この理由もよく分からない。同様に、Cached Bitmapsのテストで、Direct RDRAMが抜きん出た結果(DDR SDRAMの2倍以上)となっている理由も不明だ。

 というわけで、理由がよく分からない点があるものの、PCMark2002の結果は、それなりに納得のいくものである。今回は実行していないが、画面1で分かるように、ノートPC向けにバッテリ駆動時間のテストも用意されている。WinBenchが更新されなくなったいま、その後継としてプロセッサ、メモリ、ハードディスクの性能を測るベンチマーク・テストとして、PCMark2002は貴重な存在だと思う。PCMark2002を上手に使うことで、PCのボトルネックがどのデバイス(プロセッサ、メモリ、ハードディスクなど)にあるのか判断することも可能だろう。記事の終わり 

Windows XPの互換性問題が露呈?
 
PCMark2002はコンポーネント・ベンチマーク・テストとして優れているものの、プラットフォームによってはうまく起動できない例が見られた。下の画面は、起動に失敗したときに表示されるダイアログである。

PCMark2002の起動に失敗したときに表示されるダイアログ
このようにWindows XPがエラーを表示する。筆者が試したIntel 815チップセットでは、どうしてもこのエラーが発生し、テストが行えなかった。

 今回、筆者はPentium 4搭載の3種類のプラットフォームでPCMark2002を実行することができたが、チップセットにIntel 815を採用したマザーボード(Intel製D815EEA)では、ついにPCMark2002が実行できなかった。Intel 815チップセットでは必ず実行できないわけではないようなので、単なるチップセットの問題ということではなさそうだ。実行できたPentium 4プラットフォームでも、まれに起動に失敗することがあったが、そうした場合ほかのアプリケーションを1回起動した後だと、起動できる例が多々見られた。PCMark2002のプロパティから、互換性設定(視覚テーマの有効/無効、互換モードでの実行など)を変えてみるなどもしたが、いずれも決め手にはならなかった。グラフィックス・カードを変更しても結果は同じだったので、原因は不明のままである。

PCMark2002のプロパティ
Windows XPの[互換性]タブが設定されており、互換モードの変更が可能だ。ただ、ここをいろいろと設定したものの、Intel 815では起動できなかった。

 実は、こうした傾向は3DMark 2001 Second Editionから見られるようになったもので、Windows Meではほとんど問題ないようだ。問題は3DMarkやPCMarkの側にあるものと思われるものの、Windows 2000(日本語版)で利用できたSYSMark2001がWindows XPの日本語版で利用できなくなったことなどを考えると、Windows XP側にも何らかの問題があるのではないか、という気にもなってくる。英語版と日本語版は同一のコードベースで作成されているというものの、こうした互換性の問題に直面すると、困惑してしまう。

 
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PCMark2002の情報ページ
PCMark2002のダウンロードページ
 
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