連載 PCメンテナンス&リペア・ガイド

第2回 PC本体にアクセスしてハードウェア構成を調べる

2. PCの内部を見てハードウェアを確認する

林田純将
2001/03/24


PCのケースを開けるとき必要なモノと注意するコト

 外から見ているだけでは、PCの中身は完全には分からない。PCの外観をチェックした次は、PCの内部を直接のぞいてみよう。そのためには、まずケースを開けることから始めることになる。慣れてくればそれほどでもないが、初めてPCのケースを開ける場合、ある程度のスペースを確保して作業するようにしよう。狭い机の上でやると、ネジなどを落としてなくしてしまうことがあるからだ。机の上が狭ければ、床でやった方がよいだろう。

■必要な工具類

 用意する工具としては、基本的にはプラス・ドライバー(サイズが2番または「#2」、「P.2」などと記されているもの)が1本あればよい*1。最近のケースは、ドライバーなしでも開けることができるものも多いが、拡張カードやドライブ類はネジで固定されていることが多いので、ドライバーがないと取り外せない。また、拡張やメンテナンス作業を行う際に紛失するものの筆頭が、このネジだ。取り付け/取り外しの最中にネジが落ちにくいように、ドライバーはマグネット機能付きのものを用意したり、外したネジ類を入れる小皿を用意したり、といった準備をしておくとよい。

*1 コンパックコンピュータや日本HP製のPCでは、トルクス・ネジと呼ばれる特殊なネジを使っている場合があり、専用のトルクス・ドライバーが必要なこともある。しかし、PC全体からすれば、これはごく一部の例外といえる。
 
プラス・ドライバーの例
拡張やメンテナンスに必要な工具は、基本的にはプラス・ドライバーが1本あれば事足りる(サイズは2番または「#2」、「P.2」などと記されているもの)。あとは、ネジをなくさないように小皿を用意しておけばベター。また、マグネット機能付きのドライバーなら、右上の写真のように、ネジがドライバーの先端に吸い寄せられるので便利だ。

■静電気や電源ケーブルに注意

 さて、ドライバーなどの準備ができたら、いよいよケースを開けるのだが、その前に体にたまった静電気に注意したい。特に冬場は、人間の体に多くの静電気がたまってしまう。PCに使われているマザーボードなどのパーツの中には、この静電気に弱いものがあるので注意が必要だ。とはいっても、静電気の対策に特別な工具が必要なワケではなく、作業を始める前に、水道の蛇口やスチール机などの大きめの金属に触れて静電気を逃がすようにするだけで大丈夫だ。また、静電気を発生させやすいセーターなどは脱いでおこう。

 また、ケースを開けてPCの内部に触れる際には、事前に電源ケーブルを抜くことも忘れないようにしたい。詳細は「PC TIPS:PCパーツの着脱時にはPCの電源ケーブルを抜く」を参照していただきたい。

■ケースを開けるコツ

 ケースを開けるときは、ケースを見て、カバーがネジで止まっていればネジを外す。たいていは、ケース背面でネジは止められている。片側だけが開くものはケースの背面から見て右側のネジを、ケースがコの字型に開くものは左右両方(ケースによっては上側も)のネジを外す。不要なネジまで外してしまわないよう気を付けよう。最近は、ケースを開けるところまではドライバーが不要なPCも多いため、それほど悩まなくてもいいだろう。筆者が使用するDimension 4100も、ケースはドライバーなしで開けることができる。しかし、ドライバーを用いずに開けるケースは、その分、外すのに力が必要なことも多いので注意(というより、初めて開けるユーザーにとっては勇気)が必要だ。また、コの字型に開くケースの場合、ケースを背面側にスライドさせるものと、前面側にスライドさせるものがあるので、背面側にスライドさせて開かない場合は、前面側にスライドさせてみよう。

ケースを開けるところ
Dimension 4100のケースは、ドライバーなしで開けることができる。まず、ケース背面から向かって右側のカバーを止めている背面のネジ(の部分)を手で緩める。その後で、ケースを押さえたまま、カバーの上下端にあるスイッチ状のレバーを押しながら、(少々強く固定されているので)力をこめて後ろにスライドさせる。3〜5cmほどスライドすれば、カバーは自然と外側に外れる。

 

PCの中に入っているハードウェアは?

 いよいよPCの内部を調べることにする。PCの中身の大部分は、マザーボードとハードディスクなどのドライブ類が占めている。ケース内の各コンポーネントのうち、拡張やメンテナンスに関係するものについて、Dimension 4100を例に説明しよう。

PCの内部〜例:Dimension 4100
デスクトップPCの場合、内部のコンポーネントはマザーボードや拡張カード、ドライブ群、電源ユニットに大別できる。タワー型ケースのPCなら、各コンポーネントの配置も上の写真と同様の配置になっていることが多い。
  電源ユニット
家庭用にコンセントから供給される交流電源から、PCで使用する直流電源への変換ユニット。あまり意識されることはないが、PCの電源はすべてここを通して供給される重要なユニット。
  プロセッサとその周辺部分:PCの中核を担う半導体チップが集まっている。→詳細は
  拡張スロットの部分:さまざまな拡張カードを増設できる。→詳細は
  ドライブ・ベイの部分:各種ドライブを装着できる。→詳細は
 
