プロダクト・レビュー

ビジネスでも使えるインクジェット・プリンタ「エプソン PM-900C」

澤谷琢磨
2000/12/27

PM-900C本体
本体サイズは493(W)×306(D)×183(H)mmと、背面トレイを備えたためか、A4サイズ対応インクジェット・プリンタとしては少し大柄である。本体形状は角ばった印象が強くなった。写真ではロール紙ホルダを取り付けているため、さらに大きく見える。

 

PM-900C内のインク・カートリッジ
PM-900Cは、これまでの5色インク・カートリッジ+モノクロ・カートリッジに加え、ダークイエローを加えた6色インクIC6CL10+モノクロ・カートリッジを採用する。6色インク・カートリッジの価格は1800円と、5色インクIC5CL05に対し300円高くなっている。

 

PM-900Cのインターフェイス
PM-900CはPCとのインターフェイスとして、ECP/EPP対応パラレルポートとUSBを本体背面に備える。Windows 98/Meはもちろん、Windows 2000をプリント・サーバとして用いる場合は、USBでの接続を選択したほうが運用は楽になるだろう。

 

PM-900C印刷設定
用紙種類とインク、そしてモード設定を選ぶことで、印刷品質が決定される。ドラフト印刷の推奨モードであるエコノミー印刷モードは、[モード設定]−[詳細設定]から選択する。画面中の[オートファイン!4]とは、写真印刷の際に、自動的に補正を行うモードだ。これらはすべてプリセットとして用意されたものだ。細かい設定は、画面下側の[設定変更]から変更できる。

 

[PM900C印刷設定]-[設定変更]
[設定変更]を選択すると、PM-900Cの印刷パラメータを細かく調整できる。印刷品質はドラフト/ファイン/フォトの3種類が用意されている。Webスムージングは低解像度のグラフィックを高品質で印刷する機能を示している。エコノミー印刷モードとは、これらのオプションをすべてオフにした状態で、印刷品質にドラフトを選択したモードである。

 

CD-RプリントキットをPM-900Cに装着した状態
CD-Rプリントキットは、CD-R印刷専用トレイと、CD-R印刷時にプリンタの内部ローラー上に取り付けるアタッチメント、そして専用ソフトウェア「CD Direct Print」で構成される。写真はCD-R印刷専用トレイをPM-900Cの背面トレイから挿入したところを撮影したものだ。なお、この背面トレイは汎用で、厚紙(用紙厚0.4〜2.5mm)や専用マットボード紙といった、これまでのインクジェット・プリンタでは印刷が難しかった用紙にも対応している。

 

印字可能(左上)/不可能(右下)なメディア
PM-900CのCD-R印刷機能では、TDK製CD-R74PWと日立マクセルのCDR80PW/CDR74PWを推奨メディアとして挙げているが、テストした限り、プリンタブルとは明記されていないメディアでも、白色の梨地(なしじ)仕上げならば印刷できるようだ(マニュアルでは、24時間以上経過させた後の印刷状況の確認を推奨している)。なお、表面が鏡面状のCD-Rでは、インクは定着しなかった。

 

EPSON CD Direct Print
画面中ではマザーボードを撮影した画像を「イラスト」として張り付けているが、もちろん「背景」として、CD-Rレーベル全面に流し込むことも可能だ。張り付けたイメージのはみ出した部分は、印刷時に自動的にカットされる。CD Direct Printで張り付けることのできるイメージは、BMPとJPEG、PhotoCD、非圧縮TIFFフォーマットだ。TWAIN機器(スキャナなど)からの画像読み出しにも対応している。

 

 

CD-Rレーベルの作品例
写真は、編集部で実際にCD Direct Printでレーベルを作成し、プリンタブルCD-Rに印刷したものを撮影したものだ。CD Direct Printは1ブロック中に異なる大きさの文字を混在させることはできないので、作品例のタイトル「All about Pentium4」と、サブタイトル「最新CPUの構造を探る」は別のブロックとして作成している。このため、文字列の曲率を合わせるのは少し手間がかかったが、それ以外の部分の作成は容易だった。

 

 

 

 PCと接続可能なカラー・プロジェクタの普及によって、PowerPointなどで作成した資料を直接プレゼンテーションで表示する機会が増えつつある。このような場合は、カラー表示を前提としたプレゼンテーション資料となることが多く、同時に配布する資料のカラー印刷がどうしても必要になる。特にグラフが多用されたプレゼンテーションでは、カラー印刷でなければ、折れ線グラフなどのデータが判別しにくい。

 カラー・レーザー・プリンタの低価格化も著しいとはいえ、その多くが20万円以上する製品であり、気軽に導入できる価格ではない。頻繁にカラー印刷を行うならば、投資を回収することも可能だろうが、プレゼンテーション資料などの印刷で、たまにしか使わないのであれば、カラー・レーザー・プリンタはやはりまだまだ高価だ。

