プロダクト・レビュー

オフィスへのカラー・プリンタ導入を加速する「IPSiO Color 2200」

デジタルアドバンテージ
2001/04/18

 
IPSiO 2200の本体
A4判対応ながらカラー・レーザーということもあり、モノクロ・プリンタと比較すると大きい。ただ、本体上面へのフェイス・ダウンによる排紙が行われるため、給紙トレイなどのでっぱりは少なく、設置面積はそれほど大きくない。

IPSiO 2200の前面を開けたところ
写真では2色分のトナー・カートリッジを取り外している。奥のメタリック・グリーンの部分は感光体ユニット。これも、本体上面から簡単に交換できる。

IPSiO 2200のトナー・カートリッジ
トナー・カートリッジは、CMYKの各色ごと、写真ようなボックス型になっているため、簡単に交換が行える。

IPSiO 2200の操作パネル
各種設定は、2行表示の液晶パネルを見ながら、6個のボタンで行う。操作項目がそれほど多くないので、この程度のインターフェイスでも十分だ。

IPSiO 2200のインターフェイス部分
IPSiO 2200の標準インターフェイスはパラレルのみ。IPSiO 2200Nではイーサネット・インターフェイスが標準装備される。イーサネット・インターフェイスは、パラレル・ポート横の拡張部分に実装される。

IPSiO 2200のコントローラ・ボード
MIPS R5000系のプロセッサをプリンタ・コントローラに採用する。インターフェイス用のコネクタは2つ装備されている。SO-DIMMソケットは2つで、ほかにフォントROM用と思われるソケットが実装されている(写真のボードでは左上側)。

IPSiO 2200に採用されているSO-DIMM
容量32MbytesのSO-DIMMが標準で搭載されている。見た目は、ノートPC用のSO-DIMMにそっくり。リコーではオプションで32Mbytes、64Mbytes、128Mbytesの各SO-DIMMを用意しているが、128Mbytesで6万円と高価だ。マニュアルには、市販のSO-DIMMが使えるとは書いていないので、増設時には注意したい。
 

 家庭向けの安価なカラー・インクジェット・プリンタが普及した現在でもなお、オフィスで使用する文書はモノクロ印刷というのが一般的である。これは、印刷速度と品質、初期導入コスト、ランニング・コストという面において、オフィス・ユースに耐えるリーズナブルなカラー・プリンタがなかったためだ。しかし最近では、A3判対応のカラー・レーザー・プリンタが50万円を切り、A4判対応ならば20万円台前半で購入できるようになったことから、モノクロ・レーザ・プリンタからカラー・レーザー・プリンタへの移行が始まりつつある。例えばオフィス家具の販売会社では、これまで専門業者に任せていたカタログの印刷を廃止し手元のカラー・レーザー・プリンタに置き換え、オンデマンド印刷でユーザーの要望に対応したカタログを作ることで、経費の削減と受注成績の向上を実現しているという。今回はリコーのA4判カラー・レーザー・プリンタ「IPSiO Color 2200(以下、IPSiO 2200)」を取り上げ、プレゼンテーション資料の印刷などを中心としたオフィス環境でのカラー・レーザー・プリンタの使い勝手を見ていくことにする。

メンテナンス性が高いカラー・レーザー・プリンタ

 IPSiO 2200は、同社のカラー・レーザー・プリンタのラインアップでは、下位2番目に位置付けられる製品だが、A4判対応としては上位モデルにあたる(IPSiO 2200の上位モデルはすべてA3判対応)。下位モデルのIPSiO 1500は、カラー・レーザー・プリンタとしては破格の19万8000円という低価格を実現したことで話題となった。IPSiO 2200は、その上位モデルとして印刷速度の向上と両面印刷機能(オプション)、複数OSの対応を実現している。その分、価格は26万8000円(ネットワーク・インターフェイス標準装備のIPSiO 2200Nは28万8000円)となっているが、それでもこのクラスのカラー・レーザー・プリンタとしては安価な部類に入る。