プロセッサとのその周辺部分
  プロセッサ:
PCの頭脳であるプロセッサは、冷却用のファンやヒートシンクと一緒に、専用のソケットに装着されている。筆者が使用しているDimension 4100には、ここにPentium IIIが装着されているが、その上にヒートシンクが装着されているため、プロセッサを直接確認することはできない。プロセッサ部分は、特に取り扱いに気を付けなければならないパーツなので、プロセッサの種類、動作クロックなどを調べたい場合は、コラムで紹介した「WCPUID」のようなユーティリティを使った方が安全だし、カンタンだ。
 
  メモリ・ソケット:
メモリ・モジュール
を搭載するためのソケット。メモリを拡張する場合はこのソケットに差すことになる。現在は、写真のDIMMタイプのものと、Pentium 4を搭載するシステムが採用しているRIMMタイプのソケットがある。写真から、このPCにはメモリ・ソケットが合計2本あり、うち1本は使用中なのが分かる。つまり、メモリ・モジュールをあと1本追加する余裕があるわけだ。
 
  チップセット
プロセッサやメモリ、拡張スロットなど、PCの基本的なシステムを制御するためのチップ群をチップセットという。チップ表面の刻印から、その種類を特定できる。Dimension 4100のチップセットはIntel 815Eで、基本的には、のMCH(Memory Controller Hub)とのICH(I/O Controller Hub)の2つで構成される。チップセットにもヒートシンクが装着されていることもあるので、これも無理にはがさないこと。
 
拡張スロットの部分
  AGPスロット:
グラフィックスの性能を高めるために、インテルが考案した高速なデータ転送を行うためのグラフィックス・カード専用のスロット(用語解説:AGP)。このPCにはAGPグラフィックス・カードがここに装着されている(ここでは撮影のために外している)。マザーボード上にグラフィックス機能が直接実装されているPCでは、AGPスロットが存在しないものもある。その場合、グラフィックス機能を交換あるいは拡張するには、今では数少なくなったPCIグラフィックス・カードのみが選択肢となる。
 
  PCIスロット:
PC/AT互換機のほか、アップルのMacintoshシリーズなどにも広範囲に利用されている業界標準の拡張バス/スロット規格。グラフィックス・カード以外の拡張カードは、このスロットに装着して利用する。このPCの場合、PCIスロットが5本あり、うち2本が使用中である。
 
ドライブ・ベイの部分
  5.25インチ幅のドライブ・ベイ:
この部分は前面から確認できるように、PCの前面からアクセス可能なドライブ・ベイになっている。主に、CD-ROMドライブやDVD-ROM、CD-R/RWドライブなどのメディアの交換が必要なドライブを内蔵する。2つのベイのうち、1つが使用中であることが再確認できる。
 
  3.5インチ幅のドライブ・ベイ:
この部分も前面から確認できるように、PCの前面からアクセス可能なドライブ・ベイとなっている。ここには主にZipドライブやMOドライブなど、小型のメディアを扱うドライブを装着する。日本では、これらのドライブを外付けにすることが多いせいか、あまり使用されることはない。このPCの場合、2つのベイのうち、1つはZipドライブで使われており、もう1つは空いている。ここに3.5インチ・ハードディスクを装着することも可能だ。
 
  3.5インチ幅フロッピードライブ・ベイ:
大手メーカー製のPCでは、ほとんどの場合、このようにケース前面のフロッピー・ディスク挿入口がの3.5インチ幅のドライブ・ベイとは別に用意されており、フロッピー・ドライブの位置が決められている。
 
  内蔵ハードディスク用ドライブ・ベイ:
メディアの出し入れの必要がない3.5インチ・ハードディスクを内蔵するためのドライブ・ベイ。Dimension 4100では、フロッピードライブ・ベイの直下と、さらにその下(直立しているハードディスクの部分)の合計2カ所にドライブ・ベイが用意されている。このうち1つがハードディスクで使われている。

 今回までで、PCの大体のスペックは把握できたので、次回は、実際に拡張カードなどでハードウェアを拡張する作業に入ってみたいと思う。記事の終わり

PCスペック表−2001年3月24日版: pc_spec_002.zip (約9Kbytes)

今回明らかになったスペックで更新しました。ファイルはZIP 形式で圧縮されているので、解凍してご利用ください。閲覧や書き換えにはMicrosoft Excel 97/2000以降が必要です。
 
  関連記事 
第1回 Windows上で調べられるPCのハードウェア構成
PCパーツの着脱時にはPCの電源ケーブルを抜く
 
 
 

 INDEX

  [連載]PCメンテナンス&リペア・ガイド
  第2回 PC本体にアクセスしてハードウェア構成を調べる
    コラム:プロセッサの種類やクロック周波数をフリー・ソフトウェアで特定する
    1. PCの外観からハードウェアを確認する
  2. PCの内部を見てハードウェアを確認する
 
「連載:PCメンテナンス&リペア・ガイド」
 


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