RFID宣言

RFIDの夜明けに立ち会いたい


岡田 大助
@IT編集部
2006年4月4日
新フォーラム「RFID+IC」がスタートする。RFIDの普及に向けて、ハードウェア/ソフトウェアを開発するエンジニアやシステム導入を手掛けるコンサルに役立つ記事を、リアルタイムかつニーズに即して展開していきたい(編集部)

 近い未来に実現するRFID社会に向けて

 RFIDはRadio Frequency IDentificationの略であり、日本語に訳せば「無線を利用した固体の自動識別」となる。物品に対してICチップとアンテナを組み合わせた数ミリから数センチのRFIDタグを貼り付け、電波を用いて非接触でIDの識別や情報の書き換えを行うシステムである。

 電子マネーや交通系カードとしてすでに広く利用されているFeliCaのような非接触ICカードも技術的には同様の仕組みである(こちらはすでにサービス化が進んでおり、おさいふケータイのように、もはや「カード」という形状にとどまっていない)。大ざっぱに分けるとすれば、モノに使うのがRFID、ヒトが使うのが非接触ICカードといえるだろう。

 近年、トピックの1つとして取り上げることが多くなったRFIDだが、日本国内においてもそろそろブレイクの予感を抱かせる。例えば、総務省が2003年4月から活動を行っていた「ユビキタスネットワーク時代における電子タグの高度利活用に関する調査研究会」の最終報告(2004年3月)によれば、ブレイクポイントは2007年ごろと予測されている。なお、3年前の研究会の予測でもあり、2007年よりも前にブレイクする可能性があるだろう。

 また、同調査研究会は市場規模に対して3種類の予測を行っている。未解決な問題を抱えつつも普及に十分な環境が整ったベースケースの場合、2010年には17兆円の経済波及効果があるという。技術的な問題がほぼすべて解決されRFIDタグの単価も安くなるポジティブケースでは31兆円、一方、標準化や技術の成熟、プライバシー問題が未解決なネガティブケースでも9兆円という数字がはじかれており、RFIDが世の中に与えるインパクトは看過できない。

「ユビキタスネットワーク時代における電子タグの高度利活用に関する調査研究会」の最終報告
http://www.soumu.go.jp/s-news/2004/040330_6.html

 インターネット黎明期と酷似した状況

 メディアで取り上げられるRFID関連トピックの多くは実証実験のニュースであったり、標準化の動向であったりする。では、「RFIDはこれからの技術なのか」と問えば、実はそうでもないことが分かる。すでに一部の業種やサービスにおいてRFIDは利用されている。ただし、その規模は小さく、特定のプレーヤーによるクローズドのシステムがほとんどである。

 このようなRFIDの現状は、インターネットの普及前に似ているととらえることができる(実際にそのように語る人も多い)。VPN(Virtual Private Network)やWebアプリケーションが普及する以前、企業は独自のネットワーク、自前のクライアント/サーバシステムを利用していた。今日、共通の基盤インフラストラクチャとなったインターネットは、IETFやW3Cといった団体によって共通プラットフォームになるべく標準化されていった。

 時間の流れ方に大きな違いがあるものの、プラットフォームとしてのインターネットの成熟と普及はRFIDのそれに重ね合わせられるだろう。RFIDの規格や標準化はISO/IECをはじめ、米国を中心とするEPCGlobalや日本を中心とするユビキタスIDセンターによって進められている。

 日本におけるインターネットの爆発的な普及には、いくつかのターニングポイントがあった。例えば、Windows 95の登場であったり、NTTによるISDNの普及であったり、Yahoo! BBによるブロードバンド回線の低価格化であったりとさまざまな要因が挙げられる。

 今日、RFID普及の阻害要因として挙げられる代表的なものにコストの問題がある。裏を返せば、すでにRFIDを導入している分野は、コストに見合うメリットが得られる分野だということだ。

 RFIDがビジネス基盤となるためには、「RFIDタグが安価になる必要がある」という意見がある。実際に、経済産業省を中心とした安価な国際標準ICタグ開発プロジェクト「響プロジェクト」では、単価5円を目指している。しかし、「RFIDタグが安くなればビジネスでたくさん使われるようになるのか、あるいはビジネスでたくさん使われればRFIDタグが安くなるのか」といった“鶏と卵”問題が残されていないだろうか。

 この“鶏と卵”問題は、RFIDインフラにも見つけられる。「共通プラットフォームを作れば理想的なビジネスが動きだすのか、あるいは具体的なビジネス像が固まれば共通プラットフォームが出来上がるのか」といった具合だ。安価なICタグの安定供給のためには恒常的に利用されるRFIDインフラが不可欠であり、RFIDインフラが安定して稼動していることがICタグ供給の前提になるだろう。

 RFIDの爆発的普及のきっかけになるものは果たして何なのだろうか。それを探るのがこの「RFID+IC」フォーラムの使命の1つである。

 
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Index
RFIDの夜明けに立ち会いたい
Page1
近い未来に実現するRFID社会に向けて
インターネット黎明期と酷似した状況
  Page2
RFIDにおける4つのレイヤ
RFIDの適用分野は多い

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