Athlonプラットフォームの可能性を広げるAMD-760チップセット

3.AMD-760による性能向上のヘッドルームの確保

澤谷琢磨/デジタルアドバンテージ
2000/12/22

アプリケーションにより異なるDDR SDRAMの効果

 最後に、アプリケーション・レベルのベンチマークとしてSYSmark 2000を試してみた。SYSmark 2000の詳細については「特集:x86最速プロセッサ Pentium III-1.13GHzの実像に迫る」を参照していただきたい。要は、複数のクライアントPC向けアプリケーションを実際に一定の手順で実行したときの処理時間を測定する、というベンチマーク・テストである。Video2000よりさらにアプリケーション・レベルに近い、つまりユーザーの体感に近いテストになる。

   DDR SDRAM搭載PC SDRAM搭載PC 性能向上率
Office Productivity カテゴリ Corel CorelDraw 9.0 230 232 -0.9%
Corel Paradox 9.0 177 168 5.4%
Microsoft Word 2000 168 N/A N/A
Microsoft Excel 2000 232 222 4.5%
Microsoft PowerPoint 2000 230 227 1.3%
Dragon NaturallySpeaking Preferred 4.0 161

158

1.9%
Netscape Communicator 4.61 206 203 1.5%
Internet Content Creation カテゴリ Adobe Premiere 5.1 186 186 0.0%
Adobe Photoshop 5.5 155 157 -1.3%
Avid Elastic Reality 3.1 222 218 1.8%
Metacreation's Bryce 4 234 241 -2.9%
Microsoft Windows Media Encoder 4.0 170 167 1.8%

SYSmark 2000の実行結果

測定値は、SYSmark 2000で基準とされているPCを100としたときの相対値(インデックス)である。値が大きいほど高速である。「性能向上率」とは、SDRAM搭載PCに対するDDR SDRAM搭載PCの性能向上の比率であり、マイナスの値はDDR SDRAM搭載の方が遅かったことを表している。なおN/A(Not Applicable)とは、テスト中にハングアップしてしまい、測定できなかった項目である。

 上記の表は、SYSmark 2000で測定された全12種類のアプリケーションのベンチマーク結果である。これらは、いわゆるオフィス・アプリケーション7種(Office Productivityカテゴリ)とマルチメディア系アプリケーション5種(Internet Content Creationカテゴリ)に分類されており、どちらかといえば前者より後者の方が、プロセッサに負荷のかかるアプリケーションといえる。

■AMD-760の実性能が引き出せていない!?

 この結果ですぐ気付くのは、前出の2種類のベンチマークに比べ、DDR SDRAM搭載PCとSDRAM搭載PCの性能差が小さいことだ。中にはDDR SDRAMの方が遅いアプリケーションすら存在する。こうなった原因の1つは、前述のとおりDDR SDRAM搭載PCに利用したAMD-760マザーボードが基本的に試作レベルのものであり、市販に向けてチューニングされているわけではないことがあげられる。実際、AMD-760用のデバイス・ドライバも、テスト時には必ずしも安定しているとはいえなかった。AGPドライバを組み込むと、どう設定を変更してもSYSmark 2000の実行中にハングアップするため、やむを得ずAGPドライバを外してテストしたほどだ(SDRAM搭載PCも同様にAGPドライバを外してテストしている)。

■プロセッサ負荷が高いほどDDR SDRAMの効果は低い!?

 しかしながらSYSmark 2000の結果を検討すると、Internet Content Creationカテゴリの性能向上率が全般的に低い、という傾向に気付く。このカテゴリはOffice Productivityカテゴリに比べ、各種演算などでプロセッサにかかる負荷が高い傾向がある。一概にはいえないが、プロセッサの演算処理が増えるとプロセッサ内部の処理が長くなり、メイン・メモリへのアクセス頻度が減ることが考えられる。その分、DDR SDRAMによる高速化の効果が表れない、と推測される。

 この推測が正しいなら、やはりもっと高性能なプロセッサでないとDDR SDRAMの性能は生かせないということになる。

■PC1600はPC133よりクロック周波数が低い

 DDR SDRAMとSDRAMの性能差が縮まったのは、PC133がクロック周波数133MHzであるのに対し、PC1600は100MHzと低いことが原因の1つとしてあげられる。連続転送レートでは確かにPC1600の方が優れている。しかし、プロセッサがメモリに対してアクセスを要求してから、実際にデータが読み出せるようになるまでの時間(レイテンシ)は、PC133の方が短いのだ。

 以下、プロセッサからメイン・メモリへのアクセスのうち、大半を占める読み出し時のレイテンシを計算してみよう。一般的にSDRAMの場合、スペックにあるCL(CAS Latency)の値に2クロック足した値が全レイテンシになる。一方、DDR SDRAMの場合は、実質的にCL+2.5クロック*1である。今回テストしたPC133とPC1600の場合、ともにCLは2であり、クロック周期はPC133が7.5nsでPC1600が10nsだから、全レイテンシを時間で表すと、

