特集
x86最速プロセッサ Pentium III-1.13GHzの実像に迫る
 
デジタルアドバンテージ 島田広道
2000/08/10

 2000年8月1日、インテルはPentium III-1.13GHzの限定量産出荷を開始した。なぜこの時期にPentium III-1.13GHzを発表したのか、またなぜ「限定量産出荷」なのか、という点についてはニュース解説「Pentium III-1.13GHz登場の背景」を参照していただくとして、確かなことはPentium III-1.13GHzが現時点(2000年8月上旬)で最も高速なx86プロセッサである、ということだ。問題は、Pentium III-1.13GHzが注目に値するほど高い性能を発揮するかどうか、という点にある。

使用したテスト用PC

  今回、発表されたばかりのPentium III-1.13GHz搭載PCを試用する機会を得たので、その性能をさまざまな角度から調べてみた。比較対象としたのはPentium III-866MHz搭載PCである。現時点で多くのPCベンダがPentium III-866MHz搭載PCをミドルレンジからハイエンドとしてラインアップしており、比較的コストパフォーマンスも高い。そのPentium III-866MHzと比較することで、1.13GHzが価格に見合う性能を持っているのかどうかを見極めたい。

 なお参考までに、発表時のOEM向けプロセッサ単体価格は866MHzの8万5010円に対して、1.13GHzは10万7700円である。また現時点(2000年8月上旬)での866MHzのOEM向け価格は、5万円前後にまで下がってきているようだ。

 Pentium III-1.13GHzには、果たして投資すべき価値が現時点であるのか否か、866MHzと比べながら確認していこう。

ベンチマーク テストに使用したPCについて

 以下の表は、ベンチマーク テストに使用したPCの仕様である。

項目 仕様・製品名ほか
プロセッサ Pentium III-1.13GHz/Pentium III-866MHz
マザーボード Intel製Direct RDRAM対応マザーボード(VC820
メイン メモリ 128Mbytes Direct RDRAM RIMM×1枚
グラフィックス アクセラレータ: NVIDIA製GeForce2 GTS
メモリ: 32Mbytes DDR SDRAM
クリエイティブ メディア3D Blaster GeForce2 GTS
ハードディスク Ultra ATA/66対応の20Gbytes IDEハードディスク
Western DigitalWD205BA
ハードディスク インターフェイス Ultra ATA/66対応のオンボードIDEインターフェイス
(Intel 82801AA)
ネットワーク 10BASE-T/100BASE-TXイーサネット カード
インテルPRO/100+マネージメント・アダプタ
テスト用PCの主なハードウェア仕様

 このPCでPentium III-1.13GHzとPentium III-866MHzを入れ替えながら、ベンチマーク テストを実行している。つまりプロセッサ以外の仕様は変更していない。本来、ミドルレンジに属するPentium III-866MHz搭載PCでは、テスト用PCのIntel 820チップセット+Direct RDRAMメインメモリではなく、Intel 815Eチップセット+PC100 SDRAMメインメモリというプラットフォームが採用されることが多い。しかし、Intelから公表されているベンチマーク結果によれば、両方のプラットフォームはほぼ同じ性能を発揮するので、今回のベンチマーク結果は、Intel 815E採用のPentium III-866MHz搭載PCにも通用するはずだ。

■大がかりなプロセッサの冷却システム

 テスト用PCのハードウェア仕様を見る限り、Pentium III-1.13GHzを除けば、特殊な部品はほとんど使われていない。Direct RDRAMとその対応マザーボードを採用したPCは、あまり見かけないものの、購入できないわけではない。それより本機で注目されるのは、左下の写真のように、非常に大型の空冷ファンでプロセッサを冷却している点だ。

Pentium III-1.13GHzの冷却システム

左の写真は、テスト用PCのケース内部をプロセッサの上側から撮影したもの。12cm角で4.8Wという大型空冷ファンが、プロセッサの上に覆い被さり、外気を吸い込んでプロセッサのヒートシンクに当てる働きをする。また右の写真は、テスト用PCのPentium III-1.13GHzに装着されていたヒートシンクだ。インテルがパッケージで市販しているPentium III付属のヒートシンクに比べ、フィンの数が非常に多く、冷却効率も高そうである。

