筆者の要求を満たせないノートPC

渡邉利和
2002/01/16

 これまで使っていたノートPCのバッテリのヘタリ(駆動時間の減少)が気になり始めたので、年末に急きょノートPCを新調した。しかし、新しいノートPCは、これまで使っていたものに比べて良くなった点がある一方で、明らかに劣っているところもあった。ノートPCに関しては、新しいものが常に良いとは限らない点が面白くもあり、選択を難しくもする。今回は、ノートPCについて考えてみたいと思う。

ノートPCという特性

 コンピュータ開発初期のENIACなどの時代ならいざ知らず、現代のコンピュータは大量生産される半導体などのコンポーネントを組み合わせた工業製品であり、職人芸やたくみの技が存分に発揮されるような世界ではない。単にバラで販売されているパーツを買い集め、コネクタを接続して組み立てるだけで「自作PC」と呼ばれるあたりからもそうした事情がうかがえる。

 PCの世界では、「新しいものは古いものよりも良い」という考え方が基本だが、これは主要構成要素となる半導体部品の特性による面も大きい。半導体は年々集積度が上がり、価格が低下していくのが常識である。製品の進歩が速いこともあって、新しいものは確実に古い製品よりも機能が向上し、価格は据え置きか安くなるというのがパターンだ。

 この恩恵を直接的に体感できるのがデスクトップやミニタワーといった据え置き型のケースを採用したPCであり、これに関してはまず例外なく、新しい機種は古い機種よりも良いといって間違いない。しかし、ノートPCに関しては必ずしもそうとはいえない面がある。

 ノートPCは、もともとスペースに余裕がないところにさまざまな機能を押し込むため、デザイン上の制約が付きまとう。さらに、持ち運ぶという特性上、軽くて丈夫であってほしい。手に持ったときに余分な突起や鋭利な角が当たるようでは問題があるし、手触りや見た目の美しさも求められる。こうした外形的なデザインに加え、性能面でもそう極端な妥協はできない。もちろん、ユーザーによって求める要件はさまざまだが、大きさや電源容量に余裕があり、ユーザーが好きなように拡張できるデスクトップタイプのPCに比べ、拡張の余地が限定されており、基本的にはユーザーが自由に手を加えられるわけではないノートPCの方が、最初の段階での機能のバランスに対する要求水準が高まるのが普通だろう。使われ方としてはデスクトップPCのサブ機として利用されることも多いと思うが、機能的にはむしろデスクトップPCよりも充実しているというのが、現在のノートPCではないだろうか。

筆者がノートPCに求めるもの

 どのようなノートPCを選ぶかは、ユーザーの利用方法に全面的に依存する話であり、まさに十人十色といったところだ。筆者の場合は、ノートPCの主たる用途は海外出張時の仕事環境である。もちろん、海外に限らず国内出張でも事情は同様なのだが、日帰りで済むような仕事であれば特に作業環境を持っていく必要性も薄いため、出先で何泊かするような場合にこそ必要となる。こうした状況は、主として海外出張の際に生じるというわけだ。

 ここでノートPCに何を求めるかだが、筆者の場合はいわゆる「モバイル」というイメージよりは、活動度が低いのが実態だ。ホテルの部屋に置いておき、そこで通信や執筆を行う、という使い方が主であり、1日中持ち歩いて利用する、というほどではない。だったら、大きくて重いがフル装備の「オールインワン・ノートPC」というタイプでよいのかというと、そうはいかない。何しろ壊れ物であるし、基本的には機内持ち込みの手荷物の中に入れて運ぶことになるので、あまり大きくて重いものでは大変だ。実際、空港というものは想像以上に歩く距離が長いので、自分で運ぶ荷物は極力軽くしたいのが人情というものである。

 そこで、筆者がノートPCに求める要件は、あまり大きくなく、重量も軽いことが重要となる。次いで、自宅にいるのと極力近い作業環境が実現できることと、想定される状況にちゃんと対応でき、仕事に支障をきたさないことだ。大きさに関しては、小さい方が運搬には便利だが、ホテルで原稿書きなどをする場合を考えると、タイピングに不便を感じるほど小さいのも困る。ユーザーごとの慣れの問題や、手の大きさにも関連するだろうが、筆者の場合はおおむねA4ファイル・サイズと呼ばれる機種に落ち着いてきている。液晶パネルが12〜13型程度で、1024×768ドット表示というところだ。これで、重量が2kg以下、できれば1.5kg以下くらいのモデルが希望だ。

