連載 PCメンテナンス&リペア・ガイド

第3回 メモリ増設前の基礎知識

1. ひと口にメモリといってもたくさんの種類がある

林田純将
2001/06/01

 PCに増設できるメモリの種類は、マザーボード上のチップセット、およびメモリ・ソケットに依存する。つまり、メモリを増設する際には、自分のシステムに搭載可能なメモリを見分ける必要があるのだ。現在主流となっているメモリの種類は、SDRAM、DDR SDRAMとDirect RDRAMに分けられる。まずは、この3つについて説明したい。

(1)SDRAM
(Synchronous Dynamic Random Access Memory)

 2001年の現在、PC搭載用のメモリとして、最も広く使われているのがSDRAMである。Pentium IIICeleronAthlonなどのプロセッサを搭載したPCのほとんどが、メイン・メモリにSDRAMを採用している。SDRAMには、基本動作周波数に合わせて、66MHz、100MHz、133MHzに対応した3種類が存在し、それぞれPC66PC100PC133という規格名で呼ばれている。メモリを購入する際には、「PC133対応のSDRAMメモリをください」などということになる。基本的に、PC100のメモリはPC66として使えるし、PC133のメモリはPC66やPC100として使える。現在、PCパーツ・ショップや量販店などでPC66対応のメモリを見ることはほとんどなく、PC133とPC100対応メモリの市場価格差はわずかしかないため、より高い動作周波数に対応しているPC133対応のメモリを購入することを勧めたい。

PC100(上)とPC133(下)のSDRAMメモリ・モジュールDIMM) (拡大写真:約77Kbytes
現在PCのメイン・メモリとして最もよく利用されているのがPC133、ついでPC100メモリである。両者の違いは、対応する基本動作周波数程度で、外見上から区別をつけることは難しい(たまたまこの写真ではPC100よりPC133の方が小型だが、逆の場合もある)。
  メモリ・チップ本体:
これがSDRAMのメモリ・チップである。たいていは、片面に4個または8個、あるいは両面合わせて16個装着されている(後述するECCメモリの場合は9個か18個)。製品によってメモリ・チップの種類やメーカーは異なるが、通常は気にする必要はない(メモリ・モジュールのブランドの方が重要だ)。
  誤挿入を防止する切り欠き(キー):
SDRAMのソケットにも、これに対応した突起が設けられており、異なる仕様のメモリ・モジュールの誤装着を防止し(サポートする電源電圧やタイプによって切り欠きの位置が異なる)、またモジュールの逆向き装着を防止する。
  SPD(Serial Presence Detect)チップ:
メモリ・モジュールのスペック(最大クロック周波数や信号タイミングなど)を格納しているROM(Read Only Memory)チップの一種(正確にはシリアル入出力のEEPROM)。PCは起動時にこのチップから受け取った情報で、メモリの制御方法を決める。PC100やPC133対応のメモリ・モジュールなら、必ずこのSPDチップを搭載している。
  簡単なスペックを記したシール:
ブランド製品なら、このようなシールが貼ってあることが多く、対応する規格が分かることもある。ノーブランドの製品など外見で区別できない製品を購入する場合は、店頭で必ず確認しよう。→シール記載内容の詳細は
 
SDRAMメモリ・モジュール表面のシールの例
このメモリ・モジュールの場合、メーカー名や製品名、スペック()、製造国名など比較的詳細な情報が記されている。こうした表記はもっと簡素だったり、シール自体がなかったりすることもある。
  メモリ・モジュールのスペックを表す文字列:
これは適合規格(PC100やPC133など)や信号タイミングなどを表す文字列で、各メーカー間でほぼ共通のフォーマットになっている。先頭の「PC100」より、このモジュールはPC100対応なのが分かる。
 

(2)DDR SDRAM
(Double Data Rate Synchronous Dynamic Random Access Memory)

 SDRAMの中には、DDR SDRAMと呼ばれるものがある。これはSDRAMをベースに性能を高めたメモリの一種で、2000年末からPCへの搭載が始まったばかりの新しいものだ。通常のSDRAMはクロックの1周期で1回のデータ転送しか行わないが、DDR SDRAMは、同じ1クロック周期で2回のデータ転送を行えるようになっており、SDRAMの2倍のレートでデータを入出力できる。2001年6月時点で、動作クロック周波数100MHzのPC1600(最大転送レート1600Mbytes/s)と、133MHzのPC2100(最大転送レート2133Mbytes/s)の2つの規格に対応した製品が市販されている。DDR SDRAMがSDRAMをベースにしているといっても、DDR SDRAMのメモリ・モジュールとSDRAMのメモリ・モジュールの形状は異なり、メモリ・ソケットの形も違うため、相互に互換性はない。

DDR SDRAMのメモリ・モジュール(DIMM) (拡大写真:約81Kbytes
PC100やPC133といったSDRAMのメモリ・モジュールと外見上はよく似ているが、メモリ・ソケットに差す部分(信号端子部分)の形状が異なる。つまりDDR SDRAMとSDRAMのメモリ・モジュールは、相互に互換性がない。
  SDRAMメモリ・モジュールとは異なる切り欠き(キー)の位置:
SDRAMは切り欠きが2カ所あるのに対し、DDR SDRAMでは中央に1カ所しかないことが分かる。このため、SDRAMとDDR SDRAMとのメモリ・モジュールは比較的簡単に区別できる。
  DDR SDRAMメモリ・チップ:
もちろんSDRAMとは異なるメモリ・チップを搭載しているが、外見ではやはり区別できない。
  簡単なスペックを記したシール:
SDRAM同様、ブランド品ならこのようなシールが貼ってあることが多い。→詳細は
 
