プロダクト・レビュー

手ごろになった無線LANキット「airDirect Starter Kit」

澤谷琢磨
2000/12/08

airDirectシリーズ
airDirectシリーズは、アクセス・ポイントAD11A-1(2万9800円)と無線LAN PCカードAD11C-1(1万5800円)とで構成される。これらはそれぞれ単体でも入手可能だが、アクセス・ポイント1台と、無線LAN PCカード2枚をセットにしたairDirect Starter Kit(5万9800円)は、別々に購入した場合と比べ割安に設定されている。

 

アクセス・ポイントの「airDirect 11Mbps Access Point AD11A-1」
airDirectシリーズのアクセス・ポイントAD11A-1は、縦横13×13センチの本体内に、無線LANのアクセス・ポイントと、1ポートの10Base-T/100Base-TXインターフェイスを備えている。無線LANインターフェイスはIEEE 802.11bの規格上限の14チャンネル*1をサポートする。ただし、現在販売されているAD11A-1は13チャンネルまでのサポートで、14チャンネル対応は2000年12月中に提供される予定のファームウェア・アップデートが必要である。

*1
 複数のアクセス・ポイントを設置する場合、近接するチャンネルを使用すると、電波が干渉しあって正常に動作しないため、3チャンネル以上あけて設定するのが望ましい。また、周波数が重なるような無線機器がある場合も、同様に干渉を避けるため、使用する周波数帯(チャンネル)を変更する必要がある。14チャンネルをサポートしているということは、それだけ設定が幅広く採れることを意味する。

無線LAN PCカードの「airDirect 11Mbps PC Card AD11C-1」
AD11C-1はTypeIIスロット対応の16bit PCカードなので、PCカード・スロットを備えるノートPCならば容易にインストールできる。初期導入キットには付属しないが、アクトンのWebページからWindows CE 2.11/3.0対応のデバイス・ドライバをダウンロードすれば、Windows CEマシンでも利用可能だ。

 

APマネージャの画面
アクセス・ポイントAD11A-1の設定は、このAPマネージャから行う。APマネージャは、有線LAN側に接続されたWindows 2000/NT/9x PCにインストールする必要がある。初回起動時に自動的に設定用ウィザードが立ち上がり、アクセス・ポイント自体に割り当てるIPアドレスのほか、ESS ID、WEPによる暗号化の有効/無効などの設定を行う。AD11A-1は、DHCPクライアント機能を持つため、有線LAN側にDHCPサーバがある場合は、自動的にIPアドレスが割り当てられる。DHCPサーバがない場合は、アクセス・ポイント本体側面に記述されたMACアドレスと、製品出荷時にデフォルトで割り当てられているIPアドレスを指定して初期設定を行う。APマネージャ上からアクセス・ポイントの設定をロックすることも可能だ。

 

Accton Wireless Card Control Utilityの画面
クライアントPC側には、無線LANカードのデバイス・ドライバを導入したうえに、「Accton Wireless Card Control Utility」をインストールする必要がある。ESS ID、WEP、省電力機能など、IEEE 802.11bで規定されているMAC層の設定は、すべてここから制御可能だ。なお、ここで設定できるのはMAC層に関する機能のみで、IPアドレスなどの設定はWindows側のネットワーク設定で行う。

 

airDirectのデバイス・ドライバのプロパティ 画面
デバイスマネージャからAD11C-1のプロパティ(デバイスマネージャ上ではAE12のプロパティとして表示される)を開き、詳細設定タブを選択するとこの画面が表示される。airDirect付属のユーティリティの設定より、こちらが優先されることがある。マニュアルには記述されていないため注意したい。

 

 日本では、ノートPCの普及率が高いこともあり、煩雑なネットワーク・ケーブルの引き回しを必要としない無線LANの人気が、ビジネスやホーム・ユースの区別なく高まっている。特にレイアウトが頻繁に変更されるようなオフィスや、オフィスの形状や機能性の点から(フリー・アクセス・フロアを使えないなど)ネットワーク・ケーブルを配線しにくい場合などには、無線LANは有効なソリューションである。そのため、ネットワーク製品専業ベンダのほか、PCベンダも無線LAN機器をPC本体のオプションとして販売するなど、各社から対応製品が提供されている。今回紹介するairDirectシリーズは、コスト・パフォーマンスの高いネットワーク製品を開発・販売しているアクトンテクノロジィがこの分野に投入した製品である。

