[Hardware]

PCパーツの着脱時にはPCの電源ケーブルを抜く

デジタルアドバンテージ
2000/06/07

 古くから、PCパーツを取り外したり装着したりする際には、事前に電源を切るものとされてきた。実際にそのパーツの着脱時に電源が切れていないといけないかどうかは、パーツのインターフェイス部分の仕様や設計による。最近登場したUSBやIEEE1394では、電源が投入された状態でもケーブルを挿抜できるよう設計されている。またノートPCのハードウェア拡張手段としてポピュラーなPCカードでも、同じく通電中にカードを抜いたり挿したりすることができる。こういった通電中の着脱のことを、ホット プラグ/ホット アンプラグまたは活線挿抜(かっせんそうばつ)などと呼ぶ。

 しかし、PCパーツ全体からすれば、通電中に着脱できるパーツの割合のほうが少なく、多くのパーツは通電中の着脱を保証していない。電源を切らずに、そうしたパーツを無理矢理着脱すると、そのパーツあるいはその接続先の電気回路が壊れてしまうこともある。また、パーツが通電状態にあるかどうかは、一見しただけでは分からないことが多い。したがって、パーツの故障を防止するために、パーツを着脱する前には確実にPCの電源を切るべきだ。

電源スイッチの役割

 重要なのは、PCの電源を完全に切る、ということだ。「完全」に電源が切れている状態とは、PCの内部にある全パーツに対して、電源ユニットから電力が供給されていない状態を意味する。これなら、パーツを着脱しても安全である。
 電源をオン/オフするのは、電源スイッチの役割の1つである。デスクトップPCの場合、たいていは以下の写真のように、電源スイッチは電源のオン/オフを表すLEDインジケータとともにフロントパネルに装備されている。

デスクトップPCの電源スイッチの一例

これはmicroATXマザーボードを内蔵するミニタワーPCケースのスイッチ部分。このように電源スイッチはLEDインジケータやリセットスイッチなどと一緒に並んでいることが多い。またマザーボードとOS次第で、電源のオン/オフ以外の役割も果たす。
  電源スイッチ。サスペンドのスイッチにもなる場合がある
  電源のLEDインジケータ。電源がオンなら点灯し、オフなら消灯する。マザーボードによっては、サスペンド中に点滅する

 1995年ごろまで発売されていたデスクトップPCの多くは、このフロント パネルの電源スイッチが電源ユニットへ直接つながっており、電源ユニットへの電力供給(いわゆるAC100V)を直接制御していた。つまり、このスイッチを操作するだけで完全に電源を切ることができたのである。

 しかし1996年ごろ、ATXと呼ばれる規格に沿ったマザーボードがデスクトップPCに採用され始めてから状況は変わってきた。ATXでは、電源ユニットとフロント パネルの電源スイッチを直接つなげず、マザーボードを介して接続するよう規定されており、電源ユニットをソフトウェアからコントロールしたり、電源スイッチを電源のオン/オフ以外の用途にも割り当てられるようになったりしている。たとえば、フロント パネルの電源スイッチを押すと、電源が切れるのではなく、サスペンド(スタンバイ)状態に移行するという機能も実現されている。サスペンド状態では、メインメモリなどマザーボード上のデバイスの一部が通電状態にあるので、PC内部のパーツを着脱するのは危険である。

 サスペンド中には、フロントパネルにある電源のオン/オフを示すLEDが点滅するなどして、PCはサスペンド状態であることを表示するはずだ。サスペンド中なのに誤って電源オフと勘違いしてパーツを着脱したりしないよう、LED表示などをよく確認しよう。

電源をオフした状態でも、通電されているパーツはある

 ATXを採用したPCでは、フロント パネルの電源スイッチやソフトウェアによりPCの電源を切った場合でも、内部パーツの一部に電力を供給できるようになっている。具体的には、PCを起動する引き金となるデバイスの挙動を監視する回路には、電源を切っても電力の供給が続けられるのだ。たとえば、キーボードやマウスを操作することでPCの電源をオンにできるよう設計されたマザーボードでは、電源を切っていても、PS/2インターフェイスなどに電力が供給され続ける。その状態でキーボードやマウスをPS/2インターフェイスに着脱したら、回路が破壊される危険性がある。また、LANからネットワーク カードを介してPCの電源をオンにするWake on LAN機能を有効にしている場合は、ネットワーク カード上のパーツにも通電しているはずだ。

 PCIスロットにも、このような監視回路に対して電源オフ時でもスロット経由で電力を供給するための端子(3.3Vaux)が用意されている。したがって、電源オフの状態でもPCIカードを着脱すると、この端子から供給されている電力により、回路が破壊される可能性がある。

 以上は、ATXだけではなく、microATXやNLX、FlexATXといったATX以降に登場したマザーボード規格にも当てはまる。つまり、現在市販されているほぼすべてのデスクトップPCに当てはまるということだ。また、前述の1995年以前のPCの中にも、ATXと同様にソフトウェア的に電源をオン/オフできるものが存在していた。これらも同様にパーツの着脱には注意する必要がある。

電源ケーブルを引き抜くのが一番確実

 電源を「完全」に切るには、電源ケーブルを電源ユニットから引き抜くことだ。

PCの背面にある電源ユニットから電源ケーブルを抜いたところ

これはATX対応の電源ユニットを搭載したPCの背面部分。空冷ファンの脇にある電源コネクタとコンセントをつなぐ電源ケーブルを引き抜けば、完全に電源が切れる
  メイン電源スイッチ。これを切れば完全に電力供給を断てるようだが、電源ケーブルを抜いたほうが確実であることはいうまでもない。最近では、このスイッチが存在しないPCも多い。

 もちろん、OSが稼働している状態からいきなり電源ケーブルを抜いてはいけない。また前述のサスペンド状態の場合でも、電源ケーブルを抜くと、バッテリバックアップされていない限り復帰できなくなるので注意したい。

 OSごとに決まっている正規のシャットダウンの手順を踏んで、いったん電源が切れたことを確認してから、電源ケーブルを抜いて「完全」に電力の供給を断つ。ノートPCの場合は、電源ケーブルだけではなくバッテリを取り外すことを忘れないようにしたい。

 前述のように古いPCでは、電源ケーブルを抜かなくても、電源スイッチだけで電力の供給を断つことができる。しかし、電源ケーブルを抜く必要があるかどうか、PCを見ただけで判別するのは難しいので、PCパーツを着脱するときには、常に電源ケーブルを抜くクセをつけておくほうが無難だ。記事の終わり

  関連リンク
Platform Development Support Web Site
ATXやFlexATXなど、各種マザーボードなどに関する情報のあるWebサイト
 
「PC TIPS」


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