 本体サイズは、A4判までに対応ということもあり、カラー・レーザー・プリンタの中では比較的小型である。とはいえ、モノクロ・レーザー・プリンタとの比較では、A3判対応機と比べても、まだまだ大きい。重量は約39kgと、1人では移動できないほどだ。トレイなどの出っ張りがないため、設置面積は比較的小さいが、設置にあたっては、十分な耐荷重を持つラックなどが必要になるだろう。

 印刷方式は、中間転写ベルト(ドラム)を採用した電子写真方式で、カラー・レーザー・プリンタとしては一般的なもの。C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(黒)の4色トナーをいったん中間転写ドラムに順番に転写し、それを一度に用紙に定着させることで、色ずれを防止している。トナーはカートリッジに収まっており、CMYKの4色の各トナー・カートリッジを指定の場所にセットすればよい。感光体ユニットや廃トナー・ボトルといった消耗品も、カバーを開けてロックを外すだけで交換できる。このようにメンテナンス性が高いため、ユーザー自身が簡単にトナーの交換などを行える点は、IPSiO 2200のメリットといえるだろう。

 プリンタのコントローラ・ボードは、パラレル・インターフェイス部分と一体になっており、本体後面から見て右側面に内蔵されている。ネジを2本外すことで、簡単に引き抜くことが可能だ。ボード上には、メモリ増設用のSO-DIMMソケットとインターフェイス拡張用コネクタ、オプションであるPostScript Level 2互換のRICOH-SCRIPT2のフォントROM用と思われるソケットが用意されている。IPSiO 2200Nでは、インターフェイス拡張用コネクタにイーサネット・インターフェイス・ボードが標準で装備されている(IPSiO 2200ではオプションで装備可能)。

 SO-DIMMソケットは2つ装備されており、1つには標準で32Mbytesのメモリが実装済みで、残りのソケットは空いている。最大搭載メモリ容量は256Mbytesである(256Mbytesにするためには、標準の32Mbytes SO-DIMMを外し、128Mbytesのものを2枚装着する必要がある)。リコー純正の拡張用SO-DIMMには、32Mbytes、64Mbytes、128Mbytesがあり、価格はそれぞれ2万円、3万5000円、6万円となっている。デスクトップPC向けのDIMMと比較すると高価である。

 モノクロ・レーザー・プリンタに比べると、メモリ増設の必要性に迫られるケースは多いかもしれない。というのも、本機のマニュアルには、「最大解像度の1200×600dpiで印刷する場合、標準の32Mbytesでは、データ容量が大きいとメモリ不足で印刷できないこともある」と記されているからだ。しかし、SO-DIMMの場合、搭載しているメモリ・チップなどにより相性問題が起きる可能性があるうえ、価格もデスクトップPC向けのDIMMに比べて高い(そもそも、市販のノートPC用SO-DIMMが使えるとは、マニュアルにも記されていない)。コントローラ・ボードのサイズの制限や、既存製品との互換性維持といった理由から、SO-DIMMが採用されたものと思われるが、できればデスクトップPC向けのDIMMを採用してほしかった。

 コントローラには、RISCチップのQuantum Effect Devices(QED)製RM5261-250MHzを採用している(QEDのRM5261の製品情報ページ)。RM5261は、MIPSのR5000系をベースとした64bit RISCプロセッサで、低消費電力と低価格を特徴としたものだ。そのほか、リコー独自のASICチップも搭載されている。


印刷速度は実測で約5枚/分

 低価格なカラー・レーザー・プリンタとなると、気になるのが印刷速度だ。インクジェット・プリンタでも高速なタイプが登場してきており、それよりも遅いとなるとカラー・レーザー・プリンタを導入する意味が半減してしまう。IPSiO 2200は、カタログ値でカラーが6枚/分、モノクロが24枚/分となっている。インクジェット・プリンタの中には、13枚/分といった製品もあるので実際の印刷速度が気になるところだ。

