元麻布春男の視点
PCI-Xは3GIO登場までのつなぎなのか?

元麻布春男
2002/04/05

 2002年3月20日、PCI SIGはひっそりとPCI規格の最新版である「PCI Local Bus Specification version 2.3(PCI v2.3)」を発表した(PCI SIGの「PCI v2.3に関するニュースリリース」)。これまで用いられてきたPCI v2.2が1998年12月にリリースされたことを考えると、実に3年3カ月ぶりの仕様の更新ということになる。3年余りの歳月は、この世界では決して短いものではないが、今回のPCI v2.3での改訂内容はそれほど大幅なものではない。次のメジャー・バージョンとなるPCI v3.0に備えて、PCI v2.2をブラッシュアップしたものといったところだ。なぜ、PCI v2.3で大幅な機能追加がなかったのか、またPCI-Xとの関係はどうなるのか、について考察していこう。

PCI v2.3での変更点

 PCI v2.3で最大の変更点は、5V専用のPCI拡張カードが認められなくなったことだろう。PCI 2.3では、拡張カードは3.3V/5V共用のユニバーサル、もしくは3.3V専用でなければならない。拡張スロット側は5Vカードを受け入れることも認められているが、早ければPCI v3.0では5V動作のサポートが除外されると思われる。今回のPCI v2.3で、PCI-X(後述)やMiniPCIは統合されておらず、Low Profile PCI(省スペース・デスクトップPC向けにカードの小型化を行った規格)だけがPCI v2.3に統合されたのは、PCI-XやMiniPCIが3.3V動作を前提とした規格で、5V動作を認めないからだと考えられる*1

*1 Low Profile PCIも規格レベルでは3.3V動作を前提としているが、実際の製品では5V動作のものもある。基本的にLow Profile PCIは単に標準のPCIカードを小型化しただけの規格で、電気的特性や信号のプロトコルなどは共通なものとして認識されている。そのせいか、実際の製品では、Low Profile PCI対応スロットなのに5V動作というPCシステムが存在するようになってしまったようだ。

 このPCI v2.3は、2.xの規格としては最後で、次は上述したPCI v3.0になる予定だ。PCI v3.0では、3GIOやPCI-Xも規格として統合され、1つのPCI規格として成立することになっている。また、可能ならば3.3V動作のみの規格にしたいと考えているようだ。

 3GIOについては、「技術解説:PCの内部はすべて『シリアル』でつながる」を参照していただくとして、ここで繰り返すことはしない。2003年に最初のシリコン、2004年に最初のユーザー向け製品のリリースを目標に標準化と開発が進められている、次世代のシリアルI/Oアーキテクチャだ。現時点でクライアントPCに3GIOを必要とするアプリケーション(用途)はほとんどない。グラフィックスはAGP、ストレージとネットワークはコントローラがサウスブリッジに内蔵される方向にあり、3GIOのような汎用的なI/Oは必要とされていない。だが、高速なI/Oがあって困るものでもないし、将来的にはあった方が望ましいことはいうまでもない。

サーバにおけるI/O処理能力の必要性

 一方、サーバについては、すでにPCIでは帯域が不足する事態になりつつある。PCI v2.2が定めるPCIバスの速度は、最も帯域の広い64bit幅/66MHz動作でも533Mbytes/sにすぎない。現在、急速に普及しつつあるギガビット・イーサネットやUltra320 SCSI、Fibre ChannelによるSANといった用途は、たとえ個々でPCIバスの帯域を超えることがなくても、同時に複数のI/O処理が求められるサーバ環境では十分ではない。またPCI v2.xでは、64bit幅/66MHzのPCIバスのインプリメントには、ノイズなどの問題から6層や8層といった高価な多層基板が必要となるうえ、1つのバス・セグメンテーションに設けられる拡張スロットが2本程度に限られてしまう*2。サーバに要求される高いI/O処理能力を満たすためには、こちらの制約も緩和することが望まれる。PCIバス・ブリッジを併用することで、セグメンテーションの制約は回避できる*3が、当然コストは上昇するので、規格として1系統のバスに処理能力が高い拡張スロットが複数本実装できることが望まれている。

*2 1本のバスに多数の拡張カードを装着すると、電気信号が乱れて正常に伝送できなくなるため、カードの枚数には上限がある。同じレベルの技術を前提とした場合、より高速に伝送しようとするほど、カードの上限枚数は少なくなる。
 
*3 PCIの規格では、物理的に単一の配線で接続されたバスを1本だけではなく複数本、1つのシステムに実装できる。それぞれのバスは、ブリッジ・チップで直列に接続したり、ローカルバスを介して並列に接続したりすることで相互に通信できる。