 自宅の作業環境に近いという点では、実はある程度妥協の余地がある。プロセッサ性能に関してはあまりぜいたくをいうつもりはなく、現実には自宅で使用している主要なアプリケーションが「まぁ使える」というレベルであればよしとしている。ただし、アプリケーションのサイズも大きいし、ほかに頼るべきストレージ・サーバもない状況で使用するのが前提のため、実はハードディスクの容量はある程度大きい必要がある。昨年末に導入したノートPCは20Gbytesのハードディスクを内蔵したものだ。それ以前に使っていたのは2000年春のモデルで、ハードディスクの容量は8Gbytesだった。実は、この8Gbytesというハードディスク容量に不足を感じるようになってきたのも、新しいノートPC導入の動機になっている。もちろん、ハードディスクを容量の大きなものに交換する手もあるのだが、すでに新しいバッテリが品切れで入手困難になっていることが分かった時点で、この手はあきらめた。なお、プロセッサ性能にはあまりこだわらないとはいいつつ、実はあまりランクを下げるわけにもいかなくなっている。これは、デジタル・カメラを主要撮影機材として利用するようになったためでもあるのだが、写真画像のちょっとしたレタッチ程度は出張先で行う必要があり、意外とこれにプロセッサ・パワーが必要になるからだ。

仕事柄どうしても内蔵してほしいCD-ROMドライブ

 そして、これはあまり一般的な要請ではないかもしれないが、筆者としては最低でもCD-ROMドライブ、希望としてはDVD-ROMドライブを内蔵している機種が望ましいと考えている。最近では、海外のイベントなどに取材に行くと、プレス向けの資料をCD-ROMで配布するのが一般的になっている(DVD-ROMをもらったこともある)。こうしたものを現地で参照できないと原稿を書くのに困るので、CD-ROMドライブが必要となる。とはいえ、外付けのCD-ROMドライブを別途持っていくのは、荷物が増えて面倒なので、どうせならノートPCに内蔵されていてほしいというわけだ。もちろん、いざというときのOS再インストールなどの際にも、ブート可能なCD-ROMドライブが内蔵されていれば手間が省ける、ということもある。

 そのほか、アナログ・モデムとイーサネット・インターフェイスは内蔵していてほしい、というのも重要な要件だ。別にPCカードでもいいのだが、以前PCカード・タイプのモデムの専用ケーブルを忘れて往生した経験があるので、こうした専用ケーブルを利用するタイプのPCカードは極力避けるようにしている。いまどきモデムを内蔵していない機種の方が少ないくらいなのでこの点は心配ないが、イーサネット・インターフェイスに関してはまだ標準装備でない機種も少なくない。これに関しても、自宅で利用する際には常時LANに接続して使うし、PCカード・スロットはデジタル・カメラやICレコーダのメディア(各種のフラッシュメモリ・カードなど)を読み込むために使うので極力空けておきたいという事情もあるので、基本的には本体にイーサネット・インターフェイスを内蔵した機種を選ぶようにしている。

 このほか、人によってはポインティング・デバイスに重きを置いて選択することも多いが、筆者はこの点に関しては「まぁ何でもいいや」という態度に落ち着いた。以前は熱烈なトラックボール・ファンで、それ以外のポインティング・デバイスにはどうしてもなじめなかったのだが、トラックボール搭載機が非常に少ない最近ではさすがにあきらめて、小型のUSBマウスを携帯するようになった。そのため、本体に組み込まれたポインティング・デバイスを使う機会はごく限定されたので、これは現在筆者のノートPC選びのチェック・ポイントからは完全に抜け落ちてしまっている。

 ということで、あらためて列挙してみると、筆者が好むノートPCのスペックはあまり面倒なものではなく、「A4ファイルサイズで1.5kg程度、20Gbytes程度のハードディスク、DVD-ROMドライブ/アナログ・モデム/イーサネット・インターフェイスの内蔵」というだけのことである。しかし、各メーカーのラインナップをチェックしても、実はこの要望にぴったりはまる機種というのはまず見当たらないので話が面倒になる。

 さらに付け加えるなら、実はバッテリ駆動時間も一応は気にする。空港や飛行機の搭乗中など、現地のホテルにチェックインするまでの間に使うことを考えると、バッテリ駆動時間は4時間程度を必要とする。これは、カタログ・スペックとして4時間という意味ではなく、実際にPCに電源が入っている時間の累計が4時間程度という意味だ。これに対応するには、多分カタログ・スペックで6時間程度と表記されているものになると思われる。だが、これを条件に加えてしまうと選択できる機種は、完全になくなってしまう。大容量バッテリが使える機種はもちろんあり、8時間以上のスペックをうたう機種もあるのだが、サイズが大きくなり、重量も増すのであまり使う気になれないのだ。そんなわけで、ここは「できるだけ長持ちするのが望ましい」という程度で妥協している。しかしながら、年末に導入した新マシンでは、バッテリも当然ヘタッてなどいないはずなのに、飛行機の中で1時間程度使ったらバッテリ残量が3割程度にまで落ちていたので、かなりガッカリしているわけだ。

