ノートPCのディスク環境まるごとアップグレード

2.セットアップ前に確認すべきこと

澤谷琢磨
2001/07/14

 アップグレード用の機材をそろえたりする前に、自分のノートPCで大容量ハードディスクへの換装が本当に実現できるのか、その可能性を検討しておこう。

ハードディスクを取り外せることを見極める

 何はともあれ、ハードディスクが取り外せるかどうか確認しなければ作業は始まらない。まずはノートPCに付属のマニュアルを確認して、ハードディスクの取り外しに関する記述を探そう。A4サイズ以上のオールインワン・タイプなど、比較的大きなノートPCでは、取り外し可能な製品をよく見かける。しかしノートPC全体からすれば、ハードディスクの交換は動作保証の範囲外とされる傾向が強く、取り外し方までは記載されていない製品の方が多いようだ。

 それでも、メモリやバッテリの交換/増設方法は、必ずマニュアルに記載されている。たとえ、ハードディスクの交換が動作保証の範囲外でも、どこまでユーザー・レベルでノートPCを分解可能か見極めるのには、マニュアルの情報も十分役に立つ。ノートPCの製造ベンダのサポートWebサイトを見ると、参考になる情報があるかもしれない。さらに、ノートPCの名称などでWebサイトを検索すると、同じノートPCのユーザーによる分解に関する情報が見つかるかもしれない。

 ただ、最終的には実際にノートPCを分解して確認するしかない。ネジを1〜2本外す程度の作業で、思いのほか簡単にハードディスクを取り外せる製品も少なくない。逆に、ハードディスクが基板やフレームなどに幾重にも囲まれている場合、分解は困難なので、自力交換をあきらめた方が賢明だろう。ノートPC内部のパーツは専用設計品が多いため、万一作業中にパーツを傷つけると、もはや自力では修復できなくなる可能性が大きいからだ。例えば、キーボードなどを接続するフィルム配線を傷つけたりすると、個人での修復はもはや不可能だ。

[注意]

以下のようにマニュアルに記されている範囲を超えてノートPCを分解すると、ベンダの無償保証が受けられなくなるほか、修理すら受け付けられなくなることがあります。ノートPCの分解作業はご自身の責任において実行してください。何らかの障害が発生しても、筆者および本PC Insider編集部では責任を負いかねます。ご了承ください。

 
ハードディスクを取り外しやすいノートPC(その1) ハードディスクを取り外しやすいノートPC(その2) ハードディスクの取り外しが困難なノートPC
これは日本IBMのB5ファイル・サイズ・ノートPC「ThinkPad i Series 1620」を裏返したところ。ネジを1本取り外すだけで、このように簡単にハードディスクを引き出せる。底面カバーを取り外す必要もない。 これは松下電器産業の薄型A4サイズ・ノートPC「CF-L1EA」を裏返したところ。底面のカバーを取り外すと、金属製の薄いカバーで覆われたハードディスクが現れる(真ん中の銀色に光っている部分)。あとはネジ1本で外れるので、これも比較的取り外しやすい部類に入る。 これは松下電器産業のB5サイズ・ノートPC「CF-M2」のキーボード部分を開けてみたところ。裏側からは簡単に取り外せるようにはなっていない。そこで、リムーバブルCD-ROMドライブを外して現れたネジを数本外し、キーボード上部のカバーも取り外してみたが、ハードディスクの影も形もまだ見えてこない。取り外しは非常に難しいことがうかがえる。
 

アップグレード・サービスを利用する
 
上記のCF-M2のように、自分でハードディスクを交換するのが難しい場合は、有償のアップグレード・サービスを利用するのも手だ。PCベンダが提供するアップグレード・サービスとしては、東芝の提供する、「東芝PCグレードアップサービス」がある。ハードディスク関連では、2001年6月現在、20Gbytesへのアップグレード・サービスが提供されている。また、ノートPC用ハードディスクを販売している周辺機器ベンダやPCショップでも、こうしたサービスを提供しているところがある。交換作業に自信がない場合は、こうしたサービスを利用することも検討してみよう。

新しいハードディスクの全容量を認識できるか?

 ハードディスク本体は交換できても、増えた分の記録領域を利用できなければ意味はない。しかし、ノートPCに搭載されたBIOS(ディスクBIOS)が古かったり、あるいはバグが残っていたりすると、大容量ハードディスクの全領域を認識できず、その一部しか利用できないことがある。中でも、8.4Gbytes以上のハードディスクを認識できないという障害がよく報告されている。この詳細は「PC TIPS:容量8.4Gbytes以上のIDEハードディスクを搭載しても、すべての容量が認識できない障害を直すには?」を参照していただきたい。

 ノートPCのやっかいなところは、デスクトップPCのようにIDEインターフェイスごとBIOSを代替してこのトラブルを解決するという、簡単かつ確実な方法が使えないことだ。そのため解決策は次の2つに限られる。1つは、8.4Gbytes以上のハードディスクを正しく認識できるように改善されたBIOSにアップデートすることだ。もちろん、これにはノートPCベンダがBIOSのアップデートを提供していることが前提である。これは、PCベンダのWebサイトにあるサポート情報で確認できるはずだ。

 もう1つの解決策は、BIOSレベルでは制限があっても、OSレベルではハードディスクの全容量を認識させるような、いわゆる「ドライブ・オーバーレイ・ソフトウェア」を利用することだ。代表的なのは、Ontrack Data International社のDisk Managerシリーズである(Disk Managerの製品情報ページ)。またハードディスク・ベンダによっては、自社製ハードディスク向けにこうしたユーティリティを無償提供しているところもある(IBMのハードディスク関連ユーティリティのダウンロード・ページ)。ただしドライブ・オーバーレイ・ソフトウェアを利用すると、ハードディスク・コピー用ユーティリティが対応していなかったり、あるいは特殊なオプションを指定する必要があったりして、面倒なことが多い。なるべくBIOSアップデートで解決するのが理想だ。

 8.4Gbytesの容量制限がBIOSに存在するかどうかを確認するには、BIOSの仕様を調べるソフトウェアが最も手軽で便利だ。調査結果を日本語で表示するソフトウェアとしては、アイ・オー・データ機器のWebページからダウンロードできる、DRVINF.EXEがある(アイ・オー・データ機器のDRVINF.EXEのダウンロード・ページ)。ノートPCベンダのWebサイトにあるサポート情報で、BIOS制限の有無を確認して分からなかった場合は、こうしたユーティリティを使ってみるとよいだろう。

  関連記事(PC Insider内) 
容量8.4Gbytes以上のIDEハードディスクを搭載しても、すべての容量が認識できない障害を直すには?
ディスク環境まるごとアップグレード

  関連リンク 
PCグレードアップサービスに関するページ
Disk Managerの製品情報ページ
ハードディスク関連ユーティリティのダウンロード・ページ
DRVINF.EXEのダウンロード・ページ
 

 INDEX
  [特集]ノートPCのディスク環境まるごとアップグレード
    1.アップグレード方法を決める
  2.セットアップ前に確認すべきこと
    3.コピーに必要な機材をそろえる
    4.ハードディスクのセットアップ
    5.ハードディスク間コピーの準備と実行
           コラム:PCカードを認識できるDOS起動フロッピーの作り方
 
「PC Insiderの特集」


System Insider フォーラム 新着記事
  • Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
     Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう
  • 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
     最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は?
  • IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
     スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか?
  • スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
     スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

System Insider 記事ランキング

本日 月間