連載

PCの理想と現実

第2回 フロッピー ドライブの終焉!?

元麻布春男
2000/06/03

 2000年の秋に登場するコンシューマ向けOS「Windows Me(Millennium Edition)」の特徴の1つは、ISAデバイスなどのレガシーを排除したレガシー フリーPCのサポートにある。といっても、Windows Meがレガシー デバイスを備えたシステムで利用できないというわけではない。Windows Meはレガシー フリー モード(レガシー排除モード)とレガシー リデュースド モード(レガシー削減モード)の2つのモード(インストール オプションと呼んだ方が適切かもしれない)を備えており、レガシー デバイスを備えたシステムでもレガシー リデュースド モードでサポートされる。ただ、25秒でのシステム ブート(Quick Boot)など一部の機能はレガシー フリー モードでしか実現されないだけである。

 レガシー フリー モードの利用には、OEM用のインストール パッケージであるOPK(OEM Preinstallation Kit)が必要で、アップグレード ユーザーなどがレガシー フリー モードを利用することはできない。だが、レガシー フリー モードの利用に、BIOSも含めたレガシーを排除した新しいハードウェアが必要であることを考えれば、これも不当なこととはいえないだろう。現時点で市場には、レガシー フリー モードに対応したハードウェアは、まだ市販されていないからだ。

Intelが1998年11月に発表したEasyPCのコンセプト マシン
PCとは思えないようなデザインを採用したマシンに仕上がっている。インターフェイスはUSBのみで、レガシー デバイスはすべて取り払われている。今後、コンシューマ向けにはこういった今までのPCとは異なったマシンが数多く販売されることになるだろう。

 レガシー フリーを目指したレガシー デバイスとレガシー バスの排除は、何も今に始まったことではない。これまでのPC9xシステム デザイン ガイドなどでも、レガシーの削減は大きなテーマの1つであった。実際、ISA拡張スロットの廃止、サウンド チップやネットワーク コントローラのISA接続の禁止など、すでにISAバスやISAデバイスは大半が排除済みだ。最新のシステムでは、スーパーI/OチップもISAバスではなく、LPC(Low Pin Count)インターフェイスに接続されるようになっている。

 Windows Meのレガシー フリー モードは、こうした努力をさらに一歩進めるものだ。すなわち今回、削減のターゲットとなっているのは、スーパーI/Oチップである。スーパーI/Oチップがサポートする機能は、時代によっても若干の変動があるが、最近のものに共通する機能は、PS/2キーボード/マウス コントローラ、シリアル ポート、パラレル ポート、フロッピー コントローラ(FDC)などである。以前、スーパーI/Oチップでサポートしていたリアルタイム クロックは、現在ではチップ セットに移されているので対象にならない。

 以上の機能のうち、PS/2キーボード/マウス コントローラ、シリアル ポート、パラレル ポートといったものは、レガシー フリーPCではUSBで置き換えられる。市場にはすでにUSBキーボードやマウス、USBに対応したプリンタやスキャナが数多く流通している。モデム(日本ではユーザーは減っているが)は、AMR(Audio/Modem Riser)やCNR(Communication and Network Riser)といったRiserカードへの移行が促進されており、シリアル ポートへは依存しない。大企業では、シリアル ポートやパラレル ポートを用いたドングル(数十万円以上する高価なアプリケーションのコピープロテクション用の特殊なデバイス)や、デバッグ ポートとしてのシリアル ポートが必要なところもあるだろうが、IntelやMicrosoftはこうしたところにまでレガシー フリーPCを押しつけようとしているわけではない。Windows Meが最初のレガシー フリー プラットホーム(EasyPCサポート プラットフォームと言い換えてもよい)になっていることでも明らかなように、まずターゲットとなっているのはコンシューマ市場である。

従来のPCのブロック図
これまでのPCでは、このように数多くのISAデバイスが使われていた。ISAデバイスは、プラグ アンド プレイに対応しにくい、レスポンスが悪い、といった理由から現在では取り除かれる方向にある。
 
レガシー フリーPCのブロック図
レガシー フリーPCでは、ISAデバイスが取り除かれ、スッキリとしたブロック図となる。将来的にはBIOSさえも取り除かれることになるだろう。

