最終回 DBをセキュアに保つために行うべき作業
星野 真理
株式会社システム・テクノロジー・アイ
2005/5/26
DBユーザーのパスワードの変更確認 |
セキュリティ保護において、パスワードを定期的に変更することは、OSユーザー、そしてDBユーザーにとっても重要なポイントです。
そのためには、パスワード変更のルールを作成し、その順守を確認することが必要です。変更ルールをシステム(プログラム)化して、パスワードを変更していないユーザーをログインできなくすれば、変更確認をするまでもありません。と、いい切りたいところですが、話はそんなに簡単ではありません。
単なるエンドユーザーとなるDBユーザーならば、パスワード変更ルールを規定するデータベース側の機能を利用して、ルールの順守を強制することも可能です。あとは、「個人の責任において適切なタイミングでパスワードを変更するように」という指示を出して終了です。
しかし、データベースには、データのオーナーとなるユーザーや管理者ユーザーなど重要なユーザーが存在します。このような重要なDBユーザーにパスワード変更システムを適用し、万が一規定した期間内にパスワードの変更がされなかったらログインできなくなるような状態は、かなり危険です。
重要なユーザーに対しては、手作業でパスワードを変更させる方法を取っていることが多いです。その場合、パスワード変更時期の策定と確認、新しいパスワードの伝達方法などを準備することが必要です。
データ管理 |
データベースのすべての表に個人データなどの機密データが含まれるわけではありません。個人情報保護法との兼ね合いもあり、どの表に機密データが含まれるかを、確実に把握しておく必要があります。
また、機密データに対して、誰が、どのようにアクセスできるかを定期的に確認し、ユーザー管理のデータとの関連が確認できるレポートを作成しておきましょう。万が一、データ漏えいが発生した場合に、このレポートがデータにアクセスできるユーザーの特定に使用できます。
データ管理に求められるのは、データの保存だけではありません。データの削除も管理の一環です。個人情報保護法は企業の意識だけではなく、顧客側の意識も変えました。個人データを保有する企業は、個人データ保有の目的とその適用範囲を顧客に対して、明らかにすることが必要です。
一方、個人情報を提供する側は、自分のデータがどこで、どんな目的で管理されているかを確認し、その企業での管理が不要と判断した場合は削除要請をすることが可能です。削除要請を受けた企業は、本人確認を十分に行ったうえで、データベース上のデータを削除する手順を踏む必要があります。
これまで意外と盲点であったのが、データ削除の手順です。いままでのシステムでは、データ管理は企業の都合で運用されており、個人情報提供者からの要求でデータを削除することはシステム用件にありませんでした。個人データを削除するには、データベース上の複数表の行を削除する必要がありますが、その削除範囲の決定も必要です。
リレーショナルデータベース上のデータは、関連をもって管理されていますので、データ削除は簡単ではありません。最低でも、以下に示す内容の検討が必要です。
- 顧客マスターの1行(1データ)を実際に削除するのか?
- その顧客のトランザクションデータも削除するのか?
- 削除するデータのバックアップを取得するのか?
このほかに、データ削除後にシステムが誤作動をしないことの確認も必要です。
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Index | |
DBをセキュアに保つための作業 | |
Page1 DBユーザー管理 |
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Page2 DBユーザーのパスワードの変更確認 データ管理 |
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Page3 データアクセスの監視 |
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Page4 バックアップ管理 セキュリティと生産性のバランス感覚 コラム:バックアップの意外な実態 |
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