第7回 LIDSのACLをチューニングする
面 和毅サイオステクノロジー株式会社
インフラストラクチャービジネスユニット
Linuxテクノロジー部
OSSテクノロジーグループ
シニアマネージャ
2006/6/2
lidsadm -I
「-I」オプションは、カーネルを封印する際に使用します。カーネルを封印すると、カーネルへのモジュールの組み込みを禁止できます。また、このオプションを用いてカーネルの封印を行うと、システムがBOOTステートからPOSTBOOTステートに移動します。
lidsadm -S -- +/-"状態フラグ"
「-S」オプションを使って、状態フラグの値を有効(1)/無効(0)にできます。フラグは「+」を指定すると1に、「-」を指定すると0になります。LIDSの状態フラグは、4種類に分類されます。
1.ACLの設定に使用するフラグ
ACLをチューニングする際に使用するフラグです。このフラグを変更するには、インストール時に設定するパスワード(VMwareイメージでは「lids」)が必要になります。
LIDSフラグ
ターミナル内で、LIDSフラグを無効(0)にすると、そのターミナルでLFSを開くことができます。そのほかのターミナルでは、LIDSは有効になったままです。
# lidsadm -S -- -LIDS |
LFSを終了するには、このパラメータを有効(1)に設定します。そのターミナルでもLIDSが有効になります。
# lidsadm -S -- +LIDS |
LIDS_GLOBALフラグ
ターミナル内で、LIDS_GLOBALフラグを無効(0)にすると、システム全体でLIDSが完全に無効になります。このフラグは、ACLの調整時にターミナルをいくつか開いて作業を行いたい場合や、スクリプトを用いて作業を行いたい場合に使用します。
# lidsadm -S -- -LIDS_GLOBAL |
また、このパラメータを有効(1)に設定すれば、再びシステム全体でLIDSが有効になります。
# lidsadm -S -- +LIDS_GLOBAL |
RELOAD_CONFフラグ
このフラグは常に0のままです。
# lidsadm -S -- +RELOAD_CONF |
とすると、稼働中のシステムに/etc/lidsディレクトリ以下のLIDSの設定ファイルを再読み込みさせます。これにより、LFSで設定したACLをシステムを再起動させずに反映できます。
LIDSがACLを読み込むタイミングは、起動時とRELOAD_CONFフラグで読み込ませたときだけです。RELOAD_CONFフラグを使うことで、チューニング時に頻繁にシステムを再起動する手間を回避できます。
2.現在のシステムのステートを変更するフラグ
システムのステートを変更するフラグは、有効(1)にはできますが、無効(0)にはできません。そのため、一度SHUTDOWNステートにシステムが移行してしまった後にPOSTBOOTステートに戻したい場合には、システムを再起動するしか方法がありません。
POSTBOOTフラグ
POSTBOOTフラグを有効(1)にすると、システムのステートをPOSTBOOTステートに移行できます。通常、「lidsadm -I」コマンドでカーネルを封印すると、自動的に1になります。
また、BOOTステートで「lidsadm -S -- -CAP_HIDDEN」や「lidsadm -S -- -LIDS_GLOBAL」と入力してシステムのパラメータを変更しようとすると、「コマンドを入力できる」=「システムの起動は終わっている」と見なして、自動的にPOSTBOOTステートに移行します。
SHUTDOWNフラグ
SHUTDOWNフラグを有効(1)にすると、システムのステートをSHUTDOWNステートに移行できます。
3.ACL_DISCOVERYに関するフラグ
ACL_DISCOVERYに関するフラグを有効(1)にすると、ACL_DISCOVERYモードに移行できます。このフラグは、LFSなどLIDSのアクセス制限がかかっていないターミナルからのみ有効にすることができます。
システムをACL_DISCOVERYモードにするには、ACL_DISCOVERYフラグを有効(1)にする以外にも、/etc/lids/lids.iniファイルで「ACL_DISCOVERY=1」として「lidsconf -C」コマンドでACLを作り直して再起動する方法があります。しかし、/etc/lids/lids.iniファイルを修正しただけでは、BOOTステート、POSTBOOTステートはACL_DISCOVERYモードになりますが、SHUTDOWNステートはACL_DISCOVERYモードになりません。
これはバグだと思われるので、当面はSHUTDOWNステートでACL_DISCOVERYモードを使用したい場合には以下のコマンドによってシステムのACL_DISCOVERYフラグを有効(1)にしてからSHUTDOWNステートに移行する必要があります。
# lidsadm -S -- -LIDS # lidsadm -S -- +ACL_DISCOVERY # lidsadm -S -- +SHUTDOWN |
4.TPEに関するフラグ
TPEに関するフラグを操作することにより、第5回で説明したLIDS TPE機能を有効(1)/無効(0)にできます(LIDSのカーネル設定でTPE機能が選択されている場合)。
TPE機能を有効にするためには、
#lidsadm -S -- +TPE |
としてTPEフラグを直接操作するか、カーネルを封印する際に、
#lidsadm -I +TPE |
とすることにより、カーネル封印の際に自動的にTPE機能が有効になります。
次回は、lidsconfコマンドの使用方法を見ていきます。
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Index | |
LIDSのACLをチューニングする | |
Page1 LIDSを実際にインストールしてみよう LIDS Free Session(LFS) |
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Page2 ACL_DISCOVERYモード lidstools lidsadmコマンド |
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Page3 lidsadm -V |
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Page4 lidsadm -I lidsadm -S -- +/-"状態フラグ" |
Profile |
面 和毅(おも かずき) サイオステクノロジー株式会社 インフラストラクチャービジネスユニット Linuxテクノロジー部 OSSテクノロジーグループ シニアマネージャ 学生時代よりUNIXに親しむ。1997年からサーバ構築およびセキュリティ全般を扱う仕事に従事、Linuxを使い始める。 現在はLIDSの普及活動に注力。LIDSユーザ会(LIDS-JP)の立ち上げやLIDS関連文書の日本語化、LIDSを用いたシステム構築の紹介などを行っている。また、サイオステクノロジーでビジネス面でのLIDSの普及活動に注力している。 2005年12月より、LIDS Teamに参加し、LIDSの公式な開発チームの一員として活動している。 |
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