 こうした問題について、中・長期的なソリューションとしては、サーバ分野でも3GIOが使われるものと考えられる。以前は、ハイエンド分野においてはInfiniBandが使われると考えられていたが、現時点ではHubLinkや3GIOといったローカルバスを介してInfiniBandを接続する方向にシフトしている。ただ、InfiniBandはシリコン・レベル、試作機レベルでの検証作業が進んでいるものの、OSサポートや最適化の作業に時間がかかっており、実際の製品出荷はまだまだ先となりそうだ。また、3GIOによるソリューションが利用可能になるのは2004年〜2005年前後であり、2002年あるいは2003年のソリューションには使えない。

PCI-Xの必要性

 そこでサーバ向けのI/Oについて、現行のPCI v2.xと3GIOの間のギャップを埋めるものとして期待されているのがPCI-Xだ。すでにリリースされているPCI-X 1.0はPCI v2.xとの互換性を維持したうえで、PCIバスのプロトコルを改良、さらにバスの動作周波数を最大133MHzに引き上げるものである。64bit幅で133MHz動作であれば、PCI-Xバスの最大データ転送速度は1066Mbytes/sと、クライアントPCでおなじみの32bit幅/33MHz動作のPCIバスの8倍に達する。また、最大動作周波数の133MHzでは、サポート可能な拡張スロットは1つのバス・セグメンテーションにつき1スロットに制約されるが、100MHz動作なら2スロット、PCI v2.xと同じ66MHz動作であれば2倍の4スロットが確保可能だ。

大きな図へ
PCI-Xのスロット数とバンド幅の関係
64bit/66MHzの場合、PCIでは2スロットに制限されるが、PCI-Xでは4スロットの確保が可能だ。またPCI-Xでは、さらにバンド幅が広い64bit/100MHz、64bit/133MHzがサポートされている。

 加えて、プロトコルの改良により、同じ66MHz動作であっても、PCI-Xは現行のPCI v2.xに比べ、最大33%の性能向上が見込めるという。現在PCI SIGでは、PCI-XをDDR(Double Data Rate)動作、あるいはQDR(Quad Data Rate)動作にすることで、最大データ転送速度をPCI-Xの2倍、あるいは4倍に引き上げるPCI-X 2.0の標準化作業が進められており、PCI v3.0に盛り込まれる可能性が高い(PCI SIGの「PCI-X 2.0の仕様に関するニュースリリース」)。

大きな図へ
PCI-XとPCIの性能比較
このように同じ66MHz動作であっても、PCI-XはPCIに比べて最大33%の性能向上が見込める。

 PCI-X 1.0はすでにServerWorks(Broadcomのチップセット部門)やIntelのチップセットにインプリメントされており、Compaq製のサーバ「PROLIANT DL760」などでも採用されている。ほかに代わるものも考えられないことから、サーバにおける標準I/Oとして、近い将来広範に使われることになるだろう。一方、PCI-X 2.0がどれくらい使われることになるのかは、PCI-X 2.0に準拠した製品と、3GIOに準拠した製品が、どういったタイミングで登場するのか、またPCI-X 1.0上にユーザー資産や開発者の技術資産がどれくらい蓄積されるか、にもよる。Intelが発表しているロードマップによれば、3GIOに準拠したシリコンが2003年にリリースされ、順調に製品化されれば、PCI-Xの応用分野はハイエンドにとどまるだろう。ただ、3GIOの製品化が遅れるようなら(新しい技術は予定より遅れるのが常ではある)、PCI-X 2.0にも普及のチャンスが生まれるだろう。

 いずれにしてもPCI-XはかなりコストのかかるI/O技術であり、デスクトップPCとは無縁の技術だと考えて間違いない。3GIOが発表される前、PCI SIGおよびPCI-Xを提唱したCompaqは、PCI-XをデスクトップPCにも利用することを呼びかけていた。ある意味3GIOは、これに対するIntelの回答、と考えられなくもないが、結局はPCI-Xに否定的だったIntelがサーバについてはPCI-Xをサポートする形で歩みより、CompaqはPCI-XをサーバのI/Oにとどめる代わりに、次世代の汎用I/Oとして3GIOを支持する形で歩み寄ったわけだ。

 PCIに対するPCI-Xの位置付けをひと言で表せば、ISAに対するEISAのようなもの、ということになる。EISAはPCIが登場するまで、ISAでは帯域の足りないサーバやワークステーションを中心に使われた技術だが、PCI-Xは3GIOが登場するまでPCIでは帯域の足りないサーバやワークステーションに使われる、と理解すればよい。かつてEISAを推進したCompaqが、いまPCI-Xを推進しているのも偶然の一致ではないハズだ。記事の終わり

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PCI v2.3に関するニュースリリース
PCI-X 2.0の仕様に関するニュースリリース
 
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