 このような場合、低価格化/高機能化の進むコンシューマ向けのカラー・インクジェット・プリンタでカラー印刷が賄えるならば、あえてカラー・レーザー・プリンタを導入する必要はないかもしれない。そこで、今回はカラー・インクジェット・プリンタがビジネス用途でも利用可能なのかどうか、セイコーエプソンの「カラリオPM-900C」を取り上げ、検証してみたいと思う。

PM-900Cの主な特徴

 PM-900Cは、2000年冬のセイコーエプソンのインクジェット・プリンタ・ラインアップの中で、A4対応の最上位に相当する製品である。写真クオリティの印刷品質を向上させるため、2ピコリットルのインク滴(1440dpi印刷時)と、新たにダーク・イエローを加えた7色インクを採用している。機能面では、四辺フチなし全面印刷、CD-Rレーベルへの直接印刷、厚紙への印刷のサポートが新たに加えられた。もちろん、旧モデルのPM-800Cから採用されているロール紙印刷も、ロール紙の巻き取り操作を容易にするなどの改善が行われたうえ、引き続きサポートされている。豊富な専用紙が用意されることも、カラー・レーザー・プリンタとは異なる特徴としていえるだろう。

豊富な機能を備える付属ドライバ

 インクジェット・プリンタは、ホストPC側で多くのイメージ処理が行わなければならないこともあって、ドライバの完成度が印字品質や速度、そして安定性に大きく影響する。この点エプソンは、インクジェット・プリンタ用ドライバの完成度が高いことで知られている。PM-900Cに付属するドライバ(バージョン5.1)は、写真印刷のクオリティを向上させるオートフォトファイン!4、インターネットで多用される低解像度グラフィックスの印刷品質を向上させるWebスムージングなど、印刷時の補正機能の充実が目立つ。

 また、印刷品質とは直接関係しないが、PM-900Cのマニュアル(ユーザーズガイド)は、HTMLで作成されている。オンライン・ガイド化されているため、トラブルが発生した場合でもWebブラウザで参照が容易だし、イントラネットでの共有も行いやすい。

十分実用となるCD-Rレーベル印刷機能

 前述のとおり、オプションながらCD-Rレーベル面の直接印刷をサポートしたことが、PM-900Cの機能面における特徴の1つとなっている。編集部で試用した結果、CD-Rプリントキットの取り付けに多少手間がかかるのは難点だが、インクジェット用ホワイトレーベル(レーベル面への印刷が可能な白いレーベル面を持つもの)のCD-Rには非常にきれいな印刷が行えた。CD-Rプリントキット自体は、価格が2000円と、専用ソフトウェア(EPSON CD Direct Print)が付属するにもかかわらず、低価格に抑えられている。サンプルのデータなどをCD-Rで部外あるいは社外に配布するような用途が多い場合は、非常に有用な機能であると感じた。

 CD-R専用トレイは、本体背面から挿入するのだが、これを取り付ける際にはプリンタ内部のローラー上にキット付属のスペーサーを取り付ける必要がある。マニュアル記載の手順どおりに作業しないと、取り付けるのは難しい。また、通常印刷時にはこのスペーサーを取り外す必要がある。一度セットしてみればコツはつかめるが、もう少し容易に取り付けられるような工夫を望みたい。

 CD-Rプリントキットに付属する専用ソフトウェア「CD Direct Print」は、コーパスからOEM供給を受けた製品だ。凝った図形を作成するのは難しいが、手元にある画像を貼り付けたり、飾り文字を入力する程度のCD-Rラベルならば、CD Direct Printだけでレーベルの作成と印刷は完結できる。画像や文字を印刷するだけでも、CD-Rの見栄えは格段によくなる。なお、CD-Rプリントキットには、コーパスの「CDラベルプロダクション3」を優待販売価格(3800円、2001年1月中旬発売予定)で購入する権利が付与されている(コーパスの「CDラベルプロダクション3」の製品情報ページ)。こちらは、画像素材を大幅に増やしたうえ、MOディスクやビデオ・カセットのラベル印刷にも対応しているという。

エコノミー印刷ならば十分実用的な印刷速度

 PM-900Cの備える機能は確かに有用だが、印刷速度次第では、ビジネス用途には向かない可能性もある。そこで、実際の印刷速度を測定した。今回印刷テストに使用したのは、Platform 2000でAMI2が配布した、DDR SDRAMのプレゼンテーション資料である。グラフを多用しているうえ、論理回路図やプリント基板図など複雑な図形を含む、48ページのPDFファイルだ。これ以上複雑な図形を含む資料を印刷する機会は少ないと考え、実用上の最悪値の測定を目標として選択した。実験結果は次のとおりである。ここでは普通紙のデフォルト設定での印刷速度と、エコノミー印刷モードでの結果とを比較している。