 一般的に、プロセッサのクロック周波数を高めるほど発熱量は増えるので、より強力に放熱もしなければならない。さもないと、熱によりプロセッサの温度が限界を超えて高くなり、回路が正しく動かなくなってしまう。これだけ強力な空冷ファンがついているということは、それだけPentium III-1.13GHzの発熱量が大きいか、または動作可能な温度の上限が従来より低いか、あるいはその両方ということだ。実際、Slot 1対応のPentium IIIの最新データシートによれば、上限の温度は、866MHzでは80℃なのに、1.13GHzでは62℃と20℃近く下がっている。またPCの熱設計上の熱量(*1)は、866MHzの22.9Wに対して1.13GHzは実に1.55倍の35.5Wに達する。これは推測だが、大がかりな冷却システムが必要なのは、実際の発熱量が大幅に増大したせいではなく、1.13GHzで安定動作させるには従来より温度の上昇をかなり抑えなければならない(*2)せいではないだろうか?

*1 上限の温度を超えないように、空冷ファンなどの冷却システムがプロセッサから放熱しなければならない熱量を表す。プロセッサが実際に消費する最大電力とは異なる。
 
*2 Pentium IIIのようなCMOSプロセスの半導体では、温度が上がるほど電気信号が回路を伝わる速度が遅くなり、安定動作するクロック周波数の上限も下がってしまう。クロック周波数と温度の関係については、「頭脳放談:第2回 1GHz! 世界を支配するクロックなるモノ」を参照していただきたい。

■大がかりな冷却システムが不要になるのはいつ?

 大仰な冷却システムをいつまでも必要としていたのでは、たとえコストが下がってもPentium III-1.13GHzの普及を妨げてしまう。たとえば、現時点ではブックシェルフ型など小型ケースのPCにPentium III-1.13GHzを搭載するのはかなり難しいだろう。しかも、通常の冷却システムで事足りるようになるまでには、しばらく時間がかかる可能性がある。

 実は、Pentium III-1.13GHzの登場とほぼ同時に、Pentium III全シリーズのプロセッサ コアは新しくなっている。この新しいコアの特徴は、ダイ サイズが小さくなったことと、動作可能な温度の上限が向上していることだ。この新コアによって最も恩恵を受けたプロセッサが、Pentium III-1GHz(FSBが133MHzであるPentium III-1B GHzも含む)といえるだろう。新しいコアのPentium III-1GHzでは、プロセッサの表面積とそう変わらないサイズのファン1個で空冷できる。しかし、Pentium III-1GHzが初めて登場したときに使われていたコアでは、今回の1.13GHzと同様に大型空冷ファンを必要としていたのだ。また、ダイ サイズが小さくなったことで歩留まりも向上したようで、市場には比較的潤沢にPentium III-1GHzが流通しているようだ。実際、Pentium III-1GHz搭載PCも多くのベンダから販売されるようになってきている。

 もし、Pentium III-1.13GHzも同じ道を歩むなら、次回のコアの改良まで、冷却システムの問題は解決されないかもしれない。過去の例から想像すると、製造プロセス ルールを変更することでこの問題を解決する可能性が高い。Pentium 4への移行に合わせて、実験的にPentium IIIの製造プロセスを現在の0.18μmから0.13μmへと下げることで、消費電力/発熱を抑えるわけだ。同時に、さらなるダイ サイズの縮小が実現し、価格が下がることでPentium III-1GHz以上がミドルレンジのPCでも採用しやすくなる。これにより、Pentium IIIからPentium 4 への移行をハイエンドPCからスムーズに行おうという目論見である。

 次のページでは、Pentium III-1.13GHzの性能を各種ベンチマーク テストで確かめてみる。

関連記事(PC Insider内)
Pentium III-1.13GHz登場の背景
頭脳放談:第2回 1GHz! 世界を支配するクロックなるモノ
Pentium 4の登場はデスクトップPCに何をもたらすのか?
関連リンク
Pentium III-1.13GHzの限定出荷開始に関するリリース
Pentium III-866MHzの出荷開始に関するリリース
Slot 1対応のPentium IIIの最新データシート


 

 INDEX
[特集]x86最速プロセッサ Pentium III-1.13GHzの実像に迫る
    1.クライアントPC向けアプリケーションでの性能差
    2.OpenGLアプリケーションでの性能差
    3.データベース サーバでの性能差

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