項目 要望
サイズ A4ファイル・サイズ
液晶パネル 12〜13型
画面解像度 1024×768ドット
重量 重量2kg以下(できれば1.5kg以下)
プロセッサ あまりこだわらない
ハードディスク 容量20Gbytes以上
CD-ROMドライブ 内蔵(できればDVD-ROMドライブ内蔵)
インターフェイス モデムとイーサネットの標準搭載
ポインティング・デバイス こだわらない(USBマウス使用)
バッテリ駆動時間 4時間程度
筆者のノートPCに求めるもの

選択肢が減りつつある現実

 ノートPCの面白いところは、プロセッサの性能向上と製品としての魅力向上とが必ずしも一致しないところである。むしろ、プロセッサ性能が向上するのに伴って消費電力が増え、放熱が厳しくなり、ノートPCは作りにくくなっているような気がする。もちろんこれは、デスクトップPCと同じような使い方をする「オールインワン・ノートPC」と呼ばれるタイプであれば比較的容易に対処できることであるが、一応持ち運ぶことを想定する筆者のようなユーザーにとっては、頭から選択肢に入ってこない。別に何か根拠があるわけでもないが、ノートPCに求められるリソース量とデザインがちょうどバランスしていたのは、筆者の目から見ると1999〜2000年くらいの時期かな、と感じている。そのころの機種には魅力的に見えるものが多かったのだが、現在では当時と比べてバランスが悪く、使い勝手が悪化したように思えるマシンが増えたようだ。

 いうまでもなく、限られたサイズに高機能を押し込もうとするノートPCの設計は、バランスが重要で、ある意味妥協の産物である。だからこそ、最適なバランス・ポイントを追求する「デザイン」という作業が重要になるはずだ。デザインとは何も外見をカラフルに飾ることではなく、実装される機能や使い勝手を磨いていく作業である。ノートPCはインテリアの置物ではなく、実用品なのだから、見た目が良ければそれでよいというわけにはいかないのである。

 PC市場の伸び悩みが伝えられ、低価格化の圧力も強い。メーカーとしても、あまり凝ったデザインを追求する余裕はなくなってしまっているのかもしれない。Hewlett-PackardとCompaq Computerの合併は創業一族が反対の声を上げたことから強い逆風が吹き始めているようだが、実現すればベンダ数の減少ということになり、結局は選択肢がより狭まることにもなる。この状況が続くと、同じような値段で同じようなマシンが数機種あるうちから選ばざるを得ない、ということになりそうで、さすがに危ぐを感じている。

筆者が愛用してきたLet's note CF-L1ER
バッテリの具合が悪くなってきたので、新しいノートPCに買い替えたのだが、デザインのバランスとしては非常に気に入ったモデルである。ぜひとも同じようなコンセプトの後継機を松下電器産業には期待したい。

 実は、筆者は長らく松下電器産業のLet's noteシリーズを愛用していた(松下電器産業の「Let's note CF-L1ERの製品情報ページ」)。筆者にとって、このシリーズのデザインはちょうど使いやすく感じられるもので、いわばお気に入りだったのである。しかし、Let's noteシリーズは2001年夏モデルを最後に、2001年冬には新機種の投入はなかった。松下電器産業全体としてみれば「AVノート」と銘打たれたHITOシリーズにWindows XP搭載機種が2001年11月に投入されているのだが、デスクトップPCの代替として利用する想定でAV機能を強化したHITOシリーズは筆者にとっては選択肢に入らないので、残念ながら昨年末の新機種購入の検討を行った際には、松下電器産業の製品は候補に加えることができなかった。Let's noteに関しては、「新コンセプト・ノートPC開発のためのアンケート」をホームページで行っていたことから、メーカーとしてもどのようなデザインを採るべきか考えあぐねているのだろう。とはいえ、さまざまなデザインが競い合い、より高いバランス・ポイントを目指して発展する中で個人のし好に合ったモデルを選べる、という状況が望ましいことに変わりはないので、ノートPCメーカー各社には何とか頑張って現在のちょっと停滞感のある状況を打破していただきたいものである。記事の終わり

  関連リンク 
Let's note CF-L1ERの製品情報ページ
 
「Opinion:渡邉利和」


渡邉 利和(わたなべ としかず)
PCにハマッた国文学科の学生というおよそ実務には不向きな人間が、「パソコン雑誌の編集者にならなれるかも」と考えて(株)アスキーに入社。約1年間技術支援部門に所属してハイレベルのUNIXハッカーの仕事ぶりを身近に見る機会を得た。その後月刊スーパーアスキーの創刊に参加。創刊3号目の1990年10月号でTCP/IPネットワークの特集を担当。UNIX、TCP/IP、そしてインターネットを興味のままに眺めているうちにここまで辿り着く。現在はフリーライターと称する失業者。(toshi-w@tt.rim.or.jp

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