DOSの緊急ブート・フロッピーを作成する(DR-DOS編)

デジタルアドバンテージ
2002/02/20

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 最近は少なくなってきたが、何らかの事情でDOSのブート・フロッピーが必要な場合がある。例えば、PCのトラブルシューティングをしたり、BIOSのアップデートを行ったり、CD-ROMブートができないマシンにWindowsなどのOSをインストールしたり、といった場合だ。そこで本稿では、非商業利用に限って無償で提供されているDR-DOSを利用して、DOSの緊急ブート・フロッピーを作成する方法を紹介する。なお、Windows 98SE/Meのライセンスが正式に利用できる環境なら、「PC Hints:DOSの緊急ブート・フロッピーを作成する(Windows 98SE/Me編)」も参考になるだろう。

 まずはDR-DOSを入手する必要がある。これは「PC Hints:DOSシステムを入手する方法」を参考にして、DR-DOS 7.x Lite版のフロッピーディスク3枚を作成すればよい。DOSブート・フロッピーとして使うのは1枚目で、これに対して不要なファイルは削除し、また必要なファイルを追加していく。必要なファイルのリストは下表のとおりだ。追加するファイルは、すべてブート・フロッピーのルート・ディレクトリに保存する。

必要なファイル コピー元 備考
AUTOEXEC.BAT (新規作成) DOSの起動時に自動実行されるバッチ・ファイル。DOS起動時に必ず実行するプログラムのコマンドラインを記述する
COMMAND.COM 1枚目 コマンド・インタプリタ。DOSのCUIをつかさどるシェル相当のプログラムで、ブート・フロッピーには必須
CONFIG.SYS (新規作成) デバイス・ドライバの組み込みなどを指示するためのテキスト・ファイル
COUNTRY.SYS 1枚目 国別情報ファイル
DPMS.EXE 3枚目 DMPI対応のメモリ・マネージャ。コンベンショナル・メモリの消費を抑えるのに役立つ。3枚目のフロッピーから抜き出すには、PNUNPACK.EXEで展開する必要がある
EMM386.EXE 3枚目 EMSなどのメモリ・マネージャ。コンベンショナル・メモリの消費を抑えるのに役立つ
FDISK.COM 1枚目 ハードディスクのパーティション設定ツール。OSのインストール時などに役立つ
FORMAT.COM 1枚目 ハードディスクなどのフォーマット・ツール。OSのインストール時などに役立つ
IBMBIO.COM 1枚目 DOS本体のシステム・ファイル(不可視属性)。ブート・フロッピーには必須
IBMDOS.COM 1枚目 DOS本体のシステム・ファイル(不可視属性)。ブート・フロッピーには必須
NWCACHE.EXE 2枚目 ディスク・キャッシュの常駐プログラム。OSのインストールを高速化するのに役立つ
NWCACHE.OV1 2枚目 NWCACHE.EXEのパーツの一部
NWCACHE.OV2 2枚目 NWCACHE.EXEのパーツの一部
NWCDEX.EXE 3枚目 CD-ROMのファイルシステムをサポートする常駐プログラム。CD-ROMドライブをアクセスするのに必須
(*.SYS) ドライブ・ベンダのWebサイトなど CD-ROMドライブ用DOSドライバ。CD-ROMドライブをアクセスするのに必須
必要なDR-DOSファイル一覧
「コピー元」欄にある「1〜3枚目」は、DR-DOS 7.x Lite版のフロッピーディスク3枚を表している。この表にないファイルは不要なので、1枚目のフロッピーディスクから削除して構わない。また最下行の(*.SYS)はCD-ROMドライブ用DOSドライバを意味する。

 上記ファイルのうち「DPMS.EXE」だけは、圧縮されて「DPMS.EX_」というファイル名で3枚目に保存されているので、1枚目のフロッピーにある「PNUNPACK.EXE」を使って展開する必要がある。具体的にはDOSプロンプトなどから、

PNUNPACK.EXE A:DPMS.EX_

と実行すると、そのときのカレント・ディレクトリにDPMS.EXEが展開される。これを1枚目のフロッピーに保存する。

 残るのは、AUTOEXEC.BATとCONFIG.SYSという2つのテキスト・ファイルだ。これらは以下のリストの内容から、メモ帳など適当なテキスト・エディタで作成し、ブート・フロッピーにコピーすればよい。