フロッピー ドライブの行方

 残るフロッピー ドライブをどうするかということが、ある意味で、今回のレガシー フリー(スーパーI/Oチップの追放)の最大の課題といえるかもしれない。結論からいえば、レガシー フリーPCにはフロッピー ドライブは搭載されない。レガシー フリーPCは、FDC(Floppy Disk Controller)を含むスーパーI/Oチップの初期化を行わないからだ。実は、こうした事項の積み重ねで、Windows Meの起動時間は約25秒に短縮されているのだ。フロッピー ディスクを利用したいユーザーは、オプションとして用意される、あるいはサードパーティ製のUSBフロッピー ドライブを利用することになる。このあたりはiMacと同様だ。フロッピーの追放をこのタイミングで実施する1つの理由がフロッピー ドライブを持たないiMacの成功にあることは疑う余地がないだろう。Windows Meにムービー メーカーという動画編集アプレットが添付されることも含め、Wintel陣営のAppleコンプレックスは相当なものと感じる(編集部注:iMac-DVには、iMovieという動画編集ソフトウェアが標準添付されている)。

 USBフロッピー ドライブの最大の問題は、システムの起動ができないことだ。これは、現在のBIOSがUSBのストレージ デバイスをサポートしていないからだが、おそらくこれが変わることはない(BIOSがUSBストレージからのシステム起動をサポートすることはない)。その代り、将来BIOSに代り、新たなファームウェア モデルとそのOSインターフェイスであるEFI(Extensible Firmware Interface :OSとファームウェアの間のインターフェイス)が採用された時点で、USBストレージからのシステム起動がサポートされる可能性がきわめて高い。ちなみに、EFIを最初に採用するのは、IA-64プラットホームのDIG64(Developer's Interface Guide for IA-64 Servers)になると思われる。これが、メイン ストリームに降りてくるのはもうしばらく先の話で、BIOSがレガシーとして排除される時期は、ひょっとするとメインストリームに64bitアーキテクチャが降りてくるタイミングになるのかもしれない。

フロッピードライブに代わるモノ

 レガシー フリーPCにおいて、フロッピー ドライブに代わるシステム起動デバイス(何らかの理由でハードディスクからのシステム起動ができない場合に利用する起動デバイス)は、CD-ROMドライブということになる。レガシー フリーPCには、ブータブル(起動可能)なリカバリCD-ROMが添付されることになるだろう。本来ならば、Windows 98以降のOEM版やWindows NT系のOSのように、Windows MeのCD-ROMもブータブルになるべきだと思うが、残念ながら現時点のBeta3においても、システムの起動はサポートされていない。

 もう1つ、現在のフロッピーが担っているちょっとしたデータの書き出し、たとえば知人にそれほど大きくないデータを渡す、ハードディスク上の重要なデータをちょっとバックアップしておこう、といった用途にはどんなデバイスを使えばよいのだろうか。Windows Meに対応したレガシー フリーPCのすべてが標準採用するわけではないだろうが、おそらくそこで選ばれるのはCD-R/RWドライブ、とりわけCD-RWだ。

 日本においては、CD-Rに比べてあまり人気のないCD-RWだが、MicrosoftやIntelのカンファレンスで話題になるのは、ほとんどがCD-RWである。その理由はよく分からないのだが、基本的にCDやCD-ROMを複製する用途が念頭にないことに加え(MicrosoftはOS/ソフトウェア ベンダなのだから当然か)、書いて消せることがストレージ デバイスとして当たり前のことと考えているのがその理由かもしれない。もしかすると、CD-Rのような追記型のメディアはニッチなものだと考えているのかもしれない。

 2000年4月のWinHECでMicrosoftは、MMC-2(Multi-Media Command Set-2)対応のCD-R/RWドライブに対し、Whistler(Windows 2000の次期バージョンの開発コード名)で書き込みも含めたサポートを行う予定であることを明らかにした。ところが、そこで付け加えられたのは、UDF(パケット ライトに用いるファイル システムの標準)やCD/CD-ROMメディアの複製、さらにはVideo CDの作成といった機能については、Whistlerでもサードパーティ製ライティング ソフトウェアが必要であるということだった。これが、単にディスク アット ワンス(Disk at Once)による書き込みやUDF準拠のパケット ライトをサポートしないというだけのことなのか、その真意は必ずしも定かではない。