クオリティ イメージ・
サイズ
1枚目
印刷終了
印刷
終了
1枚あたり
の速度
デフォルト 98.9Mbytes 49秒5 19分57秒2 24秒9
エコノミー 23.4Mbytes 9秒1 11分59秒2 14秒9
印刷テストはAMD Duron-700MHzと、128MbytesのPC133メモリを搭載した実験PCにWindows 2000 Professionalをインストールし、PM-900CとはUSB経由で接続した状態で行った。イメージ・サイズとは、実際にプリンタに転送されたデータの総量を示している。1枚目のデータがプリンタに転送された時点で印刷は開始されるため、1枚目の印刷終了時間も併記した。1枚あたりの速度は、スプールと転送に必要とした時間は無視して算出している。

 エコノミー印刷モードで印刷すると、1枚あたりの印刷速度は6割近く向上した。しかし、当然のことではあるが、エコノミー印刷モードでは印刷クオリティが大きく低下する。そこで、次に推奨設定とエコノミー印刷モードでの印刷クオリティを比較した。

PC Insiderのトップページを印刷した結果

PC Insiderのトップページを各モードで印刷した結果をスキャナで読み取り、その一部を拡大したものが下の画像だ。左から、普通紙の「エコノミー」、推奨設定「はやい」(デフォルト)、推奨設定「きれい」の各印刷結果である。
各モードのクオリティの比較
エコノミー
推奨設定「はやい」
推奨設定「きれい」

 推奨設定の印刷結果は、「きれい」、「はやい」ともに満足できる品質だ。特に「きれい」での印刷結果は、ディスプレイ上での表示をほぼ再現できている。それに対し、エコノミー印刷モードの印刷結果は全体的に薄く、色の種類が判別できる程度にすぎない。ただ、印刷結果がぼやけたり、文字がかすれたりはしていないため、正確な色再現さえ要求しなければ、エコノミー印刷モードでも十分に実用的だ。印字テストや内部向け配付資料は、エコノミー印刷モードで印刷し、外部向け配布資料は推奨設定で印刷する、といった使い分けを行うとよいだろう。

モノクロ・プリント以外の汎用プリンタとして導入したい

  PM-900Cのカラー原稿の印刷速度は十分高速で、TPOに応じて印刷モードを使い分ければ、十分実用的だ。ただし、印刷枚数が多くなると、ランニング・コストおよび連続給紙枚数の点で、カラー・レーザー・プリンタが有利になってくる。PM-900Cはネットワーク・インターフェイスのオプション設定がないため、LANで共有する場合には、別途プリント・サーバなどが必要になる。企業で利用という意味では、管理の手間が増えるため好ましいとはいえない。

 これらの点が問題とならなければ、モノクロ・レーザー・プリンタしかない環境にPM-900Cを導入するのは、悪くはない選択だ。PM-900Cは、CD-Rレーベルへの書き込みが容易な背面トレイを採用したことで、厚紙への印刷にも対応したため、豊富な専用紙と合わせて、おおよそオフィスで必要とされるカラー印刷は1台でまかなえるようになっている。

 なお、2000年冬期の各社のカラー・インクジェット・プリンタを比較した結果についても簡単に触れておこう。各社のハイエンド・プリンタの写真印刷の品質は、差がほとんどなくなってきている。写真印刷に関しては、ハイエンド・プリンタを選択していれば失敗はないだろう。ただ、ミドルレンジからローエンド・モデルについては、各社のプリンタの印刷品質に大きな差があるので、実際の印刷サンプルを比べて選択したほうがよい。また、普通紙の印刷品質、印刷速度、CD-Rレーベル印刷や両面印刷といった付加価値機能にも差があるので、こうした機能と価格のバランスを考えて購入機種を決めるとよい。PM-900Cは価格が若干高めだが、すべての面でレベルが高く、おすすめできる1台である。

 

機種名 PM-900C
価格 6万9800円
URL http://www.i-love-
epson.co.jp/products/printer/inkjet/pm900c/pm900c2.htm
問い合わせ先 TEL:0570-00-4116
コントロール・コード ESC/Pラスター
印刷方式/解像度 最大1440×720dpi
ノズル配列 各色96ノズル
インタフェース パラレル・インターフェイス/USB
給紙容量(ASF) A4:最大100枚(55kg紙)、ハガキ:30枚
インク モノクロ・インク・カートリッジ+カラー・インク・カートリッジ(6色一体型)
用紙 用紙サイズ:ハガキ〜A4縦/ロール紙:89/100/127/210mm幅
背面トレイ CD-Rプリント・トレイ/単票紙:用紙厚0.4〜2.5mm/マットボード紙
消費電力 約18W
外形寸法 493(W)×306(D)×183(H)mm
重量 約7.2kg
PM-900Cの主な仕様
 
  関連リンク
PM-900Cの製品情報
CDラベルプロダクション3の製品情報

「PC Insiderのプロダクト・レビュー」

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