TRONSHOW2008 レポート

場所にucodeを付与する「空間コード」が描く社会


岡田 大助
@IT編集部
2007年1月17日
2007年末に開催されたTRONSHOW2008において話題となった、ユビキタス空間情報基盤とは何か。場所にucodeを付与すると社会がどう変わるのだろうか(編集部)

 ユビキタスIDセンターが標準化を進めているユビキタスIDアーキテクチャの基礎となる「ucode」は、個々のモノだけでなく場所や概念にも付与できるメタコード体系だ。ユビキタス・コンピューティングを実現するためには、現実社会におけるモノや場所を識別する必要があり、それぞれに与えられたucodeと、それらをひも付ける概念を示すucodeを結びつけることで、状況(コンテキスト)を把握するのだ。

 ucodeに限らず、モノにコードを付与する方法は、すでにバーコードや2次元バーコードなどで現実社会になじみが深く、最近ではRFIDタグを使った方法も導入が進められている。一方、場所にコードを付与する方法はといえば、郵便番号やGPS(グローバル・ポジショニング・システム)データなどが挙げられる。

 これら既存のコード体系に対して、ucodeによる空間へのコード付与は何が違っているのだろうか。また、それが実現することで、何が変わるのだろうか。2007年12月12〜14日にかけて開催されたTRONSHOW2008で行われた講演を中心に、ユビキタス情報空間基盤とは何かを考える。

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 ユビキタス空間基盤は夢物語か?

 ucodeは、128ビット長を基本とするコード体系で、越塚登東京大学准教授は「地球上に10センチ間隔のメッシュネットワークを構築可能なほど十分なIDを有している」という。場所にucodeを付与することで、どのようなビジネスが実現できるのかを検討しているのが、ユビキタス空間基盤推進協議会だ。

 ユビキタス空間基盤推進協議会は、物流、IT、不動産、通信などの民間企業と地方自治体が中心となって規格の詳細を決めたり、新たな用途の検討を行ったりしている。また、総務省や国土交通省、農林水産省などもオブザーバとして参加しており、推進協議会で検討しているビジネスモデルが実現可能なのか、社会に受け入れられるのかといった検証実験も行う予定だ。

 場所にucodeを付けた「空間コード」に取り組み始めた結果、ユビキタスIDアーキテクチャの中のucodeの位置付けも少し変わったようだ。これまでucodeは、モノや場所を識別するための世界でユニーク(唯一)なIDという説明がされていたが、これからは「全世界共通の物品番号」、「全世界共通の場所番号」という分かりやすいキーワードも使っていくようだ。

 そこには、例えば「本棚」というモノに付与されたucodeを、単なるモノの識別子として使うだけでなく、その「本棚」によって示される、ある特定の場所を識別するための空間コードとしても利用するという意図がうかがえる。このように利用目的に応じてコードの色合いを変えられるのは、ucode自身が意味を持たない単なるID、メタコードとして規定されているからだろう。

 全世界共通の物品番号としてのucodeは、「全世界で、歴史上、人類が創った、すべてのモノに振ることができる製造番号系」であり、「過去から未来、数千年間使い続けることができる、超ロングライフの番号系」でもあるという。数千年というのは大げさかもしれないが、実際に超長期住宅(超長期耐用住宅)は200年という長期間の耐久性を維持するための施策が求められており、部品のメンテナンスや品質保証などにucodeが利用される可能性がある。

 一方、全世界共通の場所番号としてのucodeは、「地球上の『あらゆる場所』に、『誰でも』振ることができる番号系」で、「場所を汎用的に識別できる、世界で唯一の番号系」を目指しているという。空間コードの議論は始まったばかりで、越塚氏も「モノに対するコードは標準化しやすい。しかし、場所に対するコードの標準化は多くの議論が残されている。その分、発展の余地も多く残されていると感じている」と語る。

 物理的な「位置」と社会的な「場所」の違い

 さて、空間コードが目指しているのは、「物理的な位置」を規定するためのコードではなく、「社会的な場所」を指し示すためのコードだ。「位置」と「場所」。どのような違いがあるのだろうか。

 「位置」とは、具体例を挙げるならばGPSから得られる緯度、経度で示すことができる。越塚氏は、「社会生活において、GPSから得られた緯度、経度の情報をそのまま使って場所を指定することは少ない」という。確かに、比較的身近なGPSツールであるカーナビゲーションシステムでも、地図という場所データにマッピングすることで位置情報を活用している。

 一方、「場所」とは社会的な文脈において表現される空間を指すものであり、ユーザーや時間帯によって同じ「位置」でも「場所」の意味付けが異なっている。このような、「場所」の状況情報(コンテクスト)を機械的に把握できないと、あるモノが「社会にとってどういうものであるのか」といった解釈もできないという。

 越塚氏は、「空間コードは非常に狭い範囲の場所を指定することもできるし、非常に広い場所をぼんやり指定することもできる柔軟なコード体系を想定している。世界の先端を行く体系でほかに例がないものだと思うが、技術的に切り込んでいきたい」と抱負を語った。

 また、前述したように空間コードは「誰でも振ることができる」ことが重要だ。既存の場所コードとして代表的な郵便番号は、「町目」までしか特定できないし、郵便サービス提供者にとって使い勝手のいいコード体系だ。多くの既存コード体系は、想定の範囲を超えた利用が難しい。

 例えば、@IT編集部の所在地を郵便番号で示すと「100‐0005」だが、それでは「東京都千代田区丸の内」までしか分からない。編集部に行こうと思ったら、「3丁目にある国際ビルの8階」という情報を「住所」というコードを引かなければならないし、「エレベータホールに出て、左手に曲がり10メートルくらい進んだところ」に入り口があることは、現地に行ってみないと分からない。

 もし、「@IT編集部の岡田大助の机」を示す空間コードを筆者が発番し、誰でも利用できるようにしたら、その空間コードの利用者はダイレクトに筆者の机まで来られるし(執務室に入れるならばという前提は無視する)、間違って同じフロアにある「アイティメディアの岡田有花記者の机」に行ってしまうことも防げるかもしれない。

 
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Index
場所にucodeを付与する「空間コード」が描く社会
Page1
ユビキタス空間基盤は夢物語か?
物理的な「位置」と社会的な「場所」の違い
  Page2
すでに空間コードの利用が始まっている
ユビキタス空間基盤の経済効果は年間3000億円
神戸市でu-配送の実現可能性を検討する実験へ

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