IEEE 802.11b無線LAN規格をサポート

 airDirectは、最大転送レートが11Mbits/sのIEEE 802.11b対応の無線LAN製品だ。ただ、IEEE 802.11b対応といっても、暗号化機能など一部で互換性の問題が残っており、他社製品との相互接続は必ずしも保証*2されていない。

*2 無線LANの相互接続性を保証する団体として、Lucent Technologies、Intersil、Nokia、3Com、Symbol Technologiesなどにより「WECA(Wireless Ethernet Compatibility Alliance)」が設立された。そのWECAが相互運用性テストを実施しており、そのテストに合格すると「Wi-Fi(ワイファイ)」と呼ばれる認証シールを製品に貼ることが許される(Wi-Fiのホームページ)。airDirectは、Wi-Fiの認証は受けていないものの、暗号化機能などを無効にすれば、他社製品との相互運用も可能だとしている。

 IEEE 802.11b規格において既定されている接続形態は2つあり、それぞれ「インフラストラクチャ・モード」、「アドホック(インディペンデント)・モード」と呼ばれる。airDirectはもちろんこの2つのモードをサポートしている。アクセス・ポイントを含むairDirect Starter Kitは、当然インフラストラクチャ・モードをターゲットとした製品構成である。

インフラストラクチャ・モード
インフラストラクチャ・モードでは、アクセス・ポイントを介して通信を行う。アクセス・ポイントは10Base-T/100Base-TXイーサーネット・ポートを備え、既設の有線LANへのブリッジとして動作する。複数台のアクセス・ポイントの有効通信範囲(セルと呼ばれる)間での移動を可能にするローミング機能もサポートされているため、大規模な無線LANの構築も可能である。外部ネットワークやインターネットに接続する場合は、こちらのモードを用いるのが一般的だ。

アドホック・モード
アドホック・モード(インディペンデント・モードとも呼ばれる)は、無線LANカードをインストールしたPC同士が直接通信する方法。小規模な無線LAN(airDirectの場合14台まで)に限っては、アクセス・ポイントが不要な分だけコスト・パフォーマンスの高い方式である。

無線LANの設定は容易

 現時点のWindows 2000/NT/9xには、ESS ID(Extended Service Set ID:無線LANのグループID)、WEP(Wired Equivalent Privacy:データの暗号化機能)、省電力といったIEEE 802.11bに固有の機能をサポートするソフトウェアは、OS標準では組み込まれていない。そのため無線LANシステムでは、この固有機能を制御する付属の設定ソフトウェアの完成度が、使い勝手を大きく左右する。airDirect付属の設定ソフトウェアには、設定ダイアログやヘルプなどに日本語化されていない部分が見られる。詳細な日本語マニュアルが付属するため、インストール、設定ともに容易ではあるが、保守を容易にするためにも、ヘルプなどの完全な日本語化を望みたい。

 マニュアルにも記載されているが、アクセス・ポイントとクライアントPCともにまずデフォルト設定でインストールしてテストを行い、その後で各設定項目を変更すべきだ。ESS IDとWEPそれぞれの暗号キーは、通信したいアクセス・ポイントとクライアントの間で一致させる必要がある。他社製品と相互接続を行う場合、WEPの暗号化を有効にすると接続できないことがあるので注意したい。

 ESS IDは、IEEE 802.11b無線LANのMAC層において、アクセス制限を行うための識別子で、ESS IDが一致したときのみアクセス・ポイントとクライアント間で通信を確立できる。また、ローミング機能は、ESS IDが一致するアクセス・ポイント同士の場合のみ有効となる。なお、ESS IDを変更すると、アクセス・ポイントとの通信が確立しないことがあった。これは、無線LAN PCカードAD11C-1のデバイス・ドライバ側にもESS IDを設定可能なプロパティがあり、「Accton Wireless Card Control Utility」での設定より、こちらの設定が優先されることが原因のようだ。同様の問題に遭遇した場合は、この項目を確認した方がよい。

 WEPは、共有鍵暗号方式(暗号化する側と復号化する側で同じ鍵を使用する暗号化方式)によるデータ暗号化を提供する。このためクライアントPCとアクセス・ポイントの両方に共通のキー(暗号鍵)を設定する必要がある。

