SOHO専用サーバのお手軽度

1.ET-NAS20GのハードウェアはPC相当

デジタルアドバンテージ
2000/12/05

 PCサーバに比べると「専用機」であるアプライアンス・サーバは、ハードウェア構成も専用(すなわち特殊)であるかのような印象を受けるが、実際のところはどうなのだろうか? ここでは、ET-NAS20Gを例に、そのハードウェア構成を調べてみる。

ET-NAS20Gの外観

 ET-NAS20GはPCサーバと比べると、そのコンパクトさもさることながら、外観のシンプルさも目立つ。

フロント・パネルはステータスLEDのみ

ET-NAS20Gのフロント・パネルには、各種ステータスを表示するLEDしか配置されていない。フロッピードライブやCD-ROMドライブがない分、PCサーバに比べて随分とシンプルである。
  Ready:起動時やシャットダウン中に点滅する。
  Error:ハードウェアの故障などが検出されると点灯する。
  LAN:イーサネット・インターフェイスにてデータの送受信が生じている最中に点灯する。
  Disk:内蔵ハードディスクにアクセスしている最中に点灯する。
  Disk full:ハードディスクの使用容量が全容量の98%を超えると点滅し始め、全容量を使い切ると点灯し続ける。

 アプライアンス・サーバによっては小型の液晶ディスプレイを組み込み、このディスプレイに各種ステータスをテキストで表示できるようにした製品もある。それに比べれば、ET-NAS20Gのフロント・パネルは単純だ。もっとも、ネットワーク経由でET-NAS20Gに接続できるのなら、こうしたステータスの多くはWebブラウザを介してもっと分かりやすい形式で知ることができるので、あえて液晶ディスプレイまで装備する必要はないともいえる。

バック・パネルに並ぶコネクタ群

アプライアンス・サーバであるET-NAS20Gには、キーボードやマウス、ディスプレイは不要なので、これらを接続するコネクタは装備されていない。これがPCサーバと比較した外観上の大きな違いの1つである。
  電源スイッチ:稼働中に押すと、シャットダウンと電源オフが実行される。
  電源コネクタ:電源ユニット自体はACアダプタで外付けされる。
  リセット・ボタン:これを押すと管理者用パスワードや自身のIPアドレスが初期化される。
  イーサネット用コネクタ:10BASE-T100BASE-TX全二重半二重を自動的に検出/切り替えが可能。
  ストレート/クロス切り替えボタン:のイーサネット用コネクタのストレート/クロス接続を切り替えるためのボタン。主に、初期設定時にストレート・ケーブルでPCと本機を直結するのに用いる。
  プリンタ・ポート:ネットワーク内で共有するプリンタを接続する。
  シリアル・ポート:インターネット接続に利用するモデムまたはISDN TAを接続する。

 よくできているのは電源スイッチだ。起動するときには単なる電源スイッチとして働くが、電源を切るためにこのボタンを押すと、OSのシャットダウンが始まり、完全にシャットダウンが終了した時点で自動的に電源が切れる。つまり、利用者がいないことさえ確認できれば、だれでもワンタッチで手軽にシャットダウンできるというわけだ。

ET-NAS20Gの内部:PCによく似た構成

ケースカバーを取り外した状態

  内蔵ハードディスク:20Gbytesの3.5インチ IDEハードディスク。ネジを1本外すと、金具と一緒に取り外せるようになっている。
  マザーボード:ET-NAS20Gの持つほとんどの機能は、ここに凝縮されている。→
 

ET-NAS20Gのマザーボード

これはハードディスクと一部のケーブル類を取り外したところ。
  イーサネット・コントローラ:物理層チップ(PHYチップ)を統合したイーサネット・コントローラ。PC用のチップでも知られるDavicom Semiconductor社製。
  チップセット:National Semiconductor社(旧Cyrix社)のx86互換プロセッサであるMedia GX/Geodeシリーズとセットで用いられるチップセットPCIインターフェイスなど複数の機能が統合されている。
  スーパーI/Oチップ:シリアルパラレル・ポートなどの各種インターフェイスを内蔵しているチップ。これもNational Semiconductor社製
  ブートROM:PC用BIOSベンダとして知られるPhoenix Technology社によるブート・コードが収められている。チップ表面のシールには「BIOS PRODUCT」と記されている。
  メモリ・モジュール:ノートPCでよく見かけるSO-DIMMと同じタイプのメモリ・モジュールのようだ。容量は32Mbytes。
  プロセッサ:正体は確認できなかったが、からしてNational Semiconductor社のx86互換プロセッサ(Geode)だと思われる。