  • PC133: (2+2)×7.5ns=30ns
  • PC1600: (2+2.5)×10ns=45ns

となる(1nsは1/1,000,000,000秒)。つまり全レイテンシで比べると、PC133の方が50%も高速なのだ。

*1 DDR SDRAMの場合、DDR SDRAMから送出されたデータをチップセット(メモリ・コントローラ)が取り込むタイミングは、SDRAMより0.5クロックほど遅い。そのため、レイテンシも、SDRAMより0.5クロック長いものとして計算している。

 つまり、プロセッサからメイン・メモリへのアクセスにおいて、データ読み出しが連続的かつ頻繁なら、連続転送レートの高いPC1600の方が有利だが、逆に読み出しの頻度が低く散発的だと、レイテンシの短いPC133の方が有利ということになる。そこでSYSmark 2000の結果を振り返ると、PC1600とPC133の性能差が縮まっているだけではなく、アプリケーション間で性能向上率のバラツキが大きいことに気付く。これは、各アプリケーションを実行している間、プロセッサがメイン・メモリをアクセスする頻度や連続性といった特性が、アプリケーションごとに異なるためと考えられる。

より高性能な新型Athlonを迎える準備

 以上のベンチマークの結果を見る限り、現行のAthlonとAMD-760/DDR SDRAMを組み合わせても、アプリケーション・レベルでは性能の向上はほとんど得られないことが分かった。266MHz FSB(フロントサイド・バス)に対応したAthlonを用いたならば、また違った結果となっただろうが、いずれにしても劇的な性能向上が得られるわけではない。

 しかし、これはあくまで現時点での話だ。AMDは、2001年第1四半期にAthlonの次バージョン(開発コード名:Palomino)の導入を予定している。Palominoコアの備える新機能についてはいまだ不明だが、より高いクロックを狙えるような改良が施されるのは確かだろう。高クロック化したAthlonが性能を発揮するには、それに見合うメモリ・サブシステムが必要になる。その答えがDDR SDRAMである。Palominoになっても、Athlonの性能を失速させることのないように、今からDDR SDRAMに対応したプラットフォームを普及させることこそが、AMD-760チップセットの役割なのだ。

 Unbuffered DIMMのメモリ・ソケットを2本と少なめに設定するなど、AMD-760が保守的な設計を採用しているのは、Athlonプラットフォームの市場拡大を目指すAMDの戦略上、AMD-760の成功が絶対必要な条件だからだ。

マルチプロセッサ対応のAMD-760MPも登場予定

 AMD製チップセットはこれまでと同様に、Athlonの仕様変更時や、サードパーティによる供給の望めない市場向けに投入されることになるだろう。すでに、AMD-760をベースにして、Athlonのマルチプロセッサ構成をサポートした、AMD-760MPチップセットのリリースが予定されている。AMD-760MPは、Athlonをハイエンド・ワークステーションやPCサーバ市場に投入するために欠かせない製品だ。

AMD-760は次世代メイン・メモリ採用プラットフォームの動向を大きく左右する

 AMD-760と同等の機能を持つサードパーティ製チップセットもまた、出荷が開始されている(詳細は「技術解説:次世代標準メモリの最有力候補「DDR SDRAM」の実像」を参照)。これらが潤沢に供給され、かつゲートウェイやコンパックなどのPCベンダに採用されるようになれば、以前のAMD-750と同様に、AMD-760は徐々に市場からフェード・アウトしていくだろう。逆にサードパーティ製チップセットにトラブルが発生すれば、AMD-760をその代替にあて、Athlonプラットフォームの市場価値を守ることになるはずだ。

 過去の例からみても、新規開発のマイクロデバイスは、実環境に降りたとたんに重大な欠陥が発見されることがある。今回のAMD-760が、大過なくその任を果たせるかどうかは蓋を開けてみなければ分からない。DDR SDRAMが次世代の標準メモリになるのは間違いなさそうだが、DDR SDRAM採用プラットフォームのリファレンスとなるAMD-760の完成度によっては、その普及時期は大きく変わってくるだろう。Athlon採用システムの導入を検討している人はもちろん、次世代ハイエンドIAサーバの動向に関心を持つITプロフェッショナルにとっても、AMD-760は、DDR SDRAMの動向と併せ、注目すべきチップセットとなるだろう。記事の終わり

  関連記事(PC INSIDER内)
x86最速プロセッサ Pentium III-1.13GHzの実像に迫る
ニュース解説:AMDのDDR SDRAM対応プラットフォームの発表で次世代メモリの標準化が決着!?
技術解説:次世代標準メモリの最有力候補「DDR SDRAM」の実像

 

 INDEX

  [特集]Athlonプラットフォームの可能性を広げるAMD-760チップセット
    1.AMD-760の新機能を探る
    2.DDR SDRAM+AMD-760の性能
  3.AMD-760による性能向上のヘッドルームの確保

 
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