連載

PCの理想と現実

第3回 フロッピー ドライブに代わるモノ

元麻布春男
2000/06/03

 フロッピー ドライブの後継は、どうやらCD-RWドライブ、それもMt. Rainier仕様のものに落ち着きそうな感じだが、これまでにもフロッピー ドライブの後継を巡ってさまざまなデバイスが登場してきた。Zipドライブ、SuperDisk(LS-120)、そしてHiFDなどだ。これ以外にも、試作されたが製品化に至らなかったものが多数ある。公表されなかったものも含めればもっとあるだろう。ARMD(ATAPI Removable Media Drive)と総称されるこれらのデバイスは、なぜフロッピー ドライブの後継になれなかったのだろうか。端的にいってしまえば、しかるべきタイミングでフロッピーの後継に相応しい価格付けができなかった、ということにつきるだろう。

 現在も使われ続けている1.44Mbytesタイプの高密度(HD:High Density)フロッピー ドライブは、1987年にIBMがPS/2をリリースして以来使われているものだ。その後、IBMは容量を2倍の2.88Mbytesに増大させたED(Extra Density)タイプのドライブを提供したこともあったが、こちらはまったく普及せずに終わってしまった。この間、1.44Mbytesタイプのドライブを置き換えようという試みは、容量20MbytesのFloptical(フロプティカル)など、何度もなされたが、いずれもHDタイプのドライブ並みの価格、という難関をクリアできずに終わった。もし上記のARMD製品を早期にHDタイプのドライブ並みの価格で提供可能であれば、標準搭載の座をつかめたかもしれない。

 もちろんメーカーもそれは分かっていたに違いないが、それでは赤字になってしまう。徐々に量産規模を拡大させることで、何とか少しずつでもコストダウンを図っていきたい、と考えているうちに、時代は100Mbytes〜200Mbytesクラスのリムーバブル メディアを通りすぎて行ってしまった、というのが率直なところではないかと思う。

フロッピー ドライブの代わりになれなかったモノたち

 個別のデバイスということでは、筆者はSuperDisk、特に第2世代の2倍速ドライブを自宅環境での標準にしている。仕事マシンはもちろん、実験マシンも含め、サーバ以外のすべてのマシンにSuperDiskドライブを装備している。おそらく、しばらくの間、まだSuperDiskドライブを購入することがあるだろうとさえ思っている。が、SuperDiskドライブが世の中の標準になるかといわれたら、はっきり「ノー」と答えるだろう。

松下電器産業のSuperDiskドライブ
既存の1.44Mbytesの3.5インチ フロッピー ディスクとの互換性を保ちながら、容量120Mbytesのメディアの読み書きを可能にしている。写真は、USBインターフェイス採用の「LK-RF235UZ-B/T」。

 筆者にとって2倍速のSuperDiskは、高速な120Mbytesメディアの利用だけでなく、通常のフロッピー ディスクの読み書きが2倍になる、という点でメリットを感じている。特に、フロッピーからブートする機会(OSのクリーン インストールなど)が多い実験マシンの場合、2倍速のSuperDiskドライブで何秒かでも時間が節約できるだけで、7000円〜9000円という現在のSuperDiskドライブの市場価格分の価値はあると思う。だが、それが一般のユーザーにも当てはまるかといえば、それは違うハズだ。

 Zipは、やはりフロッピーを置きかえるデバイスにはなれなかった、フロッピーを補完するデバイスであった、というのが筆者の率直な意見だ。フロッピーとの互換性を捨てることで、ドライブ価格を引き下げると同時に、高性能を実現したZipだが、あくまでもフロッピー ドライブ、ハードディスク、CD-ROMドライブに次ぐ4番目のストレージにしかなれなかったように思う。もちろん、4番目のストレージにも市場はあるし、そこでは大きな成功を収めたといって間違いないが、フロッピー ドライブを置き換えることとは意味が違う。

アイオメガの内蔵Zipドライブ
アイオメガのZipは、容量100Mbytesと容量250Mbytesの2種類が販売されている。既存の3.5インチ フロッピーとは互換性がない。写真は、ロジテックが販売する内蔵タイプのZipドライブ。左が容量100Mbytesの「LZD-102AK」、右が容量250Mbytesの「LZD-250AK」。