 そこで試しに、簡単な印刷テストを実施した。テストに用いた印刷サンプルは、「ネットワーク・デバイス教科書:第1回 広帯域インターネット接続を便利に使う『ブロードバンド・ルータ』」の8ページ分と、IDF 2001 Springのメモリに関するPDF形式のプレゼンテーション資料(Intelのホームページから入手可能)の8ページから14ページまでの7ページ分である。なるべく実際にオフィスで印刷されるようなテキストと図版が混在する部分を選択した。また、比較のために同様の印刷をインクジェット・プリンタで行った結果も示している。インクジェット・プリンタには、IPSiO 2200と同じ4色印刷で、印刷が速い(カタログ値はエコノモードで13枚/分)ことでも定評のある日本HPの「deskjet 990cxi」を選んだ。

 またテストには、以下のPCを用いている。インクジェット・プリンタでは、PC側での処理が多く、PCの性能が印刷速度に大きく影響する可能性がある。そのため、現在最も一般的なPentium III-866MHzを搭載したPCとした。

プロセッサ Intel PentiumIII-866MHz
マザーボード Aopen製AX3S Pro
チップセット Intel 815E
メインメモリ PC133対応の256Mbytes SDRAM DIMM
プリンタとの接続 パラレル・ポート(IPSiO Color 2200/deskjet 990cxi)
ハードディスク 7200rpm 30Gbytes IDEハードディスク(IBM DTLA-307030)
AGPカード NVIDIA製GeForce2 GTS アクセラレータ、32Mbytes DDR SDRAMを搭載(クリエイティブメディア 3D Blaster GeForce2 GTS)
ネットワーク 10/100BASE対応イーサネット・カード(ELECOM LD-10/100AL)
OS Windows 2000 Professional日本語版+Service Pack 1
印刷テストに用いたPCの仕様

 また、プリンタ・ドライバは以下のように設定してテストした。

IPSiO 2200: 文書種類:一般文書、 画質と速度のバランス:画質優先、用紙:普通紙
deskjet 990cxi: 印刷品質:ノーマル、用紙タイプ:普通紙

 結果は以下の表のとおり。

  Webページ印刷(8ページ) PDF印刷(7ページ)
IPSiO Color 2200 1分37秒(4.9枚/分) 2分03秒(3.4枚/分)
deskjet 990cxi 4分40秒(1.7枚/分) 8分03秒(0.9枚/分)
印刷テストの結果

 Webページ印刷では、カタログ値には及ばないものの、約5枚/分とインクジェット・プリンタの3倍近い速度を実現している。また、PDF形式のプレゼンテーション資料の印刷では、4倍近い速度となった。このクラスのカラー・レーザー・プリンタとしては、実測値でも高速な部類に入る。プレゼンテーション資料などの大量印刷が必要な場合でも、それほどストレスなく実行できそうだ。

 ただ、電源が完全に入った待機状態からの印刷速度は速いものの、スリープ状態(マニュアルでは「省エネモード」と呼ばれている)からの立ち上がり時間が5分近くと、若干長い点が気になった(スリープ状態の時間が短ければ2分ほどで立ち上がるが)。IPSiO 2200の省エネモードには、デフォルトのレベル1のほか、消費電力の節約度が低いレベル2というモードがあり、レベル2では10〜15秒程度で立ち上がる。使い方によっては、レベル2を選択したほうがよいだろう。最近では、オフィス内での省エネルギーの観点から、しばらく使わない場合はスリープ状態もしくは電源をオフにする傾向がある。その時点からの印刷時間でインクジェット・プリンタと比較すると、印刷枚数が少ないほど、トータルでかかる時間はむしろIPSiO 2200が遅くなってしまうことになるからだ。

オフィス用途で必要十分な印刷品質

 数年前のリコー製カラー・レーザー・プリンタでは、トナーがべったりと厚く乗り、妙に青っぽい印刷であったが、IPSiO 2200では印刷品質が大幅に改善されている。トナーの厚さは、他社製品並みとなり、色の偏りも大幅に少なくなっていた。若干、印刷面積の大きな色に全体の色調が引きずられる傾向があるようだが、これはプリンタ・ドライバの自動色調補正の影響と思われる。次のプリンタ・ドライバでは、この点の改善を望みたい。とはいえ、プレゼンテーションなどのビジネス文書では、印刷品質に不満はないレベルとなっている。写真となると、普通紙に印刷していることもあり、インクジェット・プリンタのフォト専用紙にはかなわないが、これは印刷方式の違いもあり仕方ない面もある(普通紙同士の比較なら遜色ないレベルにある)。