Mt. Rainierがポスト、フロッピー ドライブの第一候補

 さらにMicrosoftが明らかにしたところでは、Whistlerの次のOSでは、Mt. Rainier(マウント レイニアー)仕様のCD-RWドライブを完全サポートする予定であるという(Mt. Rainierについては、仕様が公開されておらず、現在のところ詳細は不明)。Compaq、Microsoft、Philips、Sony、Adaptecが中核となって標準化を行っているMt. Rainier仕様のCD-RWドライブは、いくつかの点で現行のCD-R/RWドライブと大きく異なっている。不良ブロックの管理およびフォーマットをドライブ自体が行うこと、アドレッシング単位(パケット サイズ)が2Kbytes単位と細かい(UDF 1.5では64Kbytes)ことだ。特にハードウェアによるフォーマットということでは、メディアをユーザーが事前にフォーマットしないでよい、ということが強調されている。つまり、購入したメディアをドライブに入れ、データをドラッグ&ドロップするだけで、すぐに書き込める(フォーマットはバック グラウンドで自動的に必要な分だけ行われるものと考えられる)。

 これは便利な反面、既存のCD-ROMドライブ、あるいはCD-R/RWドライブとの互換性という点では問題が多い。というより、次世代OS(Whistlerの次のOS)の標準ソフトウェアによりMt. Rainier仕様のドライブで書かれたメディアを、既存のOS(WhistlerまでのOS)で読み出すことはできない。そのためには、別途読み出し用のアプリケーションが必要になる。逆にUDF準拠のパケット ライトやディスク アット ワンスといった書き込みには、次世代OSとMt. Rainier仕様のドライブの組み合せにおいても、サードパーティ製ソフトウェアが必要になる見込みだ。

 このMt. Rainier仕様のドライブだが、現時点では存在しない。WinHECでは2001年の前半にドライブが登場するという説明だったが、まだ公式Webサイトもオープンしていない状況で、本当に間に合うのか疑わしいようにも思う。だが、フロッピー ドライブの後継デバイスとして、現在Microsoftが本命と考えているのが、このMt. Rainier仕様のドライブなのである。CD-Rが人気の日本では、12倍速といったドライブの速度アップやBurn Proofなど、力技によるCD-Rの使い勝手の向上が注目を集めているが、Microsoftは違う方向を見ている、ということを覚えておいたほうがよいかもしれない。

さよならDMAコントローラ

 フロッピー ドライブの後継がCD-RWドライブになることは、接続インターフェイスがFDCインターフェイスからATAPIへと移行することを意味する。FDCがなくなることで、現在のPCに残るもう1つの盲腸、8237DMAコントローラも事実上不要になる。1984年、IBMがPC/AT用ハードディスク インターフェイスのデータ転送方式について、それまでのPC/XTで用いていたDMAコントローラによるデータ転送からPIO方式に切り換えた時点で、すでにDMAコントローラを用いたデータ転送は時代遅れになっていたという見方もできるが、それから15年以上を経過して、ようやくDMAコントローラがなくなることになる。

 DMAコントローラを用いたDMAデータ転送の最大の問題は、データ転送そのものが遅いということだけでなく、データ転送の間中、DMAコントローラがバスを占有してしまうということにある。最近のチップセットはコンカレントPCI機能を備えており、このような低速デバイスによるバスの長時間占有を防ぐことが可能になっているが、DMAコントローラがないほうがよいことは間違いない。ちなみにPCIバスは、特定のDMAコントローラを利用せず、必要があればPCIデバイス自らがDMA転送を行うバスマスタDMA方式を採用しており、DMAコントローラの必要性は著しく低下していた。DMAに依存した最後のペリフェラルであるFDCがなくなることで、DMAコントローラも不要になる。記事の終わり

関連リンク
Windows 2000 Insider
Insider's Eye:Windows Meの全貌
Intel
「使いやすさ」が業界の発展を促す(1998/11)

 
     

「連載:PCの理想と現実」


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