 HiFDの場合、何と言っても出遅れが大きかった。ZipやSuperDiskに遅れをとったうえ、先行発売した米国では、読み出し/書き込み時にエラーが発生するといった不具合から、ドライブの回収騒ぎまで起こってしまった。現在、日本ではパラレル ポートに接続する外付けタイプが売られているが、これではどんなにうまくいっても4番目のストレージにしかなれない。フロッピーの置き換えを目指すのであれば、PCへの標準搭載(特にドライブを開発したのがソニーである以上は、VAIOシリーズへの標準搭載)と、それに適したATAPI内蔵タイプのドライブの販売を実現しなければならなかったハズ(もちろんそれにはBIOSサポートが必要だが、新しいシステムに関していえば、ほぼBIOSサポートはできている)。それができなかった以上、勝負はついている。

 これら以外のデバイスで、ひそかに注目していたのがフラッシュATAデバイスだ。コンパクトフラッシュやスマートメディアといった類のデバイスだが、容量的にはフロッピー ディスクをはるかに凌いでおり、考えようによっては、フロッピーの後継としてみても面白かったのではないかと思う。だが、本質的にメディアの価格を安くできない、ということを売る側がわきまえてしまった(?)せいか、そのような試みがほとんどなされなかったのは残念なことだ(フラッシュATAからのシステム起動を真剣に検討したメーカーはあるだろうか?)。高価格な反面、小型、軽量、大容量というメリットがあるし、フロッピーの後継を目指して一本化されれば、ノートPCの小型化にも貢献したのではないかと思えるからだ。ただ、最近の携帯電話への搭載をめぐる小型化、著作権保護への対応などを見ていると、フラッシュATAデバイスがフロッピーの後継と浮上してくるのは、これから先なのかもしれない。

DVDの未来

 これから先、ということで注目されるのは、やはりDVDをベースにした技術だろう。だが、WinHECにしてもIDFにしても、書き換え可能なDVDは、将来のビジョンとして語られることはあっても、具体的なサポートの話として語られることは今のところない。その最大の理由は、書き換え可能なDVDの規格が一本化されておらず、一本化する見込みもまだ立っていないからだ。

 書き換え可能なDVD規格として先行しているのは、すでにドライブが出荷されているDVD-RAMである。東芝、松下電器産業、日立製作所の3社が中心となって推すDVD-RAMだが、2000年5月15日に松下電器が発表した第2世代のDVD-RAMドライブは、

  • 片面にDVD-ROMと同じ4.7Gbytesの記録が可能
  • 最初からカートリッジに収まっていないメディアが提供される
  • PDとの互換性を捨てた

松下電器産業のDVD-RAMドライブ
2000年5月15日に発表になった松下電器産業の第2世代の容量4.7Gbytesに対応したDVD-RAMドライブとメディア。カートリッジに入っていない片面4.7Gbytesの提供が行われた。ドライブは、内蔵型と外付け型の2種類がラインアップされる。

といった点で、画期的な製品だ。また、松下電器産業は、DVD-RAMドライブと同時にDVD-RAMに準拠した民生用のDVDビデオ レコーダーも発表しており、将来的にはDVDビデオ レコーダー、DVDプレイヤー、DVD-RAMドライブを搭載したPCの3つのプラット フォームで、同じメディアに記録された動画の再生が可能になる見込みである。

DVD-RAMドライブの問題

 問題は、今のDVD-RAMドライブが、Microsoftの方針からずれている点にある。MicrosoftはWebサイトで、CD-R/RW、DVD-RAMなどのオプティカル ドライブは、ドライブとして1つのLUN(Logical Unit Number)を利用することを求めている。つまり、書き込みや読み出しの機能、あるいはDVD-ROMであるかCD-ROMであるかといったメディアの違いにかかわらず、常に1つのドライブ レターで動作しなければならない。物理的に1つのドライブである以上、ドライブ レターは1つのほうが分かりやすい、ということである。同じドライブであるにもかかわらず、用いるメディアによってドライブ レターが変わるというのは、ユーザーにとっても紛らわしい。

 ところが、現在のDVD-RAMドライブ(片面2.6Gbytesタイプ)は、読み取りと書き込みで異なるドライブ レターを用いる。それが関係しているのかどうかは不明だが、現時点でWindows 2000でDVD-RAMドライブを正常に用いることができない。なんと、DVD-ROMモードで利用するか、DVD-RAMモードで利用するかを決めて、システムを再起動しなければならない。片面4.7Gbytesタイプの第2世代DVD-RAMドライブのスペックでも、サポートOSの項にWindows 2000の名前はない。とりあえず2.6GbytesタイプのDVD-RAMドライブに関して松下電器は、独自にDVD-ROMモードとDVD-RAMモードで2つのドライブ レターを占有するWindows 2000対応のドライバ/ユーティリティを提供する予定のようだが、それは上述したMicrosoftの方針とは明らかに異なる。果たして、そのようなデバイスがフロッピー ドライブの後継として、OSの標準サポートデバイスになれるか疑問が残る。