大きな画像
プレゼンテーションの印刷サンプル(拡大画像:64Kbytes
プレゼンテーション資料のような文字と図版ベースの印刷では、速度・品質ともに不満のないレベルにある。右側は、一部を実寸で取り込んだもの。一度印刷したものをスキャナで取り込んでいるため、若干実際の印刷物よりも品質が低下している点に注意していただきたい。
 
普通紙への写真印刷サンプル(拡大画像:84Kbytes
全体に緑色に偏ってしまっている。これは、緑色の領域が多いため、その色調に補正がかかったためと思われる。右側は、一部を実寸で取り込んだもの。印刷できないフチが若干広いのが気になる。

 印刷品質ではないが、印刷できないフチの幅が上下で6mm、左右で9mmと若干広い点が気になった。プレゼンテーションやカタログを印刷することを考えると、フチなしとは言わないまでも、もう少し狭めてほしい。

 IPSiO 2200は、プレゼンテーション資料の印刷のみならず、簡易なカタログやパンフレットのオンデマンド印刷などにも十分利用可能だ。本体サイズが大きく、重いのが難点だが、印刷方式の宿命として現状では仕方ない部分もある。モノクロで24枚/分の印刷速度は、オフィス向けのモノクロ・レーザー・プリンタ並であり、カラー専用としてではなく、既存のプリンタを置き換えて、IPSiO 2200だけにすることも可能だ。なおラインニング・コストだが、A4判カラーで印刷面積が各色2.5%の場合で9.6円/枚、5%で15.6円/枚となっている。また、モノクロ印刷では3.6円(印刷面積が5%の場合)と、既存のモノクロ・レーザー・プリンタと同等のランニング・コストを実現している。

 まだまだカラー・レーザー・プリンタは、印刷速度/品質、価格ともに発展途上ではあるが、手軽なカラー印刷を必要とする多くのオフィスで、検討する価値がある水準にまで成熟してきたといってよいだろう。

メーカー名 リコー
製品名 IPSiO Color 2200
価格 26万8000円
製品URL http://www.ricoh.co.jp/IPSiO/color2200n/index.html
印刷方式 半導体レーザー+乾式1成分電子写真方式
連続印刷速度 カラー 6枚/分(A4縦)
2色カラー*1 12枚/分(A4縦)
モノクロ 24枚/分(A4縦)
解像度 1200dpi×600dpi/600dpi×600dpi/300dpi×300dp
用紙サイズ A4縦、B5縦、レターサイズ縦、官製ハガキ、不定形サイズ(100×210mm〜216×297mm)
用紙種類 普通紙、 はくり紙、専用OHPフィルム、官製ハガキ、厚紙
給紙量 標準 普通紙:250枚、OHP:50枚、官製ハガキ:25枚
オプション 普通紙:500枚(増設トレイユニット使用時 )
最大 普通紙:750枚
ページ記述言語 IPDL-C
エミュレーション オプションでRICOH-SCRIPT2を追加可能(PostScript Level 2互換)
メモリ 標準32Mbytes/最大256Mbytes
インターフェース 標準 パラレル・インターフェイス(IEEE 1284準拠、双方向通信可能)
オプション イーサネット・インターフェイス(10BASE-T/100BASE-TX)
消費電力 最大:1350W以下、 動作時平均:600W、スタンバイ時:260W以下、予熱モード時:150W以下、省エネモード時:35W以下
外形寸法 500(W)×520(D)×410(H)mm
重量 約39kg(トナー・カートリッジなどを含む)
IPSiO Color 2200の主な仕様
*1 CMYKトナーから2色のトナーを使った印刷の場合
 
  関連記事
第1回 広帯域インターネット接続を便利に使う「ブロードバンド・ルータ」
 
  関連リンク
RM5261の製品情報ページENGLISH
IPSiO Color 2200の製品情報ページ
IDF 2001 Springのメモリに関するプレゼンテーション資料ENGLISH
 
「PC Insiderのプロダクト・レビュー」


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