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システムインフラベンダ ブリーフィング(4)

シトリックスの描く仮想化管理戦略


三木 泉
@IT編集部
2008/12/1

ターミナル・サービスによるシンクライアントからデスクトップ仮想化へ、そしてサーバ仮想化へと進出してきたシトリックス。同社は仮想化管理技術を、今後のビジネス展開のカギだと考えている。では、具体的には次に何を提供していくのか。そしてこの分野におけるマイクロソフトとの協業の行方は?
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 サーバ仮想化とクライアント仮想化の世界は、急速な進展を続けている。その進展における焦点の1つが、広い意味での「管理」にあることは間違いない。シトリックス・システムズは、仮想化プラットフォーム・ベンダであるとともに、これを管理する製品群の充実に力を入れている。以下では、Xen製品グループ副社長兼ジェネラルマネージャーのルー・シップレイ(Lou Shipley)氏への同社の仮想化管理戦略についての取材における同氏のコメントを再構成して紹介する。太字は編集部による補足である。

 Provisioning Serverは差別化のための武器

 シトリックスは2008年6月にデスクトップ仮想化製品「Citrix XenDesktop」を国内投入、さらに10月にはサーバ仮想化製品の新バージョン、「Citrix XenSever 5」を発表した。XenServerはXenSourceの買収によって獲得した製品/技術であり、XenDesktopの基盤ともなっている。XenServerの機能強化はどのように進められているのだろうか。

 XenServerの売り上げと搭載サーバ台数は、XenDesktopにバンドルされているものを除いた純粋なサーバ仮想化用途だけでも、四半期ごとに倍増のペースで伸びている。XenServerはXenApp、XenDesktop、NetScalerとともに当社の主要4ビジネスの1つであり、2年後に1億ドルの売り上げを目標としている。

 VMware Infrastructureとの比較では、機能面で同等になるために、自動的な可用性確保機能(HA)を組み込む必要があった。顧客が仮想化、あるいはXenServerの導入をためらう際の、最後の理由がこれだった。しかし、HA機能を組み込んだことで、コア製品における機能面での同等性を確保し、「Citrix Provisioning Server」による差別化を生かせるようになった。

 これでわれわれは顧客に対し、「すべてを仮想化したいのならそれもできますが、物理環境と仮想環境を両方管理したいならXenServer Platinumを買ってください。これに含まれているProvisioning Serverの機能が使えます。ストレージのスペースは節約できますし、マシンイメージの管理の方法として優れていますよ」といえるようになった。

 この点は非常に重要な点だ。今後ワークロードのライフサイクル管理、つまり複数のマシンイメージをまとめ、その管理を自動化することは真の差別化ポイントになってくるはずだからだ。

 ではシトリックスは、データセンター運用自動化に関し、今後どのような新機能を投入していくつもりなのか。

 技術プレビュー段階に入ったものに、「Project Kirkwood」がある。これは、ユーザーの集中度やサーバのパフォーマンスに基づいて、ワークロードの配置を最適化するアルゴリズムを提供する。(ヴイエムウェアでいえば)「DRS」(Distributed Resource Scheduler)に似ている。もう1つ注力しているのは、テストや開発環境を支援する仮想ラボ管理製品だ。

 これらの機能はすべて、われわれの動的ワークロード管理製品群の一部として2009年に出荷の予定だ。ヴイエムウェアとの差別化に貢献するだろう。

 ヴイエムウェアとの比較では、価格の点も重要だ。ヴイエムウェアのメンテナンスが更新期を迎えている顧客から、シトリックスも検討したい、ヴイエムウェアのソフトウェア・メンテナンスの料金で、シトリックスの製品を一通り導入できそうだから、といわれる。われわれの目標は、すべての製品を、良い価値が発揮できるようなレベルに設定することにある。

 シトリックスは、Provisioning Serverを開発した米Ardence Softwareなど、仮想化分野で積極的な買収を行っているが、その一方で提携に留まっている関係もある。可用性機能がいい例だ。XenServer 5自体で基本的な再起動型HAを提供開始したが、完全無停止型のHAはマラソン・テクノロジーズと共同開発し、マラソンの製品を再販する形で2009年初めに提供開始する。買収と提携は、どのように使い分けているのだろうか。

 シトリックスは、私がCEOをしていた米Reflectent Softwareを買収した。この場合、XenApp環境におけるパフォーマンス監視という顧客の要求に、シトリックスが自社開発で応えたしたとしたら約18カ月は掛かったはずで、顧客との関係における痛みが大きすぎた。買収後、旧Reflectentは、EdgeSight for XenApp、EdgeSight for XenDesktopなど複数の製品を生み出し、買収後に7倍の規模となった。一方、XenSourceの買収は戦略的なものだった。

 フォールトトレランスに関する提携に関しては、市場はフォールトトレランス製品を必要としてはいるものの、すべての顧客にとって必須というわけではないということがある。完全なフォールトトレランスを必要とするのは、おそらく市場の10〜15%だろう。基本的なHA機能で満足してもらえるケースが多いはずだ。

 だからマラソンとの間では緊密な提携の道を選んだ。通常のパートナーシップよりも早くコードを出してもらうために、開発費用の負担もした。

 パフォーマンス監視製品のEdgeSightは、データセンター運用の自動化にどのように貢献するのだろうか。

 EdgeSightはパフォーマンス監視用のデータ収集とレポーティングの機能を提供する。管理ツールの「XenCenter」からこの機能を使えるようになる。Project KirkwoodもXenCenterと統合される。

 アプリケーションを利用しているユーザーの利用環境について情報を収集し、理解することは不可欠だ。XenDesktopでは特に重要だ。仮想デスクトップ快適に使えないとか、その上で動いているアプリケーションが遅いといったことがあると、仮想デスクトップに移行していただけなくなるからだ。

 EdgeSightの技術はエンド端末とサーバの双方で、CPUやネットワークのパフォーマンス、さらにアプリケーションのパフォーマンスをDLLレベルまで監視できる。サーバとユーザーの間のネットワーク遅延やラウンドトリップ・タイムも監視可能だ。このため、ユーザーからの苦情があっても原因を特定できるが、EdgeSightの本来の目的は、ユーザーが認識する前に問題を発見し、修復してしまうことにある。究極的には、問題を発見し、それを解決するプロセスの自動化を、XenApp、XenDesktop、そしてサーバ仮想化のすべてに対して提供することを目指している。

 
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シトリックスの描く仮想化管理戦略
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Provisioning Serverは差別化のための武器
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クラウド戦略では価格体系がカギ

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