 上記のようにET-NAS20Gには、PCでもよく見かけるパーツが搭載されている。特にプロセッサは、National Semiconductor社(旧Cyrix社)が開発した統合型x86互換プロセッサであるMediaGXmか、あるいはGeodeと思われる。ET-NAS20Gのシステムは、PC相当といってよいハードウェア構成だ。

 アプライアンス・サーバといっても、実際にはこのようにPCアーキテクチャを採用し、そこから不要なパーツを排除している例がよくある。なぜなら、豊富なPC用ソフトウェア(OSやアプリケーション)を流用することで、短期間かつ低コストでシステムを実現しやすいからだ。実際、調べた限りでは、ET-NAS20GはOSにLinuxが、ファイル/プリンタ共有にはSambaが、管理用WebサーバにはApacheが、それぞれ使われていた。

 以下に、ET-NAS20Gの主な仕様を記す。

メモリ容量 32Mbytes
内蔵ハードディスク 20Gbytes 3.5インチIDE
ディスク容量 17.6Gbytes(システムの分を除いたユーザー使用可能領域)
LANインターフェイス 10BASE-T/100BASE-TX対応イーサネット×1(RJ-45モジュラ・ジャック)、全二重/半二重通信に対応、自動切り替え、クロス/ストレート接続切り替えボタン付き
プリンタのインターフェイス パラレル・ポート×1(D-Sub 25ピン・メス、IEEE 1284対応)
TA/モデムのインターフェイス シリアル・ポート×1(D-Sub 9ピン・オス、最大115.2kbits/s)
フロント・パネル インジケータLED×5(ディスク・アクセス/LANアクセス/エラー/Ready/ディスク容量限界警告)
冷却ファン 1つ(背面)
シャットダウン 電源スイッチやリモートからの自動シャットダウン
ネットワーク・サービス(プロトコル PCのファイル/プリンタ共有:SMB(NetBIOS over TCP/IP
Macintoshのファイル/プリンタ共有:AppleShare(AppleTalk、TCP/IP)
インターネット接続共有:TCP/IP
配置方法 横置き/縦置きの両方に対応(専用スタンド付属)
警告機能 ブザー、インジケータLED、電子メール
初期化機能 リセット・ボタンでIPアドレスと管理者パスワードの初期化が可能
外形寸法 210(W)×271(D)×66(H)mm
重量 2.1kg
電源 外付けACアダプタ(最大24W)
ET-NAS20Gの主な仕様

各種設定はWebブラウザ経由で行う

 ハードウェアはPC相当とはいえ、ET-NAS20Gは、PCが標準的に備えているコンソール(ディスプレイやキーボード/マウス)のためのインターフェイスを持たない。ET-NAS20Gのファイル/プリンタ共有やインターネット接続機能などに関する各種設定は、ET-NAS20Gと同じネットワークに接続されたクライアントPCから、Webブラウザを通じて行う(下の画面)。アプライアンス・サーバといえば、以前はtelnetやftpで接続してCUIによる難解な設定を強いられたが、最近ではこのようにWebブラウザで設定するのが一般的である。

ET-NAS20Gの設定画面例

この設定画面のためにET-NAS20GはWebサーバ機能を持っている。クライアントPCからWebブラウザでET-NAS20GのIPアドレスにアクセスすると、このような画面が表示される。

関連リンク
統合型x86互換プロセッサGeodeファミリの製品情報
ET-NAS20Gの製品情報
 

 INDEX

  [特集]SOHO専用サーバのお手軽度
   1.ET-NAS20GのハードウェアはPC相当
     2.ファイル共有機能
     3.プリンタ共有機能とインターネット接続共有機能
     4.多機能より管理の容易さを優先
 
「PC Insiderの特集」


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