RFID宣言

RFIDの夜明けに立ち会いたい


岡田 大助
@IT編集部
2006年4月4日

 RFIDにおける4つのレイヤ

 実証実験に光が当てられることが多いが、コストに見合うだけのメリットを得られる分野ではRFIDの利用が始まっていることはすでに述べた。あらためてRFIDの普及の過程をざっくりと4つのレイヤ(層)に分けてみよう。もちろん適用分野によっては、レイヤをまたがったり、枠に収まらなかったりするものも出てくる。RFID普及のイメージとしてとらえていただきたい。

RFID普及への4つのレイヤ

 すでに実用化されている分野の代表としては、重要文書やカルテ、CD-ROMなどの記憶メディアの所在管理だ。例えば、書類にRFIDタグを貼り付けることによって外部への不正な持ち出しを防止したり、必要な書類がどこにあるのか検索したり、あるいは効率的な棚卸し作業ができたりする。もちろん、RFIDタグを貼り付ける対象は紙や記憶メディアに限定されない。特定のプレーヤーによる限定された範囲でのRFIDの利用であり、仮にこれを「シングルプレーヤーによるスタンドアロンシステム」と呼ぼう。

 身近な例を挙げるならば、回転寿司が分かりやすいだろう。皿の中にICチップを埋め込み、食後の会計の際には客が積み上げた皿の山にハンディ型のRFIDリーダをかざす。きちょうめんな客ならば皿の色ごとに重ね直してくれるかもしれないが、そうでない客もいるだろう。RFIDならば個別の皿のIDを一括で読み取るため、正確かつ手早く計算が可能になる。会計情報が入った5センチ四方のプレートを客に渡し、それをレジに連動したRFIDリーダで読み取れば会計時間も短縮できる。これは、実際に筆者の自宅のそばの回転寿司でお目にかかったシステムだ。

 このほか、日産自動車の中古車販売店舗「カレスト座間」では2004年12月から、中古車の値札にRFIDタグを付け、客にRFIDリーダとしても使えるPDAを貸し出して車両検索サービスを展開している。無線LANを使って事務所内の車両情報サーバとネットワークを構築しているが、広い中古車販売店の敷地内システムという意味ではスタンドアロンシステムに入れても構わないだろう。

日産自動車「カレスト座間」の中古車コーナーにおけるPDAとRFIDを利用した業界初の車両検索サービスを構築
http://h50146.www5.hp.com/info/newsroom/pr/fy2005/fy05-018.html

 次のレイヤが、現在、サービス開始と実証実験の間に位置する「シングルプレーヤーによるクローズドネットワーク」と「マルチプレーヤーによるクローズドネットワーク」である(これも筆者が便宜上付けた呼び方にすぎないが)。

 前者のイメージは、特定のベンダによる自社内の物流トレーサビリティである。例えば、2004年12月に「モスバーガー」を展開するモスフードサービスが行ったハンバーガー用パティの流通トレーサビリティ実験では、海外から輸入された牛肉をパティに加工する工場で納品ケースにRFIDタグを付けた。倉庫への入出荷や店舗への配送、納品のデータがRFIDによって本部サーバで一元管理される。

ICタグを使用した食品トレーサビリティシステムの実験開始(PDF)
http://www.mos.co.jp/company/pr_pdf/pr_041130.pdf

 一方で、上記のようなRFIDシステムのプレーヤーが特定複数に拡大した形が「マルチプレーヤーによるクローズドネットワーク」である。生産者、卸・配送、小売ベンダが複数集まってRFIDによる商品の流通管理などが代表的な事例で、現在、実証実験が盛んに実施されている分野である。

 米国では、小売最大手のWalmartが2005年1月に自社の配送センター3カ所と100以上の店舗、および100社程度(実際に間に合ったのは40社程度といわれている)の取引先とRFIDを使った流通システムを構築している。サプライチェーンの可視化や在庫の適正管理、盗難や偽造品混入の防止などの効果を期待しており、2007年1月には配送センター5カ所、1000店舗、取引先600社へ拡大したいとしている。日本でも2006年5月ごろにヨドバシカメラが同様のRFIDシステムをスタートさせるといわれている。

 このようなRFIDシステムの先にあるのが、業界ごとで共通のコード体系を持ったプラットフォーム「マルチプレーヤーによるオープンネットワーク」の実現だ。特定の企業によるクローズドなシステムではコスト面に課題が残る。将来的には、特定の作法(いわゆる標準化されたもの)に基づいて最低限の自社RFIDシステムを構築し、RFIDプラットフォームに接続することでデータのやりとりができる仕組みが待望される。この場合、すべてを自社で構築するのに比べて10分の1程度のコストで足りるという試算もあるほどだ。

無線ICタグ基盤をASPで提供、ベリサインと三井物産が協業(@IT News Insight)
http://www.atmarkit.co.jp/news/200603/14/rfid.html

 RFIDの適用分野は多い

 EPCGlobalの前身であるAutoIDセンターがサプライチェーンの効率化にRFIDを活用しようとしていたこともあり、とかくRFIDは流通分野と結び付けて考えられがちである。もちろん、流通分野も主要な適用分野の1つであるのは間違いないのだが、RFIDの可能性はそれだけではない。すでにサービス化されている物品管理や、これを人に置き換えたプレゼンス情報管理もある。また、図書館のレンタル状況管理や、白衣や作業着などのリース業でも実際に使われている。

 日本が得意とする製造業においては部品管理や工程管理などにも利用されるだろう。また、小売業における販売の効率化や顧客サービスの向上なども期待できる。消費者にとっても、野菜や牛肉の生産地情報が分かることは付加価値サービスとして受け入れられることだろう。

 さらに、セキュリティ分野での需要も高い。小学生にRFIDを利用した防犯タグを配布し、登下校の状況を保護者が把握できれば、犯罪に巻き込まれる可能性を低減できるかもしれない。

 ちなみにEPCGlobalのビジネスアクショングループ(BAG)では、日用消費財関連の流通をターゲットとするFMCG、医薬品・ヘルスケア用品における偽造品流通防止などをターゲットとするHLS、海上輸送なども視野に入れた国際物流をターゲットとするTLSの3グループが活動している。これらに続いて、自動車産業、航空産業、アパレル/ファッション産業、防衛産業を対象とするBAGが設立の方向で動いており、食品、家電、ケミカル分野なども立ち上げが検討されている。

 RFIDが社会にインパクトを起こすほどに普及するには、まだまだ越えなければならないハードルが多い。それは、技術面であったり、プライバシーやセキュリティ面であったりと多岐にわたる。RFIDの普及促進のため、「RFID+IC」フォーラムでは関係各所の動向をリアルタイムに取り上げていきたい。

2/2
 

Index
RFIDの夜明けに立ち会いたい
  Page1
近い未来に実現するRFID社会に向けて
インターネット黎明期と酷似した状況
Page2
RFIDにおける4つのレイヤ
RFIDの適用分野は多い

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