 また、1999年11月に日立製作所が片面4.7Gbytesタイプの第2世代DVD-RAMドライブを発表した際、カートリッジのないメディアが用意されるなどという情報は一切なかった。DVD-RAM陣営の足並みが揃っていない、ということではないのだろうが、まだ発展途上という感を強くすることは間違いない。もうしばらく熟成を待つ必要があるだろう。

DVDビデオ レコーダーで先行しているDVD-RW

 DVD-RAMに次ぐ書き換え可能なDVDフォーマットは、DVD-Rの発展型であるDVD-RWだ。DVD-RWはすでに民生用のビデオ レコーダーとしてパイオニアが製品化を行っている。これまでDVD+RW(DVDに近い規格だが、DVDフォーラムによる正式規格ではない)を推していたソニーも、少なくとも民生用途についてはDVD-RW陣営への参加を表明しており、PC用途についてもDVD-RWを採用する可能性がウワサされている。

パイオニアのDVD-RW採用のDVDビデオ レコーダー「DVR-1000」
1999年11月に発売となったDVD-RWを採用した民生用のDVDビデオ レコーダー。記録容量4.7Gbytesを実現しており、標準モード(SP)で2時間のテレビ録画が可能。

 肝心のPC用DVD-RWドライブだが、現時点では発表されていない(早ければこの秋にも発表される可能性がある)。すでに発売済みの業務用のDVD-Rドライブは、波長635nmのレーザーを用いるのに対し、DVD-RWドライブはDVD-ROMと同じ波長650nmのレーザーを用いる。また、ランド/グルーブ記録を用いるDVD-RAMに比べ、DVD-RWはグルーブ記録であること、DVD-RWのピット反射率がDVD-ROMの片面2層メディアの2層目と同程度であることなど、DVD-ROMとの互換性を確保しやすくなっている。

 その反面、書き換え可能回数が、DVD-RAMの10万回に対し、DVD-RWは1000回と少ない。また、DVD-RAMはPC用途での性能向上を意図してデータ トラックに一定間隔でヘッダを記録することで、アクセス性能の改善を図っているが、DVD-RWにはそのようなヘッダは存在しない。DVD-RW、DVD-RAMともに、一長一短があるといえるだろう。なお、DVD-RAMの項で指摘したソフトウェア サポートの問題などについては、まだ製品がないだけに何ともいえない。

 DVD-RAM、DVD-RWを問わずに問題なのは、いずれもDVDフォーラムの正式規格であるにもかかわらず、相互にフォーマットをサポートしようという動きがないことだ。東芝、松下電器、日立製作所といったDVD-RAM陣営のDVD-ROMドライブは、DVD-RAMメディアの読み取りをサポートするだろうが、DVD-RWメディアの読み取りをサポートする予定はない。逆にDVD-RWを推すパイオニアのDVD-ROMドライブは、DVD-RWメディアとの互換性を保証するだろうが、DVD-RAMメディアの読み取りをサポートする予定はない。これでは、市場でどちらかのフォーマットに軍配が上がるまで、購入しようというユーザーはリスクを負わねばならない。MicrosoftやIntelが、様子見を決めこむのも無理はないところだ。果たしてMt. Rainier仕様のCD-RWがスムーズに離陸するのか疑問を感じるが、書き換え可能なDVDの一本化が行われていれば、Mt.Rainier自体が不要だったのではないか、と感じるのもまた事実である。記事の終わり

書き換え型DVD規格の主な推進企業

関連リンク
松下電器産業
スーパーディスクに関するホームページ

アイオメガ

Zipドライブに関するホームページ
ソニー
ソニーと富士写真フィルムが200MBの大容量3.5インチフロッピーディスクシステムを共同開発(1997/10/14)
日立製作所
DVD-RAMドライブに関するホームページ
松下電器産業
DVD-RAMドライブに関するホームページ
パイオニア
DVDレコーダー「DVR-1000」に関するホームページ

 
     

「連載:PCの理想と現実」


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