第1回 @IT RFIDゼミナール
「ハンズオンで学ぶ、RFID導入ノウハウ」レポート


電波を捕らえた! RFIDがより身近になった日


宮田 健
@IT編集部
2006年12月28日


 体感こそ正しい理解の第1歩

 RFID導入プロセスにおいては、利用シーンに合わせたハードウェアの選定を行う必要がある。そこで必要となる知識を短時間で“体感”できる試みが本セミナーでは用意されていた。異なる周波数帯を1つのフロアで体験できるハンズオンツアーである。

 会場に用意されたのは通信距離が長いUHF帯、1m以上の通信が可能な2.45GHz、通信距離は短いながらも安定した処理が可能な13.56MHz、そして物流などの位置管理で利用されるアクティブタグ(315MHz)の4種類。ツアーでは8人程度のチームに分かれ、4つのエリアを順番に回った。

4つのエリアを順に回る

  通信距離 用途 規格



UHF
(952-954MHz)
3m
以上
工程管理
SCM
商品管理
資産管理
家畜管理
・ISO 18000-6 TypeB
・EPCglobal Class1 Generation2(Gen2)
2.45GHz 1m
以上
・ISO 18000-4
・独自規格
13.56MHz 60cm ・ISO 15693




アクティブ
(315MHz)
20m
前後
主に人や物流機器の位置管理として利用 ・独自規格
表1 今回のハンズオンで用意された周波数分類

 ほとんどの参加者がまず興味を持ったことは通信距離とエリアであった。この点ではUHF帯のタグが優れており、2メートルを超える距離でも読み取りが行えていた。アンテナから電波はラグビーボール状に発信される。このエリアを確認しようと、通信エリアの横からタグを動かし、反応をみる参加者も多かった。

 しかし、RFIDの読み取りは単純に距離だけで決まるものではない。各参加者に配られたネームタグにはあらかじめRFIDタグが組み込まれていたが、これを読み取らせるのに苦労していた姿が多く見受けられた。アンテナの前に立ってもなかなかネームタグを読み取ってくれないのだ。これは人間の体のほとんどが水分であり、水や金属にタグを付けると電波が吸収されてしまうためであることが説明されると、参加者は体からネームタグを離すことで読み取りが行えることを確認していた。講演でも水分に弱いことに触れられていたが、実際に体験することで理解が深まったのではないだろうか。

(左)グループに分かれてのハンズオン。UHF帯では通信距離の長さをアピール
(右)タグ部分にしめらせたティッシュをはり付け、通信距離の変化を確認

 また、反応速度に関しての質問も多かった。今回のデモ用ソフトウェアでは100ミリ秒ごとに通信を行うよう制御されていたが、実際は環境やシステムの必要条件に合わせソフトウェアの最適化で調整を行うべきであると説明がされていた。

 活用シーンを想定したハンズオン

 では、実際にどのようにRFIDを実運用に利用すればいいのか。この点では普及し始めている2.45GHzと13.56MHzのコーナーにて、実際の活用シーンに合わせたデモが行われていた。

 2.45GHzのコーナーでは、持ち運べるハンディアンテナを利用し、書庫にある複数枚のCDケースのタグを同時に読み取るシステムのデモが行われていた。重要な情報を格納したCDメディアの棚卸処理をイメージしている。

 近接通信を得意とする13.56MHzのコーナーでは、複数枚のICタグに情報を書き込むデモが行われていた。約10Kbytesのファイルを2Kbytes弱に分割し、5枚のカードへ保存するデモでは約10秒の時間がかかっており、大容量のデータをICタグ自体に記録するには向かないことが分かった。高速なレスポンスタイムが要求される場合は、タグに格納されたIDのみを読み取り、業務システムのデータベースに格納された情報を連動させるような方式が向いていることが分かる。

(左)2.45GHzの活用事例としてデモされていたCD棚の棚卸管理
(右)13.56MHzのタグをアンテナに近づけ、通信距離を確認する様子

 タグ自身が電波を発信するアクティブタグのコーナーでは、アクティブタグを首から提げた説明員がフロアを歩き、2台のアンテナが受け取る信号の量を基に人の位置検出を行っていた。アクティブタグも同様に人体の水分量による影響を受けるため、正面を向いた場合と背中を向けた場合ではアンテナが受け取る信号の量が変化する。そのため、ついたての裏側にいる説明員がどちらを向いているのかを判断することもできた。

(左)用意されたアクティブタグ。首からかけて人の位置情報を確認するイメージ
(右)10mほど離れた位置に立つ説明員にアクティブタグを持たせ、電波強度を確認。写真右側に見えるのがアンテナ
 

 RFID人材育成のために

 西村氏は講演の締めくくりで、RFIDを浸透させていくためには、RFIDに携わる人の育成が重要なポイントであると語った。育成は聞くだけではなく、実体験を伴うことでより効果が出る。

 今回用意されたハンズオンを通じ、参加者のRFIDに対する理解はさらに深まったのではないだろうか。見えない電波が相手であるだけに、実体験の重要さが体感できた1日であった。

2/2


Index
電波を捕らえた! RFIDがより身近になった日
  Page1
人気連載の筆者が教えるRFID導入の基本
早い段階から最適化を心掛けることが成功につながる
高い参加者の意識
Page2
体感こそ正しい理解の第1歩
活用シーンを想定したハンズオン
RFID人材育成のために

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