DDR SDRAMメモリ・モジュール表面のシールの例
前出のSDRAMと比べて、より分かりやすく詳細な情報が記されている。もっとも、必ずしもDDR SDRAMのほうが詳しく表記されているとは限らない。
  メモリ・モジュールの基本スペック:
容量が256Mbytesで、DDR SDRAM搭載でクロック周波数が266MHz(133MHzの2倍)、ということが分かる。「CL2.5」については、後述のCAS Latencyの解説を参照していただきたい。
  メモリ・モジュールのスペックを表す文字列:
SDRAM同様、DDR SDRAMでもメーカー間でほぼ共通のフォーマットになっている。先頭の「PC2100」より、PC2100対応であることが分かる。

 DDR SDRAMの詳細については、「技術解説:次世代標準メモリの最有力候補『DDR SDRAM』の実像」を参照していただきたい。

(3)Direct RDRAM
(Direct Rambus Dynamic Random Access Memory)

 1999年、SDRAMにとって代わる次世代メモリとしてPCの世界に初登場したメモリ規格。Rambusは、この規格を開発した企業の名前から取られている(ラムバス(Rambus)社のホームページ)。Direct RDRAMには、データ転送レートによってPC600(クロックは600MHz)、PC700(711MHz)、PC800(800MHz)の3種類があるが、最も高速なPC800が多く使われている。PC800といっても、SDRAMであるPC100メモリの8倍のデータ転送能力があるわけではない。PC100のSDRAMメモリ・モジュールのデータ転送速度が約800Mbytes/s、PC133の場合で約1Gbytes/sのところ、PC800のDirect RDRAMモジュール(RIMM)は約1.6Gbytes/sで、PC100のSDRAMに対して約2倍のデータ転送能力を持っている。

 次世代メモリの本命として登場したDirect RDRAMだが、2001年5月現在、Direct RDRAMをサポートしているシステムは、ほとんどがPentium 4を搭載したハイエンド向けPCで、ボリューム・ゾーンのモデルには採用されていない。その理由の1つは、Direct RDRAMの価格が高いことだ。PC800のDirect RDRAMとPC133 SDRAMを比較すると、同容量のメモリの実売価格で3倍程度となっている(2001年5月末時点。これでも、以前に比べて大幅に安価になった)。PCのメイン・メモリとして、Direct RDRAMは普及しているとはいいがたい。

 Pentium4を搭載したPCは、2001年5月の時点ですべてDirect RDRAMを採用しており、SDRAMやDDR SDRAMには対応していない(SDRAM対応のPentium 4搭載PCは2001年8月以降に登場する予定だ)。現時点でPentium 4搭載PCを利用したいならば、メモリ増設時にはDirect RDRAMを購入するしかない。

Direct RDRAMのメモリ・モジュール(RIMM) (拡大写真:約44Kbytes
現在流通しているRIMMは、このようにメモリ・チップやSPDチップを金属板で覆っている。それに加えて、信号端子部分の切り欠き位置もSDRAMやDDR SDRAMのメモリ・モジュールと異なるため、これらのモジュールとの区別はつけやすい。
  チップを覆う金属板:
ヒートスプレッダ(heat spreader)と呼ばれるこの金属板は、メモリ・チップが発する熱を効率良く放熱するためのものだ。規格上は必須ではないが、多くの製品はヒートスプレッダを取り付けている。
  簡単なスペックを記したシール:
RIMMの場合、こうしたシールが必ず貼ってある。→詳細は
 
RIMM上のシールの例
RIMMでは、Rambusが記載すべきスペックとそのフォーマットを規定しているので、どのメーカーのRIMMでも、メーカー依存部分以外の基本的なスペックの読み方は同じだ。
  容量とチップ数:
「64MB」はメモリ・モジュールの容量が64Mbytesであることを、また「/4」は搭載メモリ・チップ数が4個であることを表している。ちなみにECC対応RIMMには、「/4」の右側に「ECC」と表記される。
  クロック周波数:
「800」はクロック周波数が800MHz、すなわちPC800であることを表している。「600」ならPC600、「711」ならPC700を意味する。

 次のページでは、主要なメモリのスペックの読み方を紹介しよう。

  関連記事 
次世代標準メモリの最有力候補『DDR SDRAM』の実像
第1回 Windows上で調べられるPCのハードウェア構成

  関連リンク 
ラムバス
ラムバス社のホームページ
 
 

 INDEX

  [連載]PCメンテナンス&リペア・ガイド
  第3回 メモリ増設前の基礎知識
  1. ひと口にメモリといってもたくさんの種類がある
    2. メモリにまつわるスペックの読み方
    3. 自分のPCに搭載されているメモリの見分け方
 
「連載:PCメンテナンス&リペア・ガイド」
 


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