Athlonプラットフォームの可能性を広げるAMD-760チップセット

2.DDR SDRAM+AMD-760の性能

澤谷琢磨/デジタルアドバンテージ
2000/12/22

 相変わらずx86プロセッサの性能は、18〜24カ月で倍増というムーアの法則にのっとって向上し続けている。Athlonも2000年末の現在では1.2GHzが入手可能であるが、2001年半ばには1.5GHz版が登場するといわれている。それに対し、次世代メイン・メモリと目されていたDirect RDRAMが普及していないこともあり、メイン・メモリの性能向上は決して芳しくない。2000年に入ってようやくPC100からPC133への移行が始まったという程度だ。

 メイン・メモリの性能向上がプロセッサについていけないと、やがてメイン・メモリの性能がボトルネックとなり、いくらプロセッサが速くなってもPCシステム全体の性能は向上しなくなってしまう。Athlonを例にとると、現在FSB(フロントサイド・バス)は最大2133Mbytes/sでデータを転送できるのに、PC133メモリはその半分の1067Mbytes/sでしか転送できない。Athlonの内部バスでの転送レートと比較すれば、この差はさらに広がる。より高い動作クロックを実現すると予想される将来のプロセッサでは、PC133メモリは明らかに力不足なのだ。

 AMDが新チップセットAMD-760でDDR SDRAMを採用したのは、こうした背景がある。最大転送レートで比較すると、DDR SDRAM(PC2100)は現行のAthlonのFSBと同じ最大転送レート2133Mbytes/sという高い性能を発揮するため、今後登場する高性能プロセッサの足をそれほど引っ張らないことが期待できそうだ。

 ここでは、DDR SDRAMが現行のSDRAMに比べてどれくらいシステム性能の向上に有効なのか、2000年末時点でのメインストリームPCで実際に試してみよう。

ベンチマーク・テスト環境について

 テストに用いたのは、以下の2台のPCである。

  DDR SDRAM搭載機 SDRAM搭載機
プロセッサ AMD Athlon-900MHz(FSB:200MHz)
マザーボード AMD製マザーボード(開発コード名:Tecate EVT2) ASUSTeK Computer製A7V
チップセット AMD製AMD-760 VIA Technologies製Apollo KT133
メイン・メモリ PC1600 DDR SDRAM DIMM 256Mbytes×1枚(CL=2) PC133 SDRAM DIMM 128Mbytes×2枚(CL=2)
グラフィックス・カード AGP 4x対応グラフィックス・カード(クリエイティブメディア製3D Blaster GeForce2 GTS)
アクセラレータ:NVIDIA製GeForce2 GTS
メモリ: 32Mbytes DDR SDRAM
ハードディスク 30Gbytes 7200RPM IDEハードディスク(IBM DTLA-307030)
ハードディスク・インターフェイス Ultra DMA/100対応IDEコントローラ(AMD製サウスブリッジAMD-766内蔵) Ultra DMA/66対応IDEコントローラ(VIA Technologies製サウスブリッジVT82C686A内蔵)
ベンチマーク・テスト用PCの主なハードウェア仕様

 比較したいのは、AMD-760+DDR SDRAMという次世代メイン・メモリ採用システムと、現行のPC133メモリ・システムのそれぞれの性能なので、メモリとチップセット、マザーボード以外の要素はなるべく統一している。

 「メイン・メモリ」の欄にある「CL」とはCAS Latencyの略で、メモリに列アドレス情報を与えてから実際にデータが読み出し可能になるまでの遅延時間をクロック数で表したものだ。値が小さいほど高速なメモリといえる。2000年後半の時点のPC133メモリでは、CL=3が主流だが、今後はより高速なCL=2の方が増える見込みなので、こちらでテストしてみた。一方、PC1600メモリはCL=2だけが流通する見込みだ。

 そのほか、OSにはWindows 2000 Professional英語版+サービスパック1を使用した(英語版環境でテストしているのは、後述のSYSmark 2000を用いるためである。このプログラムは、英語版環境しかサポートしていない)。