DOS=HIGH,UMB
COUNTRY=001,437,COUNTRY.SYS
rem DEVICE=EMM386.EXE
rem DEVICE=DPMS.EXE
DEVICEHIGHI=ATAPI_CD.SYS /D:OEMCD01
LASTDRIVE=Z
DOSの緊急ブート・フロッピー用のCONFIG.SYS
必要最低限のドライバしか組み込まないため、シンプルな構成になっている。の「atapi_cd.sys」はATAPI CD-ROMドライブ用DOSドライバの1種だが、これはDR-DOSに付属していない。「PC Hints:CD-ROMドライブにアクセスできるDOSブート・フロッピーを作成する方法」を参考に、対象のPCに合わせてDOSドライバを入手し、そのファイル名で書き換えていただきたい。このCONFIG.SYSのダウンロードはこちら(config_sys.txt)
  国別情報の設定。DR-DOSの場合は、指定しなくても構わない。
  メモリ・マネージャ(EMM386.EXE)の組み込み。コンベンショナル・メモリの空き容量を増加させるのに役立つが、プログラムによっては誤動作することもあるため、ここでは無効にしている。
  メモリ・マネージャ(DPMS.EXE)の組み込み。EMM386.EXE同様、コンベンショナル・メモリの空き容量を増加させるのに役立つが、プログラムによっては誤動作することもあるため、ここでは無効にしている。
  CD-ROMドライバの組み込み。ここではパイオニア製DVD-ROMドライブ用の専用DOSドライバ「ATAPI_CD.SYS」を組み込んでいる。「/D:OEMCD01」はCD-ROMのデバイス名(OEMCD01)を指定するオプションだ。後述のAUTOEXEC.BATで組み込むNWCDEX.EXEでも、これと同じCD-ROMデバイス名を指定する。
  予約するドライブ名の指定。CD-ROMドライブに割り当てるドライブ名を確保するために、ここではZ:ドライブを指定している。

 DR-DOSには、CD-ROMにアクセスするためのDOSドライバが付属しない。CD-ROMへのアクセスが必要なら、「PC Hints:CD-ROMドライブにアクセスできるDOSブート・フロッピーを作成する方法」を参考に、ターゲットのPCに合わせてDOSドライバを入手し、上記のようにCONFIG.SYSを書き換えて組み込む必要がある。

@ECHO OFF
NWCDEX.EXE /D:OEMCD01 /L:P
rem NWCACHE
DOSの緊急ブート・フロッピー用のAUTOEXEC.BAT
DOS起動時に自動実行したいプログラムがある場合は、AUTOEXEC.BATに記述しておく。このAUTOEXEC.BATのダウンロードはこちら(autoexec_bat.txt)
  CD-ROMのファイルシステム(ISO9660)をサポートするプログラムの組み込み。「/D:」に続くのはCD-ROMのデバイス名で、CONFIG.SYSで組み込むCD-ROMドライバで指定したのと同じデバイス名を指定する必要がある。また「/L:P」は、CD-ROMドライブをP:ドライブに割り当てることを意味する。ほかのドライブ名にしたい場合は、「P」の代わりに別のアルファベットを指定すればよい。
  ディスク・キャッシュ・プログラムの組み込み。ただし、ここではremで無効としており組み込まれない。OSのインストールのように、繰り返しCD-ROMやハードディスクをアクセスする場合は、これを組み込むと大幅に高速化されることがある。その反面、コンベンショナル・メモリを消費するため、大きなプログラムを実行できなくなることがあるので要注意だ。

 以上で、DR-DOSの緊急ブート・フロッピーは完成だ。ターゲットのPCで実際にDR-DOSをブートできるかテストしてみよう。不具合がなければ、「PC Hints:ブート用フロッピーディスクをバックアップするには」を参考にして、バックアップを取っておくとよいだろう。

 なお、DR-DOSには日本語表示と日本語キーボードのサポートはない。そのため、日本語表示を必須とするセットアップ・プログラムなどは実行できない。その場合は、日本語表示の可能なDOS(MS-DOS/VやPC-DOS/V、Windows 98/Me内蔵DOSなど)を代替として使うことになる。記事の終わり

  関連記事(PC Insider内) 
DOSの緊急ブート・フロッピーを作成する(Windows 98SE/Me編)
DOSシステムを入手する方法
CD-ROMドライブにアクセスできるDOSブート・フロッピーを作成する方法
ブート用フロッピーディスクをバックアップするには
 
「PC Hints」


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