無線LANの転送速度は約500Kbytes/s

 IEEE 802.11bがサポートする規格上の最大転送レートは11Mbits/sであるが、実効転送レートは一般的にはこの値よりも低いと言われている。これを確認するため、100Mbytesのバイナリ・ファイルをftpで転送する実験を行った。サーバとアクセス・ポイントのみを10Base-Tのハブで接続し、クライアントPCが無線LANを使って、サーバ上のファイルをftpで転送するというものだ。各種設定は基本的にデフォルトで、なるべく最良の状態で通信が行える環境で実施した。このときの転送速度は、517Kbytes/s(=4Mbits/s)となった。ちなみに、編集部で同種の他社製品を簡単に評価したところ、結果はほぼ同様であった。同じファイルを有線の10Base-T経由でftpした場合では、1078Kbytes/s(=8.4Mbits/s)の値を得た。このことから、現状の無線LANの速度は、規格上の最大値から比較すると約36%、10Base-Tと比較すると約48%の転送能力にとどまっていることが分かった。

 また、無線LANは通信環境が悪化すると転送速度が低下することが知られている。そこで、airDirectをインストールしたPCとアクセス・ポイントの間に鉄製の防火扉を挟んで、同様の実験を試みたところ、252Kbytes/s(=2Mbits/s)と最良の条件で測定した場合に比べ2分の1の速度にまで低下した。

 このようなテスト結果にだけ注目してしまうと、無線LANの実用性に疑問を抱くかもしれない。しかし、Webや電子メールなどのインターネット・サービスや社内利用で、大量のデータを常時転送するような用途でなければ(例えば、サイズの大きなマルチメディア・データなどを常時扱うなど)、それほど問題になるレベルではないだろう。

コスト・パフォーマンスに優れたairDirect

 実売ベースでは、airDirect Starter Kitは他社の同種の製品と比較して同等か、より低価格で販売されている。またairDirectは、他社のIEEE 802.11b無線LAN対応製品と比べ、14チャンネル対応、SNMPエージェント機能内蔵と、アクセス・ポイントの機能充実が目立つ。アクセス・ポイント自体の価格も同等製品に比べ割安に設定されている。現状ではIEEE 802.11b対応製品の相互接続性には不安があり、導入時は同一ベンダの製品で揃えるほうが望ましい。airDirectシリーズのアドバンテージは、初期導入コスト、拡張時のコストともに低く抑えた点にあるといえる。

 なお、これは他社のIEEE 802.11b無線LAN対応製品でも同様なのだが、airDirectシリーズをネットワーク管理者の視点から見ると、クライアントPC側の設定を簡素化する仕組みを持たないことに不満を感じる。クライアントPC向けにカスタマイズしたインストール・イメージを作成する仕組みが提供されれば、管理者の負担はかなり減るだろう。管理者側の使い勝手を向上させるソフトウェアの提供を望みたい。記事の終わり

 
メーカー名 アクトンテクノロジィ
製品名 airDirect Starter Kit
価格 5万9800円
問い合わせ先 営業部 TEL 03-3257-9809
URL http://www.accton.co.jp/
airDirect 11Mbps共通スペック
規格 IEEE 802.11b
伝送方式 DS-SS(スペクトラム直接拡散)方式
周波数帯 2.4GHz帯
チャネル数 14チャンネル
データ伝送速度 11Mbits/s、5Mbits/s、2Mbits/s、1Mbits/s自動切り替え
変調方式 CCK(11Mbits/s、5Mbits/s)、QPSK(2Mbits/s)、BPSK(1Mbits/s)
伝送距離 屋内:35〜100m/屋外100〜300m
アンテナ形式 ダイバーシティ方式アンテナ
暗号化 40bit WEP
airDirect 11Mbps Access Point(AD11A-1)
LAN接続部 10Base-T/100Base-TX(RJ-45モジュラ・コネクタ)
ネットワーク管理 SNMPプロトコル(MIBU、IEEE 802.11 MIB)対応
LEDランプ RFアクティビティ、電源、リンク
消費電力 最大4.0W
外形寸法 136(W)×40(D)×126(H) mm
重量 138g
airDirect 11Mbps PC Card(AD11C-1)
対応OS Windows 95 OSR2/98/Me/NT 4.0/2000、Windows CE 2.1以降
LEDランプ RFアクティビティ/リンク
消費電力 最大1.75W
外形寸法 110(W)×54(D)×6(H) mm

関連リンク
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