試用したTecate EVT2マザーボード

基本的なパーツ構成は、現行のSocket A対応マザーボードとあまり変わらない。

 Tecate EVT2はエンド・ユーザー向けに出荷されることのない試作品のため、量産出荷されるマザーボードとは次の違いがある。まずAMD-760のリビジョンは、初期の型であるAステップだった。量産出荷されるのはB2ステップ以降のチップといわれており、安定性の面はもちろん、性能面でも違いが表面化する可能性がある。また、本来AMD-766であるべきサウスブリッジの型番は、開発初期のコードネームであるAMD-757と印刷されていた。こうした事情から、本記事のベンチマーク結果は、量産出荷版のAMD-760と一部異なる可能性もある点に留意していただきたい。

連続転送レートの測定ではDDR SDRAMの効果あり

 まず測定したのは、DDR SDRAMとSDRAMそれぞれの連続転送レートである。ベンチマーク・プログラムとしては、「STREAM」(バージョンは5)を使用した。STREAMは、各種コンピュータにおけるメイン・メモリのデータ転送能力を測定するために、John McCalpin氏が開発したプログラムだ。グラフィックスやディスクなど、メモリ以外のサブシステムは介さずにベンチマークを行うため、メイン・メモリだけの性能を測定できる。

 STREAMの測定方法はいくつかあるが、ここでは最も単純な「COPY」の結果を採用した。COPYとは、メイン・メモリ上に2つの領域を確保し、片方からもう片方へデータを連続してコピーする時間を測定するという方式である。プロセッサはひたすらにデータを転送することに専念し、それ以外に時間のかかる処理はほとんど発生しない。またコピーする領域のサイズは、Athlonの2次キャッシュ容量である256Kbytesを大きく超える25Mbytesなので、測定時間のほとんどはメイン・メモリへのアクセスに費やされる。従って、プロセッサにそれほど依存せず、メイン・メモリの連続転送レートが表れやすいベンチマークといえる。

STREAMベンチマークによるメイン・メモリの連続転送レートの測定結果

繰り返し回数は1000回とした。確かにDDR SDRAMでは転送レートが向上していることが分かる。

 上記結果では、確かにDDR SDRAMの高速な連続データ転送能力が発揮されている。ただし、理論的にはPC133の連続転送レートが1067Mbytes/sなのに対し、PC1600は1600Mbytes/sと50%向上しているにもかかわらず、このベンチマーク結果では9%しか向上していない。

MPEG-2エンコードでも効果あり

 次に行ったのは、動画像をMPEG-2へエンコードする速度を調べるベンチマーク・テストである。プログラムはMadOnion.com社の「Video2000」で、テスト内容は49枚の非圧縮アニメーション画像をMPEG-2フォーマットにエンコードする時間を測定するというものだ。エンコード作業はディスクから画像をメイン・メモリに読み込んでから実行し、またその結果はグラフィックスなどに出力しないため、ディスクやグラフィックスの影響は受けない。STREAMと異なるのは、プロセッサがメモリ−メモリ間のデータ転送だけではなく、MPEG-2エンコードという「重い」演算処理を実行することだ。メイン・メモリの性能だけではなく、プロセッサの処理時間も測定結果に含まれるので、このVideo2000はSTREAMに比べ、よりアプリケーション・レベルに近いベンチマークといえる。

Video2000によるMPEG-2エンコード速度

結果は1秒間に表示できるフレーム数で表している。STREAMほどではないが、やはりDDR SDRAMの性能が高いことを表す結果となった。

 Video2000によるベンチマーク・テストは、上記のようにSDRAMに対してDDR SDRAMが5%ほど高速という結果になった。STREAMに比べると、演算などプロセッサ内部での処理が多いせいか、性能向上率は半分程度に落ちてしまったが、それでもDDR SDRAMの効果は表れている。

  関連記事(PC INSIDER内)
技術解説:次世代標準メモリの最有力候補「DDR SDRAM」の実像
ニュース解説:AMDのDDR SDRAM対応プラットフォームの発表で次世代メモリの標準化が決着!?


 INDEX

  [特集]Athlonプラットフォームの可能性を広げるAMD-760チップセット
    1.AMD-760の新機能を探る
  2.DDR SDRAM+AMD-760の性能
    3.AMD-760による性能向上のヘッドルームの確保

 
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